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国際セミナー報告書「各国のソーシャル・ファームに対する支援」

講演1「イタリアのソーシャル・ファームの現状とソーシャル・ファームの支援」

ジョヴァンナ・マランザーナ
(ヴィッラ・ペルラ・セルヴィス副会長)

講演を行なうマランザーナ氏の写真

皆さん、おはようございます。まず、最初にご招待いただきましたことを心から感謝いたします。情報の交流、経験の交流をさせていただけることを大変うれしく存じます。私は、ジョヴァンナ・マランザーナと申します。ヴィッラ・ペルラ・セルヴィスというソーシャル・コーポラティブの副会長を拝命しています。障害を持った方々、社会的に不利な方々のための雇用創出という活動をしています。

まず、イタリアの状況についてお話しをさせていただきます。ご存じかと思いますが、ソーシャル・コーポラティブというのは、30年ほど前に行政では問題を解決できないという状況があったため、イタリアで始まったものです。80年代から福祉サービスに対する要求が高まる一方で、地方自治体によるサービスの直接的、あるいは確実な提供が難しくなっていきました。そこで、社会福祉政策の転換が図られ、主に外部の非営利組織にサービス提供の仕事を委託し、地方自治体は財政面にのみ関与するということになりました。この政策の目的は、社会保護制度の経費削減というものでした。非営利組織への業務の委託ということは、安い運営費が保証されているという点で地方自治体の方針に合致していました。特に、ボランティアの参加、民間からの自主的、あるいは、多額の寄付が得られるということが、労働に関するさまざまな法律の規制を緩やかにし、委託しやすくなった理由でした。

現在、ソーシャル・エコノミーと呼ばれる分野は、行政によるサービスに対する唯一の解決策と考えられています。同時に、就職に不利な何千人もの国民に多くの労働の機会を提供しているわけです。また、一般市民にとっても資源と市場の提供という点で極めて重要な支援手段となっています。

行政により福祉国家の危機に関わるようになったこれらの組織は、これまでは単に保護された市場におけるサービスの供給者として活動してきました。しかし、今は状況が変わってきました。公共の資源の削減が進むにつれ、市場に対する保護が縮小され続け、ますます多くの行政機関が社会的協同組合との個別的な交渉を行わなくなってきています。特にタイプB(後ほどタイプAとタイプBについてお話しします。)と言われる協同組合は値下げ競争を強いられており、ますます過酷になりつつある競争市場に立ち向かわなければならなくなってきています。

また、サービスの質も向上していかなければならないという状況になっています。

先ほども申し上げましたが、イタリアでソーシャル・ファームと言ったときには、法律的に認められた社会的な協同組合のことを指しております。イタリアでは、その他のヨーロッパ諸国と同じように社会的な目的を達成するために市場取引を目的とした、商業ビジネスを経営するすべての企業は、通常、ソーシャル・エンタープライズとみなされます。

ソーシャル・エンタープライズは、営利を目的としていません。いわゆるサード・セクターと呼ばれ、いろんな協会、財団、NGO、その他すべての非営利団体が活動をしています。ソーシャル・エンタープライズというのは、法律的に認められた形は社会的協同組合というものであります。

ご存じのように80年代以来、イタリアではソーシャル・ファーム、ソーシャル・コーポラティブというのは非常に強い力をもって活動してきたものであります。

さて、特別法381/91というのがあります。社会的な協同組合とは何かを定義しており、タイプAとタイプBという2つのタイプに分類されています。この法律では、社会的協同組合を「企業として機能するのに必要な技能を有し、営利を目的とせず、その利益を社会的目的およびコミュニティの目的のために再投資する法的性格を備えた事業体」と定義しています。この法律の第1条によりますと、「社会的協同組合の目的は、人間の発達とソーシャル・インクルージョンに向けて、ソーシャルサービスおよび保健サービスの提供をする組合」。これがタイプAと呼ばれるものです。

それと同時に、「不利な立場にある人々のための雇用の創出をする組合」は、タイプBと呼ばれています。

このタイプAは、タイプBを通じてコミュニティの利益を追求することであるということです。タイプBの協同組合は、不利な立場にある人々のための雇用の創出を主に行っています。タイプAの社会的協同組合は、保健衛生、学校、専門的な研修、保育、高齢者および障害者介護、レジャー、あるいは文化部門において活動しています。先ほども申し上げました通り、タイプAという協同組合は、福祉サービスを提供する事業体です。タイプBは、支援がなければ就職することができない不利な立場にある人たちの雇用を創出するために、さまざまな部門で活動をする事業体です。

