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国際セミナー「知的障害者の自立、社会参加及び就労ースウェーデンから学ぶ」

現場からの報告2
「日本における重度知的障害者の地域での日中活動」

社会福祉法人訪問の家「朋」施設長
生田目 昭彦

社会福祉法人訪問の家は昭和61年4月横浜市栄区、鎌倉にほど近いところです。「朋」という知的障害者通所更生施設として誕生しました。(

以前は、養護学校卒業後の活動の場として「訪問の家」という作業所と、「朋」という作業所を行なってきましたが、青春時代真っ只中、養護学校卒業後のことですから、青年たちにとってあまりにも狭い場所でもっと広い大きな場所が欲しかったのが実感でした。ここは横浜の中でも高級住宅地と言われた場所で、やはりというか、反対運動がありました。文化施設ならまだしも障害者施設はこの地域に似合わないと言われました。何度かの地元説明会を行なっていくうちに、朋を応援する会が出来上がり色々な方の力添えで竣工することが出来ました。
ご覧いただいているように、ほとんど同じ屋根の高さで、住宅協定(建築協定)というのが非常に厳しくて、どこも違法建築がないという住宅地の中にあります。この写真は朋のホールです。ホールを作ったのは、やはり広い場所がほしかったということ、それからホールを囲んで部屋を4つ作りました。どこの部屋から出てきても来れるようにと、真ん中に吹き抜けで、この場面は朝の会の風景です。4グループ(今は5グループ)の人達が出てきて、朝「今日は何をする」ということを発表していただいて、それぞれにまた散っていくという状況です。(,

朋に来ているメンバーの状況です。年齢は18歳から47歳までで今年卒業した人たちです。平均は31歳です。在籍年数は一番多いのは、やはり今年20年目を迎えたのですが、18~20年という方が多いです。以下はスライドに書いてある通りです。食事の介助はほとんどの人38名が全介助、2名が半介助という状況です。(5)

それから名前としては、知的障害通所厚生施設というものでやっているのですが、中身としては、重身、もしくは重度重複の方たちが来ていますので、どうしても医療が必要な人達が多い状況です。
次に医療の状況ですが経管栄養は16名、気管切開5名、胃ろう5名と医療の関わりが必要な方が多くなってきている現況です。大島分類では1の人が38名、2の人が2名、5の人が5名、10の人が1名で超重症児7名、準超重症児3名の現状です。(デイサービスの方も含まれているので少し数は多いです。)超重症児・準超重症児というのは、スコア表があってそれを使った数なのですが、酸素を使ったり、吸引をどれくらいの頻度で行っているかということで、スコアが出ています。(6)

朋の中に診療所が併設されています。これは回診で回ってきたときの様子です。

小児神経の先生が日常的にメンバーの健康管理や時には処置も行なって頂けます。これは写真用に撮らせていただいたのですが、この人は経管栄養、気管切開をしています。

以前は呼吸状態が本当に悪く、来ても日常的に健康管理で一日が終わってしまう感じでしたが、気管切開をしてからはとても落ち着いており、先日は看護師同行で箱根に1泊旅行に行ってきました。今の日中活動はジャムつくりをしています。この人は、経管ですが胃より先に腸までのチューブになっています。

呼吸状態が極めて良くない状況の中で、鼻から出ているチューブ(青い線の入ったチューブ、カインドチューブ)エアウェイを確保しているという状況です。この方の日中の活動は和紙染めですが、ただし本人がこの状態ですので、本人が染めるわけではなく、染めたものを良い悪いの判断を瞬きで教えてくれます。この人は胃ろうにして落ち着いてきた人の一人ですが、(これも写真用にと取らせてもらったものですが)以前、チューブを付けていて、何度やってもチューブが取れてしまうということで、呼吸の状態と摂食の状態があまりよくなかったので胃ろうというふうにチェンジさせていただきました。

