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国際セミナー「知的障害者の自立、社会参加及び就労ースウェーデンから学ぶ」

パネルディスカッション
知的障害者の自立・社会参加及び就労」

司会:それでは、パネルディスカッションを始めたいと思います。まず初めに、パネリストを右からご紹介いたします。
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所障害福祉研究部長の、河村宏さんです。情報の専門家でございます。次に、先ほど現場からの報告をいただきました生田目さん。それから現場からの報告ということで三橋さん。そして、スウェーデンからの招待者、レイフさんと、インガーさん。そしてコーディネーターとしまして、基調講演をしていただきました藤井克徳さん。
それでは、バトンのほうをそちらにお願いします。よろしくお願いいたします。

藤井:はい。ずっと報告が続いていますが、これから報告者に河村さんを加えまして、5人でパネルディスカッションを進行していきます。
まず、三点ほどお断りさせていただきます。
一つ目は、フロアとの関係については、あらかじめ質問用紙をお出しいただきました。たくさん来まして、おそらく精一杯頑張っても1割強くらいかと思っています。誠に申し訳ないのですが、特に日本人については個別に聞いてもらったりということをお願いしまして、極力、共通項を探っていきまして、そこで深めていきたいと思っています。あらかじめ全員にお答えできないということはご了解ください。
二つ目は、せっかく今日はインガーさんとレイフさんというスウェーデンからのお客様をお招きしました。この時間を使って、お二人を中心に精一杯展開していきたい。しかし、今日デビューを飾った三橋さんもいらっしゃいますし、それから生田目さんもこういう場では今まであまりお話されていませんでしたので、精一杯マイクをまわしていこうと思っています。
三つ目は、これから4時40分までなのですが、それ以上の延長はできませんので2時間ちょっとで進行していきますが、少し長丁場なのですがノンストップで進行してまいります。それから、進行の仕方なのですが、最初にインガーさんとレイフさんは日本の状況を報告とか、一昨日福祉工場「朋」と大田福祉工場を見ていただいております。昨日も友人に会ってもらっています。等々を含めて、日本の、聞いた範囲での感想を出してもらう。
また、三橋さんと生田目さん、河村さんについては、それぞれ今日うかがった報告を元にして、また感想などを言っていただく。特に河村さんは相当、情報環境を含めてスウェーデンとは往復していらっしゃいます。少し、感想に加えてコメントをいただければということで、3分間程度、全員から感想をいただきます。これがまず第1ラウンドです。
そしていよいよ本論なのですが、本論は大きく分けて三つ。一つは、スウェーデンの共通面。いくつかあります。どうしてもこれは聞いておきたい。ディスカッションを、しっかりと共通理解しやすいためにも、最低聞いておきたい点がいくつかあります。これをうかがおうと思っています。
二つ目の柱は、インガーさんからお話があった、あるいは生田目さんからお話があった、重い障害を持っている人々の活動。ここを少し考えていきたいと思っています。
その次に、就労ということ。雇用ということですね。ここに少しウェイトを置いて考えていきたい。その過程で、今日は社会参加、就労ということ以外に、自立もあったはずではないか。本当に重い人の自立をどう考えるかということ、こんなことも深められれば、深めていきたいと思っています。
最後に、おそらくもう時間がないかもしれませんけれども、お一方ずつまた感想をいただくというようにして進行してまいりますので、皆様方もご協力をしていただければと思います。では早速ですね、私に一番近いところから、インガーさん、レイフさんとマイクを持っていただきますので、3分間ほど、日本の状況を見て聞いて、どういう感想をお持ちになったか、いかがでしょうか。インガーさん、よろしくどうぞ。

インガー:皆さまのお名前をちゃんと発音できるかどうかわからないのですが、どこに行くのか、何を食べるのか、何をするのかといった基本的な行為においての障害者のニーズというのは、日本でもスウェーデンでも同じだと思います。ただ、制度そのものを比較するのはかなり難しいと思いますので、その部分は後でお話できればと思います。
二つ目に、三橋さんのお話なのですが、かなり緊張されていましたけれども、私自身も非常に緊張しているのは全く同じですので、そういう意味ではいいプレゼンテーションだったと思います。若い人たちはパソコンですとか、そういったものがお好きというのはスウェーデンでも同じです。例えばリサイクルですとか、環境に対する配慮ですとか、そういうものに対しては是非これからもいい活動をお続けいただきたいと思います。
そして、生田目さんは、現場からのご報告ということで、素晴らしいデイセンターだったと思います。それからアルミの回収、クッキーやジャムを生産されているというのも、とてもいいと思いましたし、重度の障害の方たちが多いということで、やはり経管栄養などの介助が必要な方たちをたくさんみておられる。非常に、正しい方向性をとっていらっしゃると思いますし、私は非常に感銘を受けました。
まだここに来て1日しか経っていませんので、1日では本当に不足ですね。もう1日くらい、是非日本で過ごしたいと思っております。ですので感想と言っては本当に限られたものになってしまうのですが、それではアルムさんにお渡ししましょう。

藤井:アルムさん、レイフさんとお呼びしましょう。よろしくお願いします。

レイフ:はい。私は障害者の雇用、能力開発をやっておりますので、昨日訪問して見せていただいたことなどは大変参考になりました。やはり障害者にとっては、雇用、就労ということは非常に基礎的な根本的な社会参加ということになるわけです。ですので、本当に我々は共通項がたくさんあると思いました。違いももちろん、システム的なものはあります。これを1対1で比較していくのはちょっと難しくて複雑な要素があると思うのですが、ここで見聞きしたことは確かに、ニーズがあるということです。デイリー・アクティビティ・センターとか授産施設、作業所、そして開かれた雇用というものを我々は目指しているわけですが、ここにある継続的なプログラムをしていく、いろいろなレベルのサポートをしていく、さまざまな異なった一人一人のニーズ、能力に応えていくことが必要だと思います。
また一方で、三橋さんのお話にもありましたように、障害者が選択肢を持つ、そしてその中からさまざまなことを自分で選べるということが重要だと思いました。先生のお話の中で法定雇用率のお話がありましたが、スウェーデンにはそういった制度はありません。しかしながら、法定雇用率というのが設けられるかどうかという話をしたことはあります。しかし、法律のもとで働くというのは、ある特定の定義が必要であるし、より障害そのものに焦点を当てていくということになってしまう。人々がどんな能力を持っているのかということよりも、障害の内容、その分類に焦点が当てられるようになってしまうが、我々の話の中ではありました。
そして、藤井さんのお話の中にあったのは、政策的なもの、あるいは財政的な話でしたが、いろいろ政治家と話をしたり、意志決定者と話をしたり、あるいは社会・経済的な観点からこの問題をとらえたときに、社会の利益になるかどうかということもそうですし、コストを下げることができるのか、それではケアのほうはどうするのかという話、いろいろな議論が取り交わされました。私の意見はこのくらいでとどめたいと思います。

藤井:はい。それでは、先ほど言いましたように、本日のセミナーにデビューして先ほど素晴らしい報告をしてくれた三橋さんにお伺いしたいのですが、伊藤園という話が出ていましたよね。この伊藤園とゆめ工房との関係、伊藤園とはどういう関係なのかというのと、伊藤園には友だちがあまりいなかったけれどもゆめ工房には友だちがいるんだ、ということも言っておられたけれども、そこをもう少しお話していただけませんかというのも入っていましたので。三橋さん、全体の感想に加えて伊藤園のことをちょっとお話ししてくれませんか。

三橋:感想から。スウェーデンの人が国の責任でもって会社をやってくれるのがすごいと思います。日本では考えられないと思います。伊藤園とゆめ工房の違いですが、ゆめ工房を利用していて、伊藤園だけだといろいろなこと、相談とかは、伊藤園だけだとたぶんないと思います。ゆめ工房に行くのが大切だなと思います。これで終わります。

藤井:おそらく会場の方も聞きたいというのがあると思うんですが、今、伊藤園とゆめ工房の両方に行ってるんだけど、月々だいたいの月給はどれくらいもらっているの?

三橋:だいたい伊藤園で7万5,000円くらい。ゆめ工房からは、合わせると8万くらいになるかならないかです。

藤井:8万前後ですか。では、ほとんど伊藤園なんだね。それから、三橋さん、年金はどうなっているの?もらってる?もらってないかな?

