「障害者のための情報保障」セミナー報告書
デジタルテレビ放送の情報アクセス
講演3 EUにおける地上波デジタル放送
マーク・ホダ
王立全国聴覚障害者協会(RNID)ヨーロッパキャンペーン担当官
(監訳 寺島 彰)
ご紹介ありがとうございます。今ダウンズ博士は、最初、素晴らしい日本語でお話ししましたが、残念ながら私の話は全部英語になります。また私は早口になりがちなので、ご容赦頂きたいと思います。
私は、RNIDでは、ヨーロッパキャンペーン担当オフィサーという仕事をしております。聴覚障害者のための組織や障害者のための組織とともに、ヨーロッパレベルで、有効な政策、あるいは方針が、どんどん導入されるように色々なキャンペーンを働きかける、そういうような仕事をしております。特にマクロレベルでそれを行っております。
さて、今日の私の話は、地上波デジタル放送についての一般的な最近の傾向についてお話しをし、その問題点についてもお話ししたいと思います。ヨーロッパレベルまたイギリスという国レベルで、あるいはその他の国レベルで抱えている問題点についても紹介したいと思います。
まずは、ヨーロッパのデジタルテレビについて、まず、統計的な数字をご紹介したいと思います(スライド2)。2010年末までに、ヨーロッパの家庭の5軒に1軒の世帯でこのデジタルテレビを見ることになるだろうと予想されています。英国では、500万世帯がそうなるだろうと思われます。現在、英国の60%の家庭がデジタル地上波テレビを見ていますが、2009年までには、90%がそうなるだろうと推測されています。
イギリスでは、アナログテレビからデジタルテレビへの移行は、今後4年以内に始まり、2012年には、100%になるのではないかと推定されています。
ちなみに、現在、デジタル化が一番進んでいるのはアメリカで、現在、45%がデジタル放送視聴者となっています。そして、世界人口のだいたい3分の1が、2010年までにデジタル放送を享受することになろうと推定されています。
しかし、デジタル放送の予測につきましては、今後、常に変化していますので、統計に興味のある方は、次のウェブサイトをチェックしていてください。www.dtg.org.uk/です。これは、デジタルテレビの団体が運営しています。この団体は、英国の団体で、メーカー、他の産業団体、有力な団体などで構成されています。このウェブサイトには、ニュースだけでなく、他のEU諸国の状況や日本を含む世界中の状況が紹介されていますので、面白いと思います。スライドに表示できませんでしたので、全部メモできなかったという方はおっしゃってください。もう一度繰り返します。
マーク博士が、字幕、音声解説、手話という、感覚障害者のアクセスサービスについて概観しました。私は、手話と手話通訳と手話表示についてお話したいと思います(スライド3)。
EUの聴覚障害の手話使用者のための団体と手話について話をしますと、彼らが一番望んでいることは、番組の中で手話が使われることです。イギリスでは、幸いなことに、色々なチャンネルで、すでに手話が使われています。
さて、一般のユーザーに対するデジタルテレビの潜在的な可能性には、色々なことが考えられます(スライド4)。例えば、システムとしては、より柔軟で効率が良いことです。双方向の情報サービスというのも可能になります。イギリスでは、主要なデジタルチャンネルにおいて、画面の隅の赤いマルを押すと表示が出てきます。そこで、聴取者がリモコンの赤いボタンを押すと、さらに追加の情報が得られるという仕組みもできています。
また、時にはテレビ番組に直接参加をするというようなこともできます。テレビの番組によっては、「皆さんの意見をお聞きしたいと思います」というようなこと言って、「ではこの意見についてみなさんの意見を聞かせてください、投票しましょう」というような内容があったとしましょうか。そうすると視聴者は、そこで、例えば赤いボタンを押すことによってそれに参加ができます。
また、オリンピックのようなイベントの場合は、赤いボタンを押すことで同時に放映されている他の競技を見ることができます。
このように、デジタルテレビは、より柔軟な効率的なシステムなので、多くのチャンネルから、視聴者は選択することができます。さらにデジタルテレビの場合、高品質・高鮮明度の画像を提供できます。しかし、障害者にとって、この放送は問題もあります。では良い部分と悪い部分両方ご説明したいと思います。
