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ミレニアム開発目標と障害

抄訳
出典:United Nations Enable
The Millennium Development Goals and Disability
http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=1470

ミレニアム開発目標(MDGs)では、国際社会に対する一連の統一的な開発目標が設定された。8つの主要な開発課題をめぐり、国連各機関、各国政府および市民社会団体の力を結集させることによって、MDGsは、貧困削減と健康増進、ならびに世界で最も急を要する開発問題を取り巻く教育・環境関連の懸案事項解決のための協調行動を促進する。MDGsは特に、世界で最も貧しい市民と世界で最も社会から取り残されている人々のニーズに取り組むことを目的としている。

しかし、MDGsの政策、プログラム、監視および評価に障害者を参加させなければ、MDGsが達成されることはないであろう。世界銀行の調査結果によれば、障害者は世界人口の10%を構成している一方で、障害問題は世界の貧困の20%に関与している。現在、MDGs自体にも、またそれに付随するガイドラインや政策の本文、そして現在進行中のMDGの取り組みの一部であるプログラムや会議でも、障害者への言及は何一つない。さらに、MDGsの新たな見直しが現在進められているが、これにも障害者は参加していない。

国際社会は、MDGのプロセスに障害問題を主流として取り入れるため、緊急に行動を起こす必要がある。このためには、政策決定者と技術専門家、特に現在MDGプログラムの作成と監視、および評価を担当している人々に、MDGsの次の実施段階において、その中心使命の重要な要素として障害を含めることができるように、この問題の検討を開始してもらわなければならない。

「MDGの政策、プロセスおよびメカニズムにおける障害問題の主流化に関する国連専門家グループ:すべての人のための開発(United Nations Expert Group on Mainstreaming Disability in MDG Policies, Processes and Mechanisms: Development for All)」は、現在実施中あるいは企画段階にある国際開発におけるすべてのMDG関連計画、プログラムおよび政策の企画、監視と評価に、どのように障害問題を盛り込むことができるかを示した「ロードマップ」の開発に取り組んだ。詳しくは、『専門家グループ会議報告書』および『要約』をご覧いただきたい。

結論

  • ミレニアム開発目標は、MDGsのプロセスの全段階における障害者の完全かつ効果的なインクルージョンと参加なくしては達成できない。
  • 現在のMDGsの枠組み、方策およびメカニズムは、MDGsに障害問題を主流として盛り込むことができる可能性をいくつか提示している。
  • MDGの評価および監視の枠組みにおける、障害に関する従来のデータギャップは、引き続き大きな課題となる。しかし、利用可能なデータは、現在のMDG評価・監視プロセスに障害を含めるために使用できるであろう。その一方で、現在進行中のMDGの評価および監視の新たな取り組みでは、総合的なデータ収集活動の一環として、障害という要素が加えられることとなるであろう。
  • 短期・中期および長期的成果を得るために、国際レベル・地域レベル、国家レベルで、障害問題を主流化するための具体的な措置がとられなければならない。
  • 2010年の定期的見直しを視野に入れ、今回は、監視に関わる国際レベルの行動をターゲットとすることが優先されなければならない。
  • MDGsと障害に関する戦略的思考および計画を促進するために、国連システム内での連携ならびに各関係者との連携が開始されなければならない。この点について、非公式なリソースグループの結成により、対話とフィードバックを継続するためのプラットフォームの実現可能性を確かなものとすることができる。

提言

障害問題の主流化が可能な具体例:(a)報告書、方策およびガイドライン、(b)具体的なMDGsおよびMDG指標、および(c)メカニズムとプロセス

報告書、方策およびガイドライン

  • 国際レベルでは、短期的成果をあげるための2つの重要な戦略行動分野として、『事務総長報告書(the report of the Secretary-General on the work of the organization)』と『ミレニアム開発目標報告書(Millennium Development Goals report)』がある。
  • 国家レベルのMDG関連政策、プロセスおよびメカニズムの監視において障害を主流化するための効果的なエントリーポイントとなる方策およびガイドラインには、『ミレニアム開発目標監視指標ハンドブック-定義、原理、概念および資料(the handbook on Indicators for Monitoring the Millennium Development Goals- Definition, Rationale, Concepts and sources)』と、国家レベルの『ミレニアム開発目標カントリーレポート作成ガイダンスノート(the guidance note on the Country Reporting on the Millennium Development Goals)』がある。