三橋:年金は……あまり僕にはわからない。

藤井:そうですか。では今は、8万円ほどのお金を使いながら生活してるんですね。では、次行きましょう。生田目さんお願いします。

生田目/私は、スウェーデンも行ったことがないので、話を聞いていたら、行ってこないといけないかなというのと、うちに来ていただいたとき、うちのようなメンバーの人たちが、グループホームや地域で暮らしているという話をインガーさんがされたようで、私はちょうどその場にいなかったのですが、「そんなの当たり前」という話をして帰ったそうなんです。「それを聞いてきて」と職員に言われてきました。それで、今日話を聞いて、LSS法について、後で話があるかもしれないんですが、1条(3)に、「普通の状態ではなく多くの補助またはサービスがないと一般的な生活を送るのにきわめて困難な重度心身的障害を持っている人」、という定義的にされている部分があって、そこが、いつも重心、重度重複と言われている人って増えてきているし、皆さんのところでもきっとあるんだと思いますけれども、どこも引っ張ってこれないような部分があったり、どうしていいのかということが気になっていました。レイフさんの話の中で、直接ではないですけれども、仕事ということで個人をすごく尊重することを今もおっしゃっていましたけれども、なかなか、個人を尊重する、「個」に光を当てるようなことというのは難しいというか、一般的にも、日本の中で、なかなか口に出してというのは、言ってはいても実際はどうなのというところがあるような気がしてならなかったのですが、スウェーデンの方に言葉で言っていただけたというのは、すごく心強いというか、今やっていることが我々がやっていることもどうなのかなということも改めて再認識させられた気がしました。

藤井:河村さん、感想やコメントがあったら合わせていかがでしょうか。

河村:今日は非常に具体的にスウェーデンでの話が聞けて、とてもよかったと思うのですが、特にサムハルが、これは藤井さんが最初におっしゃった中で、「流動性」というお話をされているんですが、そのことに関連して、一回サムハルに入って、そこを通過点として一般雇用にいくんだということで、25年の歴史の中で、最初は1%ぐらいが一般雇用にいっていたが、今では多い年には6%ぐらいが移っていくという成果をあげておられる。つまり、具体的に、サムハル自体、素晴らしい企業だと思うんですが、その中の雇用に限定せずに、一般企業に出ていける人は一般企業に出ていくということをもう一つ先の目標にしているということが、藤井さんの最初の問題提起に関連して、素晴らしい実践だと思いました。
それからインガーさんの発表の中では、地域で暮らすとき、それぞれの特徴あるグループ作りをして、そこで自分たちの状況にあった創造性というものを自ら楽しみながら、地域で暮らすということを支援していく様を今日ご報告いただいたのですが、私から質問として付け加えると、地域で暮らすためのインフラの部分で、いわゆるアクセシビリティということもあるが、もう一つは地域で得られるサービスの中に、先ほどまだ触れられていない部分があると思いました。
例えば、発見隊という役がありますが、毎日のニュースに相当するものは、わかりやすいニュース、例えばテレビの番組とか週刊のわかりやすい新聞が出ていると聞いています。それからeasy to readと訳されていますが、わかりやすい出版物は知的障害の人や聴覚障害の方たちも使っていると聞いています。わかりやすい出版物やデジタル・トーキング・ブックとか、いろいろな社会的インフラがサービスとして提供されている中で、そういう活動もいきいきと行われていると思うのですが。そのあたり、社会インフラとのつながりと、医療的支援が必要になった場合には医療保健ネットワークとどういう連携がなされているのか。具体例なども挙げていただければ、よりわかりやすくなると思いましたので質問を付け加えさせていただきます。

藤井:では本題に入っていきます。数字を見ていて、偶然ですが、「クローネ」はお金の単位で14倍と。1クローネが14円。だから1時間7クローネいただける、これは手当なのか、給料じゃなさそうだ、となると何なのか。7クローネが100円/1時間。もう一つ、同じ14倍。人口は900万人。日本は1億2,600万人。ちょうど14倍。お金も14倍、人口も14倍。だからサムハルはスタッフが2万4,000人。おおざっぱに14倍、ああ30万弱かと考えていただくとイメージが膨らむかと思います。お金の14倍と人口の14倍。
さて、共通理解をしておいた方がよい情報として、レイフさんに質問いたします。スウェーデンでは障害の定義ですが、日本人は定義にこだわりすぎる傾向もありますが、障害というものをどういうふうに定義づけているのか。国全体として、あるいは自治体で個別にあるのか、定義はどうか。これに加えて、日本は医学モデルといって医師が診断したり、医療の検査で定義していくのですが、定義をどのように決めていくのか。これが一つ。
もう一点は、サムハルは国営の企業と聞きましたが、これはサムハルだけなのか、これに類似した企業がスウェーデン国内にあるのか。だいたいサムハルに集約しているのか。
定義の問題と、サムハル的企業は一つだけですか、連合体を作って一つだけですか、という質問。
それから先ほど河村さんがおっしゃった点、我々はインフラとか社会資源というと、すぐに働く場、住まい、人による支えとなってくるんですが、もっとベーシックに情報の保障。このへんは本当に障害者が選択する上で大事な要素なんですが、情報とか必要な資料の提供はどんなふうにされていますか?この三つの質問にお答えくださいますか。

レイフ:ありがとうございます。三つの質問がありましたね。まずは障害の定義です。スウェーデンの場合は、誰が、あるいはどのセクターで障害について話をするかで定義が若干変わります。例えば労働市場政策プログラムでの定義はまた別の定義があるのかもしれません。私たちは、公共雇用サービスを提供しているわけです。もし、ある人に障害があり、そして不便があるとする。その場合は障害雇用サービス局という国の機関がありまして、そこに登録する形になります。その登録するための要件を満たしていれば障害があると見なされるわけです。もちろん文書も必要です。機能障害であればどういう障害があるのかどういう不便があるのか、メディカルケアが必要であればどういうものが必要なのか、これらを雇用サービス局に届けます。仕事を見つけるのが難しいということであれば、これを届け出ます。場合によっては、知的障害かもしれませんし、精神障害、あるいは身体障害、それから先ほどプレゼンテーションの中でも言いましたが飲酒、薬物乱用の障害、これも障害として認められます。
それからインガーさんがお話になるかもしれませんが、その他に重度の障害と見られる人もいます。この人たちは特に、重度の障害者に対する法律というのがあり、そういった人に対して支給されるべきサービスはまた異なってくるのです。
スウェーデンでは統計局というものがありまして、2年おきに国民に対して「あなたには障害があるかどうか」という質問をするのです。国民はそれに対して障害の有無を答えます。そしてそれが自分達の生活に影響を与えているか、自分の雇用あるいは仕事に影響を及ぼしているかについても答えます。さらに、障害といってもどういうレベルなのか、どのくらい重篤なものなのか、それによって仕事の可能性が妨げられているのか、日常生活に影響があるのかも問われます。それを国としてデータをまとめています。
二つ目のご質問ですが、今のところはサムハル社だけと言っていいと思います。つまりこういうサービスを提供している国営企業としてはサムハルだけと言っていいと思います。ただ最近、新しい傾向としまして、これはスウェーデン議会で現在審議中のものがあるんですけれども、それ次第では今政府ではこういった提供会社を増やそうというのがあるのです。ですから小さな協同組合のような形で自立・自助を促進していく形のものが今後、増えてくると思います。現在はサムハル社が唯一のものですが、今後はこの分野で増えてくると、そしてそれが政府側の意図でもあるというのは事実だと思います。そういう意味では、多様なニーズがある。つまり様々なサポート、様々なサービスをいろんな障害を持った方たちに提供するには多様なニーズがあるのですから、その担い手が増えてくるのは喜ばしいことだと思います。
三つ目の質問、情報提供についてです。藤井さんがおっしゃるのは、いわゆる一般的な情報へのアクセスということだと思いますが、スウェーデンでは「メインストリーミング」という言葉をよく使います。実はヨーロッパ議会でもよく使われる言葉なのですが、メインストリームというのは、社会のあらゆるセクターが障害を持つ人たちに対して、それがもし公共交通であれば、障害者たちがきちんと料金をチェックするような情報提供をすべきだと。それからメディアやテレビも、いろんな障害を持った人は、それらマスコミへのアクセスは難しいわけですから、様々なセクターが障害者に対して情報提供していく、そしてメインストリーム化することが大事だということです。これについてはインガーさんが何か加えてくれるかもしれませんが。