デジタルテレビについて、障害者にとって、良いところは、チャンネルが増えるということです(スライド5)。そこで、公共放送やコミュニティーテレビ局にとっては、より多くのスペースが使えるということです。障害をもつ視聴者のためのチャンネルが増える可能性があります。また、送信できる情報量も増えると言えます。
そして、より品質の高いアクセスサービスというのも可能になります。例えば、デジタルビデオ放送基準DigitalVideoBroadcastingStandardsに基づくデジタル字幕であるとか、はっきりした文字を使ったより質の高い字幕であるとかです。
また、デジタルテレビのために新しい解説放送基準AudioDescriptionStandardsも作られました。
さらに、現在、クローズドサイニングの可能性と基準に関する調査が行われています。これは、副音声ならぬ副手話というのでしょうか、見たいときに手話が表示できる機能です。通常の状態では、テレビ画面には出ていませんが、リモコンのボタンを押すことでパッと手話通訳の画面が出てくるようなものです。
ダウンズ博士が述べましたように、ヨーロッパの聴覚障害者の数は8,150万人であるという統計がありますが、そこには、軽い聴覚障害から重度の聴覚障害まで含まれます。そこで、ヨーロッパには、新しいデジタルサービスに対する非常に多くの潜在的視聴者いるということになります。また、支援サービスというのは、障害者のためだけのものではなく、すべての人に対するものであるということを思い返す必要があります。このデジタル放送サービスを提供することは、すべての人に対するサービスの質を向上させるのであり、障害者のみに対するサービスを向上させるのではないということです。
実際、多くの放送局がこのサービスに対する考え方の重要性を分かり始めております。EU域内に設立されたヨーロッパの放送連盟EBU:EuropeBroadcastingUnionは、昨年、アクセスサービスについての報告書を出しました。EBUは、EU内のすべての公共放送の上部組織で、ヨーロッパ諸国のBBCのような組織です。
このアクセスサービスの報告書において、アクセスサービスの背景にある技術的な問題について言及しています。また、報告書の中で、アクセスサービスは、番組の付属的なデータではなく、アクセスサービスを中心に据えて番組が作られなければいけないということを明確にしています。
ちょっと私早口になっていました。どんどん早口になってしまって申し訳ございませんでした。もうちょっとゆっくり話したいと思います。
また、この字幕を付けるための費用は、だんだんと下がってきております。これは、新しい技術が登場したおかげです。例えば、イギリスにおいては、事前字幕Pre-recordedSubtitlesは、1時間当たり400ポンドします。ライブ字幕は、250ポンドです。これは日本円に変換するとこのくらいのものなのでしょうか、私ちょっと分かりませんが。この数字に対しては、色々と意見があります。字幕の専門家は、コストは下がってきているけれども、それと同時に質も下がってきているという人もいます。品質は高く維持しないといけないので、ある人は、字幕やその他のサービスに対しては、相応の費用を支払って質を確保すべきであると主張しています。
次に、デジタルテレビ放送に関するヨーロッパにおける問題点を考えてみたいと思います(スライド6)。ダウンズ博士は、ヨーロッパにおいてどの国の字幕、あるいは他のアクセスサービスのレベルが高いかを概観しました。イギリスは特に進んでいる方だと思います。アクセスサービスの提供という意味では最もレベルが高いといって良いと思います。オランダやフランスは、今追いつこうとしているというのが、現状ですが、ただヨーロッパ全体を見てみますと、アクセスサービスは、まだまだ低いレベルにあります。
大きな問題、あるいは、その根本にあるのは何かと言いますと、つまり、ヨーロッパレベルでの法規がないということなのです。放送局が、障害者に対して、アクセスサービスを保障しなければいけないということを定めた法律が、無いわけです。このような法律を作るためには、EUレベルの法律が必要です。そして、各国の法律は、それを補うことが必要です。
アクセスサービスの問題は、特にEUレベルでは非常に新しい問題です。EUに障害者アクセスのための積極的な行動をとってもらうようにすることが、最初のステップです。その第一段階は、少なくとも、アクセスサービスレベルが、各国でどのくらいなのかということを調査することです。ヨーロッパ放送連盟が色々データを集めていますが、アクセスサービスがどれぐらいなのか、各加盟国での状況を調査しましたが、民間の放送局の細かいところまでは、分かりません。
