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「開発における障害に関する懇談会」 報告

司会: それでは次に、アジア・コミュニティ・センター21の事務局長の鈴木真里さん、お願いします。

  

鈴木: アジア・コミュニティ・センター21の鈴木と申します。今日は遅れてきて申し訳ありませんでした。

 今お配りしているのですが、こちらのACTと書いてある年報、2006年度の年報でちょっと古いのですが、そちらをご覧いただきながら簡単に私たちの活動について説明したいと思います。

 13ページの右下の事業なのですが、インドで被災した身体障害者の若者、孤児の職業訓練と経済的自立支援事業という事業が、障害者関連事業の一つです。

 まず、アジア・コミュニティ・センター21という私の所属している団体と、このACT(公益信託アジア・コミュニティ・トラスト)との関係についてご説明します。アジア・コミュニティ・トラストは公益信託で、一般市民の方、個人・団体・企業、そういった方たちが自らの財産ですね、1万円からでも数千円からでもいいのですが、多くは億単位とか何千万円単位で特別基金をACTの中に設立して、各基金の中からその基金の指定する分野や国・地域で現地のNGOが行うプロジェクトに対して支援するというものです。私たちアジア・コミュニティ・センター21(ACC21)はそのACTの事務局を、受託者である中央三井信託銀行から委託されております。私たち自身はNGOです。

 過去28年間、ACTはずっと主に東南・南アジアの現地NGOを財政的に支援してきまして、仕事の内容としては主に助成財団のような形なのですが、支援者の方、寄付者の方がこういった事業を支援したいというのを事務局がお聞きし、現地のNGOネットワークと連携して対象となるプロジェクトを探し出して、パートナー団体を見つけ、最低3年間は支援するという形で、細々と、年間12~13件なのですけれども、やっております。

 今回、障害者の関連でこの事業を始めた理由というのが津波でして、2004年年末に起こったインド洋の津波で私たちはインドネシア、インド、スリランカ、この3か国で津波被災地域の支援を2005年度からスタートしております。この寄付者は大和証券グループ本社で、毎年1,000万円ずつ基金に入れていただいて、その範囲でその3か国のプロジェクトを支援するということです。

 現在、いろいろモニターの関係で遅れていまして、今ちょうど3年目が終わるところです。今、その過去3年間で支援してきた事業について振り返りとか評価というのを行っている時期なのですが、このインドの事業に関しては、ナーガッパッティナムというインドのタミル・ナードゥ州の一番南の州があるのですが、そちらの一番沿岸の海沿いにある町で、今回の津波で11,000人くらいが亡くなったのですね。沿岸地域は皆さんご存知の通り、インドはカースト制度が非常に深刻な経済問題にも影響を及ぼしておりまして、特に沿岸地域はそういうカーストの一番下の、それからカーストにも属さない人たちが非常に多く集まっている地域でございます。

 ACTの支援方針としては、まず現地のNGOが主体的に行うということ。主体的にというか、ファシリテーターとして事業をリードしていくという存在となることを期待しています。もう一つが住民が主体的に関わる、自ら行うという2点を重点的に支援の対象としています。インドの場合は、数々の申請書がACTに送られてきました。その中で一番当時、津波復興支援で猫も杓子も津波支援という時期があったのを皆さんご存知だろうと思いますが、大変多くの国際NGOとか国内外のNGOが大挙し、実際に被災地で何が起こっているかというと、住居建設とかいろいろなことをやっていったのですが、現在はほとんどが撤退して、中には金銭的に依存体質が生まれてしまって、援助している援助機関が去った後に住民自身が私たちはどうしたらいいのだろう、という状況になっている地域も現に見ます。

 インドの場合は障害者という括りで最初ターゲットにしていたわけではないのですが、一番支援の枠から取り残された人々ということで探していきましたら、障害者(津波が原因で障害者、障害を負ってしまったという方は少ないのですが)、もともとポリオとかいろいろな原因で障害を負った十代の若者、二十代の若者がたくさんいるということがわかりました。

 ナーガッパッティナムというのはかなり行政が障害者支援に力を入れておりまして、現在は身体障害者に対するIDカードを発行している数だけで約18,000人いるとされています。その障害者のIDカードを持てば、例えば公共バスを無料で乗ることができるとか、あるいは45歳以上になると障害者年金の受給資格があるとか、いろいろな技術訓練を優先的に受けられるとか、そういうものに実際に力を入れているようですが、行政のほうにも予算がないということなのでしょうけれども、当事者から申請してこないとなかなかそういう人たちに対するサービスが来ない。そういうときにやはりNGOですとか支援団体の存在が非常に不可欠なのですね。当事者のほうがそういうサービスがあることを知らないとか、あるいは技術訓練を当然受けられるのに受けられないとか、そういった機会の提供がされていないということで、私たちは事業を通じていろいろ学びました。NGOが何でもやるのではなくて、そういう既存の行政のシステムやサービスを高く活用していくということが大切だと学びました。

 この事業では私たちもいろいろ失敗も重ねてきたのですが、例えばコンピューターとか更生訓練とか、ろうそくづくりなどの技術訓練を過去2年間やってきたのですが、やはり障害の度合いによっては自宅から訓練センターに通うのに非常に困難な人たちがいるのですね。例えば、親兄弟がついていってあげないと、日本のようにまだまだバスにしてもそういう人たちが乗りやすい環境になっていないとか、あるいは自宅からバスのところまで行くのに非常に困難な道であるとか、そういったように一人一人事情が違うのです。実施団体のほうでも家庭訪問を頻繁にして、単にセンターに来る人たちに一方的にトレーニングを施す、提供するということではなく、家庭訪問してその家庭の経済状況とかそういったものも見ながら一人一人カウンセリングして、この人の希望と、当事者の希望とそれからこちらが提供できる内容と合致するものをということで、組み直す必要があるのではないかというのが、これまでの2年間やった後の評価として出ました。今後も既存のコンピューター訓練、更生訓練、それから手工芸品製作、この三つの柱は継続していくのですが、例えば収入向上にもいろいろあり、日々の収入を得るようなビジネスに対しての支援というのも非常に重要だというのを私たちは現地に行ってよくわかりました。例えば生花を、インドの女性たちは髪に非常にきれいなジャスミンの花などを飾るのが毎日の習慣なのですが、そういった小さなこまごましたものを売るとか、あとは野菜を台車で引いて販売するとか、そういったことを一人一人が実は希望として持っていたのですね。その人たちがそういうビジネス、小さなビジネスを始めるために必要なものは何かということと、それからやはり運転資金ですね、初動資本としてだいたい年間7,500円くらいの融資をして、いわゆるマイクロファイナンスですが、そういう融資をして彼らがビジネスを始めるための材料とか設備などの購入にあてていただく。それだけではなくて、年利10%くらいで返していただいて、それをまた返済利率で新しい他の人たちに支援を確保していくといった形でやっていこうとしているのが今の状態です。