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障害者対策に関する新長期計画推進国際セミナー報告書

基調報告1:「障害者の機会均等化に関する基準規則」の意義について

ベンクト・リンドクビスト (Benqt Lindqvist, Sweden)

十代で失明。DPI創設や障害者連合会代表など、内外の障害者運動に従事。1985年~ 91年には、スウェーデンの厚生大臣(視覚障害者として欧州初)を務める。「基準規則」 の策定にも関わり、現在は「基準規則」の実施状況を監督する、国連の特別報告者。

はじめに

 ご紹介ありがとうございました。まず内村さん、山下さんに対しまして、日本にお招 きいただきましたことを、心よりお礼申しあげます。日本に参ったのは、今度で3回目 です。前回は「スウェーデンの社会政策」について、日本の各地でお話をしました。帰 国後には、政府や国会の関係者に、「是非日本に行くべきです。日本に行けば、皆さん熱 心に耳を傾けてくれますし、スウェーデンよりも、多くの聴衆が集まってくださいます」 と話したのを覚えています。

 本日は、障害に関する国連の最新の文書であります、「障害者の機会均等化に関する基 準規則」について、最近の考え方などをご紹介する機会を得て、光栄に存じます。まず 本題に入ります前に、背景として、この新しい国連の規則がどういう経緯で誕生したか、 なぜ誕生したかを、ご説明します。

基準規則策定の経緯

 ご記憶のとおり、1981年は国際障害者年でした。この年は歴史的にも重要な、私ども 障害分野で活動する人間にとっても、非常に重要な1年です。私の考えでは、「完全参加 と平等」というこの年のテーマが、いちばんの成果であったと思います。

 それぞれが属する社会において、障害をもつ人が完全に参加をする、そして平等な機 会を得る権利を、政府の最高のレベルにある機関が認めたということが重要です。

 これに続いて、「障害者に関する世界行動計画」が策定され、国際障害者年のテーマに 対応した諸計画が示されました。これらの計画は、ご存知のとおり国際障害者年に続く、 1983年から92年の「国連・障害者の十年」の間に実施することになっており、確かにこ の間ある程度の実積も上がりました。しかし、この「十年」の半ばごろ、「あまりに実積 が少ない」という認識もあり、そこで国際的な障害者団体が国連に対して次のような要 請をいたしました。すなわち、「国連がもっと強力な指導的な立場をとるべきである。障 害をもつ人の生活の条件を改善するために、国連がもっとリーダーシップをとるべきで ある」という要請です。これに対する国連の回答が、「基準規則」の策定だったのです。 基準規則は、1990年から93年の間に策定されました。この策定の背景、経緯が非常に 大切だと思います。なぜなら基準規則は、世界行動計画の1つのフォローアップであり、 行動計画を実行する手段であると捉えるべきだからです。

基準規則の目的

 それでは、基準規則は何を言わんとしているのでしょうか。本文から2つ文章を引用 したいと思います。

「障害をもつ人がその権利と自由を行使するのを妨げ、障害をもつ人が各自の社会の活動 に完全に参加するのを困難にしている障壁が世界のすべての社会に未だに存在している」

 そして、次の文章では、

「政府の責任はこのような障壁を取り除くことである」とあります。(序文15より)

 この2つの文章は、私の考えでは基準規則の中でも最も重要な文章だと思います。

 これによると、基準規則が説明している方策は、まず完全な参加を阻害する障壁を見 い出し、そしてそれを排除することで、また障壁を排除する責任が各国政府にあるとい うことです。

 もうこれでおわかりになったと思いますが、基準規則には重要な点が3つございます。 まず目的として、完全な参加と平等の機会を実現すること。その手段として、それらの 障壁を確認し、排除すること。これに必要な措置をとる責任を政府が負うということで す。この点は、はっきりしており、明確な目的だと思います。

基準規則の特徴

 基準規則は、世界行動計画の理念を、いわば要約した形になっております。また行動 計画策定から10年間の、いろいろな考え方の変化も反映しています。特に強調されてい るのは、人権という観点です。この10年間に、人権についての見方が変わってきました が、それが基準規則にも反映されています。世界行動計画と比べまして、基準規則は主 に3つの点で異なっています。

