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国際連合と障害者問題- 重要関連決議・文書集 -

中野善達 編
エンパワメント研究所


原則2.医療

加盟各国は、障害をもつ人びとへ効果的な医療の提供を保障すべきである。
1.加盟各国は、障害の早期発見とアセスメント、治療に対して総合的な専門家チームが作成したプログラムを用意できるように努力すべきである。これによって障害を予防し、軽減し、除去することが可能である。このプログラムによって個人のレベルでは、障 害をもつ人びととその家族の完全参加が保障され、その立案と評価のレベルで障害をもつ人びとの団体の完全参加が保障される。
2.地域社会の担当者は、障害の早期発見や適切なサービスに対する初歩的な援助と照合の提供のような領域に参加し、実地にトレーニングを受けるべきである。
3.加盟各国は、障害をもつ人びと、特に乳児や子どもが他の社会の構成員と同様なシステムの中で同水準の医療を受けられることを保障すべきである。
4.加盟各国は、あらゆる医師と医療関係者が障害をもつ人びとに医療ができるように適切に指導され、配置されること、また適切な治療方法や科学技術を利用できることを保障すべきである。
5.加盟各国は、医師をはじめ医療関係者が子どもに対する選択の幅を制限するようなアドバイスを保護者にしないように適切な指導をすべきである。このような指導は継続して行われるべきであり、最新の情報に基づいて行われるべきである。
6.加盟各国は、機能を維持し、向上させる治療や薬物を障害をもつ人びとに提供することを保障すべきである。

原則3.リハビリテーション※

加盟各国は、自立と機能化の最適なレベルに到達し、維持するために障害をもつ人びとにリハビリテーション・サービスを提供することを保障しなければならない。
※リハビリテーションは障害に対する政策の基本的な概念であり、序の第23項のはじめの部分で定義されている。
1.加盟各国は、障害をもつ人びとのあらゆるグループに国によるリハビリテーション・プログラムを開発すべきである。そのようなプログラムは障害をもつ人びとの個々の実際のニーズと完全参加と平等に基づくべきである。
2.そのようなプログラムには、広範囲の活動、つまり障害を受けた機能の向上を促し、あるいは補償する基本的なスキルとトレーニング、障害をもつ人びととその家族のカウンセリング、自立心の向上、アセスメントやガイダンスのような時宜にかなったサービスを含むべきである。
3.リハビリテーションを必要とする重度あるいは重複の障害をもつ人びとを含む障害をもつあらゆる人びとに、上記の活動への参加を可能にすべきである。
4.障害をもつ人びととその家族が、関係するリハビリテーション・サービスの原案づくりや組織づくりに参加できるようにすべきである。
5.あらゆるリハビリテーション・サービスは、障害をもつ人びとが住む地域社会で利用を可能にすべきである。しかし例外として、ある特別な訓練をしたい場合は、居住内の適切な場所でできる特別リハビリテーションを一定期間受けることができる。
6.障害をもつ人びととその家族は、教師としてあるいは指導者、カウンセラーとしてリハビリテーションに加わることができる。
7.加盟各国は、リハビリテーション・プログラムを作成し、評価する場合、障害をもつ人びとの団体の専門家を召集し、協議すべきである。

原則4.支援サービス

加盟各国は、日常生活の自立のレベルを高め、権利の行使を援助するために障害をもつ人びとの補助具を含む支援サービス体制を保障すべきである。
1.加盟各国は、機会均等を達成するための重要な手段として障害をもつ人びとのニーズにしたがって、補助具や個別的な援助、通訳のサービスを提供することを保障すべきである。
2.加盟各国は補助具の開発と生産、流通、サービスおよびそれらの機器に関する広報を支援すべきである。
3.この目的を達成するために利用可能な技術的ノウハウを用いるべきである。高度の工業技術を有する加盟各国では、補助具の基準とその有効性を向上させるために、その技術的ノウハウが最大限に活用されるべきである。一部の材料と一部の工場を可能な限り活用し、使いやすい安価な機器を開発し、生産するように勧奨することは重要である。障害をもつ人びとをこれらの機器開発に加えることも考えられよう。
4.加盟各国は、補助具を必要とする障害をもつ人びとが財政的援助が与えられると、機器を入手可能であることを認識すべきである。つまり、これは機器の無償貸与あるいは、障害をもつ人びととその家族に低価格で提供されなければならないことを意味している。
5.補助具および援助機器を提供するためのリハビリテーション・プログラムにおいて、加盟各国は補助具や援助機器のデザインや耐久性、年齢相応の機器かどうかを障害をもつ人びとの性別を含めて考慮すべきである。
6.加盟各国は、個別の援助プログラムや通訳サービスを開発し、提供する場合、とくに重度の障害をもつ人びとや重複の障害をもつ人びとへの開発と提供を行う場合、これを支援すべきである。このようなプログラムによって日常生活や家庭、仕事、学校、余暇活動に参加する障害をもつ人びとの数は増加することになるであろう。
7.個別の援助プログラムをデザインする場合、プログラム実施の過程でそのプログラムを利用する障害をもつ人びとの意見を重視すべきである。

II.平等な参加のための対象分野

原則5.アクセスできること

加盟各国は、社会のあらゆる場面で機会均等を図る場合、アクセスの重要性を認識すべきである。いかなる種類の障害をもつ人びとに対しても加盟各国は、(a)物理的な環境にアクセスできる行動プログラムを導入し、(b)情報を入手したり、コミュニケーションを図るための種々の手段を講じるべきである。
(a)物理的な環境へのアクセス
1.加盟各国は、物理的な環境への参加を妨げる障害物を除去するための種々の手段を講じるべきである。
このような手段は、原則とガイドラインを作成するためのものであり、社会の様々な場面、例えば家屋や建物、公共運輸機関、その他の輸送機関、道路および戸外のアクセスを可能にするための立法化を検討するためのものであるべきである。
2.加盟各国は、建築設計や建設に関わる建築家や建築技師が、障害をもつ人への政策に関する適切な情報やアクセスを可能にする種々の手段を講じることを保障すべきである。
3.設計の初期段階からアクセスの可能性を考慮すべきである。
4.アクセスの原則と基準を作成する場合、障害をもつ人びとの団体と協議すべきである。公共の建築物を計画する場合、アクセスの可能性を最大限まで保障するように初期の計画段階から部分的にその原則と基準を考慮すべきである。

