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第22回総合リハビリテーション研究大会
「地域におけるリハビリテーションの実践」-総合リハビリテーションを問い直す-報告書

【 分科会 2 】 生活の定着と求められる支援:伴走者としての関わりと自己決定の尊重を

沖縄県ふれあいセンター
永山 盛秀

 精神障害者における障害の現れ方は、精神症状の強弱だけでなく、周りの社会環境にも大きく左右されるため、医療の側からの関わりだけでは見えにくい障害がますます見えにくくなってしまうように思います。
 精神障害者を対人関係の上手でない、普通に生活することを困難に感じている生活者としてとらえることで、その人の精神障害の状況にあったリハビリテーションの方向性が見えてくるのではないかと思います。
 障害の現れ方は千差万別であっても、生活者である障害者への働きかけ方には多くの共通点が存在するものと思います。  沖縄県のふれあいセンターでは、地域における精神科リハビリテーションの試みとして、『伴走者としての関わりと自己決定の尊重』を目標に掲げて下記のことに取り組んでいます。

  1. ふれあいセンターではリハビリテーション事業の主人公が精神障害者自身であることを常に念頭に置くようにしています。
     精神障害者のための精神科リハビリテーションなので精神障害者自身がその事業の主人公であることは当たり前のことでしょうけど、ややもすると事業提供者が中心となってしまい、事業のための事業になってしますこともあります。 誰が主人公なのかを常に念頭に置くように日常的に心がけることが大切でしょう。
  2. ふれあいセンターでは精神障害者がどういう思いで活動に参加しているのかを把握するようにしています。
     長い間自宅に引きこもりの状態だった障害者の場合はまず出かけて行ける場所を望んでいます。ひとりぽっちだった生活から脱出するため信頼し合える仲間を求めている場合もあります。
     経済的に自立できるために働きたいと願っている障害者も決して少なくありません。
     ふれあいセンターでは一人ひとりの参加の動機を大切に受け止めるように心がけています。そのため、参加者が増えることに応じて活動内容も増える傾向にあります。
  3. ふれあいセンターでは、精神障害者がどういう活動を望んでいるのかも把握するようにしています。
     参加の動機によって望む活動内容も変わってきます。ふれあいセンターでは多岐にわたる要求のすべてに応えることは出来ていませんが、可能な限り対応できるように精一杯努力しています。
  4. ふれあいセンターでは活動内容を決める場合に出来るだけみんなの意見が反映できるように全体の話し合いの場を大切にしています。
    ふれあいセンターではスタッフだけで活動内容を決めることは全くありません。どのような些細な内容でも常に、主人公である精神障害者たちを中心にみんなで決めるように心がけています。
    活動内容を決める場合に、一人びとりの参加動機が生かされるような内容になることが大切で、そのためにも活動内容を決める過程において民主的な話し合いの場がどう保障されるかが大切でしょう。
    ふれあいセンターでは活動内容などを決めるミーティングの運営や進行役は原則として障害者自身が担うようにしています。
  5. ふれあいセンターでは活動内容を決める場合のスタッフの関わり方にも気を配っています。
     ふれあいセンターではスタッフも対等平等の立場から積極的に発言します。情報量の違いや社会的経験の違いからスタッフ主導になってしまう危険性があることにも気を配る必要があります。
  6. ふれあいセンターでは親兄弟姉妹から経済的にも精神的にも自立できるように目指すことを大切にしており、納得いく社会参加への思いも大切にしています。
     ふれあいセンターでは「親なき後どうするか」ではなく、親が元気なうちに親や兄弟姉妹が安心できるような経済的にも精神的にも自立して納得いく社会参加が図れることを目指しています。
    ふれあいセンターでは親兄弟姉妹にこれ以上の負担をかけないとの立場から、親兄弟姉妹の活動への参加を求めたり依頼することはありません。自分たちの力で運営できることを目指しているのです。
    もちろん、親兄弟姉妹との関係を断つことが目的ではないので、望んで参加する方々については大いに歓迎しているところです。
  7. ふれあいセンターでは「おしゃべりタイム」を大切にしています。
     精神障害者への支援で最も大切な課題は対人関係で自信を回復させることだと思います。対人関係が上手でないため、相手の思いを受け止めることが困難であったり、自分の思いをうまく伝えきれないために、人との交流を避けてしまっている場合が少なくありません。
    ふれあいセンターではどのような些細な内容であっても、お互い同士で語り合う場面は大切にしています。それは、毎日のミーティングだけでなく、タバコを吸いながらの世間話なども含めて大切にしているのです。
    いわゆる「おしゃべりタイム」のなかで、ごく自然に病気のことや服薬している薬のこと、家族のことや仕事のこと、結婚や子育てのことなど、人生を前向きに考えていくような話題がよく語り合われています。
  8. ふれあいセンターでは指導者・助言者としての関わりではなく、協力者・伴走者としての関わりができるように心がけています。

ふれあいセンターでは一人ひとりの精神症状の違いや性格・価値観などをその人の個性として尊重し、リハビリテーション事業への関わりの視点も指導者・助言者としての関わりではなく、協力者・伴走者としての立場を貫くようにしています。 精神障害者が既に出来る課題や出来る可能性のある課題については、そのチャンスを奪わないように、担当を任せるようにしています。
過度の負担になる課題やまだまだ困難と思える課題についてまで、いきなり任せるのではなく、ある程度の流れを作ってから徐々に任せていくように心がけています。
しかし、たいていは任せきれずにチャンスを奪いがちだと思います。その危険性を常に持っていることを念頭に置きながら、協力者・伴走者になれるように努力したいと願っています。


日本障害者リハビリテーション協会
第22回総合リハビリテーション研究大会事務局
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