イタリアのこの法律では、不利な立場にある人々はどんな人かという定義を厳密にしています。第5条ですが、不利な立場にある人々は、たとえば身体障害あるいは精神障害を持っている人、薬物依存、アルコール依存の問題を抱えている人、発達障害を持っている人、法律違反の問題を抱えている人などを挙げています。法律の承認にあたってこの定義は非常に重要でした。なぜならば不利な立場にある人々が初めて特別なニーズを抱えているということが認められたからです。この事実を踏まえてソーシャル・エンタープライズはこのような人々に注目し、彼らのためにプロジェクトを実現し、法的にも認められることになりました。

その後、この不利な条件は、社会の変化とともに変化してきました。より広い意味での定義が必要となったわけです。しかし、法律上の定義は変化することはありませんでした。人種差別や性差別、ホームレス、経済的な病気と言われる貧困。その他の不利な条件については法律上、認められていません。法律によって保護されていないわけです。しかし、社会的協同組合においては、こういった不利な立場にある人たちにもサービスを提供しています。

この社会的な協同組合の従業員は、少なくとも30%が不利な立場にある人、あるいは障害を持っている人でなければならないとなっています。

このような協同組合では、社会保険料を支払う必要はないということになっていますが、その他のコストは同じです。給与も障害のある人、ない人で違いがあってはならないということになっています。

それから、その他のソーシャル・エンタープライズに関わる法律があります。たとえば国法68/99は、障害者の雇用について規定しています。日本の法律とあまり違いはないと思います。この法律によって、15人以上の従業員を抱えている企業は、民間企業であれ社会的な協同組合であれ、15人に対して1人は障害者を雇わなければならない。30人なら2人、50人以上なら3人という規定になっています。これは、民間企業に適用されています。なぜなら社会的な協同組合の場合にはもちろんその法律をきちんと守らなければならない、そうでなければ設立ができないということになっています。

それから、国法327/00は公的調達に関わる職場における人件費、衛生面および安全面の評価について言及しています。328/00は、ソーシャル・エンタープライズが保健衛生サービス、ソーシャルサービス、その他のコミュニティサービスを提供するために備えなければならない基本的なスキルについて定義しています。

国法30/2003、第13、第14条、および委任立法273/03の中にも、不利な立場にある人々の職場への参加を推進するための、実験的、革新的な方法を定義し、障害者を雇用する社会的協同組合に仕事の一部を委託することを企業に奨励しています。

さて、規模ですが、イタリアでは2002年末までに以下の数値を達成できると推測されていました。6,000の社会的協同組合の設立、そのうちの55%がタイプA、タイプBが45%、20万人の従業員を雇うことになるであろうと。従業員のうち1万5,000人は不利な立場にある人々で年間40億ユーロの売り上げが推測されていました。

リグリア州では、2004年現在、200の社会的協同組合があり、6,000人の従業員を抱え1億ユーロの売上高を誇っています。リグリア地域は、人口200万人のところですから、そういう地域で6,000人ということです。

雇用契約のタイプですが、他の企業と似たようなものです。ソーシャル・エンタープライズにおいても、雇用契約として、期間を定めた契約社員、あるいは、終身雇用という形で社員として採用されます。主に長期契約による雇用が中心ですが、ときには、仮採用期間として短期契約を結ぶ場合もあります。社会的な協同組合は、政府および労働組合が認める独自の全国レベルの労働協約を結んでいます。他の民間企業では、法的な契約なしに働いたり、短期契約で働くのがごく一般的であることを考えれば、ソーシャル・エンタープライズは安全に働くことのできる優良な職場であると考えることができます。

そのためソーシャル・エンタープライズは、労働市場における若者や、不利な立場にある人々の総合的なインクルージョンに向けて、よい出発点であると考えることができると思います。また、仕事を失ってしまった高齢者もこういう分野で雇われることができるでしょう。

さて、活動の分野と種類ですが、非常に多岐にわたっています(講演1資料1P40『活動の分野と種類』)。社会的協同組合は、社会福祉だけでなく教育、保健衛生…これは、小児や障害者のための保健衛生サービスというのがありますし、また、文化、レジャー、レクリエーション、そしてケータリングサービスなども行っています。

地方自治体と社会的協同組合の関係ですが、大変よい関係が保たれています。最初から非常に強い協力関係を持っており、コミュニティのニーズに応えてきました。多くの事例において、社会的協同組合は、地方自治体と協力しながら地域コミュニティの問題を解決するために設立されました。

