音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「国連・障害者の十年」最終年記念 北欧福祉セミナー

 

資料2

資料2 スウェーデンにおける障害者援助 Fact Sheets on Sweden
 スウェーデンは国土は小さいが、高度に工業化しており、約170年間戦争を経験していない。第二次世界大戦の直後から1970年代までの間にめざましい経済成長をとげ、多くの大胆な社会改革が可能となった。障害者も直接、間接にこの改革の影響を受けてきた。

 強力な中央行政機関と高度に発展した地方行政機関(全国で282ある地方自治体のコミューン、および全国に23あり医療を主とする県規模のランスティングの2つが中心)が協調している点にもこの国の特徴がある。コミューン、ランスティングは共に課税権があり、各自の議決機関の代表を選出でき、多くの公共サービスに責任をもつ。行政制度は国、ランスティング、コミューンという三つのレベルからなり、雇用、教育、医療、社会保障等の重要な部門におけるほとんどの公共サービスは伝統的にこれらの公的機関が提供する。私的職業あっ旋業務は法律で禁止され、私立の学校や病院の数も比較的限られる。公共医療や社会保障の歴史は古く、起源は遠く16世紀にまでさかのぼる。これは、障害者援助等の社会福祉活動を行う慈善団体が、他の多くの国ほど活発でなかったためである。

 もう一つ重要な要素は強力な障害者運動の存在にみられる様な大衆運動の伝統である。現在、コミューンやレーン(国を24に分けた行政区域)には1,200以上の障害者協会が組織され、約40万人が加盟している。様々な障害者グループの全国組織が約30あり、これら協会のほとんどが、すべてのレーンと、多くのコミューンに地方委員会を置く全国障害者協会中央委員会(HandikappfOrbundens Centralkommitte HCK)のもとで協力し合っている。

 スウェーデンの障害者運動は障害者自身の団体による運動である点で、他の多くの国の民間の障害者のための大衆運動と違っている。これらの組織では障害者が圧倒的多数を占め、最近では社会政策に対する圧力団体としての社会的機能を果すようになっている。行政機関は障害者政策を立案するにあたり、これらの組織からの意見を重要な参考意見としている。また草案に対して意見を述べる機会が与えられ、中央政府やランスティング、コミューンレベルの調査のためにつくられた参考人グループ、実行委員会その他の委員会等の討議に参加できる。行政当局と障害者組織との連絡の機会を増すために、政策決定の様々なレベルで特別調整機関(障害者協議会)が設けられている。

 1981年の国際障害者年にあたり、スウェーデンでもこの問題にとりくむため、行動計画がつくられ、1983年に議会に提出された。その後政府障害者理事会(Statens handikapprad)が様々な社会部門においてこの行動計画がどれだけ実施されたかの調査を行った。この調査で、障害者のおかれる環境は著しく改善されたが、社会との障壁を失くすには、なすべきことがまだ多くある点が判った。経済の良し悪してこの分野の改善が損なわれてはならないという障害者政策の重要な方針が一つある。しかし調査は、社会経済の縮小が障害者にも影響を与えていることを明らかにしている。提供されるサービスにコミューン間で相当の格差があり、特にホームヘルパーと送迎サービスで顕著である。移動が不自由な人には、良い福祉機器が活動的で自立した生活を営む上で絶対不可欠なものである。そうした機器が得られるかどうかは、各コミューンの経済的事情によることがとても多い。

「障害」とは何を意味するか
 障害者政策は、障害者が他の人と同様に社会生活に参加し、正常な生活ができることを目的としている。働いて収入を得、幸せな家庭を築き、好きな所に行き、やりがいのある仕事にっき、余暇を楽しむ機会が障害者にも同様に与えられるべきである。中央や地方の行政機関はそれぞれ独自の分野で、こうした問題の解決にあたる責任がある。

 障害とそれに伴う社会的不利(ハンディキャップ)かどのような状態をさしているかについての政府の見解が、幾つかの法案と法律の規定に示されている。ハンディキャップは、傷害や病気を原因とする障害のある人に固有な特性ではなく、その人と環境との関わりをさすと考えられる。これは、世界保健機構(WHO)の定義とほぼ一致するもので、ハンディキャップを個人の問題から、社会的環境問題に転じるものである。この考えが重要であるのは、社会的活動を組織する際に、それが私的なものであれ公的なものであれ、障害者を含めて誰でもそれに参加できるように配慮する社会的責任が生じてくるからである。これにより障害が社会的ハンディキャップとなることを防ぐことができる。

