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平成18 年度 DAISY を中心とした情報支援普及啓発事業
障害者への情報支援普及・啓発シンポジウム
-DAISY を中心として-

【講演レジメ】「視覚障害者とデイジー」

岩井和彦
( 社会福祉法人 日本ライトハウス盲人情報文化センター館長/
NPO 全国視覚障害者情報提供施設協会理事長)  


はじめに



 IT 社会の進展により視覚障害者に対する情報提供の手段は一定の広がりを見 せてはいるもののITの恩恵を受ける視覚障害者とそうでないものとの情報格差は 大きくなっているのではないだろうか。
 また、平成1 3 年に厚生労働省が実施した全国身体障害者実態調査では、在宅視 覚障害者のうち実に5 1 . 5 % が7 0 歳以上、7 3 . 4 % が6 0 歳以上という超高齢化の 状態にあり、しかもその大半が高齢になってからの失明という状況である。


Ⅰ  視覚障害者の情報環境2 0 年の歩み



1.視覚障害者情報ネットワークシステム( ないーぶネット)


 近年の視覚障害者のための情報提供に画期的な役割を果たすこととなったのは、 1 9 8 8 年、日本アイ・ビー・エム( 株)の支援で始まったパソコン通信としての「てんや く広場」であり、利用者の‘ 匿名性’が保証された。

会員数 施設 181 個人 4,385
ログイン数 (インターネット)施設
823,001
個人 731,310
(テレフォニー)施設 1,620 個人 9,779
総目録数 ないーぶ 378,793 TRC 651,486
点字出版 6,411
完成目録件数 タイトル数 364,842(うち、点字データのあるもの 75,708)
(内訳)点字 57,041 カセット 163,495
DAISY 43,732 その他(雑誌等) 574
冊巻数 1,649,512(うち、点字データのあるもの 320,920)
ダウンロードタイトル数 施設 60,283 個人 1,619,600
オンリク送信件数 施設 377,245 個人 84,632


利用者の大幅な利用に対応するため、2 0 0 6 年4月「ないーぶネット改修版」として システム構築に着手し、2 0 0 7 年4月から運用開始の予定。


『参考』「ないーぶネット改修版」と現システムとの主な相違点


書誌および点字データの登録手順
書誌および点字データは、「ないーぶネット」のホームページ上で、直接、 登録作業を行います( 現システムではN - L I N K上で登録したデータを、後日、 ホームページに反映させているが、改修版では、ブラウザを使って、直接 ネットワークシステムへ登録作業を行う。登録結果は即時に反映される)。
※ システム障害等に備えて、書誌に関しては、従来どおりN - L I N K からも  登録可能とする。

ユーザビリティ( ユーザーの使いやすさ)への配慮
点字データのダウンロードファイルの形式を、解凍ソフトウェアが不要な、 W i n d o w s 専用自己解凍圧縮形式に変更します。加えて、ダウンロード方法も、  操作が難しいと不評だった「カゴ方式」から「直接ダウン方式」に変更します。  その他、全般的に、ホームページ・デザインの見直しを行い、ユーザビリティの  向上に努めています。

「ジャンル選択」による資料検索が可能
現行システムでは、書名や著者名がはっきりしない場合、目的の資料にたどり 着くのが困難でした( 特に教養図書)。そこで「医学」「歴史」「視覚障害」「鍼灸」 「推理小説」といった見出し項目を、順次、リンク選択するだけで資料検索がで きるように改良しています。

N - L I N K の更新
改修版では、専用のN - L I N K を使用します( 現在、配布しているN - L I N K は、 改修版では使えなくなります)。
改修版用のN - L I N K は、現在使用いただいているN - L I N K と大きな違いは ありませんが、改修版で拡張された書誌目録に対応するよう新たに設計が 加わっています。改修版のサービスイン前に配布する予定です。

テレフォニー機能の省略( 個人会員のみ)
現行システムでは、電話で図書の検索やオンラインリクエストが行なえるテレ フォニー機能を備えておりましたが、ご利用の頻度が低いこと、そして、システ ム全体のスリム化を考え、改修版ではこの機能を省きます。

2.録音資料のデジタル化( D A I S Y 化)

 視覚障害者情報環境でのもう一つの大きな動きは、デジタル録音図書製作とし てのD A I S Y( デイジー D i g i t a l A c c e s s i b l e I n f o r m a t i o n S y s t e m )の急速な普及である。
※『参考』びぶりおネット概念図

3.カセットからデイジーへ

※ 「カセット・テープからDAISY 図書へ」参照

『参考』「点字・録音図書のデジタル化とインターネット配信の歩み」

  点字 録音 視覚障害者用
デジタル機器
ないーぶネット びぶりおネット他  
1986     点字プリンターE S A 7 21
1987     M S - D O S 音声化ソフトVDM100
1988 I B M てんやく広場開始    
1990     点字エディターBASE
1991     点字ディスプレイ・ブレイルノート4 0 A
1994 視覚障害者個人利用開始
点字・録音総合目録搭載
   
1996 当館:ホスト事務局   ウィンドウズ音声化ソフト9 5 R E A D E R
1998 全視情協:ないーぶネット 当館:デイジー図書製作・貸出開始 DAISY図書再生機プレクストーク
2001 インターネット化   障害者情報バリアフリー化支援事業
2002     DAISY 録音再生機PTR1
2004   当館+日点:びぶりお
ネット開始
PTR1が日常生活用具に指定
2005   点字データも登録  
2006   他館の録音データも
アップ開始
当館:インターネットに
よる録音図書共同製
作・提供システム開発
ネット接続用D A I S Y 端末
P T X 試作
2007 ないーぶネット改修版    

Ⅱ  視覚障害者とマルチメディア・デイジー



1.デイジー図書紹介


DAISY は、視覚障害者のためのカセットテープの代わりの長時間収録できる CD 図書を作るシステム( 初代デイジー)として誕生した。デイジー図書の特徴は目次から読みたい章や節、任意のページに飛ぶことができる。

  • M P3などの最新の音声圧縮技術で1枚のCD にに5 0 時間以上の収録が可能である。
  • マルチメディア・デイジー図書は、音声にテキスト・画像を同期させることができることで‘ 主体的な読書’ を可能にした。

2.ビデオ試聴 ~ 国立函館視力障害者センターでの実践( 5 分)



3.視覚障害者からみたDaisy/ マルチメディアDaisy への課題


  • デイジー図書の制作に視覚障害者がどこまで参加できるか ~
    「わたし作る人、ぼく食べる人」はだめ
  • 多媒体での利用を可能とする端末の開発 ~ IPod・携帯電話…
  • 持ち運びの可能な小型機への期待 ~パソコンのキーボードからの解放
  • 2004年11月、PTN( 再生専用機)登場 ~カセットと同じ程度の簡単な 機械への期待( ボタンが大きい、数字ボタンがない

Ⅲ 視覚障害者の情報環境あれこれ


1.郵政事業が公社から民営化に ~ 公的責任が曖昧に
2.D A I S Y 図書再生機の日常生活用具化の位置づけと問題点
3.「障害者の情報アクセス権と著作権問題の解決を求める声明」
4.視覚障害者情報提供施設と著作権





  • 点字のデータ送信
  • 事前意志表示
  • 障害者用音訳資料作成の一括許諾
  • 拡大教科書および点字教科書の無償給与と著作権問題
  • 録音図書の公衆送信権に関する「権利制限の見直し」


5.視覚障害者情報提供施設の「設備及び運営に関する基準」の 職員配置基準の見直し~ 音声訳指導員・情報支援員の位置づけ