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記念講演1
総合リハビリテーションをめぐる最新動向とRIの新戦略

ヤン・アルネ・モンスバッケン
国際リハビリテーション協会ノルウェー会長/RI次期会長

はじめに

 まず、松井先生にとてもすばらしい紹介をしてくださったことに感謝申し上げたいと思います。そして私、今回、日本での総合リハビリテーション研究大会に参加できることをとてもうれしく思っております。なぜなら、日本は国際リハビリテーション協会(RI)のとても重要なメンバーだからです。そして私たちは、RIとしまして皆さまが日本国内、あるいは世界においてもリハビリテーションに関しての考えを伝えていくことに多大な尽力をいただいていることに感謝したいと思います。そして日本障害者リハビリテーション協会におきましては、RIの設立後、89年が経過しておりますが、1959年にその会員になって以来50年以上にわたって協力してくださっています。今回、新会長として日本人の皆さまにお会いできることをとてもうれしく思いますし、RIに対して貢献してくださっていることを心から感謝したいと思います。

 本日の私のプレゼンテーションでは、リハビリテーションに関するさまざまな分野についてお話をしたいと思います。最初に、RIの簡単な概略とその歴史についてお話ししたいと思います。

RIとは

 RIは障害のある人たちにとっての歴史ある国際的なネットワークです。障害者サービス提供者、学術研究者、専門職、政府機関によって構成されています。そして障害者にとってリハビリテーションを必要としている人たちの生活の向上のために活動しています。私どものミッションに関してはまた後ほどお話ししたいと思いますが、今このスライドでもご覧いただけるかと思います。おわかりのようにRIは、とても長い、そしてとても誇らしく思っております歴史がございます。そしてそのことが私たちをさらに先に進むことを可能にしてくれます。私たちは歴史から学び、将来に反映させることもしていかなければなりません。来年、RIは90歳になります。一方、RIノルウェーは、来年には、50歳になります。そういった意味では私たちは二重のお祝いをすることになります。

RI会員(加盟団体)

 私たちの会員に関してですが、国内においてきめ細かな専門性を提供しているさまざまな国内加盟団体がございます。そして日本におきましてもやはり私たちがノルウェーで組織したのと同じような形で組織されていると聞いております。リハビリテーション・ノルウェーには24の独立した団体があり、そしてそれがリハビリテーション・ノルウェーの参加団体になっています。
 RIは100ヶ国を超える加盟団体によっております。この国の中で人権に関わる広範な課題に取り組み、そして地域の実情に踏まえて取り組んでおります。各加盟団体が効果的に活動できるように、地域会議、ワークショップ、研修会を開催して、そして情報共有のための月刊会報を発行しています。そうすることによって相互の連携を図っております。

RI委員会

 RIの委員会について話す前にお話ししたいのですが、私たちRIは6つの地域に分けられます。日本はアジア・太平洋地域のメンバーです。RIヨーロッパもありますし、RI南米、RI北米、そしてアラビア、アフリカと分かれています。アジア・太平洋地域とヨーロッパ地域は2つのとても重要な地域です。RIが良い団体となるためにはこの2つの地域がとても大事です。なぜならRIの財政的な支援のほとんどというのは、ヨーロッパとアジア・太平洋地域からきます。そしてその中で日本が大きな財政的な面をサポートしてくださっています。

RIの歴史

 RIの歴史ですけれども、RIは1922年にまず障害のある子どものサービスを推進するためのボランティア団体として設立されました。そしてその後、RIは障害種別を超えた国際組織に発展し、そして今年2011年に障害分野のリーダーとして89周年を迎えました。