(b)情報とコミュニケーションへのアクセス
5.診断、権利、利用するサービスとプログラムに関する情報は、あらゆる場面で障害をもつ人びとに必要に応じてその家族と擁護者に全面的に開示すべきである。この情報は障害をもつ人びとが利用できる形式で提供されるべきである。
6.加盟各国は、障害をもつ人びとの各グループが情報サービスや記録を利用できる方略を開発すべきである。点字や録音サービス、拡大文字、その他の適切な技術を活用して視覚に障害をもつ人びとに文字で書かれた情報や記録を提供すべきである。同様に、適切な技術を用いて聴覚に障害をもつ人びとや理解の困難な人が話し言葉を理解できるようにすべきである。
7.聾児の教育や聾児の家族、地域社会における手話の使用に配慮すべきである。聾者とその他の人の間のコミュニケーションを円滑にするために手話通訳サービスを提供すべきである。
8.その他のコミュニケーション障害をもつ人びとのニーズに対しても考慮すべきである。
9.加盟各国は、メディアとくにテレビやラジオ、新聞を通じてこのようなサービスが受けられることを広報すべきである。
10.加盟各国は、障害をもつ人びとが一般市民に提供されるコンピュータを利用した情報サービスシステムを利用できるようにし、利用できない場合はそのシステムを改良すべきである。
11.情報サービス利用の手段を講じる場合、障害をもつ人びとの団体と協議すべきである。

原則6.教育

加盟各国は、統合された場での障害をもつ児童および青年、成人の初等教育および中等教育、中等教育終了後の教育の機会均等の原則を認識すべきである。加盟各国は、それらの障害をもつ人びとの教育が教育組織全体の不可欠な一部分であることを保障すべきである。
1.教育関係当局は、障害をもつ人びとの教育を統合された場で実施する責任がある。障害をもつ人びとの教育は、その国の教育計画、教育課程の編成、学校組織全体の不可欠な一部分を形成すべきである。
2.メインストリーム校における教育は、通訳者やその他の適切な支援サービスを提供することを前提要件とする。いろいろな障害をもつ人びとのニーズに相応しい適切なアクセスや支援サービスを提供すべきである。
3.教育のあらゆるレベルで、障害をもつ人びとの保護者グループと障害をもつ人びとの団体が関与すべきである。
4.義務教育制を施行している加盟各国においては、もっとも重い障害を含む障害のあらゆる種類とあらゆるレベルをもつ少女と少年に対して、義務教育を行うべきである。
5.下記の分野について特別な注意が払われるべきである。
(a)障害をもつ非常に幼い子どもたち
(b)障害をもつ就学前児童
(c)障害をもつ成人、とくに女性
6.障害をもつ人びとに対し統合された場での教育上の諸準備を行うさい、加盟各国は、
(a)明確に記述された方針を持つべきであり、それは学校レベルで、またより広い地域社会で理解と承認を得られるべきである。
(b)追加や修正のできる柔軟な教育課程を認めるべきである。
(c)質の高い教材と継続的な教員研修、補助教師を用意すべきである。
7.統合教育と地域社会に基礎を置くプログラムは、障害をもつ人びとに費用対効果の大きい教育と訓練を提供する相互補完的な場とみなされるべきである。地域社会に基礎を置く国のプログラムでは、地域社会が地域の資源を利用し、開発して障害をもつ人びとを教育するように地域社会を勧奨すべきである。
8.一般学校では障害をもつあらゆる人びとのニーズに十分に適合しえない場合には、特殊教育が考慮されるかもしれない。その特殊教育は、一般学校で教育を受ける準備をすることを目的にすべきである。その教育の質は、一般教育と同様の基準と向上性を反映し、また一般教育と密接に関連するものであるべきである。最小限、障害をもつ生徒に障害のない生徒と同じ教育資源が与えられるべきである。加盟各国は、メインストリーム教育と特殊教育サービスの漸進的統合を目標にすべきである。現時点で、ある場合には、特殊教育が障害をもつある生徒たちにはもっとも適した教育形態であるとみなされるかもしれない。
9.聾者および盲聾者には特有なコミュニケーション・ニーズがあるため、彼らの教育はこうした人びとのための学校あるいはメインストリーム校の中の特殊学級やユニットでより適切に準備されるかもしれない。初期の段階では、聾あるいは盲聾者の効果的なコミュニケーション・スキルと最大の自立をもたらす、文化に格別な配慮をした指導に特 別な注意を向ける必要がある。

原則7.雇用

加盟各国は、障害をもつ人びとが人権を行使できること、とくに雇用の場でその原則を行使できることを認識しなければならない。都市部や山村部に限らず、労働市場における雇用の機会均等を障害をもつ人びとに保障すべきである。
1.雇用の場で、障害をもつ人びとは法律と規則によって差別されてはならない。また、その法律と規則によって彼らの雇用が妨げられてはならない。
2.加盟各国は、障害をもつ人びとを開かれた雇用の場に統合するために積極的に支援すべきである。障害をもつ人びとを雇用する企業に対する職業訓練、報償金制度、予約あるいは指名雇用、小企業に対する融資もしくは補助金、優先契約あるいは優先生産権、税控除、契約遵守のような多様な手段を講じることによって積極的な支援が可能になる。加盟各国はまた、雇用者に対して障害をもつ人びとが職場に適合するよう適切に調整 を行うことを勧奨すべきである。
3.加盟各国の行動プログラムは、以下の点を考慮したものでなければならない。
(a)いろいろな障害をもつ人びとがアクセスできるように職場を設計し、改造するための手段
(b)新しい科学技術の活用と補助具の開発と生産に対する支援および障害をもつ人びとがそのような援助機器に手軽にアクセスし、仕事を得て、その仕事を継続できるような手段
(c)適切な訓練と配置を行い、個別の援助と通訳サービスを支援すること
4.加盟各国は、障害をもつ勤労者に対する否定的な態度や偏見を打破することを目的にした意識喚起キャンペーンを開始し、これを支援すべきである。
5.雇用者の可能な範囲で加盟各国は、公的なセクターに障害をもつ人びとの雇用に適した諸条件をつくりあげるべきである。
6.加盟各国と労働団体、雇用者は一致協力して公正な求人と昇進制度、給与体系、外傷や障害を予防するために労働環境を改善するための手段および労務災害に遭った被雇用者のリハビリテーションに関する手段を保障するために協力すべきである。
7.目的は常に障害をもつ人びとが開かれた労働市場において雇用を得ることができる点にある。開かれた雇用条件に適しない障害をもつ人びとに対しては、小規模の保護雇用もしくは支援雇用も選択肢になるかもしれない。労働市場において障害をもつ人びとに雇用を得る機会を提供する場合、そのようなプログラムの内容が適切で満足すべきかどうかを評価することが重要である。
8.私立および公立のセクターの訓練と雇用のプログラムに障害をもつ人びとを加えるための手段を講じるべきである。
9.加盟各国および労働諸団体、雇用者はフレックスタイム、パートタイム、職務の分担(jobsharing)、自営業、障害をもつ人びとへのアテンダント・ケアを含む訓練と雇用の機会を創出するためのすべての手段に関して障害をもつ人びとの団体と協力すべきで ある。