 国内の障害者の正確な数は明らかではないが、歩行器官や身体内部器官が十分に機能しないため行動の自由に著しい障害をきたしたり、自由が制限されている15歳から75歳までの人の数は約80万人にのぼると推定される。更に重度の障害者は29万人、車椅子を必要とする人は3万人と推定される。眼鏡をかけても通常の文字を読めない重度視力障害者は20万人にのぼると推定され、1万人近くは全盲か、移動のための視力を欠いている。聴力障害者の数は推定80万人、そのうち20万人が補聴器を必要とするとされている。聾者は推定約1万人である。

 知的障害のために特別の保護とケアを受けている人は約3万6,000人いる。これは全人口の0.4%強に当る。さらに数千人がこのような保護を必要とすると考えられる。スウェーデンの障害者政策は、障害者に対する特別措置を可能なかぎり回避し、代りに社会全体をすべての人が参加できる場に変えることを目標としている。こうして、障害者のかかえる問題は社会全体の責任により解決されるべき社会問題となる。

法律
 他の多くの国とは対照的にスウェーデンには障害者の権利を守るための一般的法規は特にない。障害者のかかえる様々な問題を関連分野に統合する努力がされ、特別の規定は個々の法規(例えば、建築法、社会保障法)の中に織りこまれている。他の法律(例えば、教育法、労働環境法)では、それが障害者にも提供されることは自明のこととされているか、法律の前文で障害者にも当該法が適用される旨が述べられている。

 しかしこれには一つだけ例外がある。それは「精神発達遅滞者に対する特別法」で、知的発育が遅れている人ばかりでなく、成人に達してから脳に障害を受け、知的能力に重大かっ永続的な障害をきたした人、幼少期に精神疾患(自閉症等)にかかった人にも適用される。この法律は当然、一般国民に提供されるサービスの範囲をこえた特別な援助に対し適用される。この法律による特別なサービスとは次のものである。
 
-専門家や専門機関による相談サービスを含めた支援活動。
-学校教育を修了し、かっ職業にも教育課程にも就いていない障害者に対する、デイ・センターでの日常活動を始めとする活動。
-障害者をかかえる親族を障害者の世話や監督の仕事から解放するため、障害者の家庭外施設への一時収容。12歳以上の就学年齢にある障害者の家庭外施設における一時監督。
-やむをえない理由から両親と同居できない子供や若者の寄宿舎や養護ホームヘの収容。
-自分の家庭での生活が不可能な成人のための施設における集団生活。

 最近の傾向は、中央政府によるコミューンおよびランスティングの活動に対するコントロールを緩和するために、具体的な決定は自治体にゆだねた包括的立法化のケースが増えてきている。ホームヘルプ・サービスや移動サービス(後述参照)などのように特に重要とおもわれる援助活動には特別国家補助を与えることにより、そうした援助活動が実行されるよう保証している。障害者に対する援助責任は最終的にはコミューンが負う。

ケア、社会適応訓練、社会復帰訓練、技術的援助
 通常の医療サービス機関(ランスティングが運営)は、障害者が必要とするケアを提供することも義務づけられている。障害者に社会適応訓練や社会復帰訓練を行うこともランスティング当局の責任とされている。各ランスティングには、障害者のための視聴覚センターが組織されており、そこでは視聴覚コンサルタントや物理療法士、技工士、身体機能回復訓練士が、障害児の社会適応訓練や成人障害者の社会復帰訓練に当っている。

 障害者用福祉機器は原則として無料で提供される。所得による資格検査はなく、援助額にも上限はない。機器の修理や補修サービスも無料である。技術援助サービスの中こは検査、処方、調整、情報提供、訓練などが含まれている。耳の不自由な人、耳と目の不自由な人、あるいは言語障害のある人のための通訳も技術援助サービスの一環として行われるが、地方により技術援助サービスの内容は一様ではない。

 ランスティングの障害者技術援助に対しては、住民一人当り年間いくらと定めた健康保険制度を通じて、政府からランスティング当局に対し費用が償還される。

住宅と物理的環境
 スウェーデンの住宅政策の目標は、十分に計画された、健康的で実用的、高水準の住宅を適切な価格ですべての国民に提供することにある。住宅の計副こは、老人や障害者に対して特別の配慮がなされねばならない。