RIによる障害者のための先駆的取り組み

 次にRIが行ってきた障害者に関する先駆的取り組みについてお話ししたいと思います。1968年から69年を通して、RIは障害に関する統計の世界的な調査を初めて実施しました。これは本当に先駆的な取り組みでありまして、その後広く引用される数字、それは少なくとも10人に1人は障害を持って生まれるか、または一生の間に障害者となるという数字を明らかにしました。
 私のプレゼンの後ほど、世界銀行とWHOが共同で発行しました障害に関する世界報告(World Report on Disability)についてお話ししたいと思います。この報告により、1968年から69年に私たちが出した数字を改正しまして、今では世界の全人口の15%が障害を持って生まれるか、または一生の間に障害者となるというふうに改訂されました。つまり世界中の10億人の人たちがそのような状態にあるということです。そしてまた私たちの専門家会議においては、発展途上国に緊急に注意を向けることを提起しまして、今日CBR(Community Based Rehabilitationコミュニティベースド・リハビリテーション)として知られる概念の基礎を打ち立てました。CBRに関することはまた後ほど詳しくお話ししたいと思いますが、このスライドを見ていただきますと、統計的な面においても、また発展途上国でCBRを通じて障害者に多くの貢献をしてきたことがおわかりいただけるかと思います。
 次にこのことも重要な点としてあげられますが、アクセシビリティのシンボルマークです。RIはアクセシビリティについての国際シンボルマークを作成・承認し、1978年に世界的に導入されました。これは、今まで障害者を社会に合わせるという従来の排他的な方法から社会を変えてすべての人を受け入れるという運動の始まりを示すものでした。そして私たちRIの中でもこのアクセシビリティに関しても、ICTA(International Commission on Technology and Accessibility)と言われる委員会が存在しています。これはジョセフ・クワンさん、香港の方ですけれども、この方もアジア・パアシフィクRIとして参加してくださっています。
 また私たちにとって次に重要な年は1979年でした。この年にRIは80年代憲章を作成しました。これは障害分野における国際的な目標を示しております。これは広く翻訳され、多くの国で法制度の改善に影響を与えました。また、この80年代憲章は後の障害者に関する基準規則に大きな影響を与えました。

RIと国連障害者権利条約

 そしてRIは国連障害者権利条約に関しましても積極的に活動してきました。この作業は1999年に始まりました。もう12年前の話です。そしてRIが多くの会議を開会しまして、そして障害者の権利を認めるような条約を作ることを呼びかけてきました。そして2001年にはRI役員によって21世紀憲章が提起され、そして100近くの国や国際的なリーダーに向けて条約の成立を呼びかけました。そして2001年から2006年にかけてRIは5年間に及ぶ障害者権利条約の交渉によって、積極的かつ指導的な役割を果たしました。
 そしてRI事務局はあらゆる国際団体とともに, 国連の障害者権利条約の採択に向けて働きかけてきましたし、また、RIの前事務局長、トーマス・ラガウオルはこの件についてとても貢献してきました。それはアメリカにおいても世界の国々においてもそうです。そして私のスウェーデンの同僚たちは、RIの条約に関する活動に関して多くの資金的援助をしてくれました。そして特にSIDA(スウェーデン国際開発協力庁)と呼ばれるスウェーデンの機関がサポートしてくれました。私たちは、このスウェーデンの同僚とはとても親しくしておりますので、この機会を使いましてスウェーデンの同僚たちとトーマスに対し、多大な貢献について感謝申し上げたいと思います。権利条約という私たちの夢の実現を助けてくださったこと、心より感謝したいと思います。

障害者権利条約の採択

 こちらの写真ですけれども、2006年12月13日にニューヨークの国連で障害者の権利条約が採択されたときの写真です。これはとても長い旅でした。けれども他の多くの国連で行われる条約に関する旅路に比べれば、まだ短いものでした。ゆえに私たちは、この条約に関する戦いというのはとてもすばらしいものだったと思います。RIは、専門家、サービスプロバイダ、政府などさまざまな人たちを一つにしまして、この問題について取り組んできました。それがあったからこそ、この5年間であらゆることを明らかに明記し、その結果、権利条約をニューヨークで採択できたのだと思っております。私たちは皆、これに注ぎ込んだ労力に関してとても誇りに思うべきだと思っています。そしてこれはとても成功した時期だったと思います。それはRIに限らず、障害者の人権について戦ってきたすべての人たちにとってそうだと思います。

