【知的障害、発達障害、精神障害等関係、及びデイジー関係】
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③知的障害者、発達障害者等関係
精神障害においても「読み・理解・判断の障害」が認められているので、ここに精神障害も加えることを提案する。具体的には「③知的障害、発達障害、精神障害等関係」となる(「○○障害者」ではなく「○○障害」という表現にした)。
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「脚注27」
2001年12月デイジーコンソーシアム理事会において、デイジー(DAISY)の正式名称がそれまでの "Digital Audio-based Information system" から "Digital Accessible Information system" へと変更された。これはデイジー(DAISY)規格が音声を中心とするものから、必ずしも音声ファイルを必要としない多様なデイジー図書の製作を可能にする規格へと進化したことを反映している。この進化によって、デイジーは、幅広い範囲の読書に困難を持つ人たちの個別のニーズに的確に対応できるようになっている。
「デジタル録音図書」という表記から、音声のみだけの対応であるかのような誤解を受けるおそれがある。デジタル録音図書(DTB ; Digital Talking Book)については正しくは「印刷図書のマルチメディア版」と捉えるべきであり、テキストと静止画像にも対応しているということを明記しておく必要がある。さらに、テキスト部分を拡大したり、フォントや背景色を自由に設定できることから、弱視者用の拡大図書としても利用できるし、ピンディスプレイを使えば点字としても出力できる。DAISYはバリアフリーあるいはユニバーサルデザイン図書として、さまざまなタイプの読書に困難を持つ人たちに有用であるという点も明記すべきである。ちなみにDAISY規格は、Digital Talking Book(DTB)に関する仕様であり、デイジーコンソーシアムによりまとめられている。
〈参考資料〉
DAISY研究センター
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/
The International Dyslexia Association
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●「美しい日本における特別支援教育」
「著作物のデイジー化は、学習障害のある者にとって大いに有用なツールである」
この「有用なツール」という点について、いくつか補足しておく。DAISYのように文字と音声情報が同期されて表示されることで、学習障害、特にディスレクシアといった読み障害のある人の障害が軽減され、特に学校教育の場面においてはDAISY化された教科書等を教材として利用することで、学習効果が上げられたという実践例等が報告されている。
一般論として学習障害など発達障害を持つ児童生徒にとって、マルチメディア対応であるDAISY図書を教材として採用することで、いわゆる「多感覚教授法」(multisensory teaching methods)すなわち、視覚や聴覚、その他の感覚を刺激し記憶力や学習力を増進する教授法が実現できるようになる。
特別支援教育が本格始動した今、教育現場でのDAISY化された教科書等の利用が促進され、教育効果があげられることが強く望まれる。
〈参考資料〉
障害者保健福祉研究情報システム・会議・セミナーの報告書
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/index.html
Using multisensory teaching methods
http://www.dyslexia-parent.com/mag30.html
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①全体の方向性
「障害者に関する権利制限は、・・・(略)・・・基本的に高い公益性が認められる」
ここで示されている「障害者」には、当然のことながら「知的障害者」「発達障害者支援法」でいう「発達障害者」および「精神障害者」も含まれるものと解されるが、著作権法改正に当たっては、視覚障害・聴覚障害に準ずる形での位置づけに留まることなく、発達障害や知的障害および精神障害についても正式に位置づけられるべきである。
〈参考資料〉
国立身体障害者リハビリテーション研究所と浦河べてるの家の当事者による実践
(リハ協ビデオ「Enjoy DAISY」)
モンタナ大学障害学生サービス部・渡辺美香氏の論文
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/ld/dss.html
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d 対象者の範囲について
「規定の明確性を担保しつつ可能な限り範囲に含めていくよう努めることが適当」
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c 対象者の範囲について
「規定の明確性を担保しつつ可能な限り範囲に含めていくよう努めることが適当」
発達障害については、「発達障害者支援法」「発達障害者支援法施行令」等の法令で定義されてはいるが、学校教育、就労支援等の場面で具体的な支援ニーズに即したものとすべきである。実際に当該者の指導・支援に携わっている専門家からの所見をもとにして、対象者とすることもできるようにすべきである。
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a 現行規定での対応可能性
「デイジー図書の製作の態様によっては、現行法においても許諾を得ずに複製ができる場合があると考えられる」
原理的には現行法の規定内でも複製可能な場合があることは確かではあるが、一般にデイジー図書の製作には専門的な知識、技能を要することや、多大な製作時間を要することがあり、例えば学校教育の場面では「教育を担任する者」や「その支配下にあって補助的な立場にある者」がその製作に専念できる状況にはない。したがってこの場合「教育を担任する者」や「その支配下にあって補助的な立場にある者」以外の、一定の要件を満たす者に委託できるようにすべきである。
また現行法では、著作権法第35条の規定により製作したデイジー図書をライブラリー化し、例えば教材資源として有効に活用することは不可能である。したがって、教育機関(社会教育も含む)、職業訓練機関や公共図書館等の公共性の高い施設においては、製作したデイジー図書をライブラリー化し、情報資源として有効に活用できるようにすべきである。
この際には、米国ですでに策定されているNIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)等を参考にすべきである。
〈参考資料〉
NIMAS http://nimas.cast.org/
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b 対応方策について
「②視覚障害者、③聴覚障害者関係の権利制限の拡大を検討していく中で、・・・(略)・・・障害等により著作物の利用が困難な者についてもこの対象に含めていくよう努めることが適切」
ここで示されている「障害者」には、当然のことながら「知的障害者」「発達障害者支援法」でいう「発達障害者」および「精神障害者」も含まれるものと解されるが、著作権法改正に当たっては、視覚障害・聴覚障害に準ずる形での位置づけに留まることなく、発達障害や知的障害および精神障害についても正式に位置づけられるべきである。
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「複製の方法については録音等の形式に限定せず、それぞれの障害に対応した複製の方法が可能となるよう配慮されることが望ましい」
「録音等の形式に限定せず、それぞれの障害に対応した複製の方法」とは、マルチメディア対応であるデイジー図書等を指しているものと解されるが、特に読みの困難のある学習障害であるデイスレクシアの人たちや、それ以外の同様の困難を持つ人たちにとってきわめて有用である。是非とも法改正によって、デイジー図書活用のための条件整備がなされるべきである。
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「脚注39」
デイジー図書の蓄積や提供を行う中核的施設に関しては、現状の著作権法の制約内ではなかなか実現が難しいということを指摘しておく。前述の米国NIMAS(National Instructional Materials Accessibility Standard)策定の際にも、米国著作権法の改正が先行していたことを指摘しておきたい。
なお、例えば学校教育に係る教材等に関してみるならば、現状でも著作権処理をされたものについては、各地の教育センター等で蓄積され必要に応じて教育現場に提供され利用されているという実態がある。それらの教材の一部には、教育センター等が運用するウェブサーバからダウンロードし利用することが可能となっているものもある。
将来的には、デイジー図書についてもこのような利用方法が充分可能であることを指摘しておく。目的外の利用については、事前のID、パスワード登録により回避することが可能である。