 建築法条例によれば、特別の場合を除きすべての住宅は、移動と適応能力に障害のある人も利用できる設計でなければならない。この規定は新築にも大幅な改築にも適用される。

 住宅の供給はコミューン当局の責任である。それぞれの必要を満たす住宅をすべての住民に提供するという、住宅政策の目標にかなった住宅計画を立てねばならない。すぐれた住宅環境を保証し、各種サービス、交通の便を住民に提供できるように住宅地区を計画することもコミューン当局の責任である。建築法条例で定められたガイドラインに添った住宅計画のもとで建てられた普通の近代的住宅であれば、ほとんどの障害者が生活していけることが明らかになっている。

 しかし、身体が非常に不自由な人やその他の重度障害者には、特別の対策がしばしば必要となる。障害者が必要に応じてそれぞれの住宅を改造できるように、政府は特別の補助金を支給している。住宅改造補助金は古い住宅にも新築にも適用される。またあらゆる障害(歩行障害者、視覚障害者、アレルギー症、てんかん症、乾せん症、人工肛門手術を受けた人、身長が極端に低い人、知的障害者等)に対してこの補助金制度は適用される。

 住宅改造補助金の対象となるのは、睡眠や休息、衛生への配慮、調理、食事、住居内で移動等、住居内で基本的生活機能を営むために必要な住居の改造である。

 1950年代には障害者専用の特別アパートをコミューン当局が建てるケースが多かった。その後、建築法条例が改正され住宅改造補助金制度が導入されたために、障害者用の特別アパートは必要でなくなって来た。

 重度肢体不自由者やその他重度障害者に対して良い住宅や適切なサービスを提供するため、いつでもホームヘルプ・サービスが呼び出せる障害者用の特別アパートもつくられている。つまり24時間体制で、障害者は必要なケアが受けられる。

 このような特別アパートは通常、コミューンにより管理されている。所得が一定水準以下の障害者はコミューンが支給する住宅手当てを受けられる。この制度は、住居費が居住者の収入の20%を越えないことを目的としている。

社会サービス
 自宅で生活する老人や障害者は、日常生活を支障なくおくるために様々な援助やサービスを受ける必要がある。このようなサービスの提供はコミューン当局の責任である。いくつかのタイプの活動があるが、どのサービスが適当かは、受給者側の必要と地域性にあわせて決められる。

 ホームヘルプ・サービスはすべてのコミューンが行っている。このタイプのサービスは主として、掃除、食事の準備、買い物、衣類の世話、衛生管理等、住居内での生活に必要なサービスである。

 しかし最近では、散歩や文化施設への付き添いなどのエスコート・サービスもホームヘルプ・サービスの一環となってきている。障害者は社会的にも文化的にも孤立しがちなので、この深刻な問題の解消をめざしている。

 これら以外に、足のつめや頭髪の世話、入浴や食事や電話の世話、運動やレジャー活動の世話、図書館サービス、洗濯物の世話、雪かきサービスなども、ほとんどのコミューンで老人や障害者に提供している。

 政府はコミューンに補助金を出している。この補助金の額は一年毎にホームヘルプ・サービスに従事する従業員1人当りにつき実際に行った仕事量に対して支払われる額とコミューン内に住む老齢年金・身障年金の受給資格者1人当りに対して支払われる標準額からなる。

 ホームヘルプ・サービスに払う個人負担額は原則として所得により決まる。他にも個人負担の必要なサービスがいくつかある。

施設
 最近の傾向として、障害者を施設から様々な形態の独立した住宅に移し、社会に溶け込まそうとしており、知的障害者の場合に特に力が入れられている。

 今日、施設に住む知的障害者の数は7,000人にのぼり、そのほとんどが年配の人である。一般的にそれより若い知的障害者は、寄宿家庭等、より家庭的な環境の中で生活している。施設に住む肢体不自由者の数は4万7,000人にのぼり、その9.5%が16歳から74歳の年齢層である。重度障害者の多くは施設に住むことを余儀なくさせられているが、これは一般の住宅では、必要とするサービスや看護を提供できないためである。

 施設を管轄する機関は異なる。住宅に関する全般的責任は、法律で地方当局が負うことになっている。ただし施設での生活の一部に医療が含まれている場合、ランスティング又は国が管轄機関となることがある。

 他の障害者用住宅形態として、集合ホームやグループホームも存在する。これは、長期間施設生活をしてきたが、自立して日常生活が営めるようになるべき人々のための過度的な、訓練用住居として使われており、主に精神医療ケアや知的障害者のケアで試みられている。ホームは、障害者だけで生活している場合とそれに看護スタッフが加わる場合がある。