RIのその他の活動

 RIの他の活動ですけれども、私たちは災害計画にも取り組んでいます。これについてもまた後ほど詳しく述べたいと思います。
 また、障害のある女性のエンパワメントにも積極的に取り組んでいます。そして次期会長がノルウェーという男女平等の国の出身でありますので、私は障害のある女性に関しては議題に乗せるつもりです。障害のある女性たちは、私たちの言うところの二重の差別に苦しんでいるからです。障害と女性であるということで差別を受けています。私たちは、障害のある女性たちが同じ権利、可能性、機会を享受することを保障するようにしていかなければなりません。

リハビリテーションとハビリテーション

 また、先ほど松井先生も言ってくださいましたが、私たちRIの中では、名前とRIの組織についても多くの議論がされてきました。日本と北欧諸国、そしてドイツが同じ意見を共有しているということをとてもうれしく思います。これは私たちRIの団体の中でもとても積極的にこの問題を考えてきましたし、私たち、この名前はRIの中に「リハビリテーション」という名前がまだ残っているということ、これはとてもすばらしくうれしく思っております。そうすることによって私たちが今まで焦点を当てていたリハビリテーションとハビリテーションに今後さらに取り組んでいけると思っております。
 また、2008年のケベックにおいてRIヨーロッパの副会長に選出され、私は多くの会議に参加してきておりましたし、また、RIの戦略計画を採択するという作業を行ってきました。そうすることによって、RIの一番の中心に焦点を当てることができましたし、それは将来においてもリハビリテーションとハビリテーションということになると思います。
 後に私たち、RIの新しいミッションや活動、そしてリハビリテーションへのコミットメントについてお話ししたいと思います。

リハビリテーションとCBR

 その前に、リハビリテーションとCBRについてお話ししたいと思います。先ほど申し上げましたように、RIはCBRのコンセプトに、初期の頃から携わっておりました。とても長い期間、私たちはこのことに取り組んできました。そしてさまざまなRIの人たちがWHOとも密接に活動してきまして、CBRガイドラインのモデルを作り、それを採択するという活動をしてきました。これはインクルーシブな開発を進めるためのツールです。このスライドを見ていただきますと、このCBRマトリックスをみますと、保健の問題にも携わっていますし、教育にも携わっています。また、生計のことにも関わっていますし、そして社会的な環境、そしてまたエンパワメントというコンセプトがここで書かれています。これは全体的なアプローチとしてのリハビリテーションと言えると思います。このスライドを見ますと、例えば保健のコンセプトの中には、促進、原因の予防、そして医療、リハビリテーション、福祉機器にも関わっていることがおわかりいただけると思います。そしてこれを見ますと、リハビリテーションの全体的なコンセプトがこのCBRプロジェクトに含まれていることがおわかりいただけると思います。
 このCBRのガイドラインは複数の言語に訳されています。日本語に訳されているかどうかはわかりませんけれども、多分訳されているのではないかと思います。
 この中身ですが、このガイダンスは7つの冊子から成っています。序章というのがあり、CBRのコンセプトについて触れています。そしてまた保健に関する冊子もあります。教育に関する冊子、生計に関する冊子、そして社会的な環境、エンパワメントに関して、そしてまた補足的な章があります。
 ここでよい機会でありますので、WHOに対してお礼を申し上げたいと思います。WHOは非常に多くの助力を提供してくださり、CBRのコンセプトを策定する上で助けてくださいました。このガイドラインを作るのに6年かかりました。UNの組織の中に三つの組織が協力してくださいまして、26の組織の協力も得ることができました。また150人以上の専門家の協力もありましたし、RI関係者からの協力もありました。そして29ヶ国に及ぶ300に近い団体がコンセプトの検証に参加してくださいました。そして26の専門家が文書を検証してくださいました。そして合意文書、それは実例としてパートナーシップと協業の実例ですと申しましたけれども、WHOが他の人たちと協力して、非常にガイドラインを成功裡にまとめてくださいました。