原則8.所得の保障と社会保障

加盟各国は、障害をもつ人びとの社会保障と収入の安定に責任がある。
1.加盟各国は、障害あるいは障害に関連した原因によって一時的に収入を失ったり、収入が減少したり、雇用の機会を失ったりした障害をもつ人びとに対して適切な収入を保障すべきである。加盟各国は、障害の結果として障害をもつ人びとやその家族がしばしばこうむる費用の支援を保障すべきである。
2.社会保障あるいは、社会保険その他の社会福祉計画を有する国、またはそれを整備中の国において、加盟各国はそのシステムが障害をもつ人びとを排除したり、差別したりしないことを保障すべきである。
3.加盟各国はまた、障害をもつ人びとの世話をしている個々人に対して収入を補助し、社会保障を保護することを保障すべきである。
4.障害をもつ人が収入獲得能力を再び取り戻せるために励みとなるものを社会保障システムに織り込むべきである。そのようなシステムによって職業訓練の組織化や発展につながるとともに資金調達にプラスになる。そのシステムによって職業紹介サービスも円滑になる。
5.社会保障プログラムによって、収入獲得能力を獲得した障害をもつ人びと、あるいは再び獲得するために就業を求める障害をもつ人びとの意欲が高まることが期待される。
6.障害の状態が障害をもつ人びとが就業への意欲を失わない程度に維持されている限り、収入の補助を継続すべきである。その補助は、障害をもつ人が適切で安定した収入を得るようになると削減されるか打ち切られるべきである。
7.私立のセクターが社会保障の大部分を実施している国々において、加盟各国は地域社会および福祉団体、家族が障害をもつ人びとの雇用あるいは雇用に関係した活動に対する自助の手段の開発や意欲を高める工夫をするように勧奨すべきである。

原則9.家庭生活と個人の人格

加盟各国は、障害をもつ人びとの家庭生活における完全参加を促進すべきである。加盟各国は障害をもつ人びとの権利拡大に努め、法律によって障害をもつ人びとの性的関係、結婚、親としてのあり方が差別されないことを保障すべきである。
1.障害をもつ人びとは家族と生活することが可能となるようになされるべきである。加盟各国は、家庭生活における障害とその影響について、適切な構成の家族カウンセリングに参加することを勧奨すべきである。障害をもつ人びとをかかえる家族がレスパイト・ケアサービスとアテンダント・ケアサービスを利用できるようにすべきである。加盟各国は、障害をもつ子どもあるいは成人の養育あるいは養子縁組を願っている人に対する不必要なあらゆる障壁を取り除くべきである。
2.障害をもつ人びとが性を体験し、男女関係や親としてのあり方を体験する機会を否定されるべきではない。障害をもつ人びとが結婚し、家庭生活を営むことが困難である場合、加盟各国は適切なカウンセリングの利用を勧奨すべきである。障害をもつ人びとも他の人と同様に家族計画や性に関する情報を容易に入手できるようにすべきである。
3.加盟各国は障害をもつ人びと、とくに女性の結婚や性、親としてのあり方に対して社会に残っている否定的な態度を変える手段を推進すべきである。マスコミはそのような態度を変える重要な役割を演ずるよう勧奨されるべきである。
4.障害をもつ人びととその家族は、性的な虐待やその他の虐待に対して予防策を講じるための情報を十分に与えられるべきである。障害をもつ人びとは家庭や地域社会、施設で虐待を受けやすいので、虐待から逃れる方法や虐待の事実やそのような行為に関する報告を知る方法について教育されるべきである。

原則10.文化

加盟各国は、障害をもつ人びとが平等な立場で文化的活動に統合され、参加することができることを保障すべきである。
1.加盟各国は、地域を問わず、障害をもつ人びとの利益のためではなく、地域社会を豊かにするために、創造的、芸術的、知的な可能性を発揮する機会が持てるようにすべきである。その活動の例として、ダンス、音楽、文学、演劇、造形美術、絵画、彫刻がある。とくに開発途上国では、伝統的・現代的な芸術、例えば人形芝居、歌、紙芝居が奨められる。
2.加盟各国は、障害をもつ人びとが文化的活動やサービスを行う場所、例えば劇場、博物館、映画館、図書館に容易にアクセスできるようにしなければならない。
3.加盟各国は、障害をもつ人びとが図書や映画、劇場を容易にアクセスできるように技術面の開発を行い、利用しやすいようにすべきである。

原則11.レクリエーションとスポーツ

加盟各国は、障害をもつ人びとがレクリエーションとスポーツに参加する場合、平等の機会を保障する手段を講じることが望まれる。
1.加盟各国は、レクリエーションとスポーツのために障害をもつ人びとがホテルや海水浴場、スポーツ競技場、体育館などにアクセスできる手段を講じるべきである。その手段にはアクセスの方法を開発するためのプロジェクトや参加、情報および訓練プログラムを含むレクリエーションとスポーツ・プログラムのスタッフに対する支援を織り込むべきである。
2.レクリエーション活動あるいは旅行を企画する場合、旅行会社や旅行代理店、ホテル、任意団体、その他の関係団体は障害をもつ人びとにその特別なニーズを考慮してサービスすべきである。その手続きを円滑にするために適切な指導を関係団体は行うべきである。
3.スポーツ団体は、スポーツ活動に障害をもつ人びとが参加する機会を開発することが勧奨されるべきである。ある場合は、アクセスの基準を拡大することによって参加の機会を増やすことも可能である。またある場合は、障害をもつ人びとが楽しめるように工夫したゲームも必要になる。加盟各国は、障害をもつ人びとの国内競技や国際競技などの大会参加を支援すべきである。
4.スポーツ活動に参加する障害をもつ人びとが他の参加者と同様の指導やトレーニングを受けられるようにすべきである。
5.スポーツとレクリエーションに関する団体は、障害をもつ人びとに対するスポーツとレクリエーションのサービス内容を検討する場合、障害をもつ人びとの団体と協議すべきである。

原則12.宗教

加盟各国は、障害をもつ人びとが地域社会の宗教生活に平等に参加できる手段を講じるように勧奨される。
1.加盟各国は宗教団体と協議の上、障害をもつ人びとに対する差別を排除し、障害をもつ人びとが宗教活動を行える手段を講じるように勧奨されるべきである。
2.加盟各国は、障害に関する情報を宗教団体に配布すべきである。加盟各国はまた、宗教団体に宗教教育プログラムばかりでなく宗教家養成においても障害に関する方針を織り込むように指導すべきである。
3.加盟各国はまた、感覚障害をもつ人びとが宗教関係の図書等を利用できるようにすべきである。
4.加盟各国または宗教団体は、宗教活動に障害をもつ人びとが平等に参加できる手段を開発する場合、障害をもつ人びとの団体と協議すべきである。