一般に公開されていないデータもありますから、どこの国が、よくやっていているかを指摘することができません。また、どこの国に追いついていただかなければならないかも示すことができません。ですから、ヨーロッパのアクセスサービスのレベルを高めるための第一段階として、どこの国が良くて、どこの国が悪いというデータを集める必要があります。これまで、そのようなデータは、いくらか集まっていますが、完全ではありません。
それから、技術的な問題もあります。私のプレゼンテーションの中でこの点を触れていきたいと思います。先程、ダウンズ博士が何度も説明しておりましたが、アクセスサービスの量が足りません。そこで、私は、ヨーロッパや世界レベルの技術標準についてお話したいと思います。
受信機であるデジタルセットアップボックスは、特別なニーズを抱えた障害者の方々のための機器で、特殊な機能が付加されている場合は、まだ高価で、誰でも買えるというわけではありません。そして、イージーTVという英国の最近の調査では、消費者向けのデジタルテレビは、パーソナルコンピューターより取り扱いが難しいというデータが出ております。その理由としては、スクリーン上のメニューや電子プログラムガイドEPG:ElectronicProgramGuidesが使いにくいことなどがあげられます。EPGは、一日のすべてのチャンネルやプログラムをリスト表示します。しかし、あるプログラムにアクセスサービスがついているかどうかを発見するのは困難であったり不可能であったりします。その理由について見ていきたいと思います。
その理由の一つは、アクセスサービスに関する記号が、ヨーロッパレベルでは、統一されていないということです。かつて、そのような動きはいくつかありましたが、統一には至っていません。
スクリーン上のメニューからコントロールするEPGのナビゲーションは、非常に複雑なものになる可能性があります。マーク博士も申しましたように、英国には、スカイという非常に人気のあるテレビ放映システムがあります。それには、3つの別々のメニューがリモコン上に付いています。それはすぐに見て分かるというようなものではありません。直感的にわかるようなものになっていないのです。そこで、我々は、一個の専用のボタンをリモコン上に設けて、これを押しさえすれば字幕が出てくる、音声解説が出てくる、手話が出てくるというようなものを提案しています。
さきほどのスライドでアクセスサービス向けのDBBスタンダードのお話しをしました。このスタンダードは良いものですが、どの政府もEUも、これを字幕や音声解説や手話によるアクセスを保証するために義務づけていないのです。我々は、それを改善したいと思います。
EUの報告書に「全ての人のテレビTVforAll」というのがあります(スライド7)。これには、指針が含められています。この指針を技術的に必須要件にしていくということが求められています。
これはEUの委員会に出された報告書です(スライド8)。この報告書では、障害者のデジタルテレビへの総合的なアクセスを可能にするために必要な技術的を調査することを求めています。これは非常に画期的な出来事で、初めて、放送事業者、製造業者、障害者の代表と一般の消費者団体の代表が、テレビに関する障害者ための技術的なニーズを話し合って作成しました。技術的な標準にしていこうということを、話し合ったわけです。
また、先ほど述べた技術基準を作成することでこれをどのように実現するかについても話し合われました。このプロセスは2002年のスペインのセビリアの会議で始まりました。そして2003年に最終報告書が出されました。そのWebサイトのアドレスもここに掲げております。www.cenelec.orgセレネックです。セネレックは、消費者のための電子製品の技術標準についての報告書を作成することを職務としています。そこで、彼らは、「すべてのひとのためのテレビ」のレポートの作成を担当しております。
また、ジェリー・スタラード氏が書いたレポートもあります。彼は、以前、テレビ委員会という独立した機関の規制担当者として働いておりまして、この領域において高い見識を持っています。このテレビ委員会は、オフコムができるまで、テレビに関する規制を担当していました。
彼は、現在、RNIDやその他の字幕に関係する企業のコンサルタントをしています。彼のEメールアドレスもここに掲げておきました。もし、レポートを読まれたい方は、彼は、皆様からのコメントも喜んで受け付けると思います。というのは、まだ引き続き勧告を行っているためです。