藤井/共通編ということで、これもたくさんあったのですが、スウェーデンにおける所得保障、特に年金について。月に直すとどれくらいか。インガーさんに年金のだいたいの額を含めて、年金の額をうかがいましょう。
加えて、デイセンターを対象にする方々、あるいはデイセンターの方が自分に合っているという場合、その基準は何かあるのか。言い換えれば、ヴェスタブロプラン・デイセンターにいらっしゃいという基準はどんなふうに考えていらっしゃるのかをうかがいたい。年金と、デイセンターに入る場合の基準。
三点目に河村さんが言われた、重い障害になればなるほど特に医療・保険との連携が大事なのですが、その医療と保険の関係性。ご自分の地域の例でもいいし、スウェーデンの国策全般でもいいですし、医療や保険と地域福祉、社会サービスとの関係性はどうかということ。まずうかがってみましょう、三点、よろしくお願いします。

インガー:一つ目、年金の金額ですね。これは社会保険庁からのものなのですが、だいたい1万クローネくらいではないかと思います。ただこれも、何歳なのか、20歳か60歳かで月額が変わってきますので、一概には言えないと思います。それからこれについては課税対象となりますので、そこから税引きということになります。
二つ目のご質問ですが、デイセンターに行く場合ということで、精神障害や知的障害を持っている場合ですが、当然、診断を待たなければなりません。ただ、子どもが小さい場合には、なかなか異常があるかの判断は難しいのですが、親の目で見て何か問題があるという場合には、医者の診断を待つことになります。さまざまな検査などを受けることによって、何が不足しているのか、どういう障害があるかという一種の判断を待つことになります。ほとんどの子どもたちは、そうした精神障害、知的障害があった場合には、精神科医による診断を受けてからデイセンターということになるかと思います。
それから、医療的なところと保険との関わりということですが。私も医者に行ったら治療費は払わなくてはいけないのですが、そこで払う金額は、障害を持っていてもいなくても変わりません。ですから医療費については同じなんです。治療費については。ただ、日中に投薬・服薬が必要な場合には、市町村、地方自治体、郡の評議会などの責任になります。そこがちょっと問題なんですが。区議会などの責任ということになります。同じ社会サービスということではまったく同等で、障害を持っているからといって特別扱いはされないということです。

藤井:インガーさんはもちろんスウェーデン人なので、母国語はスウェーデン語ですが、実は今、英語で非常にご負担をかけていまして、僕らの質問がわかりにくかったかもしれません。
では角度を変えます。Aさんという人がいた場合、さあサムハルに行こうか、いやデイセンターに行こうかというとき、レイフさん、本人のニーズだけで「デイセンターにいらっしゃい」というのか、ニーズに加えて、何か障害程度を見る基準はあるのでしょうか?レイフさん、いかがですか?

レイフ:まず、雇用サービス局に接触します。そして、雇用サービス局のほうで就労機会があるのかどうか、労働市場プログラムに参加できるかどうかを見てくれます。市町村との連携をそこでとっていますので、例えば就労機会がないということになりますと、それは市町村に引き継がれて、デイリーアクティビティをするかどうかという話になるわけです。ただ逆に、個人の側から市町村に対してデイリーアクティビティが自分にとっていちばんいいという判断をすることも可能です。その場合には市町村と直接協議をしてOKであれば受け入れられます。また、LSS法からの関係もありますので、そこである程度の基準というものもあると思います。ただ地方自治体、市町村レベルでの責任範囲はかなりはっきりと決まっています。それから雇用サービス局も。かなりさまざまな大きな機関が関わっています。ですから、その谷間に落ちてしまうということももちろんあります。例えば政府の予算や、あるいはうまく当てはまらなくて雇用サービスあるいは社会保険の責任ではないかということで、うまくはまるところがなくて、谷間に落ちてしまうということもありますが、かなり広くカバーしています。そういう意味では極力、個々人の負担にならないように調整や連携を進める努力をしています。社会保険や市町村や雇用サービス局などで調整することによって、個人が一人でいろいろなところをたらい回しになったり、自分で行かなくてもいいようにはしています。
そうした複数の機関をどのようにうまく調整していくのかというのは今でもまだ継続中で、いわゆるワンストップショッピングのように、個人は一カ所に行けば、そこが調整・連携が取れていて、どこが一番いいのか、ニーズに合わせて、社会保険庁に行った方がいいのか、デイリーアクティビティの方がいいのか、あるいはわが社に来た方がいいのかということをワンストップショッピングでできるようにしたいと思っています。

インガー:そうですね。一人ひとりが各自治体に申し込みをするのですが、自分で申し込み をするわけです。よろしいですか?

藤井:日本人のパネリストの皆さん、もう少しお待ちください。ここからいよいよ話を深めていきます。まず、就労、雇用のことを少し深めてまいりましょう。話を発展させていく上で、質問用紙の事項をまとめてみました。
まず一点目は、サムハル社に対して、宿命的な矛盾があるのではないかという質問が来ています。すなわち、サムハル社の大きな目標として、一つは一般労働市場にたくさん移行させるということ。もう一つは、サムハル社自身の生産性を高めるということ。一般就労、労働市場にいく方々はおそらく熟練した方々やたぶん労働能力が高い方々ではないか、一般論として。そうすると、生産性を高めていくこととの関係は、どんなふうに統一しているのか。これは実は日本でも同じ課題にぶつかっているのです。今日、冒頭の基調講演でも言いましたように、授産施設やそれだけでなく小規模作業所も1%なにがししかできていない。その点で、生産性を上げていくという市場課題と、たくさんの人を労働市場に送っていくという課題をどう考えているのか。
二つ目。これもいろんな切り口は別として、6%ほど労働市場に移行している。これは日本からすると高い数値だという印象を持つんですが、特別な戦略を講じたのですか?特別な方法を開発したのですか?何かヒントがあったらお話いただきたい。この二つから入りたいと思います。レイフさん、いかがでしょうか。

レイフ:おっしゃるとおり、それは矛盾とも言えると思います。会社として物を生産していく一方で、訓練した人々がそこからいなくなるということですから。ただ私たちはこういうふうにしています。つまり、常にトレーニングをしていくということがまず必要です。そしていろいろな種類の職種に対応できるようにするということ。その人が他のところに移った場合、もちろん生産性は下がるわけですが、そのときに従業員を補充する、同じぐらいの能力を持った人を補充することができるよう、常に心がけています。サムハルである種の仕事をし、また、違った種類の仕事にも挑戦するという形で、サービス業に行けるようにする、あるいは製造業に行けるようにする。それは難しいことではありますが、いくつものステップを通ってサムハルでその技術を身に付けていただくわけです。
例をお話しします。もしある人がサムハルの従業員で技能を獲得したとします。そのとき小さな作業チームがあり、その中にグループリーダーがいます。その責任感があるひとがいなくなるというとき、その人が他の労働市場でどんな仕事を受けることになるかにもよりますが、その人が今までと同じグループリーダーのような立場につけるかどうかはわからないわけです。サムハルではグループリーダーだったのですが、一般の労働市場でどういう位置づけになるかはわからない。そのとき、我々が強調しているのは、練習をすること。他の労働市場にいってもそこで練習をして、12ヶ月の猶予期間があります。他の会社に就職できた場合も1年間であれば戻ってくる権利があるので、積極的に試してみなさいと言えるのです。なかなか労働市場は厳しいので、仕事を失いたくない人はたくさんいるわけですが、ここに戻ってこられることを常に言うことで、彼らを勇気づけることができるということです。
また生産性に関して言えば、我々がフォローしているわけです。そのフォローの中で、トレーニングや他の労働市場に行ったときのサポートやフォローをしていくということです。それを目標としています。経済的な目標、数値的目標もそうなのですが、ワークショップをしたときによい仕事をしているかを見るのですが、結果を出すということが重要です。
先ほどの二つ目の質問、「移行」ということで言えば、6%は高いということですが、今年は5%を上回っていくと見ています。いろいろな雇用プログラムをまず開発することが必要です。それが一点目です。人々を支援し、サムハル以外のところでも実戦で活躍できるようにするプログラムですが、そのときに大事なのは、他の雇用主との良い関係を築くということです。サムハル以外のところでどんな労働力を必要としているかというのはそれでよくわかります。良い関係性を築くことが大切です。他の雇用主とビジネス関係を築くということが大事で、こういう人が必要なら何人ぐらい送りましょうと言えるわけです。雇用プログラムの話や賃金の補助金の話もしましたが、サムハルを去るときにその人に対して補助金を出します。民間企業や公的サービス業につくことがあるのですが、最初のときには新しい雇用主に対する補助金を出すことも実施しています。