III.施行基準

原則13.情報と調査・研究

加盟各国は、障害をもつ人びとの生活条件に関する情報収集と広報に対しての最終的な責任が期待されており、障害をもつ人びとの生命を脅かす障壁をはじめ、あらゆる側面に関する包括的な調査・研究を促進すべきである。
1.加盟各国は、障害をもつ人びとの生活条件に関する男女別の統合とその他の情報を定期的に収集すべきである。その調査は、国勢調査や世帯調査と併せて実施され、大学や研究機関、障害をもつ人びとの団体と密接に協議して行うべきである。その調査には、プログラムとサービスに関する質問事項とその利用に関する質問事項を含むべきである 。
2.加盟各国は障害をもつ人びとのいろいろなグループに関する統計のほかにサービスやプログラムに関する統計を一箇所に集めた障害に関するデータバンクの設立を検討すべきである。加盟各国は、個人のプライバシーと人格の保護について留意すべきである。
3.加盟各国は、障害をもつ人びととその家族の生活に関係する社会的および経済的な課題と参加に関する課題について調査・研究を開始し、これを支援すべきである。その調査・研究には、障害の原因やタイプ、人数および既存のプログラムの有効性、サービスと支援の基準の作成とその評価の必要性に関する調査・研究を含むべきである。
4.加盟各国は、障害をもつ人びとの団体と協力して全国調査を実施するための用語と基準を作成すべきである。
5.加盟各国は、調査・研究を行う場合、障害をもつ人びとを参加させるべきである。その実施にあたって、加盟各国は資格のある障害をもつ人びとを特別に加えるべきである。
6.加盟各国は、研究結果の公開を支援すべきである。
7.加盟各国は、全国的にすべての行政レベルで障害に関する情報と知識を公開するための手段を講じるべきである。

原則14.政策制定と立案

加盟各国は、障害に関する政策の立案と全国的な計画をする場合、障害の種々の側面を考慮すべきであることを保障すべきである。
1.加盟各国は、全国的には障害をもつ人びとに関する適切な政策を計画するとともに、地方にあっては障害をもつ人びとに関する行動を支援すべきである。
2.加盟各国は、障害をもつ人びとに関する計画やプログラムの決定、あるいは障害をもつ人びとの社会的、経済的立場に影響を及ぼす決定をする場合、障害をもつ人びとの団体と協議すべきである。
3.障害をもつ人びとのニーズと関心は、全体計画に織り込むこととし、別個に取り扱うべきである。
4.障害をもつ人びとの現状に対して加盟各国があずかる最終責任は、障害をもっていない人の責任を免除するものではない。サービスや活動をする人あるいは社会において情 報の提供を望む人が、障害をもつ人びとが利用できるプログラムを作成する場合、責任を負うべきである。
5.加盟各国は、地域社会が障害をもつ人びとに対するプログラムや手段を開発する場合、これを促進すべきである。そのために手引書やチェックリストを作成し、地域の職員に訓練プログラムを提供すべきである。

原則15.法律制定

加盟各国は、障害をもつ人びとの完全参加と平等の目的を達成するための基準に法的根拠を与える責任がある。
1.市民の権利と義務を体現する法律に障害をもつ人びとの権利と義務を包含すべきである。加盟各国は、他の市民と平等に障害をもつ人びとが人権や市民の権利、政治的権利 を含む諸権利を行使できる義務を負う。加盟各国は、障害をもつ人びとの権利に関する法律を起草する場合、またその法律を評価する場合、障害をもつ人びとの団体を加えることを保障すべきである。
2.法律制定にあたっては、障害をもつ人びとの生活にマイナスとなる嫌がらせやいじめなどの環境を排除する必要がある。障害をもつ人びとに対するいかなる差別的規定も排除されなければならない。非差別の原理という暴力が認められた場合、法律で罰せられる。
3.障害をもつ人びとに関する法律には、二つの形式がある。一般法律または特別立法に権利と義務に関する条項が織り込まれる。障害をもつ人びとの特別立法には、以下の形式が考えられる。
(a)個々に立法化することによって、もっぱら障害の問題を取り扱う
(b)特別な事項に関する法律内で障害の問題を取り扱う
(c)既存の法律の解釈に役立つ法文中に具体的に障害をもつ人びとについて記述する。
このようないろいろな組合わせが考えられる。
差別解消積極措置の規定もまた考慮される。
4.加盟各国は、障害をもつ人びとの利益を保護するために法的告発組織を設立することを検討すべきかもしれない。

原則16.経済政策

加盟各国は、障害をもつ人びとの平等参加をもたらす国で作成したプログラムと基準に対して財政上の責任を有する。
1.加盟各国は、国および全国の自治体の一般会計に障害をもつ人びとのための予算を計上すべきである。
2.加盟各国と非政府組織、他の利益団体は相互に協力して、障害をもつ人びとに関するプロジェクトや手段を支援するもっとも効果的な方法を明らかにすべきである。
3.加盟各国は、障害をもつ人びとの平等参加を支援するために経済的な手段(融資、税の免除、特別指定補助金、特別基金など)の利用法を検討すべきである。
4.多数の加盟各国において、草の根レベルで種々のパイロット計画や自助プログラムの支援を目的にした障害に関する開発基金の設立が勧奨されるであろう。

原則17.調整作業

加盟各国は、障害の問題を国の重点課題として扱うために国としての調整機関あるいはそれに準ずる団体を設立し、その強化を図る責任を有する。
1.国としての調整機関あるいは同種の団体は恒久的とし、適切な管理規則とともに法的な基礎づけがなされるべきである。
2.公的な組織と私的な組織の代表の出席によって、セクションを超えて広く協議できる可能性がある。関連する省庁および障害をもつ人びとの団体、非政府組織から代表を選ぶことが望ましい。
3.障害をもつ人びとの団体は、障害をもつ人びとの関心事について適正なフィードバックを行うことを保障するために国としての調整機関にかなりの影響力を持つべきである。
4.国としての調整機関には、決定能力に応じた責任を果たすために十分な自律性と資源が提供されるべきである。そこでの決定事項はもっとも高次の政治レベルに報告されるべきである。