交通
 通常、プラットホーム、駅その他を含む公共交通施設は、肢体不自由、視覚聴覚障害等、肉体的障害を持っ人々には使いにくく設計されている。

 これらの人々の交通手段を解決するため交通サービスとよばれる特別交通システムがある。コミューンは、タクシー又は重度障害者用特別仕様車を提供、35%の政府補助を受ける。

 各コミューンは、独自に交通サービス利用資格者を決定、交通サービス証を交付する。Svenska Kommunforbundet(全国コミューン連盟)は地方当局に対し、決定に際し障害の性質や程度を考慮することを勧告している。30万人以上がこの交通サービス利用の権利を有している。

 利用者の個人負担額はコミューンにより異なる。全国コミューン連盟は、地方当局に対し、公共交通機関利用料金に相当する額の徴収を勧告している。多くの地方当局は、交通サービスの利用距離、または回数に制限を設けている。

 障害者は、国内どこへ行くにも交通サービスが利用でき、たとえ航空機、乗用車、バスを使い、付添人が必要であっても、二等鉄道料金相当額を負担するだけでよく、残りは国の基金で賄われている。

児童保育
 就学前学校や諸余暇活動が社会の児童保育策としてあり、就学前学校又は余暇センターに通う権利をすべての子供に持たせるべきだとの要求が次第に強くなってきている。特に保育所の急激な拡充が1960年代中頃に始まったが、背景には職業を持つ母親の数の大幅な増大という事情がある。

 1982年に施行された社会サービス法は、1977年の児童福祉法を統合したもので、適用を受けるのは0-12歳までの子供である。同法は、知的障害のある子供の就学前学校への受け入れが優先的に行われるべきだと規定している。優先規定は、通常の就学前学校や余暇センター活動に参加する権利を障害児に認め、そのため必要な援助を障害児に与える責任を地方当局に義務づけたものである。現在ほとんどすべての障害児は普通のコミューン就学前学校に通っている。これが不可能な地域では、普通の就学前学校に特別グループを設ける方法がとられる。

 ランスティングがつくった肢体不自由児のための社会適応訓練機関によって、医療診断や治療、物理療法、作業療法、話方訓練、社会カウンセリングや、また「特別就学前学校」と呼ばれる就学前学校教育の充実がはかられている。現在、多くのランスティングが合同の社会適応訓練機関を設立し、主に心身障害児のための便宜の充実を図っている。

 ランスティングの実施するヒアリング教育サービスとして特別訓練を受けた就学前学校教員がいる。彼らの仕事は、子供の言語能力の発達を促し、家庭を支援することである。聴覚障害の軽い子は普通の就学前学校へ通う。ヒアリング教育サービスの特別教員は、子供とスタッフを支援するため定期的に巡回してくる。聾児や重度聴覚障害児には、特別就学前学校がある。ここでの諸活動は、子供達自身のニーズに基づいている。通常の聴覚を持った子供達もこの就学前学校に通う。聾児、又は聴覚障害児達だけで構成されたグループも少数ある。しかし主要都市部以外では、これらの子供達の数が少なすぎて、この種のグループはめったにない。

 就学前学校コンサルタントが視覚障害のある子供達のために働いている。かれらは家庭や就学前学校に出向き、教育援助を子供達、両親、スタッフに与える。就学前学校コンサルタントとランスティングの社会適応訓練プログラムの間には緊密な協力が必要である。視覚障害を持つ子供の大部分は歩行能力の発達が損なわれ、約40%は知的障害がある。

 スウェーデンにおける就学前学校年齢の知的障害児の約90%は普通の就学前学校に通い、残りの子供達は、通例普通の就学前学校の建物の中に設けられたグループに入る。

 てんかん、ぜんそく、血友病等、他の障害を持っ子供達は、普通のコミューン就学前学校に通う。

教育
 障害者も他の人と同様に教育を受け、原則的には諸活動にも同様に参加する権利があるとの基本原則のもとに障害者教育が行われている。

 これは初等中等教育において、障害児が通常の基礎学校や高等学校で教育を受けられるように、最大の努力を払うことを意味する。実現にはほとんどの場合、小人数グループ、特別な訓練を受けた教員、福祉機器、介助等の特別な便宜を図る必要がある。政府援助を受け、基礎学校(日本の小・中学校に相当)ではこれが段々と充実しており、高等学校でもある程度便宜が図られている。現在、肢体不自由児や視覚・聴覚障害の児童の大部分が普通のクラスか、普通の学校の特別クラスで勉強している。

