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ICTアクセシビリティの促進によるインクルーシブな社会の構築と開発:新たな課題と動向に関する国連専門家会議
「ICTと障害-アクセスと共生社会、すべての人のための開発へ」
(抄訳)

2012年4月19日-21日 東京 

出典:
United Nations Expert Group Meeting on Building Inclusive Society and Development through Promoting ICT Accessibility: Emerging Issues and Trends (Tokyo Japan, 19-21 April 2012)
http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=1596

基本情報

I. はじめに

「障害のある人々が自立した生活を送り、生活のすべての局面に完全に参加し、開発の実行者兼受益者となる権利を実現できるように、アクセシビリティと合理的配慮を確保する」ことを加盟国に求めた国連総会決議63/150及び65/186を受け、国連事務局経済社会局(DESA)と国連広報センター(UNIC)は、日本財団との緊密な連携の下、東京の日本財団で、2012年4月19日から21日までの3日間、情報通信技術(ICT)アクセシビリティの促進によるインクルーシブな社会の構築と開発:新たな課題と動向に関する国連専門家会議「ICTと障害-アクセスと共生社会、すべての人のための開発へ」を開催する。

この専門家会議は、アクセシビリティ、特にICTアクセシビリティに対する認識をさらに高めることを目的としており、ICTアクセシビリティを通じて、緊急時や自然災害時を含む開発における障害のある人々のソーシャル・インクルージョンと地位向上を支援する政策及び実践を促進し、すべての人のためのインクルーシブな開発を進める手段として、ICTアクセシビリティを向上させるグッドプラクティスや革新的なアプローチを明らかにするとともに、手話通訳や字幕添付などの従来の人材集約型解決策を促進することを目指している。専門家会議に続き、日本財団は日本の市民社会団体と共同で半日の国際フォーラムを開催し、日本の国家政策及び地域政策立案者や専門家らと、専門家会議の成果を共有し、さらに議論を進める予定である。

連携パートナー

日本は、障害のある人々の権利と平等な機会の保護及び促進において、主導的な役割を果たしてきた国である。日本のリーダーシップとイニシアティブの下で、アジア太平洋地域の国連加盟国は、1993年から2002年と2003年から2012年の2度にわたり、「アジア太平洋障害者の十年」を宣言した。2つの宣言では、ICTをはじめとする情報通信分野におけるアクセシビリティの問題が特に優先された。日本政府はまた、アジア太平洋障害者センター(APCD)に対する支援を通じて、障害のある人々の地域団体の能力構築に大いに貢献している。日本は2005年に神戸での国連防災世界会議の開催を支援し、これを成功させ、その成果文書である「兵庫行動枠組(2005-2015)」を通じて防災への全体的なアプローチを呼びかけ、被災者の中でも障害のある人々を含む弱者による、情報、食糧及び食糧以外の救援物資や、防災研修及び防災教育の機会への平等なアクセスを強調している。

日本財団は長年、障害のある人々による社会と開発への参加を支援する平等なアクセスと、ソーシャル・インクルージョン及びエンパワメントの促進を積極的に進めてきた。また、情報へのアクセスの確保とICTアクセシビリティの向上などを通じて、障害のある人々の機会均等化に関する多くの国際イニシアティブや地域イニシアティブに貢献してきた。

II. 会議の規模と目的

専門家会議では、情報通信技術(ICT)のアクセシビリティと合理的配慮にかかわる規範や基準、制度上の取り決め、管理、技術及び実践についての知識と経験を深く共有するためのフォーラムが開催される。特に開発途上国におけるICTアクセシビリティと、災害時及び緊急時の対策と対応への障害のある人々のインクルージョンが注目を集めるであろう。開発手段及び開発目標としてのアクセシビリティを促進する活動の課題、動向及び優先事項の見直しと分析においては、ユニバーサルデザインが特に注目されるであろう。

会議の目的は、各国のアクセシブルな環境の計画と設計及び評価をめぐる課題、動向、重要な概念と実践方法に関する厳選されたプレゼンテーションと円卓会議により追求される。グループワークでは、(1)自然災害時と緊急対応時を含む、電話通信、テレビ、インターネット、電子サービス機器及びサービスなどの重要な分野におけるICTアクセシビリティに関する状況と政策枠組み、(2)遭遇する課題に対処するための革新的なアプローチと有望な実践の確認、(3)国レベル・国際レベルのさまざまな関係者が、すべての人々のためのICTアクセシビリティとインクルーシブな開発の促進を目的とする戦略的行動をとるべき優先分野に関する勧告の検討に焦点が絞られる。

III. 期待される成果

会議参加者は、(1)開発及び社会生活のさまざまな局面におけるICTアクセシビリティと障害のある人々の地位向上を促進する、厳選された一連の「模範となる実践と経験」、(2)政策規則と技術標準規格及びアプリケーションのすべてにおいてICTアクセシビリティを向上させるための選択肢及び勧告、(3)ICTアクセシビリティと障害を含めた開発全般を促進する国力を強化するための選択肢、(4)ICTアクセシビリティと、自然災害時及び緊急時の対応と対策における障害のある人々のインクルージョンに対する認識の向上と、そのさらなる促進のための勧告、(5)アクセシビリティに関する知識と経験の共有を、インターネットで利用可能な「世界アクセシビリティ実践コミュニティ」などを通じてさらに進めるための勧告を作成することが期待される。

