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障害者放送協議会 放送・通信バリアフリーセミナー
障害者と放送・通信

第1部 
質問票への回答

質問1
米国における選挙の候補者や、大統領の演説に対する情報保障の現状を教えてください。

ペドロウ氏の回答
この問題について私はアメリカ国民ではないので限界があると思います。あるウェブサイト(http://orbitaccess.com/news-20000122.html)にあった報告では、2000年に行われた大統領選挙候補者全てのウェブサイトのアクセシビリティについて調査した結果、全てのウェブサイトで基本的なアクセシビリティの基準を満たしていないということがわかったということでした。

質問2
現在デジタルテレビに対して、聴覚障害者、視覚障害者、高齢者にどういう問題が生じているか、具体的に教えてください。それは、米国内だけの問題状況でしょうか?デジタルテレビが普及している英国との共通の問題でしょうか?

ペドロウ氏の回答
難聴者は会話を聞きとるのが困難です。難聴者はデジタル放送の字幕(closed captioning)を利用することで理解することが出来ます。
また、全盲者・弱視者は以下の点で困難を抱えています。

  1. 画面の映像を見る
  2. リモコンを操作する
  3. スクリーンのメニューを操作する

今のところ、これらの問題を一般的に解決する対処法はありません。高齢者も上記の項目のうち1つないしそれ以上の項目に当てはまるかもしれないし、手や指先を使って操作することに困難を感じることがあるかもしれません。英国ではデジタルテレビの利用が広く普及しているにも関わらず同様の問題が取り上げられています。

質問3
音声解説を作成するためにはある程度作品(番組)の芸術性をわかる人でなければよいものはつくれないと思いますが、米国ではどのような人が作っていますか?また養成機関がありますか?一つの職業として確立していますか?またはボランティアですか?

ペドロウ氏の回答
私の知っている限りでは、実際かなり熟練した技術を要する分野だと思います。WGBHの一部門であるナショナルセンター・フォー・アクセシブル・メディア(National Center for Accessible Media) は米国において字幕(closed.captioning)の開発と実施を先駆的に行ってきた団体です。
私の知る限り、字幕作成者は有給の従業員です。

質問4
インターネット経由でVOD(Video.on.Demand)サービスが広がりつつあります。過去の番組の再放送などが視聴できます。多くはMedia.Player やReal.Player で視聴するのですが、その中で聴覚障害者向きの字幕(closed.captioning) がついているものはどのくらいありますか?(特に米国ではどうか)

ペドロウ氏の回答
私の知る限りでは、VOD の字幕付与が法で定められているのはテレビ放送事業者が番組内容を知るための代替手段として提供されるものについてのみです。この場合、字幕に求められているのは放送内容に沿ったものであることです。

質問5
アメリカの障害者に関する施策策定において、当事者の参加はどれくらいあり、また参加について具体的な規定が存在するのかどうか。

ペドロウ氏の回答
最初の質問に答えられるような情報はないと思います。連邦通信委員会の実施義務の一部に、どのくらいのレベルの内容まで字幕をつけるかというような規則を作ることによって影響を受けるだろうと予測される全ての団体からの提案を受け入れる機会を考慮したり提供するという規定があることは知っています。

質問6
アメリカでは、音声のすべてを字幕(文字)化してほしいという要望と音声を要約して字幕(文字)化してほしいという要望という2つの方向性について、どのような議論があったのでしょうか?そして、その結論はどうなりましたか?

ペドロウ氏の回答
連邦通信委員会の実施義務の中に、どのくらいのレベルの内容まで字幕をつけるかというような規則を作ることによって影響を受けるだろうと予測される全ての団体からの提案を受け入れる機会を考慮したり提供するという規定があります。私の知る限り、個人であっても障害者団体であっても提案は可能だと思います。

質問7
アメリカでは関節炎による運動障害者が3,160 万人いますが、その原因は何でしょうか?日本でのデータは不明ですが、はるかにアメリカ人に多く見られるようです。(食事内容が原因?)