藤井:レイフさん、サムハル社は日本の関係者の間では大分有名になってきていますが、肝心のスウェーデン国内で、先ほど経済界との関係も作られつつあるとおっしゃっていましたが、スウェーデン国内での市民権、知名度、これはどのように感じていますか?客観的に見て。

レイフ:サムハルにずいぶん関わっていますので、私が客観的に見ることは難しいと思うのですが、先ほどの質問にも出ていましたが、これまでこの分野では唯一の企業がサムハルだったのです。そして今日では、この分野でもっと提供者を増やそうという意見もあります。つまり、いろいろな個人的なニーズや能力に合わせるということを国としても考えているわけです。政治の話になってしまいますが、もっと競争を持ち込もうという考え方です。サムハル社のようなところをもっと作ろうということが議会に提案されたりしています。私たちは直接、政府からお金をもらっています。来年からは公的雇用サービス局というところからもらうことになります。ということは、そこから他の企業にお金が行くということも考えられるわけです。その意味では、この分野での競争ということもスウェーデンも考え始めているわけです。そして新たな可能性として、サムハル社が今後は他の種類のサービスを提供する、一時的雇用されている人をより開かれた市場にもっていくとか、あるいは他のサービスを提供するということ、それがまさに多様性につながっていくと思います。数年後には、もう少し小規模な、我々のような会社が登場してくるのではないかと思います。
我々がどう認知されているのかということに関して言えば、サムハル社はいろいろこれまでの経験やこの分野における知識がありますので、それは認められていると思います。ただ、我々に代わるようなところも作ろうという話もあるということです。そして確かにサムハルが経験や知識を相当蓄積しているということは十分に知られているということは言えます。

藤井:インガーさん、デイセンターからサムハルに移行するという事例は、インガーさんのところのデイセンターを超えて一般論として、たくさんあるのか。つまりこの質問の背景には、デイセンターとサムハルの距離に開きがある、障害程度で感じられる。やや二極化というか。デイセンターから移行するかという数を聞くとイメージがわきますので。実績なり大まかな数ではどうでしょうか。デイセンターからサムハルへの移行ということです。
二つ目は、インガーさん自身がサムハル社の活動形態、実践についてどういう感想を持っておられるか。サムハル社に対するインガーさんのご感想です。この二つを質問したいのですが。

インガー:まずうちのデイセンターからサムハルへ移動する人はないです。ですが反対にサムハルからうちの従業員になる方たちはいらっしゃいます。年齢を経て、サムハルで仕事をしていたときほど生産性がもう発揮できないという方たちは、私たちのセンターのような施設に移ってくるということはあります。
その場合はもちろん、以前サムハルでいてもいなくても、通常な手続きを取り、申請すれば私たちも受け入れるということです。私たちのデイセンターからサムハルに移行した人がいないか、それは分かりません。他のセンターからはいらっしゃるのかもしれませんが、うちのセンターからサムハルへの移動はなかったです。
次の質問、私個人がサムハルの活動についてどう思うかなのですが、この1か月レイフさんといろいろやりとりをする中で、私自身、サムハルからいろいろと学ぶことができました。
サムハルで働いている人たちとも知り合いになったり、その人たちを見てみると、サムハルの従業員の方たちに、サムハルがいろいろな選択肢を提供しているということがよくわかります。それほどいろいろお話はできませんが、あまり知らないというのが事実ですが、サムハルが非常に多彩な選択肢を提供しているということはすごいなと思っています。

藤井:たくさん聞いてきたのですが、このコーナーは就労、雇用ということをメインにお話しして、ここにいるメンバーで言うと、レイフさんと、今日は日本人を代表して三橋さんを軸にお話をしようと思っているのですが。ここで少し、どうですか、三橋さんや生田目さんや河村さんから、これを聞いてみたいとか、自分はこういうことを知っているので言ってみたいとかいうのは、いかがですか?

河村:一つ質問があるのですが。

藤井:はい、どうぞ。

河村:河村です。今、雇用のことが出たのですが、次に今日の基調報告にありました教育に関して、例えば絵がもっと上手くなりたいとか、サムハルで少し専門的な研修も受けたいとかいう時に、いわゆる専門的な教育機関、あるいは大学のようなものを活用されることはあるのでしょうか。またそういった所は、特に知的障害のある方たちをどのように受け入れているのか、例があれば教えていただきたいと思います。

藤井:では、これはレイフさんからお答えいただきましょうか。

レイフ:私たちの自前の研修プログラムもありますが、もっと基本的な研修の必要がある場合もあります。障害のある人たちにとって、特に労働市場、雇用市場でチャンスを得るためには、研修やトレーニングはとても重要になると思います。特に生涯教育の重要性を私たちは重視しています。サムハルの従業員を例に挙げますと、今日雇用されていない、今日は仕事がないという人たちはやはり、教育レベル自体が低いということも言えるんですね。これは一般的な話ですが。ですから、障害を持つ人たちがもっと雇用にアクセスできるようにするためにも、教育や研修が重要になってきます。もちろん、サムハルでの自前の研修もいたしますが、その他の例えば大学とか、専門技能について別の所で教育をする場というのもあります。もしサムハルの従業員の中でもっと職業技能訓練が必要だということであれば、雇用サービス局がサポートすることもあります。
こういった雇用サービス局が、開かれた労働市場に障害を持つ人たちがアクセスできるようにするべく、仲立ちをするというケースもあります。スウェーデンの場合いろいろな支援がありまして、高等学校、高等教育機関に紹介するようなこともしています。いずれにしても職業技能訓練とか、いわゆる学術的な勉強、教育とか、これは継続的に行う必要があると思います。将来を見据えても、本当にそれは重要なことだと思っています。

藤井:よろしいですか?

河村:はい。インガーさんにも同じ質問なのですが、先ほどグループの一つが新しいものを見つけるとか、あるいは絵を非常に中心にやっているというグループがありました。必ずしも高等教育と言わなくてもいいと思うのですが、やはりそういうことについて専門に講習をやっている外部の機関のようなものが、障害、特に知的障害のある人たちを受け入れているような例がもしあれば、教えていただきたいと思ったのですが。

藤井:インガーさん。

インガー:そうですね、民間の組織あるいは施設で、消費者をターゲットにしたプログラムを行っている所はあります。ですから、障害を持っている人たちの場合でしたら、市町村に例えばリクエストをするとか、あるいは民間のプログラムに自分で申し込むという可能性はあります。

藤井:三橋さん、この雇用について、三橋さん、今ですね、ちょっとこれが働くことで困っているんだという何か問題はあります?困っているんだがなあ、とか、これは相談したかったということは、何かありますか?

三橋:特にない。

藤井:ない。給料は満足していますかね。

三橋:いや、満足はしてないんですけど。

藤井:してない。お休みはとれるの?

三橋:お休みは、言えばとれる。

藤井:とれるか。それでね、せっかくレイフさんたちもいらっしゃるから、何か自分が困っていることをぶつけてみたい、というのはない?考えていてくださいね。
生田目さんはどうかな?この雇用関係でちょっと、生田目さんが中心でないことでも、雇用関係で何か質問はありますか?