 重度視覚障害児の特別学校は(国営)が全国に2技あり、一校は視覚以外の障害もある児童の学校である。聾児の特別学校は全国に7校ある。

 視覚障害児の特別学校は、教員や就学前学校アドバイザー派遣の指導センターとして機能し、派遣された人々は、全国をまわり教員や、視覚障害の就学児童や就学前児童に教育上のカウンセリングを行う。

 聾児の為の特別学校には同様な動きはない。手話の習得が重視されているので同じ意思伝達手段を持つ他の聴覚障害児と接触する必要があり、特別学校が残されている。しかし以前のように学校で共同生活はせず、両親と自宅で生活するか、あるいは普通の住宅地域にあるホステル、住宅、アパートで生活する。

 ほとんどの障害児が普通の高等学校で学習できる。重度肢体不自由児のためにはストックホルムに特別高等学校、聾児にはエーレブルーに特別高等学校がある。

 ちえ遅れの子供の特別学校もあり、総合制学校、訓練所、職業学校を含み、通例普通の学校と同じ建物の中におかれている。

 大学その他の高等教育機関では、障害者は通常の授業に参加している。特別の補助器具を必要とする学生は各大学にある教育補助器具センターで器具の支給を受けたり借りたりできる。大学や高等教育機関は、授業中に障害者に特別の援助を与えたり、大学にいる時間内に介助を提供している。さらに障害者は自宅での日常生活に付添サービスを受ける権利があり、このサービスは学生には無料で地方当局が提供、経費は政府が払い戻す。

 多くの成人障害者は、若いときに十分な教育を受けられなかった。かれらに様々な形態の成人教育に参加する機会を与えるのはきわめて重要である。かれらは成人教育の主要ターゲットグループの一つとなっている。すべての成人教育団体やコミューン成人学校、国民高等学校は、障害者のための特別なコースを組んでいる。ここ数年間、障害者用のコースでの小人数クラス編成、生徒への介助、教育設備の充実等の努力に対し政府補助金が支給されている。付添サービスは国民高等学校で学習する重度障害者も受けられる。成人教育団体が行う障害者のための各種活動にも政府補助金が支給される。

文化
 成人教育団体と障害者組織の協力で、障害者が文化生活に親しむ機会が増し、これには特別政府援助が与えられる。聴覚障害者のための手話通訳養成、視覚障害者用の耳で聞く本や点字本、ちえ遅れの人用の特別に平易な文で書かれた書物作成も同援助で賄われている。さらに視覚障害者用新聞の発行や聴覚障害者のための演劇も政府補助の対象となる。

労働生活
 「完全雇用」が労働政策の目標である。これには、障害者が一般市場で職を得やすくしたり、それも不可能な人には雇用の機会を創り出したりする努力も含まれる。

 障害者でも十分に働けるように労働環境を整えることが障害者の職場進出のための必要条件である。職場にも適用される建築法の規定以外にも、労働環境法により雇用主は従業員の肉体的精神的要求に合った労働条件(作業環境、仕事の分担等)を提供する義務を負っている。これは様々な障害を持つ人の特殊事情を考慮して職場環境を調整する必要もあることを意味している。

 障害者も求職に際し、通常の職業安定所の援助を受ける権利がある。労働市場当局は、障害者が一般市場で職を得やすくするか、それに代わる雇用を作り出すことを目指す下記の一連の労働市場政策措置をとっている。
 
-作業適性検査、作業訓練、綿密な職業ガイダンス等が各雇用性判断センターで実施される。同センターは職業再訓練組織再編成の結果生まれた。再編成後の財政的運営は国により行われ、組織は労働市場管理局(Arbetsmarknadsverket)の一部となっている。
-各労働市場訓練センターで行われる職業訓練。
-一般労働市場での職業訓練。雇用主は補助金が支給され、訓練生は従業員となり労働協約に基づく賃金と雇用諸手当が支給される。
-見習期間の協定があることを前提として、当事者同土が同意している場合、職業訓練は年配者や障害者の社内訓練と組み合わせができる。
 特殊事情をかかえる従業員のため、職場改造や作業補助器具の必要がある場合、職業安定所から補助金が受けられる。補助の対象として特に以下のものが重要である。
 
-障害者用自動車購入に対する補助金。所得が一定水準を超えないことが条件となる。自動車の改造にも補助が受けられる。
-職場の特殊な改造(個々の持ち場、作業場、出入口、連絡手段の改造等)
-特殊な補助具の提供
-労働介助者の補助金