特にタイプBの社会的協同組合は、社会的に不利な立場にある人たちの雇用創出のために作られました。貧しい人たちやその他の問題を抱える人たちのために作られたわけです。そして、柔軟性、コミュニティのニーズに関する知識、質の高い革新的なサービスを促進する手腕、それらを発揮することによって地方自治体を支援してきました。また、地方自治体は、今も社会的協同組合を質の高い企業とみなしており、お互いに信頼し合って活動しているということです。

現在、政府機関が資金を使用する際には、EUの公的調達に関する指示に従います。そして、正式な合意を得た透明性のある手続きをとることが義務づけられています。しかし、危険なのは経費節減の論理に基づいて調達が行われることが多いということです。

直接委託契約について、国法381/91は、ソーシャルサービス、その他のアウトソーシングの直接委託契約対象を社会的協同組合とそのコンソーシアムに限ることを規定しています。この法律によって地方自治体は、サービスをアウトソーシングするために正式な公的調達をとらずに自ら満足のいくような交渉相手を決定するということが許されています。
この法律の内容は以下のようなものです。地方自治体は、たとえ地方自治体条例に例外を作ることになったとしても不利な立場にある人たちのための雇用の創出を目的としたソーシャルサービス、その他の活動を実施しているような社会的協同組合と契約を結ぶことが可能になっています。

社会的協同組合は、この契約を地方自治体と結ぶために地域の社会的協同組合名簿に登録をしておかなければなりません。つまり、地方自治体に認められていなければいけませんし、法律を守ってきちんとした契約のもとに仕事をするということです。

この法律を適用するために地方自治体は、具体的な契約事項および品質指標を示す標準的な契約書をいくつか承認しています。1993年、リグリア州の政府は、社会的協同組合およびコンソーシアムとの契約に関するすべての委託基準を網羅した契約要綱を承認しました。この要綱では、地方自治体と社会的協同組合の間で直接合意するためのガイドラインと、パートナーをどのような方法で評価するべきかが記されています。

タイプBの社会的協同組合に関して最も重要な条項というのは、この契約の対象となる活動に従事する従業員のうち少なくとも30%は、社会的に不利な立場にある人たちを含むということです。毎年この組合は、サービスを提供する活動における、不利な立場にある人々の雇用人数とインクルージョンプロジェクトの結果を地方自治体に報告しなければなりません。これを守らなければ地方自治体は契約を解消することもできます。

ジェノバ市は、2001年、社会的協同組合およびコンソーシアムに関する直接委託契約に関する特別条例を承認しました。ジェノバ市でもきちんとしたガイドラインが作られています。

次に、タイプBの社会的協同組合についてですが、条例は次のように規定しています。ジェノバ市は国法381/91の規定に従って、不利な立場にある人々の雇用の創出と、ソーシャル・インクルージョンを目的としたあらゆる種類の活動のためにタイプBの社会的協同組合と契約を結ぶことができます。この契約価格は、公的調達に関するEUの規定額を超えることはできません。

また、社会的協同組合と契約を結ぶ際には、次のような点に留意しなければなりません。契約というのは、不利な立場にある人々の雇用の創出を果たすものでなければならない。そして、不利な立場にある人々を何名雇用するか、これを明らかにしなければならないということになっています。

これまで、いわゆる社会的協同組合の一般的な概要についてお話をしました。

さて、私が勤めておりますヴィッラ・ペルラ・セルヴィスについてお話をしたいと思います。私が勤めておりますこの組合は、タイプBの社会的協同組合です。そして、雇用の創出を目的に活動しております。ヴィッラ・ペルラ・セルヴィスは、1994年、イタリアのジェノバで設立されました。従業員は220名です。この人々は、従業員でもあり組合員でもあるわけです。そのうち83名が社会的に不利な立場にある人々で、総売上高は500万ユーロです。

この社会的協同組合の従業員は、組合員として組合の所有者であり、また、社会的に不利な立場にある人たちに貢献するという独特の特徴を持っています。

ソーシャルサービス地域、コンソーシアムの会員構成ですが、9つのAタイプ、そして2つのBタイプから構成されています。従業員は2,000名を擁していまして、総売上高は3,000万ユーロです。