生田目:うちの施設ではなく、隣に同じような施設があるのですが、そこは知的障害の人も心身症の方も、重心の方も、いろんな方が一緒に来られている所で、三橋さんじゃないんですけれども、伊藤園ではなくて近くの特別養護老人ホームに実はアルバイトみたいな形で行き始めたのが2年ほど前から始まっているんですね。知的障害の人がどんなことができるんだろうかという中で、今、ある意味内々の会みたいになっているのですが、できるところからということで、特養さんから声をかけていただいて、今4人ほど、ベッドメイクとかお掃除とかで働きに行っています。お給料はそんなによくはないというか、そんなにまだもらえないかなというくらいのところなのですが、我々としてというか、うちの中では、もちろん一般就労とかに繋がっていけばいいなと思うのですが、その前段階が結構長いかなという気がしている現況なのです。

藤井:レイフさん、わかりましたか?

レイフ:今、生田目さんがおっしゃったことは、実際に我々がやっていることとすごく近いと思うんです。つまり、特養あるいは老人ホームというのは一つのセクターですので、我々がそういった高齢者に対するサービスということで、先ほどもご紹介しましたけれども、日本と同じようにスウェーデンでも高齢化社会が進んでおりますので、そういった対老人、対高齢者という意味でのケア、あるいはサービスのニーズが非常に拡大してきている。ですから例えば、洗濯の手伝い、食事の用意といったようなところから、非常にいろいろとやらなければならないことがある。やはりそういう意味ではビジネスチャンスと言っていいと思うんですね。つまり、障害のある方たちにとっては、一部の方たちにとっては雇用機会になると思いますので、それは歓迎すべきことだと思います。

藤井:ご質問、ありますか?

三橋:コミュニケーションといいますよね。スウェーデンはどうなんですか?

藤井:つまり、コミュニケーションが、三橋さんと企業のほうではかれない、うまく取れない場合にどうしているのかということ?自分の思いが伝わらなかったり、あちらからガーッと言われてみてよく理解できなかったりということがある中で、障害を持った人と企業との関係なり、スタッフ、従業員との関係でね。コミュニケーションというのはとても大事なことだと思うのですが、言語障害があったり、知的障害があったり、精神障害があったり、うまく話せない、うまく受け取れない、これはどうかな、両方に関係ありますが、レイフさんのほうから行きましょうか。このコミュニケーションの支援。

レイフ:障害者自身が労働組合に入っているという場合もあります。これは通常の、普通の労働組合に組織されているという場合もあります。そうなってくると、労働組合からのサポート、つまり組合員の一人ということになりますので、全く同等の権利を有しておりますので、労働組合側からのサポートということで、雇用主との意思疎通ということもサポートされる場合もあります。それも一つのやり方だと思います。スウェーデンの労組というのは、ご存知かも知れませんがかなり強力ですので、そういう意味では障害者にとっては大きな味方になっている。つまり組合員であればそれがプラスになるということはあると思います。また、組合員として組織されることによって、障害者自身が知識ですとか、あるいはこういった態度をとるべきだということで、労働組合内で教育されているというのは一つ、答えとしてご提供できるかと思います。

藤井:二つ三つ、代表してレイフさんにうかがっておきましょう。
一つは、このサムハル社は、期限があるのですか?何年間とかね。あるいは定年までずっといたかったら働けるのかという期限の問題が一つ。
それから、サムハル社は基本的には労働法規、労働に関する法律が適用されていると思うのですが、それによって、日本では最低賃金というのがありますが、うかがうところによると標準賃金というふうになるのか、その賃金の規定なんかは保証がどうなっているのか、ということですね。
それから、同じくですね、希望したら、皆さん入れますか?そういう点では入りやすさについて聞きたい。
期限の問題と、賃金の基準を中心に、労働法規適用だけれども、賃金の基準はどうなっているか。それから、希望したら入れますか?希望したら入れますか、という背景には、発達障害、アスペルガーなんかの人たちも入れるんですか、という意味もこめられた質問でした。このへんを、ちょっと端的にお答えいただけますでしょうか。

レイフ:まず、最初のご質問ですが、どのくらいいられるかということですが、現在、その限度年というのはありません。ですので、定年までいられるということです。通常は、65歳というのが定年ですので、65歳まではいられるということになります。ですから、サムハルも同じ定年年齢ということになっています。もう少し、定年については弾力的な運用があってもいいのではないかというのが一般的な労働市場の論争としてされておりますので、今後変わるという可能性はあります。それから将来的に、サービスの多様性という話が先ほどからもありますが、これまでも小規模なプロジェクトですが、限定的な長さ、例えば1年間なら1年間だけ、サムハル以外の所で勤めてみるというプロジェクトが立ち上がっています。ですから、そういったものも今後は増えていくのではないかと思います。
労働法の制約、つまり最低賃金ということなのですが、最低賃金というのはスウェーデンでは定められておりませんし、そういったものを決める法律というのもありません。ですからさっきの労働組合の話と関わるのですが、非常に労働組合が強いというのがありますので、かなり雇用主と労働組合との間の団体交渉でいろいろなことが決定される場合が非常に多いんですね。サムハルについても同じことが言えます。従ってそういった団体交渉ならびに団体合意というところで物事が決められていく。ですからそこでも最低賃金が枠に入っていくということはありますが、ただそれは、法律では決められておりません。
三つ目ですが、知的障害を持った人たちへの門戸の開放ということなのですが、最近の問題としては、かなりその、組織再編ということをしなければならない。つまり、製造業のニーズが減ってきていることで、製造業からサービス業へのシフトを図らなければならない、それに対する対応を図らなければならないというところの、我々のほうの組織的な体制づくりというところでかなり苦戦しておりまして、そういう意味では新規採用があまりできておりません。ただ、サービス業でのニーズが高いというのは事実ですから、そこにおいてやはり、適切な人材を求めていかなければならない。そして、知的障害を持っていて、サービス業ができる人たちというのはかなりいるんですね。同時に、重度の身体障害を持った場合ということになると、サービス業というのは適性としては若干落ちるかも知れない。そうなってくると、工場や製造業でそういう人たちに対して仕事を求めていかなければならないということはあります。

藤井:今、2万2,000人の障害者、2,000人が非障害者で、合計2万4,000人と。労働組合への加入率は、ほとんどが労働組合に入っているというふうに理解してよろしいのでしょうか。

レイフ:そうですね、80%くらいが入っております。

藤井:これは意味があるかどうかわかりませんが、およそ平均の年間の障害者の従業員さんの賃金というのはどれくらいか。わかる範囲でいいのですが、年間で言うとどうなりますか?クローネで結構です。

レイフ:サムハルでですか?だいたい、1万5,000クローネくらいでしょうか。

藤井:220万~230万円くらいですね。約200万円ちょっとですね。
それから、このコーナー最後の質問になりますが、実はレイフさんと私たちは交流があるんです。それはWIという、ワークアビリティ・インターナショナル。サムハルも非常に有力なメンバーシップなのですが、今ずっと聞いていてわかりますように、日本の授産施設とはずいぶん違います。いわゆる、日本では保護雇用とか社会雇用とか言っている、シェルタード・エンプロイメント、あるいはソーシャル・エンプロイメントということでやっていらっしゃる。日本では、現状でシェルタード・ワークショップ、つまり授産施設が非常に数多くになって、非雇用の就労の場を作っている。率直にレイフさんから、このシェルタード・ワークショップ、授産施設とか小規模作業所に関する印象、感想、意見があれば、このコーナーで最後にいただけますか?