 障害者が一般労働市場で職を得たり、保護雇用の職場で働いたり、自営業を営めるようにすることが労働市場政策措置の目的である。障害者の雇用促進のため、雇用主に賃金助成金が支給される。

 雇用主に対し一定数の障害者の雇用を義務付ける割当制度は存在しない。

 SAMHALL(サムハル)は、国有企業グループで、障害者の保護雇用の責任を負い、1980年に障害者用特別作業所と産業救済作業施設とが統合されて生まれた。

 1986年現在24のレーン経営企業があり、各企業はそれぞれのレーンの中に平均14の作業所(従業員数2万6,000人)を置き、従業員教育、部門間の調整、生産、マーケティングの責任を負っている。

 労働作業の組織や何を生産するかは、働く従業員の能力を考慮して決める問題である。作業所で生産されるのは、すべて工業製品で大半はほかの企業の下請生産である。収入の46%は企業収益、残り54%は政府補助金である。

 すべての作業所の雇用斡旋は、職業安定所を通じて行われる。通常の労働市場で職を得られない障害者に職場を提供することがSAMHALLの役目である。

 SAMHALLの雇用は、通常の労働市場で雇用される見込を強めるものでなければならない。

 1974年には、労働市場における従業員、特に年配労働者や障害者の立場の強化を目的とした二つの法律がつくられた。雇用保障法は、すべての従業員に雇用保障を強化することを目的としている。解雇や一時解雇の際、年配者や障害者が不当に差別されないよう特別の保護規定が設けられている。特別雇用促進法は、年配者や障害者の一般市場における雇用機会促進を目的としたものである。この法律に基づき、労働市場当局は雇用主や労働組合と交渉を行い、情報提供を要求し、最終的手段としては職業安定所が指定した求職者を雇用するよう命じることができる。

 過去数年間、障害者の雇用は芳しくない傾向にある。労働市場政策は、この傾向に歯止めをかけ、特に一般市場における障害者の雇用機会増大を目的とする。

 ちえ遅れの成人は、デイ・センターで特別社会保障サービスを受けられる。約280のセンターが全国におかれ、計8,925人の受け入れ能力がある。

社会保険
 国民社会保険のもとで、特に障害者を対象とした特典が幾つかある。

 病気または肉体的、精神的機能低下等、健康上の理由から、働いて収入を得られない65歳の一般年金受給年齢に達していない16歳以上の人に経済的保障をするのが障害者年金制度である。

 障害者年金は、少なくとも半分以下に労働能力を失った人に支給され、能力の喪失程度に応じて全額、2/3、半額支給のいずれかになる。

 障害者年金には基本年金と付加年金の二つがある。基本年金制度による障害者年金は、全額支給の場合老齢年金と同額、つまり基礎額(1987年10月現在24、500SEK)の96%が支給される。基礎額は、物価スライド制や社会保障給付金支給額算定の基礎となる。付加年金制度による障害者年金は、年金の対象となる収入が一定の年数あった人にすべてに支給される。また付加年金額の低い人や受給資格の無い人に、年金補助が適用される。

 障害者年金は課税の対象となり、これに関する決定は社会保障事務所が行う。一時障害者年金にも、通常の障害者年金と同じ規定が適用される。これは、一定期間に限って支給される年金であり、労働能力の減退が永久的なものではないが、回復にかなりの時間がかかる(原則として一年以上)場合に支給される。

 障害者手当の目的は、障害のある期間必要となる援助や特別な出費をカバーするための経済的援助を与えることである。障害者手当の対象となるのは、16歳以上で、65歳に達する前に障害をきたし、精神的、肉体的障害の状態がかなりの期間にわたり(原則として一年以上)、次のようなことを要するような場合である。
 
-日常生活にかなりの時間にわたり他の人の助けを必要とする場合。
-仕事や学習に、常に他人の介助を要する場合。
-その他、かなりの額の特別出費が必要な場合。

 障害者手当の支給額は、介助を要する程度と特別な経済的負担額により、基礎額の65%、50%、34%となる。盲人、聾者、重度視覚障害者に対しては例外なく障害者手当が支給される。公的機関が運営する、または運営上の財政的援助を受ける施設で看護を受ける障害者には、障害者手当は支給されない。

