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話題提供1

鈴木昌和
九州大学大学院数理学研究所 名誉教授

スピーチをする鈴木昌和氏の写真

 イ先生、すばらしい講演、ありがとうございました。私はもともと数学者で、十数年前に九州大学に全盲の学生が入ってきたことがきっかけで、視覚障害者への支援を始めることになりました。当時、理数系の分野で視覚障害者が学ぶ上で非常に大きな困難がいろいろあるということがわかって、それをサポートするネットワークを作りたいということでスタートしました。先ほどのイ先生の話をお伺いしていまして、強く、視覚障害者だけじゃなくていろいろなディスアビリティを持った人たちの支援を連携してやることが重要なんじゃないかということを感じました。後のパネルディスカッションのときにその辺りのこともお聞きしたいと思います。

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 まず今日は幾つかお写真を見せたくて用意してきました。私が関わっているのは視覚障害者だけですけれども、視覚障害者にとって理数系の分野に進学する学生さんそのものが非常に少ない。非常に困難。大学に行って理科系を学ぶことが難しいだろうと思われているわけですね。
そういった状況を打破したいということで、「科学へジャンプ」というプロジェクトを立ち上げました。

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 これは科学のおもしろさを知ってもらうということと、先輩たちとのつながりを持つことによって、理数系もちゃんと学んでいくことができるということを知っていただきたい。そして、今、盲学校では当該学年の学習ができる生徒が1学年に1人しかいないという状況がほとんどです。友達がいないんですね。だから全国から生徒さんたちを招待して、一緒に2~3日学ぶという経験を通して、友達のネットワークを作っていく。それから先輩とのつながりを持つことによって、視覚障害を持つ生徒さんたちのコミュニティ、あるいはその保護者のコミュニティを作っていきたいということが目的です。

 2008年からスタートしたのですが、2008年はサマーキャンプを実施しました。昨年からJST=日本科学技術振興機構の助成を受けてプロジェクトが飛び出しまして、サマーキャンプだけではなくて、全国の各地域10ヶ所程度に分けて日帰りのキャンプをやるというプロジェクトが進んでいます。

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 これは2008年のサマーキャンプのときで、ちょうどこの戸山サンライズで開催しました。全国から18名の中学生、高校生を招待しました。保護者と同伴でペアで招待いたしまして、もちろん保護者同士、生徒、別々のところにしたわけですけれども。中学生と高校生18名、保護者が30名ぐらいで、全員、全盲の生徒さんたちです。

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 写真でやっていることが少しわかるかと思いますが、モーターを作ったりコンピュータを使っていろいろなものを読んだり書いたり、あるいはルービックキューブを解いたり、あるいは理科の実験をやったり。実際に学校で触って化学の実験をするということはなかなかできないんですけれども、筑波大学付属特別支援学校の先生の協力で、そちらではちゃんと目が見えなくても実験ができるということが、いろんな工夫をした取り組みがされていますので、そういった体験をしてもらいました。

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 コンピュータを使って図を描いたり、数式を読んだり書いたり、そういったことも体験してもらいました。

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 この辺りは多面体の学習とかルービックキューブを解いたりしているところですね。その写真です。

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 右側の写真は多面体の模型を観察しているところです。

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 これは日帰りのキャンプ。去年やった京都での日帰りのキャンプの様子の写真です。生物の観察なんかもやったりしています。実際にバーナーの火をコントロールしているところも、目が見えなくてもちゃんと安全に工夫すればできるんだということを体験してもらうところです。

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 これはネイチャー・フィールディング、あるいは地球儀を触って地図を読む勉強などです。

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 これはITリテラシーの講習会の様子です。

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 今年2010年はサマーキャンプを阿蘇で開催いたしました。30名ほどの定員のところ48名の応募がありまして、実際30名に絞り込んだんですけれども、キャパシティが、サポートする側のスタッフの問題もありますので、30人で開催しました。弱視が9名、全盲が21名でした。こちらは写真が整理できていませんので写真がないんですけれども、こういうところで開催いたしました。
おそらく来年は東京になるかと思います。

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 これはミニキャンプを開催する未定の地域です。このようにして全国各地で3年間でやろうと。
現在、JSTの助成は2009年から2011年の3年間ですけれども、その後もこの事業が継続できるように、何らかの組織、NPO法人を作ろうという準備を進めているところです。この活動を短期間だけじゃなくて、ずっと継続してできるものにしていきたいと考えています。以上です。ありがとうございました。

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