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英国のデジタル放送受信機の開発について(ビデオプレゼンテーション)

英国盲人協会(RNIB)アクセシビリティ部門責任者 リチャード・オーム

 

皆様、こんにちは。私はRNIB(英国盲人協会)アクセシビリティ部長の

リチャード・オームと申します。今回、皆様のセミナーで英国のデジタル放送受信機の開発についてお話しできることを大変嬉しく思っております。

多くの人がさまざまな場所でテレビを楽しんでいますが、これには当然、視覚障害者も含まれます。英国内での調査では、ラジオよりもテレビを楽しむ盲人の方が多いことがわかっています。また、皆様もご経験があると思いますが、職場や学校での会話にはテレビ番組の話題がよく登場します。つまり、テレビは人々を結びつける役割を持っているのです。言い換えれば、テレビへのアクセシビリティは社会的インクルージョンの問題であるということです。

今日、世界には15億台のテレビがあります。テレビを視聴する人の数についてですが、2008年のオリンピックは 40億人がテレビで楽しんだという結果があります。これは実に世界の人口の3分の2にあたります。同時に、多くの国ではデジタルテレビへの移行が進められており、これによってテレビへのアクセシビリティがより大きな問題になっています。テレビの果たす役割が大きくなっている今、RNIBがこの問題にどのように取り組んでいるのか、ご説明したいと思います。

この数年間、私たちは英国政府関係者や規格当局関係者と話し合いを持ち、また、欧州レベルでもテレビへのアクセシビリティの重要性を主張してまいりました。また、個別のテレビメーカーや業界団体とも話し合いを進めています。そして、テレビへのアクセシビリティが重要であるという点では全員の意見が一致しています。ところが、デジタル放送への移行により、英国では、操作するチャンネルが4つから70、いえ、700のチャンネルに増えることになると予想されています。ですからテレビ機器そのもののアクセシビリティが非常に重要になってきます。

テレビへのアクセシビリティに関して英国では、音声解説の分野においては多少の改善が見られています。しかしながら、「話すテレビ」については、テレビメーカー側は、企業として利益があるのか、また技術的に可能であるのか、という点について懸念を表明する場合が多いようです。そこで今日は、RNIBが開発を進めている3つの主要技術をご紹介し、このような心配は不要であることをご説明したいと思います。

3種類の機器についてビデオを用意しています。それぞれのビデオをご覧いただく前に、私から説明をいたします。その後で音声による操作説明の様子をビデオでご覧いただきます。

初めにご紹介するのはデジトーク(アドオンボックス)です。私がカメラに向けて持っているのは、衛星放送用の通常のセットトップボックスで、パナソニック社製のものです。これはデジタル衛星放送プラットフォームで、英国では「スカイ」と呼ばれています。このセットトップボックスの裏側をお見せしていますが、テレビに接続する通常のポートがあるのがおわかりいただけると思います。今私が指でさしているのがシリアルポートです。9ピンのRS-232型で、以前にはマウスやプリンタをコンピュータに接続するときに使われていました。このセットトップボックスが情報を送るわけですが、私たちが開発しているのはこの小さい箱です。この箱をシリアルポートで接続し、セットトップボックスからの情報を解読します。テキストスピーチチップが内蔵されていますので、その情報内容を音声で表現することが可能です。チャンネルの変更や番組情報を音声で表示することができます。今からご覧いただく映像では、テレビの電源が入り、放映されている番組の説明が入ります。チャンネルを変えるとチャンネルの名称、チャンネル番号、番組の名前が読み上げられます。さらに詳しい情報が欲しい場合には、リモコンのボタンを押すことで番組の簡単な紹介を聞くことができます。この番組紹介はテレビ画面にも表示されます。チャンネルを変えるためにリモコンのボタンをさらに押して、例えば1、0、4と押すと、押した番号が読み上げられ、操作内容を確認することができます。ではご覧ください。

 

【ビデオ音声】(英語)

 

