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III 国際障害者年の宣言と障害者年に向けて

中野善達 編
エンパワメント研究所


III 国際障害者年の宣言と障害者年に向けて

1976年12月16日、「国際障害者年(International Year for Disabled Persons)」と題する総会決議31/123が無投票で採択された。総会第3委員会では11月25日に決議案が提示され、アルゼンチン代表による第2項(b)への字句挿入、同(e)の追加を求める修正案を認め、ベルギーおよびカナダの決議支持表明の後、即日無投票採択がなされた。この決議案は43か国の共同提案で、リビアが代表として説明および支持要請をおこなった(日本は提案国に入っていない){1)}。
この決議は、1981年を「完全参加(full participation)」をテーマとする国際障害者年と宣言し、障害者年の目的を5つ掲げている。さらに、加盟国や関連組織に対し、障害者年の諸目的を実施するための手段や計画の確立に注意を向けるよう求め、事務総長に障害者年の計画案の練り上げと総会への案の提出を要請している。

国連総会決議31/123 1976年12月16日

国際障害者年

国連総会は、
国際連合憲章によって宣言された人権と基本的自由、平和の原則、人間の尊厳と価値、社会的正義の促進という、深く根ざした信条を再確認し、
精神遅滞者の権利に関する宣言をした1971年12月20日の決議2856(第26回総会)を想起し、
障害者の権利に関する宣言をした1975年12月9日の決議3447(第30回総会)を想起し、
障害者の権利に関する宣言の実施についての1976年12月13日の決議31/82を想起し、
1.1981年を、「完全参加」(full participation)をテーマとする国際障害者年(International Year for Disabled Persons)と宣言し;
2.この年を以下を含む諸目的の実現にあてることを決定する:
(a)社会への身体的・心理的適応が可能なよう障害者に助力をし;
(b)障害者に、妥当な援助、訓練、ケアおよびガイダンスを提供し、適切な労働をおこなう利用可能な機会をつくり、社会への完全な統合を保障する国内および国際的なあらゆる努力を促進し;
(c)例えば、公共の建造物や輸送機関へのアクセスを改善することによって、障害者が日常生活に実際的に参加することを促進するように企図された研究や調査を奨励し;
(d)経済的、社会的ならびに政治的生活のさまざまな側面に障害者が参加し、貢献する権利について公衆を教育し、また情報を提供し;
(e)障害の予防および障害者のリハビリテーションに対する効果的手段を促進し;
3.あらゆる加盟国および関連組織に、国際障害者年の諸目的を実施するための手段や計 画の確立に注意を向けるよう依頼し;
4.事務総長が加盟各国、専門諸機関、関連する組織と協議し、国際障害者年に対する計画案を練り上げ、第32回国連総会に提出するよう要請し;
5.第32回総会の暫定議題に「国際障害者年」と題された項目を含めることを決定する。

国連総会決議32/133 1977年12月16日

国際障害者年

国連総会は、
1981年を国際障害者年と宣言し、この年を、以下を含む諸目的の実現にあてることを決定した1976年12月16日の決議31/123を想起し;
(a)社会への身体的・心理的適応が可能なよう障害者に助力し;
(b)障害者に、妥当な援助、訓練、ケアおよびガイダンスを提供し、適切な労働をおこなう利用可能な機会をつくり、社会への完全な統合を保障する国内および国際的なあらゆる努力を促進し;
(c)例えば、公共の建造物や輸送機関へのアクセスを改善することによって、障害者が日常生活に実際的に参加することを促進するように企図された研究や調査プロジェクトを奨励し;
(d)経済的、社会的ならびに政治的生活のさまざまな側面に障害者が参加し、貢献する権利について公衆を教育し、また情報を提供し;
(e)障害の予防および障害者のリハビリテーションに対する効果的な手段を促進し;
とりわけ事務総長に、加盟各国、専門機関や関連組織と協議の上、国際障害者年のための計画案を練り上げるよう要請した、決議31/123の第4項を想起し、
総会によって決定される、予期しえない性格の緊急の必要性が生じない限り、中間期プランに計画されていなかった、また以後の計画予算がついていなかった新しい活動に着手することを控えるよう諸機関に依頼した、中間期プランに関する1976年12月14日の決議31/93の第6項を想起し、
国際障害者年に関する事務総長の報告および付載された国際障害者年計画案{80)}を満足の念を示しながら検討し、
1.1978年から1979年の期間における準備作業について、事務総長の報告に含まれている提案を承認し;
2.国際障害者年に先立って、また、国際障害者年に必要な情報活動を含め、これら提案を実施するのに要請される手段をとる権限を事務総長に与え;
3.国際障害者年が、かかる予期しえない性格の緊急の必要性があるものと決定し;
4.第3委員会の議長が、諸地域グループと協力し、バランスのとれた地理的分布をもとにして指名する15の加盟国の代表で構成される、国際障害者年に対する諮問委員会の設置を決定し{81)};
5.諮問委員会の課題は、事務総長によって準備された国際障害者年のための計画を加盟各国、専門機関と検討し、協議することであることを決定し;
6.事務総長に、諮問委員会を1979年3月までに国連本部で開くこと、また、第34回総会で審議するため、その報告を総会に提出することを要請し;
7.加盟各国が、国際障害者年に対し、まもなく寛大な任意拠出による貢献をするように訴え;
8.加盟各国および関連する組織が、国際障害者年の行事を準備するため特別な行動に着手することを奨励し;
9.第34回総会の暫定議題に「国際障害者年」と題された項目を含めることを決定する。

80)A/32/288.
81)The composition of the Advisory Committee will be announced subsequently.

