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国際セミナー
「障害者権利条約」制定への世界の最新の動き

コーディネーターによるまとめ

社団法人京都府視覚障害者協会生活環境改善部部長 辻川 覚

卵が先か、にわとりが先かではないのですが、国際条約が先か、わが国の障害者差別基本法が先なのか。障害者のためになることであれば、どちらが先でもかまわないのでないかと思います。相互のなかで連携がとれていけば問題はないと思います。

国内的な問題としての障害の定義

 私からは、国内的な問題として障害の定義について、三つ問題提起をしていきたいと思います。視覚障害がどんな障害であるかはよくわかります。ところが最近問題になってきているのが色盲と呼ばれている人たちです。日本の国内法では、この人たちは障害者ではありませんが、男性の5%が色盲、色弱だろうと言われています。日本には男性6000万人いますから、その5%といえば300万人です。女性でもごく一部の人には色覚異常の人がいます。ですから実数としては300万人を超える人たちが、今はやりのインターネットを見るにしても、非常に見にくいページを無理をして見させられているのです。
こういう状況の中で6月20日に、日本でもようやくホームページのアクセシィビリティーのJIS化が公示されました。見やすい色使い、色覚異常の人もわかるものをという雰囲気が流れ始めました。それから派生して色使いの問題をもっと考えようということになりました。今までだと、視力検査をして見えているのだから色のことまで言うなと押さえ込まれていたのが、少しこれで変わってくるのではないかと思います。色覚異常を障害者と定義していいのか議論していくことは、障害者をどのように定義するのかの具体例になるだろうと思います。
二番目に、法律の整備についてです。障害者雇用法はあっても、雇用率未達成企業は多くあります。罰則を強化して雇用率を上げるという法律的な裏づけは必要ですが、そこまでそれが保障されていくかという点はこれから考えていかなければならない課題だと思います。

三番目に人権という点で、出生前に障害がわかれば中絶することは人権侵害になるのかならないかという問題があります。それ以前に20年、30年前は障害者が無理やり施設に入れられていました。施設に入る前に女性の場合、1か月に1回ある生理のときに介護者が大変だということで、子宮摘出がされていました。まったくひどい人権問題であると、先日も毎日新聞の記事で1万6500人の女性が無理やり手術を受けさせられたというデータが載っていました。産む、産まないということもあるし、産みたいか、産みたくないかというのも女性の権利ですが、障害者差別という点では大きく関連してくるだろうと思います。障害者差別とジェンダーの差別という問題の境界線をどのあたりに引いていくのかという議論をきちんと整理してつめていかないと課題がまとめられないのではないでしょうか。

障害者の理解への課題

最後に障害者への理解という点について例を挙げます。弱視の人が、駅で切符を買おうとして「京都駅までいくらですか」と若い女性に声をかけたら、その女性は、声をかけた人が弱視の人かどうかわかりません。この人は何か下心があって声をかけてきたかもしれないと思うので、引いてしまいます。それを差別というのか、弱視という人がいることを啓蒙していないことが問題なのか。そこの線引きも難しいことです。
このあたりのところをこれからよく考えて問題点を一つずつ整理して法的な整備、条約の制定の要求をしていかなければいけないと感じました。