 障害者手当は課税の対象とならず、同手当に関する決定は社会保険事務所が行う。

 育児手当は、病気、ちえ遅れその他の障害のために特別看護や監督が相当長期間に渡って必要とされる16歳以下の子供の世話をする両親に支給される。育児手当には、子供の看護費に対する補助金と、子供の障害のためにかかる特別な経済的負担に対する補助金が含まれる。この手当は課税の対象となる。

 子供の看護の必要程度や他の特別出費の種類で、育児手当は全額支給の場合と、半額支給の場合がある。支給額は基本年金、付加年金制度による障害者年金と同じである。

 育児手当は、国またはランスティング、地方当局が運営する、あるいは補助金を支給している施設で看護を受けている障害児の両親に対しては支給されないが、3ヵ月に一度、最低10日以上自宅に滞在する障害児を持つ両親には、休暇看護手当が支給される。

(注)SEK=スウェーデン・クローナ
1SEK=19.7円(1988年11月現在)

 

資料3

開催要項(東京分)
印刷物 解散要項(東京分)

プログラム
印刷物 セミナーのプログラム

 

資料4

(財)中央競馬社会福祉財団のあらまし

財団のあゆみ


 中央競馬は、健全娯楽として多くのファンに支えられ、親しまれて、著しい成長をとげてきました。日本中央競馬会は、馬券の売上の10%と、さらに決算をして剰余があれば、その2分の1相当額を日本中央競馬会法の定めるところにより、毎年国庫納付金として納めなければならないことになっています。

 国はその納付された総額の25%の額を民間会社福祉事業の振興のために充てることとされていますので、ちなみに、平成4年度において厚生省を通じて我が国の社会福祉事業に寄与した額は約1,135億円という巨額になりますが、これは国の一般会計として執行されています。

 かねてから、中央競馬の馬主たちの間で、自分たちの手で、かつ、目に見える形で社会福祉に貢献したいという気運があり、これに併せて競馬に対する社会の認識を高めることを目的として、競馬賞金の一部を自主的に拠出することにより、昭和44年10月に財団法人中央競馬社会福祉財団が設立されました。

 爾来、毎年24~43億円程度を、さらに平成4年度は78億円を助成金として全国の民間社会福祉施設等に交付しており、その累計額は、平成4年度までに11,605件、522億円に達しています。

 また、財団では、その他民間社会福祉施設職員を対象とした海外研修事業を昭和45年から、国内研修事業を昭和48年から実施しています。

 このように中央競馬社会福祉財団は、長年にわたり我が国の社会福祉事業の発展充実に貢献しています。

事業の内容


1.民間会社福祉施設等に対する助成事業
 中央競馬社会福祉財団は、社会福祉法人または民法第34条に基づく法人が経営する社会福祉施設等に対し助成をしています。

 主な対象事業としては、施設の新築・増改築および修繕、門扉・塀・棚等外構工事、給湯水・下水道工事、冷暖房工事、屋上防水工事、作業用機械器具、特殊浴槽、厨房器具、教材遊具、各種自動車、その他施設で必要と認められるものなどです。

 この助成金の申請は、各地の中央競馬開催競馬場にある馬主協会または各都道府県共同募金会で受付けていますので、詳細については、上記または本財団にお間合せください。


表1.助成事業の件数と金額(昭44~平4)

区分 心身障害者(児)
福祉施設
老人保健施設 母子・児童
福祉施設
その他 合計
件数 3,121 2,958 4,003 1,489 11,571
金額 百万円
15,994
百万円
13,934
百万円
12,988
百万円
9,192
百万円
52,108

2.心身障害者(児)等のスポーツ大会に対する助成事業
 中央競馬社会福祉財団は、心身障害者(児)・老人・母子および児童等の福祉のために実施されるスポーツ大会の運営に必要な経費を助成しています。

 助成の対象となる大会の規模は、全国規模もしくはこれに準ずる規模としています。

 この助成金の申請は、各地の中央競馬開催競馬場にある馬主協会または中央競馬馬主協会連合会で受付けていますので、詳細については、上記または本財団にお問合せください。

3.海外派遣研修事業
 中央競馬社会福祉財団は、社会福祉施設職員の資質の向上を図ることを目的として、民間社会福祉施設職員を海外に派遣し、先進諸国の福祉制度や処遇技術を実地に研修してもらっています。

 対象者は、民間の社会福祉施設に勤務するいわゆる直接処遇職員で、年令が25才以上45才以下、業務経験が3年以上の職員です。

 海外研修生は、毎年、各都道府県知事・指定都市市長の推薦をうけた者の中から、本財団が行う試験に合格した者が研修のための助成をうけて、約3か月間海外に派遣されます。

表2.海外研修生の職種別人員(昭和45~平4)

