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「開発における障害に関する懇談会」 報告

司会: ありがとうございました。それでは次に、武智さん、お願いします。

  

武智: 皆様、こんばんは。JICAの武智と申します。

 私は今年の7月からJICAの社会保障課でジュニア専門員として障害者支援部の業務に関わらせていただいております。若輩者で、長田さんの発表の後で心苦しいのですが、JICAの新しい情報、新JICAについて今日はお知らせしたいと思います。資料を持ってこられるということで、後で見ていただきたいのですが、新JICAの様子と、障害者支援分野のアプローチとして図にまとめましたので、後でご参照ください。それから、皆様が一番関心があるかと思って、ただいまJICAで障害者支援分野についてのプロジェクトについてまとめた表も置いておきますので、後で興味がありましたらご参照ください。

 新JICAなのですが、皆様既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、今年10月1日に国際協力銀行(JBIC)の有償資金協力の実施部門と合併するとともに、無償資金協力事業も外務省から移管されて、二国間援助機関として世界でも最大規模の援助機関となる新JICAが誕生しました。本来では別々の機関が実施していた技術協力、有償資金協力、無償資金協力という三つの援助手法を立体的に運用し、開発途上国の社会、経済が自立でき、持続的に発展できるよう人々のニーズにより応じた、質の高い国際協力を実施していくことになりました。新JICAはすべての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発、インクルーシブ・アンド・ダイナミック・デベロップメントという新しいビジョンを掲げています。障害の違いや人種も宗教も性別も世代も超えて、すべての人々が自らの開発課題を認識し、それを解決するプロセスに参加し、その成果を享受する。新JICAはそのような人々の主体的な取り組みを国家的に後押しするとともに、貧困削減と経済成長が高循環を目指す開発を進めていこうとしています。インクルーシブという視点をより強調することでわかる通り、新JICAでは障害者問題のメインストリームを事業の中に組み込む重要性を認識しています。

 円借款事業では既に障害者のチェックリストを作成しており、空港や鉄道、地下鉄、博物館や大学のバリアフリーのような障害者の視点を組み込んでプロジェクトを実施しており、この経験と知識は他のスキームについても生かされるように取り組んでいく予定です。

 これまでJICAの障害者問題に対する戦略として、障害者やその家族が社会的に主体性を回復し、自己実現に向けた力を獲得していくエンパワーメントや、JICAのすべての事業の企画段階から実施、評価に障害者の視点を組み入れるメインストリーミングを二本柱とするツイントラックアプローチに基づき事業を実施してきました。これからはさらにメインストリームの活動を強化し、さまざまな分野でのプロジェクトに障害者配慮がなされるための働きかけがますます必要となります。各プロジェクトへの裨益者としての障害者の参加のみならず、実施者としての障害者の参加となるよう、障害者の視点をすべての協力に組み込むという考え方への働きかけです。すべての協力において計画策定、実施、モニタリング、強化の各プロセスにもこの視点を組み込んでいきたいと考えています。

 また、身近なところとしては、JICA関係者の障害者に対する意識改革、建物等のバリアフリー化、情報提供手段の多様化、及び障害を持つ専門家や協力隊等に関わる派遣制度の見直し等も行っていきます。

 現在のJICAは、統合後も新宿と竹橋という二カ所に分かれて業務を行っており、近い将来、一つの建物への移転を計画しています。その移転先である建物についてはバリアフリーとし、障害者を含むすべての人々が利用できる体制を整える予定であり、そのためには多くの障害当事者の方にアンケート等で協力していただきました。

 今後ますます重要性が増していく障害者支援分野ですが、大きな課題があるのも実情です。その一つが人材で、この分野で途上国や日本での知識や経験、技術を移転する人材が不足しているのが現状です。新JICAでも、障害者のメインストリーミングやエンパワーメントを進めていくためには、本会場にいらっしゃるような専門的な知見を有した皆様のご協力が必要となります。新JICAがより多様性のあるアプローチに、障害者を含むすべての人々が恩恵を受ける事業を展開するために、皆様のご協力をぜひお願いいたします。

 ありがとうございました。

  

司会: 武智さん、ありがとうございました。何かとても期待できそうなお話をいただきました。