私たちは、政策としてこのコンソーシアムを作るということを考えています。というのはイタリアにおいて、よく社会的協同組合が一緒になってコンソーシアムを作ります。だからこそ社会的協同組合は育ってきたのだと思います。そして、協力することによって、ソーシャル・エコノミー、社会的企業を増やしていくことができるのだと思います。

このコンソーシアムですが、2つ重要な目的を掲げています。1つは、新しい仕事を見つけるということ。コンソーシアムは、社会的協同組合を促進するために、新しい活動を探します。そして、地方自治体の協力を求めるわけです。また、コンソーシアムですが、タイプA、タイプBの協同組合が一緒になって形成することもあります。私のコンソーシアムはこの2つが混ざり合った形態となっています。ときには、タイプAとタイプBが一緒になって何か活動をしたりします。

私は、ケアハウスをたくさん運営しています。障害を持つ成人や子どものためのケアハウスです。まず、タイプAの組合では、ケアなどを行い、すべての教育であるとか、リハビリのための職員を雇います。ドクターとかナース、音楽療法士などを雇うわけです。そしてタイプBの組合は、他の活動のための人を雇います。たとえば、調理とかその他の仕事をする人を雇うというような協力をしています。

また、コンソーシアムはコミュニティのサービスも行っています。たとえば、ケアハウスなどいろいろな福祉サービスも提供しています。これにより、社会的に不利な立場にある人たちの雇用も生み出すわけです。

さて、私の勤めておりますヴィッラ・ペルラ・セルヴィスでは、さまざまな自助を展開しています。ケータリング、公立学校の給食調理、高齢者向けの食事宅配、そして、在宅高齢者・障害者向けの清掃や調理サービス、公的機関の高齢者在宅事業における洗濯サービス、民間事業および行政を対象にした全体的なサービス、フロントの受付、接客、秘書、電話受付サービスなど、いろいろなことをやっているわけです。

この社会的に不利な人たちの中にはいろんなカテゴリがあり、法で定められている身体障害者、知的障害者などが含まれています。また、少なくとも全体の50%くらいは身体障害者が含まれています。これはヴィッラ・ペルラ・セルヴィスの例ですが、他にもいろいろな疾病により障害を負った人たちも含まれています。このような規定を満たさないと法律によって認められないということです。従って私たちは、そのコミュニティの新たなニーズに常に適応していくということを考えなければなりません。また、状況も常に変化し、新しい疾病が流行るということもあるわけです。ですから、地域社会にとって社会協同組合は非常にありがたい存在ということで、何か問題があったときには相談に行くというような位置づけがなされています。

さて、他のいろいろな不利な立場にある人たち、たとえば、貧しい人たち、1つの収入源しかない家族、扶養する児童を持つ女性、移民… つまり、法律では障害者とは認められていないような人も含まれています。

私たちは、不利な立場にある人々を職場や社会生活に統合していくということが目標です。この使命には社会的価値があります。というのは、幅広いリハビリと教育のプロジェクトにみんなを巻き込んでいくという意味があるからです。

それでは、このような仕事をどのように行っているのかということですが、まず、それぞれの人のためのプロジェクトを計画します。我々の社会協同組合、タイプBならどこでもそうだと思うんですが、責任者を定めます。そして、この人が非常にきちんと地元の社会サービス局と連絡を取ります。ということは、お役所の方にも責任者が定められるということになるわけです。そして、不利な立場にある人たちのためのニーズを検討し、その能力に合った適切な仕事を見つけます。たとえば、チームを組んで仕事をする場合にはそういうグループがあるかどうか、そして、どのくらいの時間働いてもらうのか、そういうことを決めるわけです。そして、ソーシャル・インクルージョンのためのプロジェクトが作られていきます。

最初、不利な立場の人たちは、他の従業員と一緒に仕事をします。そして、他の従業員のうちの1人が教育係になります。この実地訓練の期間に、不利な人々と教育係の人たちは、月に1回、組合の責任者と地元の社会サービスの責任者とミーティングをし、そのプロジェクトがうまくいっているかどうかをモニターするわけです。この試用期間は普通6か月くらいです。しかし、必要な場合には延長することもできます。このトレーニング期間は、さらに6か月延長することもできます。たとえば知的な問題があるというような場合にはなかなか職場に慣れません。ですからもう少し時間が必要になってくると思います。また、試用期間は、不利な立場の人々に対する費用はかかりません。一方でその人は地方自治体から補助金を受けることができます。

最後に、本人とそのプロジェクトについて評価をして、よい評価がもらえた場合には通常の雇用契約で協同組合に雇用されます。そして数か月後、協同組合員になると議決権を与えられ、総会に参加することが可能になります。