レイフ:私はあまり日本の授産施設に詳しいわけではありませんのでお答えしにくいのですが、ただ、サムハルでの経験を鑑みますと、こういう見方もできるのではないかと思います。ビジネスを開発していく、より商業的な活動をしていくという時に、小さな授産施設では問題があるということです。つまり、ビジネスをしていくということを主眼としたときです。そこで、みんなが結託することで違うやり方を目指していくことができるのではないかと思うのですね。授産施設間をまとめることで強力になっていく、そこに市場を見いだす、その市場に対して共通のリソースを提供できるということです。藤井先生の話の中にもありましたが、インターナショナルなレベルで我々はワークアビリティ・インターナショナルという組織を通じて協力しているわけですけれども、国際レベルでの協力もどういうふうにして始まったかというお話ができると思うのですが、藤井先生が理事会、そしてヨーロッパのグループのワークアビリティ・インターナショナル、イギリスや他のヨーロッパの陣営などいろいろあるわけです。そこにサムハルという会社もあるわけです。
このワークアビリティ・インターナショナルというのは、1987年に始まりました。意見交換、自分たちの経験の情報交換をしようということで始まりました。各国の様子はどうなっているのかということを学ぶということだったのですが、現在はヨーロッパのグループで、商業的、ビジネス的な面を検討していこうとしているのです。もちろん、やらなければいけないことはたくさんあるわけです。中国など賃金の低い国に労働力が流れているという問題ももちろんありますし、授産施設における生産性の問題なども取り上げていますが、今特にヨーロッパでやっていることは、国際レベルで企業間で何かできないか、協力してよりグローバルな市場に打って出られないかということを考えています。ということは各国の市場、そして全国の市場を見ていったときに、小さなワークショップでは十分ではないので、より経済価値を高める、生産性を高めるという意味で、あるいは賃金の交渉をするにしても、団結し協力していくということが市場に出ていける一つの方法ではないかと思っています。

藤井:はい。たいへん難しい質問にお答えいただきまして、ありがとうございました。
今までのお話は、高い生産性を、個人個人のニーズや能力に合わせていかにそれを保証していくのか、大事にしていくのかということでした。一方で、高い生産性ということよりは、やはり健康を維持したり、あるいは生活のリズムを確立したり、仲間と触れ合ったり、しかし社会人としてきちんと参加をしていきたい。スウェーデンでも様々な試行錯誤がある中で、今、デイリーアクティビティということがLSS法の中に位置づけられ、デイセンターがそれを具体化する場として今頑張っていらっしゃる。
そこで、インガーさんに二つばかり、これも質問が出てきているのですが、アクティビティという活動が中心なのだけれども、重い障害者にとって働くということはどういうふうに考えたらいいのか。簡単に言ってしまえば、働くことはちょっと無理をしないで、活動、アクティビティということでいいのではないかという意見なのか、いやいや、重い障害者もなにか働くということを探求できるのか。デイセンターの実践、経験から、この活動というものと労働というものの関係を少し言及していただくといいのかな、と思います。
それからもう一点の質問、これもたくさん出てきたのですが、デイセンターを支える制度的なバックアップですね。具体的には、インガーさんのところを例に挙げて、何人の従業員、つまり僕らは利用者とよく言うのですが、今日ここでは従業員とおっしゃっています。障害を持っている従業員がいらっしゃって、何人のスタッフがいらっしゃるのか。しかも正規職員で。そのスタッフの大まかな職種というのは、何かあるんですか?これを中心に、デイセンターを支えていく制度上の基盤で、皆さんにご紹介しておきたいということがあると思うので、これをお話ししていただきたい。

一点目は、活動と労働という関係をどんなふうに見ているのかというのと、デイセンターの制度上の支援ですね。デイセンターの制度の大きな枠組み、特にスタッフの数と職種、これを質問いたします。

インガー:まず、お答えしたいと思いますが、デイリー・アクティビティ、日中の活動ということですけれども、偵察隊と、発見隊というのがいるわけですね。彼らにとってはこれが仕事なのです。通常はお昼前に一つの活動をする。そして、お昼は1時間半とります。ここで栄養をとって、そして清潔にしなければいけないというので、だいぶ時間がかかるわけですね。朝の会議の中でも非常に重要なのは、みんなが座って、そして意思疎通をするということです。これが非常に重要ですね。今日は一日何をやっていくのかということを伝えます。そして、毎日同じことをするのであればいいのですが、その日に何をしていくのかということを知るわけです。この活動というのは仕事ではないのですけれども、例えばケーキを焼くとかいうときにも、日本の施設でやっていらっしゃるのと同じです。マッサージとか、実際に手で触って何かするという活動も少なくとも週に一度はやっています。仕事的なものは毎日あるわけではありませんが、このグループは車椅子で外に出て、週に2~3回そういった散歩を楽しみます。それも彼らの活動ということに、日中の活動ということになります。そしてリラクゼーションルームのようなところで彼らの感覚を刺激するという時間を設けます。音楽を聴いたり、あとは電動車椅子もありますので、それはセンサーが付いていて、ちょっと手を触れる、あるいは頭を触れるだけで自動的に動く車椅子があります。
さらに、もう少し個人的なアクティビティといえば、自分独自のスケジュール、自分独自のアクティビティを計画するというのもとても重要だと思っています。これもまた仕事ではないかもしれませんが、障害が非常に重度な場合には、このくらいのレベルでもやはり、当事者にとっては充分な活動、充分なアクティビティであると言えると思います。
それからもう一点、どのような制度上の支援、サポートがあるかということでしたね。今現在、18人のスタッフが私の施設で働いています。そして、従業員が30人。さらに、5人のパーソナル・アシスタントという人たちも協力してくれています。食事をするときの世話とか、その他、従業員の身の回りのお手伝いをする人たちですね。そして、先ほども言いましたが、従業員は7つのグループに分けられておりまして、各チームにスタッフが2人付いています。そのうちの一人が作業療法士、もう一人が教師のような人ですね。そのような感じで皆さんのお世話をしています。

藤井:人口との兼ね合いもあるのですが、もしおわかりであれば、インガーさんにもう二つ質問しておきます。まずデイセンターはスウェーデン全体でどれくらいの数があるのかというのが一つです。
もう一点、こういう質問があります。1時間7クローネということなのだけれども、これは従業員さんから不満はありませんかという。つまり低すぎるという不満がありませんかというのがありますね。
それからもう一点は、やはりスタッフの力が大事なのだけれど、スタッフの力を高めていくための研修や、その他の方法は何か、どういうふうにやっていますか?
スウェーデン全体のデイセンターの数と、7クローネ、時給100円という、これへの不満がないのかというのと、それから、職員、スタッフの研修、力をつける方法、どういうふうにしていますか、というこの3点にお答えいただけますか。

インガー:残念ながら、スウェーデン全国に何カ所のデイセンターがあるかはちょっとお答えできません。よろしければ、調べてまたお答えできると思います。
もう一つの質問、賃金については、確かにそういう質問もあってもっともだと思います。地元の組合の支部ですかね、こういった組合支部が定期的にミーティングを催しておりまして、いろいろな交渉やリクエストはそこで吸い上げています。去年は時給が5クローネだったんです。それがその後6クローネになり、6.5クローネになり、今の7クローネになっているんです。この時給については、やはり地方自治体で異なるというのも事実です。ストックホルムの場合は、実は平均では6.5クローネです。それからうちの従業員の賃金は、やはりその人たちのスキルとか仕事の内容によって異なってきます。
今現在、スタッフはこれ以上欲しくても手に入らないくらいぎりぎりの状況でやっております。

藤井:あと、職員、スタッフの研修システムですね。力を高めていくためにどんなふうにしてやっていらっしゃるのか、うかがえますか。

インガー:トレーニング、どういうことをおっしゃっているのでしょう。スタッフに対する教育ですか?もちろんそういうこともしていますよ。トレーニングはしていますけれども。EUから、そういった研修や教育のプロジェクトを企画してもらい、そしてそれに従って行っています。

藤井:デイセンターに携わろうとするスタッフは、特別な資格なり特別な教育機関を経て来ているのですか?あるいは、デイセンターに着任した後に定期的な研修などは行っているのですか?たぶんそういう質問だと思うのですが。質問として来ていますのは。

インガー:うちで働いている介護者たちは、特殊な教育、最低高校卒業レベルの教育は受けています。高校に相当する3年間の教育は受けていますね。皆、きちんと教育を受けた人たちが働いてくれています。

藤井:例えば日本では、作業療法士だとか理学療法士だとか、あるいは先ほど河村さんから質問があったように医療との関係では看護師さんを置きましょうだとか、あるいはPSWという社会福祉士のような人を置こうとか言われていることもあるのですが、特に職種で、こういう職種を置かなければならないというような決まりはないんですね?OT(作業療法士)を何人置かなければいけないとか、PSWを何名とかいう決まりはないんですね?