その報告書は、強制的なものではないので、我々は、そのレポートに書かれた勧告について、現在もキャンペーンを行っています。どんなご意見でも歓迎です。gerry@stallards.f9.co.ukというのが彼のEメールのアドレスです。
この最終報告書にまとめられた中心的なポイントは、表示についての支援サービスです。つまり、字幕、手話通訳、音声解説のようなものです。また、端末の機器に関する勧告としては、障害者が簡単にこれらのサービスを利用できるためことEeasyAccessが求められています。
また、このリモコンについても勧告が行われており、このリモコンのレイアウトも、肢体不自由の方にも使いやすいもの、はっきりしたボタン、適当なサイズなど扱いやすいリモコンにするための要件が示されています。テレビでは、字幕、手話、音声解説などを表示するためにたくさんのボタンを押すことを求めてはいません。
また、電子的番組ガイド、あるいはスクリーン表示についても勧告しています。特に、電子的番組ガイドEPGについての条件の標準化を試みています。これによって、番組にこういったアシストティブサービスがついているかどうかはっきり知ることができます。また、簡単に導いてくれる機能gatewayを持たせなければなりません。もし、私が、画面にEPGを表示しているとすると、画面をスクロールさせ、番組選択プログラム使えば、一日のすべてのテレビ番組に字幕が付きます。また、リモートコントロールのプログラムをクリックすることで、テレビ上でのサービス表示に切り替わります。
相互運用性interoperability、これはちょっと難しい言葉で、ヨーロッパ言語のジャーゴン的な用語ではあります。相互運用性とは、障害にかかわることだけではない、より一般的な内容です。これは、電子装置に関するオープンな標準を設けようとする議論です。全ての装置が、すべてのサービスに対応できるものでなければいけないということです。
もちろん、障害者に対するサービスも含まれます。可能性を言えば、もし、あなたのセットアップボックスが異なる実行形ソフトウェアミドルウェアと呼んでいるを使っているとすると、すべてのアクセスサービスをデコードできないかもしれません。逆に、もし、あなたが、すべてのすべての番組のすべての字幕サービスをデコードできるボックスを持っているとすると、そういったソフトウエアを常に端末上に持っているということになります。
また、録音装置の重要性もそのレポートで述べられています。例えば、イギリスで問題になりましたのは、アナログのビデオレコーダーです。アナログの字幕を録画できるVHSレコーダーは、もう、店では販売されていません。それらは、市場から消えつつあります。もし、あなたが、デジタルテレビにまだ移行していない人で、アナログテレビと、DVDプレーヤーのような古いビデオレコーダーを持っているとすると、テレビの字幕を録画できないでしょう。これは、もちろんデジタルテレビへ移行してまったからです。VHSレコーダーは、デジタル字幕を録画することができないからです。すでに、お話しましたように、もちろん、多くの人々は、いまだに、デジタルテレビに変えたいと思っていません。そこで、録画装置についての勧告では、録画装置はテレビの支援サービスを録画できなければならないということが盛り込まれております。
私の話すスピード大丈夫でしょうか。また早くなってますでしょうか。ちょっと心配ですが。
他のEUの報告書についても、ちょっとお話ししたいと思います。もちろんテレビ、特デジタルテレビ関連の報告書についてであります。最初は、インクルージョン委員会報告書と呼ばれているものです(スライド9)。2003年は、ヨーロッパ障害者年でした。ヨーロッパでは、EUにより毎年テーマが決められています。ヨーロッパ障害者年、ヨーロッパ高齢者年、ヨーロッパ環境年というようなものがありました。2003年というのはヨーロッパ障害者年でした。このテーマは、実際の行動を求めるものと考えられていました。そこで、2003年には、このテーマのもとに、ヨーロッパでは、障害者問題に対するさまざまな行動が行われました。そのうちの一つが、インクルージョン委員会の設置でした。この委員会は、各国の政府代表者から成っております。また、それ以外にヨーロッパ委員会のオフィシャルなどが、メンバーになっております。インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジーICTにおける障害者に対するバリアについて話し合うために集まりました。