朋の中では今、ご覧になったようなメンバーさんがいらっしゃいます。グループ別の活動として、ここにあがっているようなクッキー作り、ジャム作り、和紙染め、アルミ缶のリサイクル活動等を行なっています。
また、外出としてはさきほどの旅行もそうですが、近隣への外出、目的を持った外出、遠距離(目的を持っている)等の外出をしています。

この場面はアルミ缶のリサイクルの回収先でのひとこまです。
歩いている方、車椅子の方が一緒なんですが、近所の方がこのようにして暖かく迎えていただけるという現況があります。

この写真はアルミ缶のプレスの作業風景です。

彼女の手は、横に動かすことは割りにできる(範囲は狭いです)が、本人はすごく楽しみにしていて、ある程度の数をこなすと、自分で「おしまい」と教えていただきます。
この場面はジャムつくりの作業をしているところです。果物を刻むときや煮込んだときの果物の匂いや混ぜているときの手の感触など(体験し)、作っていきながら販売をしていくのですが、手でできる人は一緒にやっていきます。

この場面は小学生が和紙染めを手伝いに来てくれ出来上がったものをチェックしている場面です。目線は和紙染めのほうにいっているのがわかると思いますが、右側のほうにあるオレンジ色のしっかり染まったものを見て、これがOKかどうかチェックしています。

この場面も同様ですが少し上目遣いで子供が染めたものを見ているのがわかります。

この場面はクッキー作りで粉をふるいにかけている場面です。彼は少し手が動くのでその手を使って、ボールの中のふるいを動かしていただいています。

この場面は生地を混ぜている場面です。ちょっとカメラ目線になっていて、しっかりと手元を見ていない、という話になったのですが。彼の手もどちらかといえば硬縮して固まっている状況なんですが、なぜかこのハンドミキサーを使うとしっかりと手がそこに入っていくという感じにやっています。

この場面も同じくハンドミキサーなのですが、この彼女もの場合、手を使うことは中々難しい状況で、体の側部に来てしまっていて、手を出すということが非常に厳しいです。ただ、ボールの中に目線が行っています。この人が気持ちをそこに向いているか否かということが大事なことではないしょうか。我々はこれが活動に参加しているというふうに捉えていくようにしています。

この場面は何となく本人の手が使えそうで目じりをあげて見ていますが、こういう手の使い方はできるのですが、いざ道具を使ったりという場面では、なかなか使っていただけないということで、目の前で伸ばされる生地をしっかりとチェックして行く係りをしています。朋としてはこれも参加しているという形で捉えていくようにしています。

また外に行った場合や日中の活動(作業以外でも)は、作業をしていくだけではありません。先程も外出の話をしたかと思いますが、この写真はカラオケに行ったときの様子です。
真ん中の彼は、めったに笑顔を見せてくれないのですが、本当にみんなで楽しんでいる様子です。この写真は職員も一緒に楽しんでいます。(前の施設長が一番のっているのではないか、というくらいです)

次に地域のお祭りで神輿が朋の玄関前まで来てくれている場面です。

皆が何かしらの形で地域に参加できないのかと、地域の人が考えてくれ、それではみこしがいくのはどうかということに10年以上前になりました。
私たちが障害のもっとも重い人たちと接する中で何を大事にしていかなければならないのかといえば、我々ができることは限られていると思いますが、きっとこの笑顔ではないでしょうか。

これは、近所のお祭りが、近くの公園に行って盆踊りをするなど、その中に入っている場面です。

1人1人が違って当たり前でありますが、笑顔は本人が「快」(不快ではなく)の状態のときにしか出ないのではないでしょうか。この笑顔を消さないように活動の展開や家の中をどうするかを日々見つめなおしていきたいものです。

今回「働く」というテーマでしたが、先ほども打ち合わせで言いましたが、本人がこれを働いているかどうか、と感じているかは微妙な問題ですが、みんながもっている「働き」としては意味のあるものだと感じています。

どうもありがとうございました。

※( )内の数字はスライド番号を表す。