原則18.障害をもつ人びとの団体

加盟各国は、障害をもつ人びとを国および地方の代表者として選出する権利が障害をもつ人びとの団体にあることを承認すべきである。加盟各国はまた、障害に関する議題の採決に際して、障害をもつ人びとの団体が助言者として参加することを承認すべきである。
1.加盟各国は、障害をもつ人びととその家族、その支援者から成る諸団体の設立とその設立に対して経済的にまた、他の方法で支援すべきである。加盟各国は、このような諸団体が障害に関する政策を発展させる上で、重要な役割を果たすことを理解すべきである。
2.加盟各国は、障害をもつ人びとの団体と継続的に連絡を取り、政策の策定段階で障害をもつ人びとが参加することを保障すべきである。
3.障害をもつ人びとの団体の役割は、障害をもつ人びとの生活に関する事項を計画し、施行し、サービスと手段の評価を行う段階に参加し、社会の認識を変えるために必要な事項は何か、そのための優先順位は何かを明らかにすべきである。
4.自助の手段として、障害をもつ人びとの団体は、いろいろな分野のスキルを向上させ るための機会を準備し、メンバー同士の相互支援と情報の共有を図るべきである。
5.障害をもつ人びとの団体は、政府設立団体の委員代表となったり、公的委員会に参加したり、種々のプロジェクトに専門的な知識を提供したりするなど多くの助言者としての役割を果たすことが望まれる。
6.障害をもつ人びとの団体の諮問的役割は、政府とその団体との間で種々の情報交換を密接に行い、その関係を発展させるために継続すべきである。
7.国としての調整委員会あるいはそれに類似する団体は、障害をもつ人びとの団体を継続的に選出すべきである。
8.地方の障害をもつ人びとの団体を発展・強化させ、地域の問題に対して影響力を持たせることを保障すべきである。

原則19.人材養成・研修

加盟各国は、障害をもつ人びとに関するプログラムやサービスを立案し、提供する業務に関わる職員を適切に養成することを保障する責任がある。
1.加盟各国は、障害に関する分野でサービスを提供する関係当局のすべての職員を適切に養成すべきである。
2.一般養成プログラムに障害に関する情報を織り込むと同様に、障害の分野において専門職を養成する場合にも完全参加と平等の原則を適切に反映させるべきである。
3.加盟各国は、養成・研修プログラムを作成する場合、障害をもつ人びとの団体と協議すべきである。また、職員養成・研修プログラムに教師あるいは指導者、助言者として障害をもつ人びとを加えるべきである。
4.地域社会の職員の養成は、とくに開発途上国では方略的な重要性がある。その養成においても障害をもつ人びとを加え、障害をもつ人びとおよびその保護者、家族、地域社会のメンバーが必要とするスキルのほかに適切な価値と能力、科学技術の開発を行うべきである。

原則20.基準原則実施における障害に関する計画の国としての監視と評価

加盟各国は、継続的な監視と障害をもつ人びとの平等参加に関する国としてのプログラムとサービスの実施の評価に責任がある。
1.加盟各国は、国で作成した障害に関するプログラムを定期的にかつ体系的に評価し、その評価の原則と結果を公表すべきである。
2.加盟各国は、障害に関連したプログラムとサービスを評価するための用語と基準を検討し、作成すべきである。
3.立案の初期の段階から障害をもつ人びとの団体と緊密に協議した上で、その基準と用語を作成すべきである。
4.障害の分野において国の行った評価の共通原則を作成するために国際協力を仰ぐべきである。加盟各国は、国としての調整機関をこれに参加させるべきである。
5.立案の段階で障害に関する分野のいろいろなプログラム評価を行い、その政策目的を達成する場合に要する全体的な効率を検討すべきである。

原則21.技術的・経済的協力

先進工業国と開発途上国を含む加盟各国は、開発途上国の障害をもつ人びとの生活条件の改善に協力し、そのための手段を講じる責任がある。
1.障害をもつ難民を含めた障害をもつ人びとの機会均等を達成するための基準を一般開発プログラムに統合しなければならない。
2.その手段は、例えば双務的と多務的、政府によるものと非政府組織によるものというあらゆる形態の技術的・経済的協力に統合されなければならない。加盟各国は、連携の相手と協力体制について協議する場合、障害に関する課題を提出すべきである。
3.技術的・経済的協力プログラムを立案し、検討する場合、そのプログラムが障害をもつ人びとの状況に及ぼす影響をとくに留意すべきである。障害をもつ人のために立案されたいかなるプロジェクトも障害をもつ人びととその団体と協議されることはきわめて 重要である。そのプロジェクトを作成し、実施し、評価する場合、障害をもつ人びとの団体を加えるべきである。
4.技術的・経済的協力において最優先される領域は次の通りである。
(a)障害をもつ人びとのスキルと能力によって人的資源を引き出し、障害をもつ人びとの雇用につながる活動を開始すること
(b)障害に関連した適切な科学技術とノウハウを開発し、公開すること
5.加盟各国はまた、障害をもつ人びとの団体設立を支援し、その強化を図るべきである。
6.加盟各国は、技術的・経済的協力プログラムを実施する場合、あらゆるレベルで関わる職員の障害に関する課題の知識を高めるための手段を講じるべきである。

原則22.国際協力

加盟各国は、障害をもつ人びとの機会均等に関する政策に関して国際協力に積極的に参加することが望ましい。
1.国連およびその専門部会、他の政府間組織において、加盟各国は障害に関する政策の作成に参加すべきである。
2.必要に応じて加盟各国は、基準や情報交換、プログラムに関する全体交渉の中で障害の種々の側面を紹介すべきである。
3.加盟各国は、次の項目に関する知識と経験を交換する場合、これを支援すべきである。
(a)障害に関する諸課題に関係する非政府組織
(b)障害に関する諸課題に関係する研究機関と個人研究者
(c)障害の分野におけるそれぞれの分野の代表者と専門家のグループの代表者
(d)障害をもつ人びとの団体
(e)国としての調整委員会
4.加盟各国は、国連とその専門機関、また各国政府間の団体、国会内の諸団体の中に、世界的また地域的な視点に立って、障害をもつ人びとの団体の世界的組織や地域的組織を持つことを保障すべきである。