 まず基準規則は、文言がより簡潔で、手短かであります。また基準規則に含まれるメッ セージは、各国、各加盟国に直接向けられている、各国の政府に流されたメッセージで あります。そして3つ目の特徴は、これをモニターする、特別の「モニタリング機構」が 定められていることです。

基準規則の構成

 基準規則は、序文、前文、22の規則、モニタリング機構の説明から構成されており、さ らに22の規則が3つの部分に分かれております。まず規則の1から4までは、「平等な参 加への前提条件」をまとめたものです。5から12までの規則には、「平等な参加への目標 分野」が掲られており、13から22までの規則には、具体的な「実施方策」が書かれてお ります。

 まず第1の、「平等な参加への前提条件」の部分ですが、ここでは専ら個人に対するさ まざまな支援について書かれています。すなわち、医療、リハビリテーション、その他 の支援サービス、技術的な援助、あるいは人的な援助などですが、その目標は、もちろ ん個々人の自立を高め、その機能を制限するものを削減することにあります。

 次に、第2の「平等な参加への目標分野」としては、生活の質を向上するために基本 的に重要な社会の問題、社会的な側面について取り上げています。

 まず「アクセス」についての規則があります。これは、物的な環境、さまざまな活動 やサービス、障害をもたない人に社会で提供されている活動やサービスが利用できるよ う、アクセスが確保されるようにという規則です。これは教育、雇用、所得保障、社会 保障までもが含まれる重要な分野です。

 次に、「家庭生活と人間としての尊厳」に関する規則がございます。これは特に注意し て読んでいただきたい部分です。この分野は、特に「障害者の十年」の間に議論が高まっ てきた新しい分野で、世界行動計画にはこれに対応するものはありません。

 第3の「実施方策」では、既に知られているいくつかの方策が提示されています。障 害分野で成果を上げるためには、いずれも重要な方策です。特にご注意いただきたいの は、次の3つの規則です。

 まず「立法」。これは規則15ですが、ここではすべての国家が法的な基盤を確保すべき だとしています。つまり完全参加を実現するための法的な基盤を整備し、法的な措置の 根拠を作るべきだということです。また、障害をもつ人にとって不利な状況を排除する ような立法措置も必要であろうとしています。

 次に「障害をもつ人の組織」。これは規則18ですが、障害をもつ人が組織化する権利を 認めています。さらにそれらの組織は、国、地方などあらゆるレベルにおいて、障害を もつ人を代表する権利を有するとしています。また、障害をもつ人の組織化、さらに組 織の強化を、各国政府が奨励し、支持すべきだと謳っています。

 さらに「実施方策」の3つ目としてご注目いただきたいのは、「業務の調整」です。こ れはちょっと専門的になりますが、規則17です。ご存知のとおり、障害問題は社会のさ まざまな分野に関連するもので、したがって、総合的な、包括的なアプローチが、障害 政策においても必要になります。このためには、さまざまな活動、業務を調整する必要 があります。

 そこで各国で国内調整委員会というものを作り、国の責任として業務の調整を強化す べきであるとしています。

モニタリング機構について

 次に「モニタリング機構」に関してですが、これもかなり詳しいガイドラインになっ ています。特に重要なのは「モニタリング機構の目的」というところですが、それによ ると基準規則の効果的な実施を促進するものでなければならないとされています。つま り、単にモニターするだけでなく、実施を確保するといいますか、効果的な実施を促進 することが必要なのです。また各国は、基準規則がどの程度実施されているかを評価し、 その進捗状況を計ることを支援しなければなりません。障壁となるものを確認し、これ を排除し、規則を成功裏に実施するために適切な措置をとるべきだと述べています。

 基準規則のモニタリングは、国連の社会開発委員会の中で行なわれる活動です。社会 開発委員会は、国連の常任委員会の1つで、もちろん国連加盟各国が参加しています。そ して3年の任期で特別報告者を任命し、実施状況をモニターすることになっています。し たがって実際のモニタリングを行う責任は、特別報告者に置かれるわけです。

