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国際セミナー
「障害者権利条約」制定への世界の最新の動き

質疑応答

会場/大阪の北口です。教育分野の中で、本人の了解を得て学校を選ぶ、選択権が重要だ、という意見がありましたが、選択の時に、たとえば養護学校の情報を一方的に言って、一般の学校については少ししか情報がない。そんな場合は、養護学校を選んでしまう場合が出てきますよね。
情報提供を義務付ける中で、養護学校や一般学校のきめ細かな情報提供ができる環境作りを行った上で、選択権を保障すべきだと思います。
以上です。

辻川/今の発言は教育の場の選択について、養護学校なのか、それとも地域の学校なのか、平等な形での情報提供がないと障害当事者が正しい判断をすることができないだろう、と言うことだと思います。
昼からも教育問題について触れられることもありますが、今の意見につきまして、2人の講師の先生から何か気がつかれたことが、ありましたら発言をお願いします。

山崎/ご質問ありがとうございました。
障害を持っている方が、どういう学校を選ばれるのか。おそらく公立学校のことを考えておられると思いますが。これは基本的に、ご本人、当事者の考えが生かされるのが一番良いと思います。それは、日本国憲法の26条の国民の教育を受ける権利、教育基本法の規定とか精神、あるいは、日本が批准していて、締約国になっております子どもの権利条約など様々な法的な枠組みで考えた場合ですが。
選べること、選ぶために十分な情報を得ることができ、情報をただ提供されただけでなく、ご本人が充分に理解でき、それがご本人にとって有益である。そこまでは、公教育が保障していく法的な義務があると思います。
基本的には各都道府県の教育委員会の法令上の義務で、それを踏まえそれぞれの自治体である、市区町村の教育委員会が、実際にきめ細かくご本人に対して分かるように説明をする、というのが本来の行政のあり方だと思います。
しかし、今の提起されているご質問というのは、現実がそういう状態になっていないので、おそらく、今ここで議論している、障害者の権利条約というのがもしできて、それに日本が入ったとすれば、そこで何か新しい道が開けるのだろうか、というご主旨だと思います。その点について、私は障害者の権利条約の内容を良く知りませんので、長田さんにお願いしたいと思います。

長田/先生のご説明で結構だと思いますが。この国際権利条約は、まず、国内法とは違うということです。実際問題として、今の質問者のお答えするには、基本的に香港で作られたコード・オブ・プラクティスのようなもの、実際に、こうしていかなければならない、というガイドラインのようなものを作っていくしか方法がないのです。それをみて、正しいかそうでないか、判断するしかない。その中身を国際権利条約の文章の中にもとめることは不可能だと思います。

国際権利条約はもっと広義なものなのです。たとえば、人権の枠組みだとか、人権の概念など、ということなので、当然のこととして身体障害者だけではなく、ろうあ者の方、目の悪い方、そういう方全体を含めた障害者権利条約です。身体障害者の方々からは統合教育を是非やって下さい、という意見が強いのですが、たとえば、ろうあ者の方々は全然違う考え方を持っておられて、教育の場では、手話を使って特別な教育をしてほしいとおっしゃる。盲人の方の中も、たとえば、タイの政府代表の方などは点字を使って特別な教育をしたほうが良いのだ、という意見を持っていらっしゃる。同じ障害者でも、障害の種類や置かれた状況によって、考え方が同じにはならない。それを全部まとめて、短い3行くらいの文章で統合教育と、特殊教育の選択を書かなきゃいけない、というのが、国際権利条約なのですね。このテキストというのは、概念の中心になるものであって、それに従って国内法を改訂して差別禁止法をつくったりするのです。もっと基本的な言い方をしますと、まず国際権利条約ができて、それから日本は香港のように差別禁止法をつくって、それで、職場や学校におけるコード・オブ・プラクティス、こういうときは、こうしないといけない、というようなガイドラインなどのようなものをつくって、やっと使えるものになるのではないか、というのが私の考えです。それから範例ですね。範例の結果をあつめて、両方から攻めていかないと、権利条約の中身に、今のかたのお答えを見いだすことは難しいと思います。ただし、一般的に国連などの会議を見ていると、選択の余地、本人が選択する権利は、それなりに強い意見になっていると思います。