インガー:そういう規則はありません。もちろんバランスのとれた人材配置というのは必要だと思いますが、規則として決まっているということはありません。

藤井:6.5クローネか7クローネというのは、これは賃金と解釈するのか、それともこれはストックホルム市からくる奨励金というか、頑張りましたねということでくるのか、このお金の性格は、もしわかればで結構ですが、どんなふうに理解したらよろしいでしょうか。

インガー:これは賃金というよりも、給付とお考えいただければと思います。これは課税対象ではありませんので、言わば給付ということでポケットマネー的な性格を持っている、自由に使っていい可処分所得ということになります。年金もありますし、ですので市町村によっては、この給付については今言っている6クローネなり7クローネなりの給付分を撤廃しているところもあります。実際、ストックホルムでも10年くらい前はこれでかなりもめたという経緯があります。撤廃しようとしてもめたのですけれども、それをですから最終的には非常にもめましたのでまた元に戻したのですね。

藤井:先ほど確か、負担金も発生すると。本人が毎日行った場合に、確か25クローネ。これは本人の年金から払うのですか?あるいは家族が払うのですか?

インガー:自分たちで払うことになります。
この1時間毎に6クローネということで給付が出るということになりますので、それほど大きな金額ではありませんが。ですので、誰が負担するのかということは、人によって違うのですけれども。

藤井:おそらく、日本でも「朋」をはじめ、また各地でこの点はようやく試行錯誤だとか、あるいは国レベルというよりは自治体レベルで様々、民間との協力でこの分野を開拓しつつある。
まず生田目さんから率直に、改めて感想でもいいし、質問でもいいし、自分のところとの比較でいかがですか?

生田目:はい。そうですね、やはりさっきの医療の質問を河村さんの方からしていただいたのですが、日常的に先ほどお見せしたように、医療が24時間手放せないような場合とかが、我々にとっても一番気になるところで、繰り返しになってしまうかも知れないのですが、日本だとそういうバックアップがないとどうしても、外に出ていくこととかがなかなか難しいという形を、どのようにしていらっしゃるのでしょう。それによって多分活動の範囲というのはすごく広がっていくと思うんですね。そういうところを、他もいらっしゃると思うんですけれども。それから、年齢が上がってくると、先ほどあったように、本当に知的障害の人でもやはり医療はどうしても離れた関係ではないというところ。そのへんで、教育から始まって、教育と福祉と医療との関係みたいなところが、いつも気にはなっているのですが、そのへんで何か、こんなのが、というのがあれば教えていただければと思います。

藤井:はい、インガーさん、どうぞ。

インガー:確かに問題だと思います。医療的なケアが非常に高い、そして年齢が高くなればなるほど、例えばうちのセンターではそういう限度年齢は設けていません。ですから100歳の人でもいられるのですが、やはり区議会の担当であるということがスウェーデンでは問題なわけです。つまり医療的な部分は区議会の担当であり、私は地方自治体、市町村レベルで仕事をしている。そういう意味では何かもう少し法制化が必要だと思います。例えば、てんかん発作を起こした場合に救急車を呼ぶのか、5分、10分とそれを待つことができるのか。例えば呼吸困難などの問題があると。ただその場合、先ほど申し上げました通り、責任の所在が明確ではないんですね。医療部分は区議会に与えられている、我々の部分は市町村であるということになりますので、誰がそこの部分の責任を持つのかということが、例えばうちのスタッフに対しては、医療ケア部分の責任をとりなさい、と言うことはできません。当然看護師でもありませんし。

藤井:例えば、経管栄養だとか気管切開という人がいるかどうか。僕が去年行ったときには、そこまではいなかったと思うのですが。地域の病院とか診療所なんかと一緒にケース会議をやったり、あるいは職員が一緒に研修をやったり、そういうことでの連携というのはあるのでしょうか。

インガー:はい。そういったニーズがある場合には、各区の看護師というのがいまして、その看護師の人たち、地域の担当の看護師、それから担当医師がいます。そして私たちが、こういうニーズがあるということを、例えば病院に行く必要があるとかですね、そういう時に対応してくれるわけです。毎回、特殊なニーズを抱える個人がいて、一人一人に対して解決策が違うという場合があるわけですが、特に病気になった場合にはこれはとても問題になります。

藤井:はい。三橋さん、おそらくゆめ工房グループの仲間の中にも、うんと重い障害を持っている人がいると思うのですが、このコーナーで、特にインガーさんにこんなことを聞いてみたいというのがあったら、ちょっと考えておいてくれますか?河村さん、どうですか。いかがですか、少し重い障害を持った人の地域での暮らし、デイセンターに関して、コメント、あるいは質問はありますか?

河村:たぶんスウェーデンの地域の医療のシステムについての基礎的な私たちの情報が共有されていないのですが、医療になったらカウンティの責任、日本で言えば県でしょうかね、それは県がやるんだというようなお答えで、スウェーデンの方はそれでぱっとわかるのでしょうが、そこがどういうふうになるのかな、というのはもう少しお聞きしたかったのですが、それはまた別の機会に調べてみることにしたいと思います。
特に地域との関係で私がもうちょっと知りたいなと思いましたのは、先日、別のインガーさんという方が日本で講演をされまして、その方はTPBというところの方なのですが、その方がおっしゃるには、本を読めない大学生が特別の国立図書館の録音図書のサービスを利用していて、2,000人、そういう学生さんがいるという報告をされていたんですね。その本を読めない学生さんたちのうちの多くは、目は見えるけれども本が読めない。だから特別な資料を提供されます。先ほどの、三橋さんがコンピューターにとても興味があって、コンピューターのことを使えそうな職場なのでゆめ工房を選んだと言われたのですが、やはりこれからも、日本でも知的障害のある方たちがコミュニケーションや、あるいは情報を得るために、地域のいろんな機会を活用して社会参加していくということがどんどん多くなると思うのですが、その部分をもう少しお話いただけたらと思いました。

藤井:インガーさん、いかがですか?

インガー:読むことに障害を抱える人たちについての質問ですが、私、その障害を抱える知人がおります。しかし、これはLSSで直接的にカバーされているというわけではないのですが、録音図書というお話が出ました。これはスウェーデンにはたくさんあります。それから、障害者がつづりが書けるようになるコンピューターもあります。また、簡単に読みやすい形にした図書というのもあります。それから新聞、これは「エイトページズ」と呼ばれる新聞です。毎週センターに来る新聞なのですが、これは8日間という名前が付いているのですが、なぜそういう名前になったのかはわかりませんね、1週間は7日間なので。でも、これはやはり識字障害、あるいは印刷物を読めない人たちのための簡単な新聞ということです。それ以上は私もあまりたくさんは知っていないのですが。

藤井:はい。では三橋さん、何か質問はありましたか?

三橋:特にないです。

藤井:それでは、こうして議論をしてきますと、私もよく感じる視線が一つあるんです。サムハルの実践というのは一つの大事な形だと思うんですね。と同時にデイセンターも、デイリーアクティビティを中心とした場として大事だ。しかし、もっともシンボリックなのは、かたや15万クローネ、年間で。二百何万円。かたや、おそらく年間に直しても、それこそ1万クローネに行かないと思うんです。そんなに差がついていいのだろうか。つまり中間の層にいる障害者はどちらかしかないのか。これは日本でも大変難しい問題で、日本でも同じ課題があるのですが、最後になりますがレイフさん、このサムハルかデイセンターかということで解決するのか、今後その中間層を含めてもう少し別な道が考えられるのか、レイフさん個人の見解でもいいのですが、いかがでしょうか。

レイフ:賃金の補助金というプログラムが一つあります。これを利用している人はたくさんいます。金額の多少はありますけれども、また大企業、小企業の違いはありますが、個人個人の状況ももちろんあると思います。賃金の補填を受ける人たちとか、ですね。新しい活動というのがあります。例えば、中小企業で新たに立ち上がったところなどもありますので、デイセンターからサムハルへの活動というものを考えると、そこから一般の市場に出て行ける人たちが、新しい仕事であると思います。

藤井:インガーさんは、今の私の質問で、デイセンターとサムハルとの距離が余りにも大きいのではないか。スウェーデン自身がなにか新しい戦略を考えているのか、あるいはインガーさんご自身が、どんなふうに将来の方向を考えているのか、ちょっとコメントをいただけますか?