職種 人員
指導員 127
心理判定員 8
理学療法士 18
作業療法士 5
言語療法士 3
歩行訓練士 2
寮母 3
保母 15
医師 12
看護婦 3
栄養士 3
合計 199

詳しいことを知りたい方は、本財団にお問合せください。

4.国内研修事業
 中央競馬社会福祉財団は、社会福祉法人が経営する特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設、精神薄弱者更生施設等に勤務している職員に対し、必要な専門知識と処遇技術を修得してもらうため、毎年合宿研修を実施しており、関係方面から好評をいただいています。

 平成4年度までの受講人員は2,705名の多くを数えています。

 この事業は、「財団法人社会福祉振興・試験センター」に委託して行っていますので、詳細については、同センターにお問合せください。

〒115 東京都渋谷区広尾5-19-15 広尾ARAIビル内
財団法人 社会福祉振興・試験センター
電話 03(3280)0911

〒105 東京都港区西新橋1-4-9 TAMビル
財団法人 中央競馬社会福祉財団
     電話 03(3580)5581 FAX.03(3581)2469

 

資料5

(財)日本障害者リハビリテーション協会の概要


1 所在地  〒162 東京都新宿区戸山一丁目二十二番一号 電話03-5273-0601FAX03-5273-15232

2 沿革  昭和39年9月29日(財)日本肢体不自由者リハビリテーション協会として設立     昭和45年11月9日改称

3 総裁  常陸宮正仁 殿下

4 会長  山下 眞臣

5 役職員数 役員28名  職員39名

6 主要事業 (1)障害者リハビリテーションに関する調査研究      障害予防及び軽減並びに障害者の自立と社会参加に関する調査研究
(2)総合リハビリテーション研究大会の開催         医師、理学療法士、職業カウンセラー、ソーシャルワーカー等の専門職による総合リハビリテーション 研究大会の開催
        (3)障害者リハビリテーションに関する啓発・普及          ①月刊誌「障害者の福祉」の発行          ②専門季刊誌「リハビリテーション研究」の発行
        (4)アジア太平洋地域のリハビリテーション従事者の研修          開発途上国のリハビリテーション従事者に対して、リハビリテーションの知識及び技術を修得させる ための研修
        (5)障害者リハビリテーションに関する国際交流           リハビリテーションの水準アップを図るため、国際リハビリテーション協会(RI:本部ニューヨーク市) 加盟団体として、国際協力と会議への参加等
        (6)国際障害者年長期行動計画の推進           IYDP情報誌の作成配布
        (7)全国身体障害者総合福祉センター「戸山サンライズ」の受託経営

 

おわりに

 各地で多くの人々の参加を得て開催することができました北欧福祉セミナーの報告書をお届けいたします。重度な障害をもつ人々の地域生活をいかに実現するのかについて、様々な面から北欧の実情を学ぶことができましたことを大変有難く存じております。

 この企画をお勧め下さり全面的なご指導ご助成をいただきました中央競馬社会福祉財団に心より御礼申し上げます。また、長野ボランティア連絡協議会、長野市社会福祉協議会、大阪府、大阪市、全国社会福祉協議会の皆樹こは、三つのセミナーの開催について、ひとかたならぬご協力をいただきましたことを深く感謝申し上げます。

 大熊由紀子氏及び朝日新聞社をはじめ多くのご後援を下さいました皆様にも大変お世話になりましたこと、感謝申し上げます。そして今回の素晴しい講師をアレンジして下さいました干葉忠夫様に、心より御礼中し上げる次第であります。

 今回のセミナーが、福祉分野における日欧の協力をさらにすすめることができることと、障害をもつ人々の福祉の向上に資することができますことを期待したいと思います。

 なお、今回のセミナーの様子が朝日新聞において掲載されましたのでご紹介させていただきます。

(財)日本障害者リハビリテーション協会

セミナーに関する新聞記事


主題(副題):国連・障害者の十年最終年記念 北欧福祉セミナー 報告書 (重度な障害をもつ人々の地域生活の実現のために)

発行者:財団法人中央競馬社会福祉財団      財団法人日本障害者リハビリテーション協会

発行年月:平成4年12月

文献に関する問い合わせ先:財団法人日本障害者リハビリテーション協会 東京都新宿区戸山1丁目22-1 電話 03-5273-0601