 さらに、国連の経済社会理事会の諮問団体である各種の国際的な障害者団体が、専門 家委員会を構成します。この専門家委員会は、障害をもつ人が過半数を占め、事務局や 特別報告者といろいろ協議をするものとされております。

教育、就労

 各国の障害政策、あるいは行動計画において、何といっても要となりますのは、教育 と就労の問題です。第6、7、8の規則は、それぞれ「教育」、「就労」、「所得保障と社 会保障」に関するものですが、各国の行動に関しての方向やガイドラインを示していま す。この基準規則をお使いになるときは、是非この文章そのものをよくお読みいただい て、各国でとるべき原則、あるいは方策を、それぞれお考えいただきたいと思います。

 この規則の内容について、さらにいくつかコメントをさせていただきたいと思います。

 「教育」に関する規則の6は、加盟国が教育における機会の平等性原則を認識し、統合 された環境での教育の機会の均等化を目指すべきであり、また障害をもつ人の教育は、教 育体系全体の中の核心となることを政府が保障すべきだとしています。さらに障害をも つ人のニーズを満たすため、十分なアクセスと支援サービスが提供されるべきであり、ま た義務教育を実施している国では、男女を問わずあらゆる種類と程度の障害をもつ子供 に教育を提供すべきだとしています。これは最重度の障害を含めてのことです。

 また地域における活動は、教育あるいは訓練のコスト効率を高めるための補完的なも のだとみなされるべきだとも述べています。統合教育と、地域に根ざした活動は、障害 をもつ人に費用効率の高い教育と訓練を提供し、補完し合うものだという考え方です。

 さらに一般の学校制度が充分に障害をもつ人のニーズを満たしていない場合には、特 殊教育も考えるべきであるとしています。特殊教育は、あくまで普通教育を受けるため の準備段階であり、普通教育と同等の質を保たなければならないと述べています。

 次に「就労」についてですが、障害をもつ人たちも就労し収入を得られるようにする ため、各国の政府は、障害をもつ人たちが就労するうえでの障壁をすべて取り除かなけ ればならないとしています。そしてできる限り、一般の労働市場での仕事に、障害をも つ人が就けるようにしなければならないとあります。これは、現在よりさらに推進して いくことが可能だと私は思います。しかし、もしそれが困難な場合には、保護雇用的な 雇用を提供すべきであるとしています。

 基準規則の「就労」のところを見てみますと、次のように書いてあります。「就労分野 での法と規則は障害をもつ人を差別してはならず、その就労への障壁を築いてはならな い」

「政府は障害をもつ人の通常の就労への統合を積極的に支援すべきである」「政府、労働 者組織、雇用者は……研修・雇用機会の創出を障害をもつ人の組織と協力して行うべき である」(規則7:「就労」より)

 また本文には、政府がとるべき各種の技術的な方策が盛り込まれています。これらの 目標を達成するために政府がとり得る方策、とるべき方策です。

所得保障と社会保障

 次に「所得保障と社会保障」についてですけれども、この分野については、世界的な ガイドラインを作るのはよりむずかしくなります。といいますのも、世界各国の経済状 況がそれぞれ根本的に異なるからです。しかしながら、そういった中で、国連総会はい くつかの普遍的な原則については、合意をすることができました。そしてすべての国が これを遵守すべきであるとしています。

 この「所得補償と社会保障」(規則8)から、いくつか引用したいと思います。特に政 府の責任と関わりのある部分について引用したいと思います。

「政府は、障害をもつ人への社会保障と所得補償の提供に責任を持つ」

「政府は、障害もしくは障害に関する要素によって、一時的に所得を失った、もしくは減 らした、または就労機会を否定された障害をもつ人に対し、適切な所得援助の提供を保 障すべきである」

「社会保障、社会保険、他の社会福祉計画が国民を対象に存在するもしくは現在導入され ている段階の国で、政府はそのような制度が障害をもつ人を排除、差別しないよう保障 すべきである」