IV.監視機構

1.監視機構の目的は、基準原則の実施を効果的に推進することである。監視機構は、基準施行の進捗状況の評価を援助する。監視することによって、基準の施行を妨げる要因を明らかにし、その施行を適切に進める手段を提案する。監視機構によって加盟各国の経済的、社会的、文化的特性が明らかにされる。監視機構はまた、加盟各国に助言を与え、加盟各国間の情報交換を図る。
2.障害をもつ人びとの機会均等に関する原則となる基準は、社会開発委員会の枠内で監視される。基準原則を監視するために、障害に関する諸課題について適切で幅広い経験を有する特別調査報告担当官と国際組織を3年間設ける。必要ならば特別予算でこれを賄う。
3.国連の経済社会理事会と協議できる資格を有する障害をもつ人びとの国際組織と、障害をもつ人びとを代表者にしているが未組織の団体と、専門家からなるパネル討論会を開くべきである。その場合、障害をもつ人びとの団体が過半数を占めること、いろいろな障害をもつ人びとおよび地域の偏りを公平にすることを考慮すべきである。そのパネル討論会は、特別調査報告担当官と協議し、また必要ならば国連事務局と協議することができる。
4.特別調査報告担当官は、基準原則の推進と実施、監視に関してレヴューし、勧告し、見解や提案を行う専門家の会合を支援する。
5.特別調査報告担当官は、加盟各国や国連内部の関係部局、政府間組織、障害をもつ人びとの団体を含む非政府組織に宛て質問事項を送るものとする。その質問事項は、加盟各国の基準原則の実施計画を含むべきである。その質問事項は、選択方式で、個々にその原則を詳細に評価するものであるべきである。その質問事項を準備する場合、特別調 査報告担当官はパネラーおよび国連事務局と協議すべきである。
6.特別調査報告担当官は、その報告内容に関する見方や意見を調べ、加盟各国ばかりでなく地域の非政府組織と直接対話する方法を検討すべきである。特別調査報告担当官は、基準原則の実施と監視に関して助言を行い、質問事項に対する回答をまとめる段階でこれを援助すべきである。
7.障害に関する諸課題を中心に取り扱う国連の機関として、事務局の政策調整・支援開発部ならびに国連開発計画および他の諸機関、また国連組織内の機構、例えば地域委員会と特別委員会、特別委員会間の会議は国家レベルで基準原則の実施と監視を行う場合、特別調査報告担当官と協力すべきである。
8.国連事務局の補佐を得て特別調査報告担当官は、第34会期および第35会期で社会開発委員会へ報告書を提出しなければならない。その報告書を準備する場合、特別調査報告担当官は、パネラーと協議すべきである。
9.加盟各国は、実施と監視に国としての調整委員会とそれに準ずる団体が参加することを承認すべきである。当該国のレベルで障害に関する問題を中心的な課題としてとらえ、加盟各国は基準原則の監視を共同で行うための手続きを作成すべきである。その場合、障害をもつ人びとの団体があらゆるレベルでその経過を監視できるように勧奨されるべきである。
10.特別予算がある場合、基準原則に対して助言する地域委員を1名以上用意し、加盟各国に直接サービスできるようすべきである。それは以下の要件を含まなければならない 。
(a)基準原則の内容に関する国としてあるいは地域の訓練セミナーの組織化
(b)基準原則の実施を推進するためのガイドラインの作成
(c)基準原則実施に関する最善の方法の公開
11.第34会期に社会開発委員会の制限明示のない作業部会を設け、特別調査報告担当官の報告を審議し、基準原則の適用を広げる方法に関して勧告すべきである。特別調査報告担当官の報告を審議する場合、制限明示のない作業部会の意見を経て、経済社会理事会の機能委員会の手続き規則の規則71と規則72にしたがって、障害をもつ人びとの国際的 組織や諸専門機関と協議すべきである。
12.特別調査報告担当官への指示終了後の会期に、機能委員会はその指示を再検討するか、新しい特別調査報告担当官を任命するか、新たな監視機構を設けるかどうか、そのいずれかを検討し、経済社会理事会に適切な勧告をすべきである。
13.加盟各国は、基準原則の実施を推進するために国連障害任意拠出基金へ寄付することが望ましい。
48)See Official Records of the Economic and Social Council, 1991, Supplement No.6 (E/1991/26), chap.I, sect. D.
49)E/CN.5/1993/5, annex.
50)See Official Records of the Economic and Social Council, 1993, Supplement No.4 (E/1993/24), chap.III, sect. E.
51)See sect.IV, para.2, of the annex to the present resolution.
52)A/37/351/Add.1 and Add.1/Corr.1, annex, sect.VIII, recommendation 1(IV).
53)Proclaimed by the General Assembly in its resolution 37/53.
3)Resolution 217 A(III)
54)See resolution 2200 A (XXI), annex.
55)Resolution 44/25, annex.
56)World Health Organization, International Classification of Impairments, Disabilities, and Handicaps : A manual of classification relating to the consequences of disease (Geneva, 1980).
14)Resolution 45/157, annex.
41)Resolution 34/180, annex.
42)Resolution 3447(XXX).
43)Resolution 2856(XXVI).
44)Resolution 2542(XXIV).
45)Resolution 46/119, annex.
46)Final Report of the World Conference on Education for All : Meeting Basic Learning Needs, Jomtien, Thailand. Inter-Agency Commission(UNDP, UNESCO, UNICEF, World Bank)for the World Conference on Education. 1990, appendix 1.

国連総会決議48/97 1993年12月20日
国際障害者デー

国連総会は、
障害者に関する世界行動計画{47)}を採択した1982年12月3日の総会決議37/52および、とりわけ長期行動プランとして1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した1982年12月3日の総会決議37/53を含め、あらゆる関連決議を想起し、
また、1990年12月14日の総会決議45/91において、2010年までに万人のための社会を達成することをめざし、障害に関する国連計画の焦点を意識の高揚から行動へと転換するよう求めた事務総長への要請を想起し、
さらに、12月3日を国際障害者デーと宣言した1992年10月14日の総会決議47/3を想起し、
障害をもつ人びとのニーズや状況および関連する問題について公衆の意識を高めるように考案された諸活動が多少は増加したにもかかわらず、障害者の完全な平等と参加への物理的・社会的障壁を克服するための不断の努力が必要であり続けていることに留意し、
障害者の10年および世界行動計画の諸目的を達成するためには、あらゆるレベルでさらに強力で幅広い行動や手段が必要であることを承知し、
世界行動計画の目的が、障害の予防、リハビリテーションならびに、社会生活や社会開発における障害者の完全参加および、すべての人びとと同じ機会や社会的・経済的発展からもたらされる生活状態の改善の平等な享受を意味する平等という目標の実現の効果的手段を促進することであることを考慮し、
1.1992年12月3日である最初の国際障害者デーを祝った多くの加盟各国を満足の念をもって留意し;
2.あらゆる政府に、国際障害者デーを祝うこと、この機会を、社会的・経済的・政治的生活のすべての分野に障害者を統合することにより、個人と社会が得られるであろう利益について、人びとの意識を覚醒させるのに利用することを訴え;
3.障害者やその団体が、国際障害者デーの行事を含め、彼らが関係するあらゆる事柄の決定に関与する必要性を繰り返し;
4.加盟各国に、国際障害者デーの行事を、1993年6月14日から25日までウィーンで開催された世界人権会議、1994年に行事が行われる予定の国際家族年、1994年9月5日から13日までカイロで開催予定の人口と開発に関する世界会議、1995年にコペンハーゲンで開く予定の社会開発世界サミット、1995年9月4日から15日まで北京で開催予定の第4回世界女性会議:平等、開発、平和のための行事と毎年、連結する方法を考慮するよう求め;
5.事務総長に、国際障害者デーを祝うため加盟各国によってとらえた手段について、社会開発委員会の第34会期に報告をするよう要請する。
47)A/37/351/Add.1 and Add.1/Corr.1, annex, sect.VIII, recommendation I(IV).