ご覧いただいたように、この小さなデジトークボックスにより、現在英国で使われている900万台以上の衛星放送用セットトップボックスに読み上げ機能をつけることが可能になります。また、衛星放送サービスの提供会社である「スカイ」も、この機器の開発に興味を示しています。

重ねて申し上げたいのは、通常のテレビ受像機側の変更は不要で、取り付けも非常に簡単だということです。デジトークボックスを既存のテレビ機器に接続するだけで音声機能を実現することができるのです。デジトークボックスを利用することで、既存のセットトップボックスに読み上げ機能をつけ、そのとき放映されている番組の情報を音声で聞くことが可能になります。

しかしながら、このデジトークボックスでは電子番組ガイドにアクセスすることはできません。電子番組ガイドでは通常、2~3時間後までの番組情報を提供しています。そしてビデオレコーダの場合、特定の番組を録画したり、毎週同じ番組の録画を予約したりすることも可能です。

次に、この機材のご紹介をしたいと思います。RNIBでは、2009年の終わりまでにこのセットトップボックスの開発を完了し、地上波デジタルサービスに対応させる予定です。これにより、デジトークボックスのように画面上のテキスト情報を音声情報に変換するだけでなく、セットトップボックス内の電子番組ガイドへの音声でのアクセスが可能になります。

また、音声を利用してメニュー操作を行い、セットトップボックス自体の設定を調整することも可能です。例えば画面に表示されている文字の色やフォントサイズを変更することができます。ビデオで操作の様子をご覧いただきます。私の同僚であるデイビッドが電子番組ガイドを操作します。デイビッドが番組や日付を変更するごとに音声でも表示がされます。途中、小さなビープ音が入りますが、これは番組に音声解説がついていることを示しています。そしてデイビッドは、セットトップボックスのメニューに入り、画面の色を変更します。ではご覧ください。

 

【ビデオ音声】3、ITV1、18時から18時30分、字幕つき。操作がわからないときはヒントボタンを押す。 ITV、イブニングニュースと天気、19時、3、ITV、字幕つき。

次を見てみましょう。エマデール、19時から19時半。3、ITV、音声ガイドつき、字幕つき。この番組についてもっと知りたい場合はインフォボタンを押します。エマデイル、19時から19時半。メニューボタンを押して、メインメニュー、6つのオプション、1. 設定、操作がわからないときはヒントボタンを押す。2. お気に入り、3. 保護者による規制、4. 注意、5. 技術設定、6. ヘルプ。1を押して設定にいきます。設定P、5つのオプション、現在の設定、番組ガイド表示、操作がわからないときはヒントボタンを押す。

他の設定も見てみましょう。2. すべての音量。3. 音声解説設定、4. 視覚設定、5 .読み上げ設定。

次に色の設定をしてみます。2. 色の設定。OKを押します。色の設定。現在の設定、背景青、文字白、3つのオプション。現在の設定、1.背景青、文字白。操作がわからないときはヒントボタンを押す。今の設定は背景青、文字白ですね。他には何があるでしょうか。2.高コントラスト、背景黒、文字白、3.背景白、文字黒。それでは2の高コントラストを選択します。2.高コントラスト、背景黒、文字白。OKを押します。

 

最後にご紹介するのは、ビデオレコーダです。ここまでにご紹介したのは、1つ目がデジトークで、これは、チャンネルを変えると簡単な番組説明をする外付けの小さな箱でした。次にセットトップボックスを紹介しましたが、これは電子番組ガイドへのアクセスやメニュー設定の変更・調整を可能にするものです。

さて、週の後半に予定されているラジオ番組やテレビ番組を録音・録画する機能が欲しいという要望も上がってきています。そこでご紹介するのがビデオレコーダです。こちらも今年末には完成の予定です。Windowsのプラットフォームで開発されており、メディアセンターのような機能があります。もちろんコンピュータほどの機能はありませんが、非常に高性能のセットトップボックスになっています。この機器はキーボードの代わりにリモコンで操作します。これからビデオでご紹介する機材の仕様は、完成版とほぼ同じです。チャンネルを変えるとチャンネルの番号と番組説明が音声で表示されます。それではこれからアニメをご覧いただきます。インフォメーションのボタンを押すことで番組のあらすじを音声で聞く機能もついています。それでは、ご覧ください。