CBRガイドラインの目的

 CBRのガイドラインは、貧困削減の促進。地方のニーズの達成支援、福祉の増進、人権の促進、バリアフリー環境の創設、そして積極的な貢献者をつくることを可能にするということ。インクルージョンの促進。また、地域に根ざしたインクルーシブ開発を可能にするということです。これは非常に重要なことです。そしてまた日本の障害者運動や日本の社会は、開発事業に積極的に取り組んでいらっしゃるので、こういったガイドラインも役に立つと思っています。

ノルウェーにおけるリハビリテーション

 次に、私の国のノルウェーに戻ってみたいと思います。簡単に最近におけるリハビリに関するノルウェーでの動きについてご紹介したいと思います。
 ノルウェーでは、この10年間に、いろいろな改革が、よりよいチャンスを、よりよいインクルージョン、アクセスをすべての人に向上させるという目的で起こりました。「すべての人」というのは障害者やリハビリテーションが必要な人たちも含まれています。

ノルウェー労働福祉局(NAV)による改革

 最初に、ナブ(NAV)リフォームというのがあります。詳しくいいますとノルウェー労働福祉局(NAV)のリフォームです。同じ局が労働にと年金について責任を持つということになったわけです。昔は二つの局に分かれて管理していましたけれども、今は同じ局が管理をしているということです。また国は、リハビリテーションとハビリテーションにおける国内戦略を策定しました。3年間に、政治的な非常に活発な論議が、協同による改革について行われてきました。そしてその結果、新しい法律ができました。自治体における保健とケアという法案です。また保健と予防に関する新法と保健とケアのための新行動計画というのも策定されました。
 この5~6年、非常にノルウェーでは政治的に忙しい動きがありました。そして多くの改革が行われてきました。よりよいサポートをすべての人たちに提供すること、保健的な問題がある人たち、リハビリテーションが必要な人たちに対してのサポートが改善されました。
 このNAVというのは2006年1月に設立され、福祉と労働のための共通機関となっています。
 障害者運動ですが、私たちはこういった改革を非常に強く押し進めてきました。私はノルウェーの障害団体連合の代表を1999年から2001年まで務めましたけれども、そのとき既にノルウェー政府に対して、一緒に年金、福祉に関して、そして労働に関しての管理が同じ省庁でされていないということを問題視してまいりました。そしてこの改革を進めてきたわけです。この改革の原義というもの非常にいいものだったわけですが、ただ実際に実行するのは難しかったわけです。そして実際に改革を行うことに関して反対する人たちをいました。ただ、私たちは正しい方向だというふうにまだ信じております。私たちが望むような形にするにはもう少し時間がかかると思っていますが、正しい方向に進んでいるということは確信を持っています。
 このNAVリフォーム、すなはち、ノルウェー労働福祉局のリフォームですけれども、これはすべてのユーザーのために労働に焦点をあてたというところが新しいところです。ノルウェーにおいては、病休などで労働ができないので年金というものを受けている人たちが多くいるわけです。障害を持った人たちというのは、本当はもっと働きたいと思っています。統計でわかりますように、8万の障害者の人たちが年金を受けるよりも働きたいと思っているわけです。
 そしてこの労働福祉局がその助けをするわけですけれども、今まで成功例は見えていません。ノルウェーでの政治家の仕事でもあるわけなんですけれども、これから1週間後、政府は2012年の予算案と一緒に、障害者を労働力として採用する新しい戦略を打ち出します。
 昨日聞かれたことですが、この新しい戦略の中身は何ですかと質問がありました。これに関しての回答は今できません。というのは来週の金曜日まで待たなくては正式な内容を発表できないわけです。ただ、障害者のより多くの雇用につながる戦略に期待を持っております。そして来月、松井先生にサンパウロで具体的なお話ができると思っております。中身について、この労働に関するノルウェー政府の戦略が何であるかということについてより詳しくお伝えすることができると思っております。
 NAVリフォームというのは働けない人のための保障と福祉に関して行われます。年金、高齢者と福祉年金については、同じ局によって統括されております。