この報告書には、デジタルテレビが含まれています。報告書の一つのプラス面は、この報告書がデジタル化による障害者に対する潜在的な利益について述べています。それは、私が、この発表において最初から述べていることです。
また、EUの平均や好実践例を勘案すると、デジタルテレビでは、80%くらいの番組が障害者のためのアクセスサービスを行うべきだと述べています。残念ながら法的強制力はありませんが、そのような勧告がなされたのは良いことです。われわれが行っているキャンペーンで、それが発展することを期待しています。
別のEU法で、今年発効するものがあります。これは、イーアクセシビリティコミニュケーションと呼ばれています。これは、eヨーロッパeEuropeの行動計画です。先程、飯島さんから、イージャパンという行動計画をお聞きしましたが、これも、それと同じような考え方です。その一部に、eアクセシビリティまたは、eインクルージョンという軸があります。
このコミュニケーションは、障害者のICTに対するアクセスをより促進するための、いくつかの公共政策のツールを提供しています。その中には、デジタルテレビも含まれています。この、潜在的な行動には、法律やさまざまなベンチマーキング、つまり、各国の比較をして、アプローチの違いやよくやっているところやそうでないところなどを明らかにすることなどが含まれます。
また、製品の認定も行います。その製品が、障害者にとってアクセシブルであれば、その製品がアクセシブルであることを示すラベルやステッカーを製品に貼り付けます。
また、パブリックプロキュアメントpublicprocurement、これは、政府が、商品やサービスを購入ことですが、この文脈でいえば、国や地方自治体が、これに関連する技術を購入する際には、その技術は、障害者にとってアクセシブルでなければならないということです。これらが、障害者のために対して、まさに、このコミュニケーションが提案しているものです。
英国のデジタル変化について見ていく前に、うまくやっている例としてスペインの例をご紹介したいと思います(スライド10)。現在、スペインでは、アナログからデジタル放送に、うまい形で転換するための行動計画を作成しようとしています。作成に先立ち、彼らは、すでに、障害者のアクセス問題に関するワーキンググループを作りました。そのために、障害者のアクセスは、最初の段階で組み込まれています。このスペインの法律は、電気通信、情報社会、さらに公共サービスや公共空間など幅広くカバーしています。
失礼しました、この法律は、枠組みを規定した法律です。2003年にスペインで成立しました。そのために、障害者のアクセスに関する別の問題をカバーしています。デジタルテレビは、基本法には規定されていません。デジタルテレビに関する要件は、別の下位法により規定される予定です。
私は、スペインは、良い事例であると思います。というのは、スペインは、基本法を導入し、それに基づき、アナログからデジタルへの移行において障害者のアクセスを確保するためにデジタルテレビに関する行動計画を立てることを行っているからです。
先程、ダウンズ博士も申しましたように、2003年には英国でも通信法という法律が制定されました(スライド11)。そこで、私は、あまり細かいことに触れません。しかし、彼の話したテーマとは、少し違うテーマについてお話します。すなわち、地上波デジタル放送局とともに、今回始めて法律に規定されたケーブルテレビ局、衛星テレビ局についてもお話したいと思います。
このパワーポイントの画面にもあるように、同通信法303条は、放送事業者に字幕、音声解説、手話通訳をつけることを要求しているだけでなく、それらのサービスを推進し、利用できることやその利用方法を一般の視聴者に宣伝をしていかなければならないとされています。そこで、次にどのようなことができるかについてこれから少しお話したいと思います。また、字幕サービス推進のためのコマーシャル番組についても紹介します。
ダウンズ博士も触れましたが、解説放送について少しだけお話させていただきたいと思います。英国の解説放送は非常に変わった状況にあります。解説放送は行われていますが、だれも聞けないのです。解説放送を聴くための機器が開発される前にどの程度の解説放送を放送するかが決められたためです。しかし、この状況も昨年改善され、スカイという英国の大きなテレビ放送事業者が、その規格にもとづき解説放送を配信することに合意しました。
また、フリービューボックスというものがあります。これは、地上波デジタル放送を聴くための音声解説放送受信機です。その概観をスクリーンに示しています。これは、ネットジェムという企業が製作しました。
