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報告書 フィンランドソーシャルファーム実態調査報告会

はじめに

炭谷 茂
ソーシャルファームジャパン理事長
社会福祉法人 恩賜財団済生会 理事長
日本障害者リハビリテーション協会会長

平成27年8月25日から8月29日までフィンランドに赴き、ソーシャルファームの調査を行いました。25年度のイギリス、26年度のドイツに引き続いての調査であります。

ソーシャルファームは、1970年代にイタリアで精神障害者を対象に始められました。今では障害者全般、難病患者、DV被害者、ホームレス、刑務所出所者等一般の労働市場では仕事を見つけることが困難な人を広く対象にして、ビジネス手法で就労の場を提供として、ヨーロッパ諸国で広く行われるようになっています。

ソーシャルファームは、それぞれの国の経済、社会、国民性等の状況を反映してかなりの差異があります。イギリスは、アメリカの影響を受けて社会的企業と同じように経営を重視する方向が強くなっていました。政府の支援策は、情報提供、研修など環境整備が中心でした。ドイツは、イギリスとは対照的に法律を整備し、手厚い財政援助を行い、国が強力にソーシャルファームの設置を推進していました。

今回調査したフィンランドは、ソーシャルファーム法を制定してソーシャルファームの設立を進めていましたが、経済の停滞から長期失業者の就労に重点を置かざるを得なく、障害者等の就労対策は、後順位になっていました。また、国や地方自治体の関与が強いという特色を持っていましたが、面談をしたソーシャルファームの経営者は、障害者等への理解が深く、民間経営者としての手腕が高く、大変意欲的なことが印象に強く残りました。

3回の海外調査で得られた成果は、大変大きかったと思います。日本におけるソーシャルファームの必要性、重要性、緊急性を確信しました。各国での制度や経験、ノウハウを十分に活用して「日本型ソーシャルファーム」の概念を確立して、日本の環境に合致したソーシャルファームの設立を進めていきたいと思います。これにより障害者、難病患者、高齢者、引きこもりの若者、ホームレス、刑務所出所者等の就労の機会を提供し、社会参加を促進し、ソーシャルインクルージョンの実現を図っていきたいと決意を新たにしています。

末尾ながら今回のフィンランド調査に多大なご協力をいただいた全国労働者共済生活協同組合連合会、大阪府民共済生活協同組合を始め関係各位に感謝申し上げます。