協同による改革

 次にお話ししたいことは、協同による改革というものです。
 この構想ですが、ノルウェーの保健局によって2008年から始まりました。この改革の目的は、CBRにさらに焦点を当て、あまり資源や病院には焦点を当てないということです。日本においても病院にかかるコスト、そして特別なヘルスケア、医療に関してのコストというのが問題に上がっていると思います。私たちが特別、医療にかける資金の結果というのは、あまり効率がよくないことも確かだと思います。ですからこの改革によって、もちろんコスト削減というのも目的の一つでありますけれども、また、医療を患者や彼らが生活をしているところにより密着させていくことが目的です。
 そして予防と早期介入ということにも焦点が当てられています。例を挙げますと、2型糖尿病というのはノルウェーにおいても非常に増えています。この協同による改革のコンセプトを使って、個人にとって、そして社会にとって、こういった病気を予防した方がよりよいという構想があります。そして2型糖尿病を予防するということが治療よりも大切で、コスト的にも人の生活にとって予防の方が大切であるという構想のもとから、予防と早期介入に焦点を当てています。
 そしてこの改革においては人々のリハビリテーションにも焦点が当たっています。枠組みに関してですが、国会で2010年5月に採択されました。ちょっと1年前ほどの話です。この予算化ですが、協同による改革の予算として、国と自治体によって行われています。そして正式に開始されるのは2012年の1月になります。つまり、2ヶ月後に正式に開始されます。

CBRに関する新法

 こういった協同による改革を行うことによってCBRに関する新しい法律ができます。CBRに関する自治体レベルでの法律ができます。この提案ですけれども、既に行われています。RIノルウェーは提案に関するコメントを発表しました。そしてこの新法案というのは6月17日に国会で採択されました。すでにお話ししましたように、この法律も2012年から施行されます。
 この法律の焦点というのは、自治体における保健とリハビリテーションの責任を強化するということです。これはCBRの改革であるとも言えるでしょう。
 このビジョンですが、ほとんどの人たちはほとんどの治療を受けられるように、そしてリハビリテーションを受けられるようにということを自治体で可能にするというのが目的です。

リハビリテーションに対する新法の利点

 このリハビリテーションのよいところは何でしょうか。この新しい法律によってすべてのユーザーが個別計画を作成することを定めています。このことは新法で定めています。いろいろなニーズというのが個人別にあります。治療ですとかいろいろなサポートが必要という状況があるでしょう。リハビリテーションの中でもさまざまなニーズがあると思います。こういった個人は、それぞれの個別的な計画を持つことができます。
 そしてまた新しい法律では、病院と自治体の両方が個別のコーディネータを置くべきだということを定めています。その個別のコーディネータがリハビリテーションとそれぞれ個人の職を決める責任を負うということになります。その理由ですが、ノルウェーのリハビリテーション、そして処遇を見てみますと、企業を見てみますと、かなりの多くの人たちが関わっていて、責任者を見てみますと本当に限られた人になっているわけです。ただ、新しい法律では1人のコーディネータが責任を持ち、それぞれの個別の行動計画にそれぞれの個人に対して責任を持つということになっています。この考え方というのは、リハビリの対応の仕方としてよい方向だと思います。皆さんご存じのようにリハビリテーションというのは非常に複雑なプロセスを含むからです。

コーディネーション部門

 そしてまたすべての自治体は、コーディネーション・ユニットを設ける必要があります。コーディネーション部門ですね。処遇、治療、リハビリテーションのコーディネーションの責任を持つ部門を自治体に設けるということになります。
 この部門ですが、個別計画の実施に責任を持つことになります。今までは非常に成功しております。ただ、これから時間をかけて成果を見ていきたいと思います。その内容が実際に機能しているかどうかというのを非常に注意深く見ていきたいと思っています。