ペドロウ氏の回答
この質問は若干私の専門分野からは外れると思いますが、関節炎と肥満は関連があるという研究を知っています。私の理解では、米国においては肥満の発生率が高いということだったと思います。確かに食事が重要な要因であるといえるでしょう。

質問8
米国では今までのテレビでもデジタル放送番組が観られるようにセットトップボックス(Set-Top-Box)があって、低所得世帯はそれを購入するのに補助金が出るとのことでしたが、日本でも、セットトップボックスのようなものは売り出されるのでしょうか?2011 年7 月24 日のアナログ放送終了までに、誰もが取り残されることなくデジタルに移行できるような具体的な取り組みはどんなことが考えられていますか?(例)米国のような補助金制度など

上原氏の回答
地上デジタル放送対応セットトップボックスは、平成18 年1 月末までに、約20 万台の国内出荷実績があります。今後、受信機全体の低廉化が進む中で、セットトップボックス自身の低廉化、普及が進むものと期待しております。地上デジタル放送の普及に向けては、放送を全国に届けるために放送事業者が中継局の整備を進めることはもとより、地上デジタル放送を視聴していただくために、対応受信機(デジタルテレビやチューナー)を視聴者の方々に購入していただくことが当然必要となります。デジタルテレビ等の購入の促進には、ハイビジョン放送やデータ放送といった地上デジタル放送の魅力を高めた番組の放送が行われるとともに、こうした番組視聴に必要な機能や価格面での多様なニーズに応えた製品が市場に提供されなければなりません。現在は、昨年12 月に地上デジタル推進全国会議が発表した「デジタル放送推進のための行動計画(第6 次)」を踏まえ、放送事業者によるハイビジョン番組比率の向上や、メーカー等における多様かつ低廉な製品の開発等がされており、こうした関係者の努力によってデジタルテレビ等の普及が進むものと期待しております。

なお、チューナー購入等に関する支援は、現時点では、一切考えておりません。2011 年アナログテレビ放送停波を確実に実現するためには、対応受信機の低廉化・多様化に向けた取組と併行して、1)2011年アナログ放送停波に係る認知度向上、2)地上デジタル放送の政策的意義についての十分な理解の促進、3)地上デジタル放送の受信方法等具体的な対応方法についての理解の促進などが必要となります。そのための対応として、既に昨年10月22 日から「2011年アナログテレビ放送終了」と記載した告知シールをアナログテレビに貼付することを開始しました。このような対応を一層強化しつつ、その政策的意義についても十分な理解を得るよう周知して参ります。

質問9
解説放送普及のプログラムを伺いたいのですが、字幕放送に比べて大変遅れていると思います。

上原氏の回答
平成9 年に放送法等の一部を改正し、解説番組・字幕番組の努力義務の創設を行っており、また、字幕番組・解説番組等の制作費の一部の助成を行うなど、障害者向け放送の拡充に取り組んできているところです。現行の「字幕放送普及行政の指針」が2007 年度に終期を迎えるところで、それ以降の新目標の策定にあたっては、解説放送も含めた検討を行っていく必要があると考えています。

質問10
全番組の字幕の中には、現在任意となっている政見放送も含まれますか?手話はどうですか?
上原氏の回答
公職選挙法第150条により、放送事業者は、録音し若しくは録画した政見又は候補者届出政党が録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない旨規定されています。当該規定により、放送事業者が政見の内容を改編することは禁止されているところであり、たとえ字幕を付すためであったとしても、政見の内容を要約することについては慎重に対処しなければなりません。また、選挙の際には短期間で多くの政見放送を録画しなければならないことから、これらすべてに字幕を付すことは物理的にも困難です。また、政見放送における手話通訳は現在、参議院比例代表選出議員選挙に限って参議院名簿届出政党等等から自らが選定した手話通訳士一人による手話通訳を付して政見を録画するよう申込みがあったときは、日本放送協会は、当該手話通訳士による手話通訳を付して政見を録画するものと制度化されているところでありますが、その他の選挙に手話通訳を付すことについては、手話通訳士の人数の推移等を見守りながら、今後検討を行っていくべき課題であると考えています。