会議で明らかにされた内容と勧告は、(1)障害と開発に関する最新の国際的な言説と戦略、特に、国際的な合意を得た障害のある人々のための開発目標の実現とインクルーシブでアクセシブルな社会の構築及びすべての人々のための開発に焦点を絞る「2013年国連総会障害と開発に関するハイレベル会合」の準備プロセスに貢献し、(2)開発におけるアクセシビリティに関する世界規模の知識体系への認識をさらに高めるとともに、これを強化し、(3)政府、学術機関及び非政府機関ならびに民間セクターの関係者による、アクセシブルな環境とインクルーシブな開発にかかわる実践行動の調整と協力の進展に貢献し、(4)開発におけるアクセシビリティの向上を図る、革新的で費用対効果の高い、持続可能なアプローチを採用するための、国力構築に向けた資金増加の動機づけとなることが期待される。

IV. アクセシビリティと開発に関する国際的な枠組みと地域的な枠組み

アクセシビリティは1990年代以来、国際的な政策言説と、障害のある人々の地位向上と開発に関する国際的な規範の枠組みにおいて、重要な政策目標とされてきた。

1990年代後半、国連総会で、開発における障害のある人々の機会均等化をさらに進める政策とプログラムの具体的な優先課題として、アクセシビリティが認められるようになった。1993年の総会による「障害者の機会均等化に関する基準規則」の採択、1997年、2002年及び2007年の「障害者に関する世界行動計画(1982年)」の5年ごとの見直しと評価の後、この問題を取り上げた総会決議によって、アクセシビリティは障害を含めた開発目標とそれを達成する手段の両方として明確に認められた。

2006年に国連総会で採択された障害者権利条約は、障害のある人々の権利を促進するための国際的な規範の枠組みを強化するものであった。2008年5月の同条約発効に続き、国連総会は一連の決議(63/150、64/145及び65/186)を通じて、「国レベル、地域レベル及び国際レベルでの開発の取り組みに、障害のある人々の権利、福祉及び視点を含め、統合する必要があること。それがなければ、国際的な合意を得た開発目標、特にミレニアム開発目標が、真の意味で達成されないこと」を再確認した。また国連総会は、総会決議63/150で加盟国に対し、「障害のある人々が自立した生活を送り、生活のすべての局面に完全に参加し、開発の実行者兼受益者となる権利を実現できるように、アクセシビリティと合理的配慮」を確保することをさらに促した。

アジア太平洋地域では、「びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」及び「びわこプラスファイブ」でICTアクセシビリティが重視され、7つの優先領域の1つに定められた。これら2つの地域政策枠組みは、日本が他の主要国連加盟国、国連機関、アジア太平洋地域の障害のある人々の団体と協力しつつリーダーシップを発揮した結果、それぞれ2003年と2007年に採択された。これらの枠組みの下でICTアクセシビリティが強化され、日本とアジア太平洋地域全体の障害のある人々を含むすべての人々にとってアクセシブルでインクルーシブな開発を促進する、多くのイニシアティブが進められてきた。

V. 会議活動

会議では、目的を達成するために、以下の活動が行われる。

  1. 政策枠組み、技術標準規格及び現場での実践の状況と現在の傾向の見直しと討議
  2. ICTアクセシビリティをめぐる政策環境及び技術の進歩と、自然災害や緊急事態への対応・対策時に遭遇する関連課題と好機に焦点を絞った、同時進行型サブグループディスカッション
  3. 自然災害時及び緊急時のICTアクセシビリティに関する特別セッション
  4. 自然災害時及び緊急時を含む、情報通信技術分野における合理的配慮を伴うアクセシビリティに対する認識と支援を促進する革新的な事例の見直しとこれに関する議論
  5. すべての人々のための情報社会を目指す開発における、ICTアクセシビリティ及び障害のある人々のインクルージョンと地位向上の実現に向けた、国力の構築と強化及び支持者のエンパワメントに焦点を絞った、戦略的かつ実践的な行動に関する具体的な一連の勧告の作成

VI. 組織と参加

専門家会議は2012年4月19日から21日まで、日本の日本財団で開催される。すべての地域から約25名の専門家が招かれ、各自可能な範囲で会議に参加する。招待を受けた専門家は、それぞれの専門分野におけるアクセシビリティの課題と動向について、簡単な発表論文または講演要旨の提出を求められる。招待を受けたその他の国連機関及び組織、政府間機関及び非政府機関と学術機関の代表者は、オブザーバーとして参加できる。

2012年4月21日には、専門家会議に続き、日本財団が日本の市民社会団体と共同で半日の国際フォーラムを開催し、日本の国家政策及び地域政策立案者や専門家らと、専門家会議の成果を共有し、さらに議論を進める予定である。

VII. 会議文書及び議事録に使用される言語

会議で使用される言語は英語である。会議前及び会議中に配布される文書は英語で、アクセシブルなフォーマットやインターネットで利用可能なリソースにより、あるいはその両方により提供される。