政策的課題

 この新しい改革に関しての政策的な課題は何でしょうか。少なくとも2つ、3つの課題というのがあります。
 まず最初の課題というのは、自治体はこういった責任を負うことが本当にできるのかということです。この質問の背景には、435の自治体というのがノルウェーにはあるわけです。そして500万人しか人口はいません。ということはプロの専門家を十分に確保することができるかどうかということです。それぞれの組織、それぞれの自治体に十分な専門家を配置することができるかどうかということです。そしてまたサービスの質はどうなるのかというのも疑問です。専門家の数が少なければ質を疑問視されるわけです。そしてまたまれで複雑なケースに対応できるのかどうかということです。専門的なリハビリテーションが必要な場合に対応できるかどうか。あまりにも複雑なリハビリテーションに関しては人的支援も限られているのではないかということが、私たちの懸念材料です。それによって複雑なニーズを持っている人たちには十分対応できないのではないかということを心配しております。そして、この特別なリハビリテーションですけれども、専門的なリハビリテーションに対応できるのかどうか。そしてこの新法というのは予算作りが主眼なのかどうか。もしくはリハビリテーションもニーズを持っている人たちに対応することが主眼なのか。私たちは両方が実現されることを望んでおります。リハビリテーションの質が低い予算で達成するということが私たちの目標です。そしてぜひその実現を見たいと思っています。
 CBRというのは、エンパワメントと自立生活を促進するよい方法なのかという質問ですけれども、私たちはそうだと思っています。CBRの考え方というのがエンパワメントと自立生活を促進できるものと思っております。ただそのためにはそれぞれの自治体レベルで資金的、そして人的な資源がより必要になってきます。

改革の利点

 それではこの改革の利点は何でしょうか。RIノルウェーは新しい協同戦略が採択される過程でリハビリテーションに強い政策的焦点を当てることが可能となりました。そして、去年の6月に保健庁の大臣が言いましたけれども、今回のこの改革はリハビリテーション改革であるというふうに断言しました。そして多くの政府に反対する野党側も、このリハビリテーションに関して、このプロセスにおけるリハビリテーションに焦点を当てており、ノルウェーにおけるリハビリテーションと政治的なつながりというものを強くしました。
 今、簡単にリハビリテーションに関してノルウェーで何が行われているかについて話してまいりました。

障害に関する世界報告書 2011年6月

 それでは次に障害に関する世界報告書についての話に移りたいと思います。
 今、私の手元にとても大きな本があります。これは世界銀行とWHOによって一緒に作られたものです。この障害に関する世界報告書は、ニューヨークで始まり、WHOと世界銀行により今年の6月に発行されました。これに関しまして多くのさまざまな団体との専門家会議が、このジュネーブにおきまして、6月27日、28日の2日間で行われました。この2日間の会議に私もRIの代表としまして参加しました。そしてその会議はとても実りの多いものだったと思います。
 その会議の目的は、報告書と結果と勧告をどのように異なる社会において、国内レベル、そして国際レベルで実現することができるかということについての話し合いでした。そしてまた、このレポートを書いた人も会議に参加しまして、この会議報告がまた公開しましたら、RIのメンバーの皆さまにもお送りしたいと思っております。
 そしてこの障害に関する世界報告書ですが、ここには9つの異なる勧告があります。この勧告について申し上げますと、まず1番目は、一般のメインストリームの政策、システム、サービスにアクセスできるようにすることです。私は昨日、日本の政府の方々とお会いしましたが、私たちノルウェーでは、障害のある人たちもこのメインストリームに含めるという活動を行ってきています。けれども時にはこのメインストリームに含むということだけでは不十分な場合もあります。従いまして、メインストリーミングの他にも私たち、さまざまな活動を行う必要があります。そうすることによって障害者をあらゆる面において社会に統合することができると思っています。また、メインストリームの政策システム、サービスにアクセスすることはもちろん障害のある人たちにとってとても重要なことです。
 そして2点目の勧告ですけれども、これは障害者のためのプログラムとサービスに投資することです。これは今お話ししましたメインストリーミングとはまた別のものです。これはプログラムとサービスに新たに投資をするということが大事なわけです。
そして3点目、障害に関する国内戦略と行動計画を採択すること。そしてノルウェーにおきましては国内戦略が存在していますし、そして毎年、評価を行っている行動計画もございます。
 勧告の4点目、これは一番重要な点ですが、障害者がこのプロセスに参加することです。 そして次の勧告、5つ目ですが、これは人材の能力を高めること。
 そして6点目は、適切な資金を提供し、購入力を高めること。
 そして7点目は、市民を啓発し障害に関する理解を高めること。個人的に私はこれがこの9つの勧告の中で一番重要だと思っております。なぜなら、この市民の啓発なしに、そして政治的な理解なしに、そして障害というコンセプトが人権のコンセプトであるということの理解がない中で障害のある人たちが他の人たちと同じ権利や可能性をもとにして扱われるということはあり得ないからです。ですので、この障害に関する理解を高めるということが最も重要だと私は思っております。
 そして8点目の勧告ですが、障害に関するデータ収集を進めることです。
 そして9点目として、障害に関する研究を強化し支援することと書かれています。日本でどういう状況なのか、私それほどわかっておりませんが、ノルウェーや北欧諸国では多くの障害に関する研究行われています。けれどもやはり研究分野としましては優先順位の低い分野に置かれています。従って私たちは障害に関する研究を強化することが重要だと思っています。
 以上がこの障害に関する世界報告書の簡単な説明でした。