ただし、候補者届出政党自らが字幕、手話を付けて録画した持込みビデオを放送することは可能です。

○参考

公職選挙法第150条(抄)
(略).日本放送協会及び一般放送事業者は、その録音し若しくは録画した政見又は候補者届出政党が録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない。
政見放送及び経歴放送実施規定第8条第3項(抄)
(略).この場合において、当該参議院名簿届出政党等等から自らが選定した手話通訳士(平成元年厚生労働省告示第122号の手話通訳士をいう。)一人による手話通訳を付して政見を録画するよう申し込みがあったときは、日本放送協会は、当該手話通訳士による手話通訳を付して政見を録画するものとする。

質問11
上原さんも言及されていたように思いますが、字幕放送を補完するために、ボランティアの方が字幕を作成してインターネットで配布する仕組みが運用されている事例があると思います。不勉強で恐縮ですが、そういった活動の現状や、課題、有効性、総務省としての助成策について教えていただけると幸いです。また同様のボランティアベースの補完サービスは、解説放送についても、技術的には実現可能性があるのではないかと思います。こういった試みに対する期待あるいは実験例等があれば教えていただきたいと思います。

上原氏の回答
放送番組のインターネット等を利用したリアルタイム字幕の配信については、著作権法第37 条の2 において、政令で定められたものに限って実施できるとされています。政令に基づいて、リアルタイム字幕配信ができることとされている事業者は、現時点では以下の3 団体です。

  • 財団法人日本障害者リハビリテーション協会(平成十三年文化庁告示第一号)
  • 社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(平成十三年文化庁告示第一号)
  • 特定非営利活動法人シーエス障害者放送統一機構(平成十四年文化庁告示第六号)

日本障害者リハビリテーション協会と全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は、ボランティアによるインターネットを利用したリアルタイム字幕配信、シーエス障害者放送統一機構はCS 衛星通信を利用した配信を行っています。(配信頻度などは、各団体のホームページ等でご確認ください。)

なお、総務省では、平成17 年度については、シーエス障害者放送統一機構の「災害時のリアルタイム字幕配信役務の提供」事業に対して、「身体障害者向け通信・放送役務提供・開発推進助成金」による支援(必要経費の1/2 を助成)を実施しています。

この助成金は、身体上の障害のため通信・放送サービスを利用するのに支障のある者がその通信・放送サービスを円滑に利用できるようにするサービス事業に対して助成するものです。基本的に事業の立ち上がり期(3 年程度)を支援するものであり、永続的に特定の事業に対して助成するものではありません。
毎年の募集に対しては20 件程度の応募があり、そこから、評価委員の評価を経て、半数程度が採択されています。また、ボランティアの方が作成した解説をインターネットで配布している状況については、把握していません。

質問12
電子番組ガイドや双方向番組に対しての視覚障害者のアクセシビリティは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

坂井氏の回答
イギリスでは「話すEPG」が、デジタルテレビの一部のセットトップボックスで実用化されていると聞いております(ネットジェム社のiPlayer)。これについて現在聞き取り調査中です。
またNHK放送技術研究所では情報通信機構の委託研究「視覚障害者向けマルチメディアブラウジング技術の研究開発」を委託研究として、IBM、東京大学と共同で開始しています。これはデータ放送や電子番組表のデータを新たに開発する視覚障害者XML によって音声や点字、触覚提示に変換する技術と聞いております。(技研だより06 年3 月号)詳しくはNHK放送技術研究所へお問い合わせください。

質問13
他言語に対する音声和訳の保障や、視覚障害者向けの色つきボタン操作等について、研究は進められていますか?

坂井氏の回答
私の所属するNHK放送文化研究所では、ご指摘のような技術的研究は現在行っておりません。テレビ端末やリモコンのユーザビリティーについての先進事例等についてヨーロッパでの聞き取りと文献での探索を現在行っております。