別の新しい機器が販売されました(スライド12)。これは、視覚障害者グループのためのものです。これは、実際には、RNIBの役割だと思いますが、現在、テレビの解説放送の実施率を上げるように要求しています。というのは、通信法は、10年後までに、解説放送を5%に増やすといっているわけですが、字幕と比較すれば、非常に実施率が低いからです。手話についても10%ですので、その半分というレベルです。そこで、視覚障害者のグループは、視覚障害者がよりアクセスできるように、番組の50%には音声解説を入れてほしいということを訴えています。
RNIDでは、通信法に関する様々なキャンペーンを行いましたが、これまでの結果には概ね満足しています。しかし、英国には、まだまだ問題があります。特に、サービスに対する認識や、字幕、手話、音声解説に関する認識です(スライド13)。
先程、ダウンズ博士が、英国には五百万人の人たちが、日常的に字幕を利用していると申し上げました。我々の調査では、そのうちの百万人もの多くの人たちが、字幕がなければ、テレビを見ないと言っています。
また、同じく調査によれば、字幕についてもっと周知がはかられていれば、より多くの人たちが、字幕を利用するだろうという結果が出ています。その理由は、調査結果から、字幕の利用が、年齢階層別に一定しているということです。つまり、我々の調査では、若い聴覚障害者の字幕を利用している割合と、高齢の聴覚障害者が字幕を利用している割合が同じであるということです。しかし、先ほど、ダウンズ博士が申しましたように、人口動態をみると、聴覚障害の発生率は、年齢が高くなるにつれて大きくなります。というのは、高齢者の方が若者よりも高率で字幕を利用するはずだからです。これは、テレビ字幕に対する広報不足が原因ではないかと私たちは考えております。特に、高齢者は、このような技術を用いることに神経質になっていると思われます。
アナログテレビの方が、英国ではまだ主流であった時期に、この調査は行われました。アナログテレビの場合は、字幕を見る手続きは、比較的直接的です。それは、長年にわたって行われてきました。まず、テキストページを選び、888と押せば字幕が出ました。しかし、高齢者は、このやりかたに困難を感じていました。しかし、考えてみてください。デジタルテレビになった場合には、3つのメニューに入るために2つと3つのボタンを順に押さなければならないかもしれません。この認識の問題は、良くなるよりむしろ悪くなっていくと思われます。
昨年、イギリスの消費者団体が、あるパネルのディスカッションを行いました(スライド14)。そしてその中に私たちRNIDも参加し、障害者を含めて弱者コミュニティの人たちのデジタルテレビの問題点について話し合いました。それは、報告書にまとめられており、その結論の一つに、潜在的にデジタル放送は、障害者を含めて、弱者に対して大きな挑戦を押し付けるものであるというものがありました。
また、その報告書では、デジタルテレビに移行する際の費用を補助することに関しても取り上げられています。障害者がデジタル放送に移行するために、デジタル用のセットトップボックスを購入する際の補助が英国では必要であろうということです。なぜなら、英国の障害者の多くは、所得が低いからです。障害者にとって、デジタル機器を購入することは、家計にとって大きな負担になるというわけです。そこで、この報告書では、なんらかの補助制度を提案しています。これは、聴覚障害者のみならず、障害者と高齢者全体を対象としています。実際には、これのための支援プログラムには、1億1千万ポンド必要になると試算もされました。
さらに、この報告書では、受信料の免除についても取り上げています。ダウンズ博士も申しましたように、英国では、テレビを見るために受信料を払っているからです。障害者や高齢者に受信料を免除することです。75歳以上の高齢者と盲人の場合は、現在も、免除されていますが、これをもっと拡大するなり、少なくともデジタル化後もこの仕組みを維持していく必要があります。
さらに、この報告書では、障害者のために、デジタルテレビ機器の価格を下げること、使いやすくすること、はっきりとした表示にすることを求めています。彼らは、字幕、音声解説、手話を必要としているからです。また、彼らは、通常の消費者よりも、これらの機器に関してより多くの情報を必要としています。