インガー:デイセンターというのは、特に重度の障害者、そして軽度の障害者もいるわけですが、少額の保険しか貰っていないという人もいまして、その人たちがサムハルで就労しようという時にはサポートが必要なわけですね。私のデイリー・アクティビティ・センターにはいないのですが、誰かが、今おっしゃったサムハルとデイリー・アクティビティ・センターとの隙間に落ちてしまったということであれば、それは非常に残念なことだと思います。
そういう隙間があってはならないと思いますし、そこを埋めていかなければならないと思っています。その隙間をできる限り小さくしていかなければならないと思っています。
デイリー・アクティビティに参加するというのは、LSSの中でも特定の定義を受けた人たちということなので、いわゆる精神障害と診断されたという人たちの場合は日中の活動というのがもう少し提供されるべきであると思います。法律で保障されているわけですから、大きな精神病院等の場合は、20年、30年前にはそういう人たちを抱えていましたし、そういうグループの中でオープンな活動というのは限定されていました。大きなニーズがそのままになっていたわけです。

藤井:時間がまいりました。もっともっと深めたいこともあったと思うのですが、是非スウェーデンに行かれたらいいと思うんですね。しかしそうは言っても、私自身も今日、新しい情報、資料を耳にしました。
最後になりますが、本当にもう1分間ずつのコメントになりますが、河村さんから順に一言ずつ、最後の感想でもコメントでも、いかがでしょうか。

河村:わかりました。一言で申し上げますと、実はスウェーデンには私どもがこれから、ポリシーとして学んでいきたいことのほとんどがあるというふうに私は思っていますが、実は今日いらしたお二人とも、非常に具体的に自分たちの実践を、非常に客観的に語っていただけたと思います。バックグラウンドの違いというのは非常に日本との間で大きいので、そこの部分はこれから私たちが自分たちで、スウェーデン全体が医療とか保険とか、あるいは社会的な障害についての意識がどういうふうになっているのかを補いながら、これから消化していくと、今日のお話は今後どうしていくべきかというところに非常に生きてくると思います。どうもありがとうございました。

藤井:では、生田目さん。

生田目:はい。ここに来てよかったと思っています。自立支援法もどちらかというと就労、働くということを非常にクローズアップされていて、私たちがやってきたことというのはやはり表には出てこない、少数のところだなあ、というのを改めて思ったのですが、でもこれが守れないようであっては絶対にいけないというのを思っているので、先ほどもちょっとお話しましたけれども、「働く」と「働き」と、両方あっていいのではないか、人にはやはり生まれてきてその人がやることというのがきっとあるだろうというふうに思いますし、そのことに繋がっていければいいなというのを、今日スウェーデンのお話も聞いて、私は大変勉強になりましたし、いつか藤井さんに連れて行ってもらおうかなと思っていますけれども、本当にありがとうございました。

藤井:本日、デビュー戦を飾りました三橋さん、一言、感想をいかがですか?大分、あがったかな?

三橋:凄く勉強になりました。ありがとうございました。

藤井:これは、勉強になった、よかったなあという印象はありましたか?

三橋:勉強、なんというのかなあ。

藤井:みんな頑張っているなあ、とか。

三橋:うん。

藤井:いっぺん、スウェーデンに行ってみたいという気持ちになったかなあ。

三橋:はい。なりました。

藤井:是非、行けるといいね。だいぶ遠いけどね、貯金して。ではですね、はるばる来ていただいたレイフさんに、短いコメントになりますが、最後に1分間ほどお願いします。

レイフ:まず、こんなに大勢の皆さんが、ましてこんな日曜日の朝からセミナーに参加してくださって、本当に感動しました。スウェーデンではなかなかあり得ないなと思いました。このことは、社会的参加、そして雇用の機会、それから自立、障害者のこういった問題を皆さんが重視していることの表れだと思います。また、デイ・センター、授産施設、社会福祉工場、こういったものについて我々がもっと注目する、あるいは焦点を絞る視点が変わりつつあるということは共通だと思います。また、障害のレベルによってどんな規模の、どんなレベルのサポートが必要であるか、やはり個々に応じたものを考えていく必要があると思います。また、雇用については、これからも新たな道を探っていくことが必要だと思います。ありがとうございました。

藤井:遠方から来ていただきましたインガーさん、初来日だったのですが、一言コメントをお願いします。

インガー:そうですね。日本には初めてまいりました。これで最後にならないことをまず祈っています。私の主人も、次回私が日本に来るときには僕も連れて行ってくれと言っていましたので、またお邪魔したいと思います。
LSS法に基づいたサービスは、やはりコストが上がったということで、なかなか導入に関しても問題があります。コストがどんどん膨らんでしまっていて、苦労はしておりますけれども、しかしやはりデイリー・アクティビティ・センターのクオリティ、質を上げる努力はこれからも続けていきたいと思います。非常に素晴らしい一時を皆さんと共有することができました、ありがとうございました。

藤井:時間となりましたが、一言だけ私のほうから、本当にありがとうございました。
実は私への質問として、自立支援法に変わっていくのだけれども、これに関する質問がずいぶんありました。それからもう一つ、今日聞いていて、午前中の中で「自立」というのは一体何だろうかと、私はこのことは非常に深めたいと思っているんです。私は少なくとも自立はインデペンデンスだけではないと思っています。今日はこのことが多くは語れなくて申し訳ないのですが、もっとここには深い意味があると思うんですね。
等々、今日はこのことは割愛させていただきました。今日は極力、お二人の来日者を中心に展開してきたつもりであります。
今日、おわかりのように、実は今までの研修会というのは、雇用は雇用の分野だけとか、あるいはデイセンターはデイセンターだけということで、分けて議論してきた傾向がありました。しかし、これをやはり併せて検討していく、つまり個別の、独自の課題はあるのだけれども、なおかつこれを包含して見るという視点が大事だろうということで、今日は敢えてこの2つを併せて議論する、しかし討論としては一応区分けしていきながら、この分化と統合ということで、そういう趣向を取らせていただいたわけです。
折しも、障害者自立支援法の大きな法律の変化がある中で、やや遅ればせながら、しかしヒントがありました。自立支援法が、国会で来週と言われていますけれども、しかしそれがどうなろうと、障害を持った方々の実像が、あるいはニーズが変わるわけではありません。依って立つべきは、障害を持った人たちの実態、そしてニーズですね。午前で言うと、今後のわが国の法律の推移を見ていきながら、またこの問題には国境はないはずです。是非こうしたことを縁にして、スウェーデンとも一層の交流を深めて行ければと思います。
最後にこういうことを私は言葉として贈りたいのですが。
変わらないのは過去と他人。でも、変えられるのは自分と未来。是非、我々は今の状況を固定化せずに、やはり自分も変わっていくし、また日本の実践も制度も変えていけるし変わって行くんだということを考えなくちゃいけないと思っています。
同時通訳をしていただきました加藤さんと、名前を覚えていないのですが、3人ですか、大変難しい通訳をお願いしました。私の隣には、アシスタントの山口さんに今日は来ていただきました。
そして、インガーさんとレイフさん、三橋さん、生田目さん、そして河村さんに大きな拍手をもって、この会を終わってまいります。どうもありがとうございました。

司会:たくさんの質問をいただきました。質問を藤井さんのほうで見事にまとめていただき、ありがとうございました。それでは、閉会の挨拶を、財団法人日本障害者リハビリテーション協会、片石修三常務理事からいたします。

片石:本日は参加いただきました皆さま、1日ありがとうございました。それからスウェーデンのお二人を含めまして、登壇していただきました皆さま、大変長時間、難しい役割を果たしていただいて、本当にありがとうございました。
お蔭をもちまして、私どもが当初狙っておりました以上の成果を収めて、セミナーを終えることができたものと感謝しております。それから最後に、財団法人中央競馬馬主社会福祉財団、今回の開催に当たりまして全面的に支援をいただきました。改めて御礼を申し上げます。
これをもちまして、閉会といたします。ありがとうございました。

司会:本当に今日は長時間、ありがとうございました。コミュニケーションが難しいという三橋さんの言葉がありましたけれども、そこで沢山の方の協力、例えば要約筆記の方々、そして同時通訳の方々、そして三橋さんのお手伝いの方、たくさんおります。その方々に拍手をお願いいたします。本日はありがとうございました。