MDGsおよびMDGs指標

  • すべてのMDGsは、障害者の生活に関係し、またこれに影響を与える。
  • 障害に関するデータの包含を促進するには、現在の指標に障害を盛り込むことに焦点を当てたほうが、新たな指標を提案するよりも、短期間でより多くの効果を上げられるであろう。

データが入手できない場合、どこでどのように障害を扱うことができるかを示す選択肢が提示されなければならない。データ不足は、特定の課題における障害に対する関心の欠如を特に示しているともいえる。

  • 国連統計局(UNSD)は、MDG指標に関する機関間・専門家グループ(IAEG)に対し、活動における障害の主流化という選択肢を提案しなければならない。
  • UNSDは、障害に関する意識向上と内訳データ収集能力構築のため、各国の国家統計局と連携しなければならない。

プロセスとメカニズム

  • IAEGは、障害を主流化する方法に関するガイダンスと支援を提供できる。
  • 地域レベルでは、地域パートナーと協力して活動を進めている国連地域委員会、国連専門機関および地域開発銀行などのその他の開発パートナーが、地域で設定された障害関連の補足目標を地域分析に利用することができる。
  • その他のエントリーポイント/メカニズムとしては、国連総会第二委員会と、障害者権利委員会、子どもの権利委員会、女子差別撤廃委員会などの人権条約団体がある。

MDGsおよび障害者に関する資料

国際連合

ミレニアム開発目標と障害
MDGの政策、プロセスおよびメカニズムにおける障害問題の主流化に関する国連専門家グループ会議:すべての人のための開発(会議報告書および要約)
事務総長報告書:障害者に関する世界行動計画と障害者権利条約の実施による、障害者のためのミレニアム開発目標の実現(A/64/180)
総会決議:障害者に関する世界行動計画と障害者権利条約の実施による、障害者のためのミレニアム開発目標の実現(A/RES/63/150)
世界銀行:障害とミレニアム開発目標

複数の関係者による取り組み

  • 2007年5月14日-15日、スロヴァキアのブラチスラヴァ州セネッツで開催された「ミレニアム開発目標:障害者のインクルージョン」欧州会議勧告
    http://www.make-development-inclusive.org/docsen/recommendations-mdg.pdf参照
  • 2008年9月15日-17日、ケニアのナイロビで開催された「ミレニアム開発目標と障害地域会議声明」(「アフリカ障害者の十年」事務局(SADPD)、世界教会障害者擁護ネットワーク(EDAN)、アフリカ地域開発基金(ACDF)および国連ミレニアムキャンペーン担当局共催)
    http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=1432参照

市民社会団体によるイニシアティブ

  • マーク・Raijmakers 『障害者の開発目標とは?』オランダ障害・開発連合 2005年10月
    (Raijmakers, Mark. “Impaired Development Goals?”, Dutch Coalition on Disability and Development, October 2005.)
  • フィリッパ・トーマス 『障害、貧困とミレニアム開発目標:関連性、課題と英国国際開発省(DFID)のための好機』障害情報調査研究(DKR) 2005年6月 (Thomas, Philippa. “Disability, Poverty and the Millennium Development Goals: Relevance, Challenges and Opportunities for DFID”. Disability Knowledge and Research (DKR), June 2005.)
  • 『障害とミレニアム開発目標』『障害情報調査研究プログラムからの教訓』より 障害情報調査研究
    ("Disability and the Millennium Development goals", in Lessons from the Disability Knowledge and Research Programme, DisabilityKaR Knowledge and Research.)
  • 『すべての人のためのミレニアム開発目標の達成』インクルージョン・インターナショナル 2005年6月
    (”Achieving the Millennium Development Goals for All”, Inclusion International, June 2005.)
  • 国際障害・開発コンソーシアムによる、全員参加キャンペーン:障害とMDGs
    http://www.includeeverybody.org/ (Include Everybody Campaign: Disability and the MDGs by the International Disability and Development Consortium)
  • インクルージョン・インターナショナルのMDGsに関する情報
    http://www.inclusion-international.org/en/ii_priority_areas/mdg/index.html
  • 電子フォーラム「障害・貧困とミレニアム開発目標」障害情報調査研究ラウンドテーブルプログラムの一環として、マラウィ障害者組織連盟(FEDOMA)およびヘルスリンク・ワールドワイドの共催により、2004年11月2日から4日までマラウィにて開催。
    http://www.disabilitykar.net/roundtables/malawi_rt.html
    (E-Forum: Disability Poverty and the Millennium Development Goals, Organized by the Federation of Disability Organisations in Malawi (FEDOMA) and Healthlink Worldwide as part of a Disability KaR roundtable programme.)