国連総会決議48/99 1993年12月20日
社会における障害をもつ人びとの完全統合に向けて:世界行動計画の継続

国連総会は、
1982年12月3日の決議37/52および37/53、1991年12月16日の決議46/96、1992年12月16日の決議47/88を含む、あらゆる関連決議を想起し、また、1992年7月30日の経済社会理事会の決定1992/276、1992年3月3日の人権委員会決議1992/48{32)}も想起し、
2010年までに万人のための社会を達成する目的で、国連障害者の10年以後も障害者に関する世界行動計画{47)}の完全実施のための具体的長期方略を開発し、遂行する重要性に留意し、
「ウィーン宣言と行動計画(Vienna Declaration and Programme of Action){6)}」において、障害をもつ人びとの人権と基本的自由が無条件に再確認されたことを歓迎し、
障害をもつ人びとの問題に世界中の注意や資源を振り向けるには、開発途上国と先進国双方の努力が不可欠であることを再確認し、
障害者に関する世界行動計画の実施に対する主要な妨害物は、とりわけ資源の不適切な配分にあることを意識し、
1.障害関連問題に対する確固とした、革新的な枠組みを提供する、障害者に関する世界行動計画を継続することの妥当性と価値を再確認し;
2.障害をもつ人びとの社会への完全統合に対する障壁や妨害物の除去もしくは除去を促進することおよび、特有の諸目的に達するために国内政策を作成するさいにおける障害をもつ人びとの努力を支援することに対する政府の責任を繰り返し指摘し;
3.事務総長に、国連組織の作業計画内で、以下によって障害問題に高い優先度と高視度を与えるよう要請し;

(a)障害問題を、広範な規模と高い優先度をもって、専門諸機関の方策、計画、プロジェクト中に統合し、また、すべての専門機関に、障害分野にどれだけ関わったかについて報告することを求めること;
(b)国連開発計画が、そのあらゆる再編計画の内に、どのように障害に関する事項を継続的に組み入れられるかをレヴューするよう求めること;
(c)障害をもつ人びとの機会均等化に関する基準原則{63)}に基づく、障害インデックスの創造に関する進行中の作業の最終化を急ぐこと;
(d)児童期の障害に関し、予防と早期発見、公衆の意識高揚、地域に根ざしたリハビリテーションを促進するユニセフの諸活動を奨励すること;
(e)国内計画の立案・開発プロジェクトの中に、障害問題の統合をおこなうことに関する手引きを公刊すること;
(f)障害問題に関する統計資料を収集する作業を継続し、また、グローバルな障害指標の開発を完了させること;
(g)障害問題について事務総長にアドヴァイスするため、地理的に公平な代表ということに配慮しながら、障害をもつ人びとを含め、障害分野に幅広い経験をもつ人びとからなる委員会を設置する努力を追求すること;
(h)各国政府が、有資格の専門諸機関の支援の下、障害分野における経験の交換を含む、技術援助と技術協力計画の内に、可能なかぎり障害構成体を統合するよう主張すること;
4.1994年に開催予定の国際人口・開発会議、1994年に展開される国際家族年、1995年に開催される第4回世界女性会議、1995年に開催予定の世界社会開発サミットを含む、近く予定されている主要な行事の間に、これらの行事の主題に関連する障害問題を論議対象とすることを奨励し;
5.地域委員会や他の有資格地域組織が、各地域における障害をもつ人びとの特有の事態を改善するための最善の方法や手段を探求するさい、十分に活用されることを勧告し;
6.有資格非政府組織を含め、加盟各国や私的セクターが、「国連障害者に関する任意拠出基金」に寄与することを勧奨し;
7.加盟各国やその他の寄付寄与者が、貧困や疾病、戦争や国内紛争ならびに自然災害や破滅的事故を含む、人口統計的・環境的諸要因の結果としての障害をもつ人びとが増大 していることに深い関心を払うよう勧奨し;
8.1992年12月1日から5日、アジア太平洋経済社会委員会によって北京で開催された、10年に着手するための政府間会議により、1993年から2002年までのアジア太平洋障害者 の10年への取り組みと、アジア太平洋地域における障害をもつ人びとの完全参加と平等に関する宣言(Proclamation on the Full Participation and Equality of People with Disabilities in the Asian and Pacific Region){64)}の採択を歓迎し;
9.事務総長に、障害者に関する世界行動計画の実施をさらに続ける長期方略を実行に移す行動プランの開発に関する報告の中に、本決議に関連する発展に関し、第49回総会に報告することを要請する。
32)Official Records of the Economic and Social Council, 1992, Supplement No. 2(E/1992/22), chap II. sect. A.
47)A/37/351/Add. 1 and Add.1/Corr. 1, annex, sect.VIII, recommendation 1(IV)
6)Report of the World Conference on Human Rights, Vienna, 14-25 June 1993(A /CONF. 157/24(Part I)), chap.III.
63)See resolution 48/96, annex
64)See E/ESCAP/902, annex I.

ウィーン宣言と行動計画

1993年6月14日から25日にかけ、ウィーンで世界人権会議(World Conference on Human Rights)が開催された。これは国連総会決議45/155に基づくものである。この会議には171か国の代表、国連関係63名、経済社会理事会と協議資格のある非政府組織248、他の非政府組織593、特別招待者その他が参加した大規模な会議である。議長にはAlois Mock オーストリア外務大臣が選任され、副議長には日本を含む44か国の代表がなった。人権に関しては、いわゆる南北間の厳しい意見対立がみられたが、最終的に「ウィーン宣言と行動計画(Vienna Declaration and Programme of Action)」が採択された。
これに盛り込まれた障害者関係の記述は以下の如くである。
I-22:障害者が社会のあらゆる面に積極的に参加することを含め、障害者への非差別、あらゆる人権の平等な享受と基本的自由を保障することに特別な注意が払われる必要がある。(A/CONF. 157/24, Part Ⅰ, p. 26)。
II-B:平等、尊厳、寛容(Equality, dignity and tolerance)
6:障害者の権利(The rights of the disabled Person)
63.世界人権会議はあらゆる人権と基本的自由が普遍的なものであり、これには障害者も当然含まれることを再び確言する。すべての人は生まれながらに平等であり、生存、福 祉、教育、労働、自立的に生活すること、社会のあらゆる面への積極的参加に同等の権 利をもっている。そこで、障害へのなんらかの直接的差別もしくは他の否定的・差別的 扱いは、彼もしくは彼女の権利の侵害である。世界人権会議は各国政府に、必要なさいは、障害者がさまざまな権利にアクセスすることを保障する法律を成立させたり、調整することを要求する。
64.障害者はいたるところに存在する。障害をもつ人びとは、社会への完全参加をさせない、あるいは制限する物理的・経済的・社会的・心理的な、社会的に規定されたあらゆる障壁を撤廃することを通して、平等な機会を保障されるべきである。
65.第37回国連総会で採択された「障害者に関する世界行動計画」を想起し、世界人権会議は、国連総会と経済社会理事会に対し、1993年の会期に、障害をもつ人びとの機会均等化に関する基準原則草案を採択することを要求する。(A/CONF.157/24, Part I, p . 41)。