 

【VTR音声】1、BBC、1、エビオット、3時50分から4時5分まで。エビオット、字幕つき。

 

短いポーズの後、電子番組ガイドに進みます。そして、いろいろな番組の中から一つを選択し、録画の設定をします。

 

【 VTR 音声】テレビガイド、1、 BBC 、1、エビオット、今日 15 時50 分から 16 時5 分、字幕つき。ワンミニット、今日16 時 5 分から16 時 35 分、字幕つき。2、BBC 2、ジェシカおばさんの事件簿、今日15 時 5 分から15 時 45 分、字幕つき。3、ITV 1、アランティッチマルチショー、今日 15 時から 16 時、字幕つき。バーナビー警部、今日 16 時から17 時、字幕つき。

このチャンネルにする。ターミナルの削除。番組を見る。番組を録画する。バーナビー警部を録画する。今日 16 時から17 時、字幕つき。テレビ画面に戻る。

 

短いポーズの後、テレビのメニュー画面に進み、画面の表示設定を変更します。これは弱視の方にとって非常に大切な機能です。

 

【 VTR音声】メインメニュー、6つのオプション、1、テレビガイドとチャンネルリスト、2、チューリスト、3、録画メニュー、4、設定メニュー。設定メニューへ。5つのオプション、2、視覚設定。視覚設定メニュー、4つのオプション。2、表示設定。2つのオプション。色の設定、4つのオプション、1、背景青、文字白、背景黒、文字白。背景黒、文字白を選択。背景青、文字白。背景青、文字白を選択。背景青、文字黒、背景青、文字黒を選択。表示設定、視覚設定、メインメニュー、テレビに戻る。

 

ご紹介した機材は、現在のところ英国でしか使うことができませんが、興味を持っていただければ幸いです。初めにご紹介したのは既存のデジタルテレビに接続して使用するアドオンボックスでした。次に、電子番組ガイドを聞いたりリモコンで設定調整したりできるセットトップボックスをご覧いただきました。最後にご紹介したビデオレコーダーでは、放映中または放映予定の番組を録画することができます。

現在、それぞれの機器が開発段階にあり、視覚障害者に実際に家庭で試していただき、ご意見・ご要望をいただいているところです。今日ビデオ内でお聞きいただいた音声についても研究開発を進めており、完成版にはよりよい音声を搭載できる見込みであることを補足させていただきます。

この紹介ビデオを日本でお使いいただくことの理由は、冒頭でも申し上げたように、視覚障害者のテレビへのアクセシビリティ向上が世界的な課題であるからです。このことは、 WBU=世界盲人連合も認識しています。 WBUの戦略計画においても優先事項1が、「社会的、経済的、政治的ならびに文化的側面において視覚障害者の完全な参加と機会の平等を促進すること」として、この課題を取り上げています。また、昨年ジュネーブで開催された WBU総会の決議にも、「テレビ番組の音声解説の向上ならびにテレビ受像機操作のアクセシビリティ向上に向けて努力する」との文言が盛り込まれています。

このように世界規模での行動が求められていることに関連して、最後に3つのポイントを挙げておきたいと思います。

まず、「知識の共有」です。今日私が皆さんにお話ししたこともこれに当たります。この「知識の共有」は、次の、「メッセージの統一」にも関連します。テレビ機器メーカーには複数の国で活動を展開しているものもあり、そのような企業からは、国ごとに意見や要望が違うのでは困ると言われます。ですから、テレビへのアクセシビリティについて私たちが共通の見解を持つことが重要になってくるのです。最後のポイントとして、企業が採用し、活用することのできる国際規格開発の重要性も挙げておきたいと思います。

これで私の説明を終わりたいと思います。参考にしていただければ幸いです。ご質問がありましたら、Eメール、richard.orme@rnib.org.ukまでお気軽にお問い合わせください。ありがとうございました。