RI重点領域(2010-2013)

 それでは、2010年から2013年までのRIの重点領域についてお話ししたいと思います。
 私たち、既に言いましたように、リハビリテーションとハビリテーションというのがまず第一の重点領域です。そして障害者権利条約の実施というのもまた同じように大事です。2週間半ほど前に権利条約に関して国連加盟国のミーティングがニューヨークでありました。私、RIの代表としましてその会議に参加しました。そこには RIのビーナス・イラガン事務局長、アン・ホーカー会長もいらっしゃいました。その会議の後で私は、この国連機関は、実際に批准した国から送られてくる報告を処理する人材がとても少ないということを感じました。私たちは、国連が十分な人材をもって各国から送られてくる報告書をレビューするだけの力をつけられるようにすべきだと思いました。なぜなら私たちは、この報告書に対する評価もしくはフィードバックをもらうのに1年から3年もかかってはいけないと思ったからです。
 私たちは貧困削減にも関わっています。国連のミレニアム開発目標について2015年に向けての実施計画というのもありますが、あと4年ほどしかありません。そうしたときに私たちRIは、次の目標に向かってどのような意見を提供するかについて考えていかなければなりません。次のミレニアム開発目標についてノルウェーが担当しておりましたので、ニューヨークのノルウェー大使館において国連に常任している私の友人に連絡をとり、このことについてたくさん討議をいたしました。そしてもっとリハビリテーションや障害に関することが次の目標に組み込まれなければならないということを話しました。そうすることによって、2015年以降の目標に障害とリハビリテーションが組み込まれ、焦点があてられることを確信できるからです。
 そしてまた災害マネジメントに関しましてはまた後ほどお話ししますけれども、この次の二つの点もRIの重点領域に入っています。時間が限られていますので簡単にお話ししたいと思います。
 先ほど私、リハビリテーションとハビリテーションが重要だと申し上げましたが、まず私たち、CBRガイドラインの実施、大事だと思いますし、そしてリハビリテーションのベストプラクティスを集めることも大事だと思います。そしてICFの評価ということも重要です。そして権利条約に関しましては、私たちは国際的な権利擁護キャンペーンを行っていますし、教育モデルのベストプラクティスも探しています。そして私たち、このアクセシビリティの分野にも関わっておりますし、そしてまた雇用も私たちの重点な領域です。
 そしてこの雇用という点は、障害のある人たちがよりよい生活をするためにとても重要だと思います。この雇用というのは、障害のある人たちに仕事を提供し、そうすることによって自尊意識を強め、実際の生活をする手段となるわけです。従いまして、この雇用というのはとても重要な領域と言えます。