 また、これは大切なことですが、社会保障の制度は、障害をもつ人が収入を得る能力 を回復する動機づけともなるべきである、と述べています。

 私の考えでは、これらの原則は、所得保障や社会保障の制度を作るにあたって、どの 国でも適用できる原則であると思います。

 教育、就労、社会保障に関する規則を見てきましたけれども、これらの規則はILO 及びユネスコと緊密な協力関係をとりながら作られたものです。したがって、これらの 原則やガイドラインは今日の既存の価値、知識、経験を十分に代表し得るものであると 考えられます。

基準規則の普遍性

 こういった規則の話をしますと、次のような質問を受けます。「障害をもつ人に関して、 全世界に適用できる施策を設けることが本当に可能なのか」。あるいは「世界各国の経済 的、社会的な状況は大きく異なるのに、普遍的な政策はとれるのか」といった質問です。 私の考えでは、それは可能であると思います。人間としての普遍的な価値、一般的な原 則や、政策に則れば、全世界に適用できる施策を設けることは可能だと思います。

 障害の原因、種類、数は、各地域、各国でもちろん異なります。しかしながら、どの 国にもかなりの数の障害をもつ市民--子供も、若い人も、それから高齢者の方も、い るということは否定できない事実です。どの国でも、障害について必ずや考慮しなけれ ばならない状況があるわけです。あとは障害をもつ人たちを無視して孤立させてしまう のか、それとも障害をもつ人たちを国全体の施策の中に含めるのか、選択の問題である と思います。どちらの選択をすればいいのか、私にとっても、皆さんにとっても、明白 であると思います。この考え方に基づいて、障害をもつ市民を、国づくり、社会づくり の中に統合して行くことは、世界の最貧国といわれる国であっても可能であり、それが 基準規則の基本的な考え方なのです。

 そしてもちろん、福祉に対する関心が高まり、経済成長も続いている多くの国の状況 の中では、これを行うことは可能だと思います。

 特に発展途上国や、経済体制が変わりつつあるような国においては、基準規則の中に 書かれている統合の考え方を、より容易に施策の中に入れることが可能になる場合があ ります。

 先進工業国を見てみますと、既存の体制や制度に縛られてしまうことが、多々ありま す。お金はかかる。にもかかわらず、「完全参加と平等」という目標に必ずしもその結果 が合わないということが、よくあるのではないでしょうか。

モニタリング活動

 モニタリングを始めまして1年半が経ちました。国連の事務総長は、私を3年の任期 で特別報告者に任命しました。これは1994年の春のことです。そして専門家委員会が94 年の秋に作られました。この専門家委員会は、6つの国際団体、すなわち障害者インター ナショナル(DPI)、世界育成会(In-clusion International-ILSMH)、国際リハビリテーション協会(RI)、世界盲人連合(WBU)、世界ろう連盟(WFD)、世界精神障 害回復者連盟(World Federation of PhychiatricUsers)の6団体により構成されています。障 害分野の国際的な活動に精神障害をもつ方々が参加したのは今回が初めてです。専門家 委員会は5名の男性、5名の女性から構成されておりまして、それぞれ持っている障害 も異なり、出身国も異なっています。これらの6つの組織がこのような成果を上げたこ とを、大変うれしく思っております。

 94年の11月に、私はすべての政府に対して書簡を送りました。基準規則をどのように 受けとめ、将来どのように用いるつもりかを、問う書簡です。全185カ国のうち、回答が あった政府は、38カ国でした。また4つのNGOからも報告がきました。日本から回答 が来たかどうかについては、ここでは触れないことにしましょう。報告をご覧になれば、 それはわかります。

 95年の4月に、私は社会開発委員会に対する第1回目の報告を行いました。社会開発 委員会では、決議34の2を採択しましたが、これは私たちの活動を支援するする強力な 決議でした。また、委員会への私の報告は、第50回国連総会でも配布されました。ご関 心のある方はご覧ください。