さらに報告書では,デジタル放送への移行についての弱者に対する一般の情報キャンペーンに関しても述べています。もちろん、この報告書の内容は、義務化されてはいませんが、英国の法律制定を担当するオフコムに提出され、権威づけられましたので、それは、重要な権威のある報告書となりました。その報告書は、ウェブサイトにもあります。今後、この報告書で示された勧告が、今後、政府とオフコムによって、実現されることを私たちは期待しております。
ここで、字幕やほかのアクセスサービスを放送事業者により推進してもらうための方法についてお話し、それに関して少し助言をしたいと思います。つまり、一般の人々に字幕などをどのように知ってもらうか、そのプロセスについてです。
次のスライドでは、英国のチャンネル4の行っているPRをお見せします(スライド15)。チャンネル4は、英国の非常に大きな民間放送局で、5つの通常の地上波放送の一つを提供しています。そのために非常に多くの視聴者がいます。
このチャンネル4というテレビ局では、これからお見せする字幕にアクセスする方法を取り扱ったPRを4カ月にわたって314回放送しました。これを広告費に換算すると50万ポンドに相当します。また、ごく最近、BBCでも同様のPRをしています。私の知る限りでは、チャンネル4は、この字幕PRを、今でも時々放送しており、2週間前にも見ましたし、人気があるようです。これから、少しこれをみていただきます。
我々は、字幕に関してスクリーン上にも表示すべきであると思っています。英国の殆どの地上波放送局、実際には、すべての地上波放送局が、番組が始まった時に、字幕が利用できますという文字表示をしています。ケーブルテレビや衛星放送についてもこのような表示をして欲しいと思っています。
また、アシストサービスが利用できるときには、その詳細についてアナウンスして欲しいと思っています。そのアナウンスの際には、音声解説、手話、字幕などとのアシストさが活用できるかも言うべきです。
長々と話してしまいましたので、ここでこのPRを実際に見ていただいて、少し、気楽にしていただきたいと思います。ご覧ください。
ちょっとこの説明をしておきますと、これは様々なシーンが出てくる短いPRです。役者が出てきますが、その人達の話している声は聞こえないのです。唇が動くのだけが見えます。BGMは聞こえます。例えば、家の火事のシーンでは、サイレンが鳴っているのが聞こえます。最後の出演者は、何かしゃべっているんですけれども、何も聞こえません。しかし、しゃべっている内容の字幕が出てきます。その内容は、翻訳できると良いのですが、だいたい、「何も聞き逃したくないから。チャンネル4は80%の番組に字幕を付けています。残りの番組についても取り組んでいます。」というような内容です
(字幕PRビデオ放映)
ビデオの中で「888」というのがありましたが、すでに述べましたように、これは、アナログ字幕を表示させる手続きです。デジタル放送の視聴者は、トップメニューからこのように字幕サービスを選択します。実際の手続きは、こんなに簡単ではないのですが、スペースの都合でこうなったようです。また、ウェブサイトにいけば、手話付き番組についての詳しいことを知ることができるという案内が出ました。
先程も言いましたけれども、これは、電子的番組ガイドの例です(スライド16)。すべてのチャンネルが表示されており、それぞれの1日の番組リストが横に表示されています。そのリスト上の一つの番組がハイライトになっていて、それを移動して見たい番組をクリックすると、その番組が障害者アクセスサービス付かどうかがはっきりとわかります。手話付きか、音声解説付きか、字幕付きかが分かるようになっております。
現状では、このEPGは、そういう情報を盛り込んでいますが、標準化はされていません。そのために、Tがテキストの意味で、Sはサブタイトルの意味であるというような表示があります。しかし、これが何を意味しているのかという明確なインデックスがないために利用者が困惑します。そこで、我々は、それを標準化したいと思っております。実際、オフコムが現在それを行っていて、これをアクセスサービス略語と呼んでおり、標準化に関して最も良い方法について意見を求めています。
繰り返しになりますが、このようなメニューのナビゲーションは、もっと使い易くならなければなりません。サービスを利用するためにリモコンの3つのボタンを別々に押すようなことがあってはいけません。例えば、スカイにおいて字幕を表示させるには、「サービス」ボタンを押し、「システムセットアップ」のボタンを押し、そして、「言語」のボタンを押すことで字幕を見られます。テレビに字幕を表示するためには、3つのボタンを押さなければなりません。