紛争と緊急時における障害問題に関するオスロ会議(2011年5月30~31日)

 それでは災害マネジメントに進みたいと思います。皆さまご存じのように、そして私もよく知っていますが、日本は今年、とても大きな自然災害に見舞われました。ノルウェーにおいても7月26日にとてもひどい災害が起きました。ある男性が政府の主要な機関のあるエリアに爆弾を仕掛けまして、そしてオスロの外にある島で無差別乱射を行いました。そこでオスロも今年災害に遭ったという皆さまとの共通な点があると思っています。そして5月30日から31日に、紛争と緊急時における障害問題に関する会議、オスロ会議と呼ばれるものが行われました。これはアトラス・アライアンスというノルウェーの団体の呼びかけで行われました。そこの団体は障害のある人たち、世界中の障害者の開発に関しての問題に関わっている団体であり、そして国連の特別報告官もそれに参加してくださいました。
 アン-マーリット・サボーネスさん、彼女はノルウェーで働いていますが、彼女は国連の国連特別報告者(障害分野)への特別助言者ですが、その方はこの会議に積極的に参加してくださいました。この会議はヨーナス=ガール・ストーレ外務大臣によって開会されました。彼はこの問題にとても真剣に関わってくれまして、さまざまなテーマについて議論されました。紛争時における障害問題であったり、災害時のリスク削減と対応であったり、インクルーシブな再建と復興などが話し合われました。
 そしてこの災害から開発へということも行われまして、そして意識啓発と政策についても語られました。そして国連特別報告官のアン-マーリット・サボーネスさんが声明文を発してくれまして、27つの異なる項目がこの声明文には書かれていまして、これに関してはホームページにも掲載されています。これに関しましては私、日本の主催者に対してもお送りしておりますので、この27項目について、皆さまのお手元にも渡るものではないかと思います。
 この声明文の27項目ですけれども、ホームページのアドレスが、これは私の日本人の友人にもお送りしましたのでそれを見ていただきますと、オスロ会議の内容についてとても重要な会議でしたが、それについてわかることができると思います。そして私たちはノルウェーの外務省とともに、レバノンやベイルートなどの紛争地域の障害者についても語り合いたい、取り組みたいというふうにアプローチしていますけれども、今の段階ではまだかしらの結果が出ておりませんけれども、やはりレバノンにおける状況というのも、このオスロ会議の内容が反映され、そして特に紛争ということに関しましても解決されることを希望しています。今回のこの内容は、特にアラビア諸国におきまして今現在、さまざまな国の内外で民主主義に関しました内紛が行われていますが、その内紛を通じて多くの人が障害を持つに至っています。

おわりに

 それでは私の今回のプレゼンテーションを、最後のこのミッション・ステートメントを読むことによって終わりたいと思います。これは私たちRIグローバルが出した私たちの使命についての宣言です。これはRIが今後、将来に向けてどのようにすべきかということが書いてあります。
 このミッション・ステートメントは来月のブラジルの総会において採択されるものと希望しています。
 「RIの役割というのは、障害者が人生のすべての面において平等参加ができるよう、ハビリテーションとリハビリテーションを促進するための共通のビジョンを持つ多数のステークホルダーの世界的なネットワークになることである。」
 私たちは日本の皆さまと協力していくことをとても楽しみにしています。ミッション・ステートメントにこめられた私たちの思いが、日本、それからアジア・太平洋諸国、世界中で実現することを心より祈っております。
 今回、ここ東京でこのように皆さまの前でお話しできたことをとても光栄に思っております。そして私、既にとても興味深い日々を過ごしております。そして本日一日皆さまと一緒にいられることをとても楽しみにしております。そして皆さまの将来的なリハビリテーション活動が成功することを祈っております。そして日本で行うべきことがすべてうまくいくことを心より祈っております。どうもありがとうございました。