人権と障害者

経済社会理事会の機能委員会の1つである人権委員会(Commission on Human Rights)は1984年3月12日、決議1984/31を採択した。これは経済社会理事会に対し、人権と障害者の問題を研究する特別調査研究担当者を任命するよう勧告した。人選にあたっては、社会開発・人道問題センターとの協議を求めている。人権委員会と社会開発委員会の働きかけをうけ、経済社会理事会は1984年5月24日、決議1984/26を採択した。両委員会の要請に同意したのである。同年8月29日、特別調査研究担当者としてLeandro Despouyを指名した。
Despouy は人権侵害、基本的自由、障害、機会均等、完全参加、自立生活について研究し、また質問紙を各国政府、専門機関、非政府組織などに送り、回答を要請し、それも参考にした。質問紙への回答は、加盟国のうち51か国(日本は入っていない)から得られた。
これら諸結果をまとめ、考察した結果が人権研究シリーズ(ジュネーブの人権センター編)の1冊として国連から刊行された。Leandro Despouy : Human Rights and Disabled Persons. 1993がこれである。構成は、前書き、I.基本的な法概念、II.障害をもたらす諸要因、III.障害者に対する偏見と差別、IV.国内・国際的政策、V.広報と教育、勧告と提案である。日本のことは雇用のところで引用されている。

 

2010年までに、「万人のための社会」をつくり上げることが国連の障害者問題の課題である。そのための国際的な手段として、障害者に関する世界行動計画を継続して実施すること、行動計画のより具体的・実際的な枠組みとしての機会均等化に関する基準原則の策定がなされ、国際的レベル・地域レベル・国内レベルにおける地道な取り組みが要請されている。


1)E/1993/24-E/CN. 5/1993/13
2)A/48/3
3)A/C. 3/48/SR.12
4)A/48/462

日本国内の動向

これまで、国連における障害者問題に対する日本政府の対応に関しては、必要に応じ簡潔に触れてきた。日本国内の動向は本冊子の扱う対象にしておらず、障害者の日に関し略述したのみであるが、参考のため、政府による障害者への対応を、政府作成の資料を基に掲げておく。


Table 12 障害者問題に関する国際的動向と国内の動向

  国際的動向 国内の動向
1971年 12月 精神遅滞者の権利に関する宣言  
1975年 12月 障害者の権利に関する宣言  
1980年   3月 国際障害者年推進本部を設置(閣議決定 本部長 内閣総理大臣)
1981年 国際障害者年 ・国際障害者年記念式典及び各種事業の実施
1982年 12月・「障害者に関する世界行動計画」の策定・「国連・障害者の10年」(1983年~1992年)の宣言 1月 中央心身障害者対策協議会から内閣総理大臣あて「国内長期行動計画の在り方について」意見具申
3月 「障害者対策に関する長期計画」本部決定
4月 障害者対策推進本部を設置 (閣議決定 本部長 内閣総理大臣)
1983年 (「国連・障害者の10年」開始年)  
1984年   8月 身体障害者福祉法の改正(理念規定の整備、障害者の範囲の拡大等)
1986年   4月 障害基礎年金制度の創設
1987年 (「国連・障害者の10年」中間年)
8月 国連世界専門家会議(スウェーデン)
中間年の各種事業を実施
5月 「障害者対策に関する長期計画の実施状況の評価及び今後の重点施策について」意見具申(中央心身障害者対策協議会)
6月 「障害者対策に関する長期計画後期重点施策」策定(障害者対策推進本部)9月 精神衛生法の改正(法律名称の改正、精神障害者社会復帰施設の法定化等)
1989年 8月 障害分野の人的資源開発に関する国際会議(エストニア)  
1990年 5月 「国連障害者の10年」終結の方策に関する専門家会議(フィンランド)
11月 開発途上国の障害者問題に関する国際会議
4月 国立筑波技術短期大学開設
6月 福祉関係8法の改正(在宅福祉サービスの法定化、身体障害者福祉関係事務の市町村への一元化等)
1991年   7月 「国連・障害者の10年の最終年に当たって取り組むべき重点施策について」意見具申(中央心身障害者対策協議会)
8月 「障害者対策に関する長期計画及びその後期重点施策の推進について」決定(障害者対策推進本部)
10月 障害者職業総合センター開設
1992年 〔「国連・障害者の10年」最終年〕
4月 ESCAP「アジア太平洋障害者の10年」決議(1993年~2002年)
4月 自立1992年(カナダ)
4月 国連専門家会議(カナダ)
10月 障害者問題担当国際閣僚会議(カナダ)
10月 国連総会「国連障害者の10年」終結記念討議 最終年の各種事業を実施
5月 道路交通法の改正(身体障害者用車いすの定義を規定)
6月 障害者の雇用の促進等に関する法律の改正(障害者雇用対策基本方針の策定、重度精神薄弱者の雇用率制度におけるダブルカウント等)
6月 第13次国民生活審議会総合政策部会一次報告「個人の生活を重視する社会へ」(ノーマライゼーションの理念実現のための諸政策の推進を提唱)
6月 社会福祉事業法等の改正(福祉人材確保のための基本指針の策定等)
1993年 4月 ESCAP「アジア太平洋障害者の10年」行動課題決定
12月 「障害者の機会均等化に関する基準原則」採択
1月 中央心身障害者対策協議会から内閣総理大臣あて「国連・障害者の10年以降の障害者対策の在り方について」意見具申
「障害者対策に関する新長期計画-全員参加の社会づくりをめざして」本部決定
11月 心身障害者対策基本法の改正(法律名称の改正、障害範囲の明確化、障害者の日を規定、障害者計画の策定等)

総理府編 (1)「国連・障害者の十年」の記録、1993、資料1、(2)平成6年版障害者白書1994、表1-1-1を基にした。


主題 国際連合と障害者問題 - 重要関連決議・文書集 -
編者 中野善達 (Yoshitasu Nakano)
発行日 1997年6月25日 第一刷
発行所 エンパワメント研究所