このリモコンには、字幕専用ボタンがあります。このようなものがもっと必要です(スライド17)。
イギリス人は、非常によくテレビを見るので、テレビ番組ガイドブックがたくさん発行されています(スライド18)。これらの出版物において、アクセスサービスが利用できる場合の略語は、テレビ番組で使われるものと共通でなりません。その共通化が必要です。
それから、アクセスサービスを促進するもう一つの方法は、受信料の領収書に情報をのせる方法です(スライド19)。領収書の裏面にアクセスサービスの利用方法を記載するのです。
この画面の一番に上に表示されているのは、英国の放送局が作ったリーフレットです(スライド20)。様々な方式による字幕表示の方法のすべてを解説しています。アナログテレビではこう、デジタル地上波ではこう、衛星テレビではこうというように、字幕サービスを利用するためのすべての方法について説明しています。これは、情報を多く入れるために見開きの形になっていまして、二つのサイズがあります。リーフレットに書かれている字幕を表示するまでの長い説明をみてもわかるように、字幕へ行き着くまでにかなり大変だということが分かるでしょう。
また、放送事業者は、ウェブサイトにこの情報を載せるべきです。BBCのウェブサイトには、字幕、音声解説のサービスに関する情報が載っております。全ての放送事業者が、こういう対応をしてほしいと思っております。
それから、製品そのものについて明確な表示が必要です(スライド21)。製品を購入する際、どれが一番自分に合っているのかを知ることができなければなりません。筐体の表面に、この製品はどういったアクセスサービスに対応しているのかという表示が必要です。英国では、最近、政府がデジタルテレビにそれを行いました。
また、彼らは、ティック・マークというのを作りました(スライド22)。このマークは、法律に準拠していることを示します。例えば、マークがあれば、アクセスサービスに関して法律に準拠していることを示しており、字幕、音声解説、手話表示などを利用することができます。字幕の放映時間が一番長いので、字幕が中心のサービスになっています。
うれしいことに私の話はもうすぐ終わりです。あと2枚のスライドがあるだけです。ここで、少し、デジタルテレビを越えて、あるいは、デジタルテレビの一部として、今後適用されるべき新しい技術の発展についてお話ししたいと思います(スライド23)。
生放送字幕livesubscriptionは、生放送に字幕を付けることで、英国では一般的に行われています。音声認識などの新しい技術の発展により、これが、どんどん簡単にできるようになってきました。字幕をつくるのに文字をタイプする必要がなくなったのです。マイクに話かけるだけで、画面に字幕が出てきます。
また、高品位テレビも、非常に高品質の画像を提供します。この技術は、字幕を改善する可能性があります。生放送字幕のための音声認識はもうお話ししました。ダウンズ博士は、バーチャル手話をお見せしました。
BBCと、RNIDおよび通産局department of trade industryが一緒になって、現在、テレビの手話通訳についての規則を開発中です。
インターネット上のウェブが放送において重要になりつつあります。すでにインターネットテレビがたくさんあります。それらが、アクセスサービスによって障害者にアクセシブルになっていることが非常に重要です。英国でも、これが問題になっています。例えば、BBCは、ウェブ上で、映像記録図書館を作ろうとしていますが、それにも字幕は必要でしょう。そのために、次世代のアクセス問題が生じています。
結論として、デジタルテレビは、障害者にメリットをもたらすとともに危険ももたらします(スライド24)。我々は、その利点を向上させなければなりません。ひとつは、テレビのアクセスサービスのレベルを上げていくことです。つまり、もっとたくさんの番組に音声解説、手話、字幕を付けるということです。また、技術標準を作る必要があります。さらに、消費者のための表示がというものが必要です。購入する製品の情報を手に入れることで、視聴者は、このようなサービスを簡単に利用することができます。また、放送事業者は、放送番組やウェブサイトにおいてこのようなアクセスサービスの振興を図る必要があります。
しかし、このような取り組みがなされたとしても、障害者は、変化に対してさらに支援を必要とするでしょう。彼らは、通常の利用者と比べると社会的弱者であるからです。どうもありがとうございました。