重点を置く6つの分野

 95年の2月に、私は初めて専門家委員会のメンバーと会合しました。大変充実した討 議をすることができました。私たちは、22の規則全部がそれぞれに重要であることは 重々承知していましたが、特にモニタリング期間として時間が限られているため、6つ の分野に重点を置くこととしました。

 6つの分野とは、「アクセス」、「教育」、「就労」、「立法」、「業務の調整」、そして「障 害をもつ人の組織」です。

 「教育」の分野においては、ユネスコと協力をしまして、非常に大きなアンケート調査 を行い、94年に開かれた特殊教育関係の世界会議に使用した質問表と一緒に分析を行っ ています。

 またILOとも協力をしまして、「就労」の分野の現状について、現在検討しています。 ILOは、今年の秋に障害をもつ人の就労に関する大規模な調査を世界的に行うことに なっていまして、各国政府は積極的にこの調査に参加することが求められています。

 その他の4つの分野(立法、アクセス、業務の調整、障害をもつ人の組織)について は、すべての政府に対して、33の質問を行っています。また、専門家委員会のメンバー である6つの組織から、各国の加盟団体の連絡先も尋ね、この質問表を同じく送りまし た。世界で630の団体に送ったことになります。

 質問表を送ったこれらの団体には、これらの質問に回答していただくようお願いする とともに、各国の政府がきちんと質問に回答するよう働きかけてもらうことをお願いし ています。このような方法をとることにより、政府からの回答率も上がると思いますし、 各団体からの回答率も高めることができるのではないかと思います。これらの質問は、将 来のモニタリング活動や、将来的に国連が障害分野で何をすべきか決定する際にも非常 に重要ですので、是非皆さんにもご協力をいただき、回答が得られるようにしたいと思 います。

特別報告者として

 また当然のことですけれども、私は残された任期を通じて、基準規則の基本的な考え 方や内容について機会あるごとに紹介していきたいと思います。

 これまでも、専門家委員会の6団体が開催したさまざまなイベントには、できるだけ 参加をしてきましたし、また今回のようなセミナーを通じても、お話しをしてきました。 95年の8月、9月には、アフリカを回りました。また中東にも1回行きました。アフリ カでは、障害に関する政策についての地域セミナーに参加しました。このセミナーには、 30以上のアフリカ諸国が参加し、各国の障害者団体や政府ともコンタクトが取れるよう になりました。中東でも、政府や障害をもつ人の組織とセミナーを行い、中南米諸国で も同様のことをしたいと思います。アジアについては、ちょうど昨日、日本政府と話し 合いをする機会がありました。またインド、中国から招聘を受けています。

 また私のモニタリングの任期が切れる前に、地域レベルのセミナーをもう1~2回、行 えるのではないかと思っています。このモニタリングの第1期のうち、残された期間は 1年強となりましたけれども、せっかくの機会ですから、できるだけうまく活用してい かなければなりません。できるだけ自主的な進歩を遂げ、そして障害をもつ人々への不 必要な差別をなくしていかなければなりません。同時に民主主義的な価値、そして国連 および国連加盟国の信頼性を全般的に守るという観点からも、この仕事は重要です。

さいごに

 最後になりましたけれども、もう1つ、これだけは言わせていただきたいと思います。 私は35年間障害の分野で活動をしてきました。これから私が申し上げることは、私の経 験に基づいた真実だと思います。障害をもつ人にとってよい社会というのは、すべての 人にとってよりよい社会です。私はそう信じています。この会場にいる皆さんも同じよ うに思っていらっしやると思います。ですからこの考え、この洞察を他の人たちにも広 めて、説得をしていかなければなりません。私はこれからも世界の障害をもつ人たちの 環境を改善して行きたいと思います。皆さんの将来の闘い、「万人のための社会」を実現 するための活動を、私も支援していきたいと思います。ご清聴いただきまして、どうも ありがとうございました。

*基準規則の本文の引用は、長瀬修氏訳の「障害者の機会均等化に関する基準規則」(日本障害者協議会発 行)の訳文を使用しました。