ということは、このトレーニング期間が終わると社会的に不利な立場にある人たちは、一人前の従業員として働くことができますし、もしかするといつか企業を立ち上げることができるようになるかもしれません。ですから、非常に大事なことは、従業員は組合員でもあるということです。つまり組合のオーナーにもなるということです。彼らは、組合の活動やその他のことをよく理解しておくということが重要です。そして彼らが今度は他の社会的に不利な立場にある人たちのために貢献するということになるわけです。

それが、使命であり、他の社会的に不利な立場にある人たちのために人間的尊厳を回復するということであり、その人たちのための雇用機会を創出するということです。

以上で私のプレゼンテーションを終わります。何か皆さんの参考になったのであれば幸いです。どうもありがとうございました。

司会:5分残っていますので、1人くらいは、質問をお受けできるかと思います。

カンノ:労働者組合連合会のカンノと申します。二つ質問させていただきます。

一つは、社会的協同組合法の中の目的のところだと思いますが、第1条人間の発達とソーシャル・インクルージョンというコミュニティ全体の利益に貢献する協同組合だということだったと思います。かねがね、人間の発達、ヒューマン・プロモーション、プロモーツィオーネ・ウマーネの内容・考え方をお聞きしたいと思います。

もう一つは、協同組合ですので、ヴィッラ・ペルラ・セルヴィスでは全員が共同組合員であるとおっしゃったと思いますが、組合員になるということは同時に経営に参加し、最終的には他の不利な立場にある人々のために仕事を起こしていく、そういう貢献までするのだということを言われました。障害のある人全員が組合員であり、そういうことに貢献できているということは大変驚きなのですが、そのことについて、もう一度簡単に教えていただきたい。出資金とか経営参加…等を組合員としてどのように活動しているのかということを教えていただけますか。

マランザーナ:もちろん全員が経営に携わるわけではありません。というのも、250人くらいいますので、全員がマネジメントに参加することはできません。しかし、活動に参加することはできます。たとえば、総会に参加することができますし、戦略の決定にも発言権があります。もちろん、マネジメントとして選ばれることもありますし、選ぶこともできます。この運営には、管理職はお金があって会社を立ち上げることができるという人たちばかりで構成されているわけではなく、選出された人たちで構成されているのです。そして、その任期は3年間となっています。ですから、社会的に不利な人たちも管理職、幹部になることができるわけです。そして、1年間に4回開催される総会や、他のミーティング、運営会議も開かれます。これらの会議の席で、今のやり方に不満があれば発言をして、臨時会議を開くことを要請することもできます。そして、幹部を替えるということもできます。ですから、何か重要な決定が行われるときには、いつも総会が開かれます。

司会:協同組合法についてだったと思うのですが、第1条の中に「人間の発達」と書かれています。そのことについてもう少し説明をいただければと思います。

マランザーナ:このヒューマン・プロモーションですが、社会的協同組合は、ただ単に利益を上げるだけではなく、活動を続けていかなければならないということです。つまり、ヒューマン・プロモーションのための活動ということで、コミュニティが必要とするようなものです。

例を申し上げると、社会的協同組合ですので、私たちはエンタープライズであるわけです。ですから、仕事をし、契約を守り、収益を上げなければなりません。そして、所得を上げていかなければならないわけです。しかし、それと同時に、何らかの活動を通し、社会に奉仕しなければなりません。ボランティア活動、寄付、教育プロジェクトを行うといったこともあります。それは、収益にはなりません。所得にもなりません。けれども、文化的な方法でコミュニティに参加し、コミュニティにおける人間の尊厳、そして、ソーシャル・インクルージョンが進められるようにするわけです。ですから、ただ単に仕事を作ってそれでおしまいということではないわけです。

それから、もう一つ大事なことは、我々の協同組合に参加してくれた障害者の人たちはもちろん、責任者として活動してもらわなければなりません。自分たちの問題について、何らかの意見を述べるというか、そういう存在がなければならないわけです。つまり、代表して我々のマネジメントに対して人々の声を伝えるということが必要になってくるわけです。そうすることで、多くの人たちが社会的協同組合に参加することができるようになるでしょうし、また、そういう声を聞けば仕事を変える必要があるかもしれないと気がつきます。そして、人々のニーズに合わせた活動ができるようになると考えています。

司会:ありがとうございました。それではもう一度拍手をお願いします。