国連総会決議33/170 1978年12月20日

国際障害者年

国連総会は、
1981年を国際障害者年と宣言した1976年12月16日の決議31/123を想起し、また、1977年12月15日の決議32/133、とりわけ以下を想起し、
(a)第3委員会の議長が、諸地方グループと協力し、バランスのとれた地理的分布をもとにして指名する15加盟国の代表で構成される、国際障害者年に対する諮問委員会の設 置を決定したこと;
(b)諮問委員会を1979年3月までに国連本部で開くことを事務総長に要請したこと:
決議32/133に示された方式を基に諮問委員会のメンバーを指名することが前進できないでいる事実を考慮し;
諮問委員会が決議32/133に特定された期日までに開かれることを保障する必要性を確信し;
1.国際障害者年に対する諮問委員会が、第3委員会の議長が諸地方グループと協力し、バランスのとれた地理的分布をもとにして指名する23加盟国の代表で構成されることを決定し;
2.事務総長に、国際障害者年にとって必要な情報活動を1979年1月1日から開始することを保障し、また、必要となる財政的準備をおこなうことを要請する。
The Chairman of the Third Committee subsequently informed the Secretary-General{92)}that, in accordance with paragraph 1 of the above resolution, she had appointed the members of the Advisory Committee for the International Year for Disabled Persons.
As result, the Advisory Committee is composed of the following Member states: Algeria, Argentina, Bangladesh, Barbados, Belgium, Byelorussian Soviet Socialist Republic, Canada, German Democratic Republic, India, Kenya, Libyan Arab Jamahiriya, Morocco, Nigeria, Oman, Panama, Philippines, Sweden, United Kingdom OF Great Britain AND Northern Ireland, United States OF America, Uruguay, Viet Nam, Yugoslavia and Zaire.
92)A/33/550.

第32回総会に国際障害者年の行動計画案の提出を要請された事務総長は、加盟各国や専門機関、非政府組織に対し、1977年8月末までに障害者年の行動計画への提案を出すよう求めた。これに応じて提案を出したのは32の加盟国(日本は入っていない)と専門機関、諸非政府組織などであった。
11月1日に提出された「国際障害者年」と題された事務総長の報告{2)}には、上記の提案に基づく「国際障害者年計画草案」が付録Iに掲載され、付録IIに国際障害者年の事務局推定出費が示されている。事務総長は長期的な行動計画の必要性を指摘し、その目的を①障害者権利宣言および精神遅滞者権利宣言の実施、②1976年12月16日の総会で挙げられた障害者年の諸目的の実施、③これらの目的のための国内計画を立案するのに開発途上国を支援することとした。
総会には決議案「国際障害者年」がリビアを代表とする39か国の共同提案(日本は入っていない)として提出された。第3委員会では12月7日から審議し、9日に無投票採択がなされた。総会では12月16日、スムースに無投票での採択がされた。
この決議は、次のことを定めている。1978-79年を障害者年の準備作業期間とし、諸提案を実施するのに必要な手段に着手する。第3委員会の議長が加盟各国や専門機関等と相談の上、15か国の代表から構成される国際障害者年諮問委員会を設置する。この委員会は1979年3月までに開催される。障害者年のための任意拠出金の拠出を加盟国に要請する。
しかし、国際障害者年諮問委員会(Advisory Committee for the International Year for Disabled Persons)を構成する15加盟国代表の選定には異論が出て、委員の選任ができなかった。そのため、バランスのとれた地理的分布をもとにする23加盟国の代表で構成することとし、1978年の総会決議33/170でそう決定した。この決議は11か国の共同提案(日本は入っていない)で、第3委員会は12月12日に無投票で通過し、総会では12月20日に無投票採択となった。
1979年の総会決議34/154も「国際障害者年」と題されたもので、リビアを代表とする49か国の共同提案(日本は入っていない)であった。第3委員会は11月28日に無投票で承認し、総会では12月17日に無投票採択をおこなった。この決議では、諮問委員会の勧告{3)}が承認され、それを障害者年に対する行動プランとして採択した。加盟各国には、各国の文化、慣習、伝統と合致した国内行動計画の実施に留意を求めている。また、1976年決議31/123では国際障害者年を International Year for Disabled Persons と表記していたが、これを International Year of Disabled Persons と改め、またテーマも「完全参加」から「完全参加と平等」に拡大した。
なお、この1979年5月、経済社会理事会は「盲聾者の権利に関する宣言」を総会に提出する報告の一部として記載し、総会の留意を求めた{4)}。

Table3 国際障害者年のための諮問委員会

第1会期  1979年3月19~23日  ニューヨーク
第2会期  1980年8月20~29日  ウィーン
第3会期  1981年8月3~12日  ウィーン
第4会期  1982年7月5~14日  ウィーン
委員会構成国:アルジェリア、アルゼンチン、バングラディシュ、バルバドス、
ベルギー、ベラルーシ、カナダ、ドイツ民主共和国、インド、ケニア、リビア・アラブ、
モロッコ、ナイジェリア、オマーン、パナマ、フィリピン、スウェーデン、英国、アメリカ合衆国、
ウルグアイ、ベトナム、ユーゴ、ザイール(23か国)

オブザーバー(加盟国):フランス、ドイツ連邦共和国、日本、オーストラリア、オーストリア、フィンランド、ポーランド、
スペイン、アラブ首長国連邦、アルバニア、ブラジル、チリ、チェコ、エジプト、ギニア、ハンガリー、イスラエル、
レバノン、チュニジア、ソビエト

オブザーバー(非加盟国):ホーリー・シー、スイス

国連組織:アジア太平洋経済社会委員会、アフリカ経済委員会、西アジア経済委員会、国連児童基金

非政府組織:障害者インターナショナルなど8組織 

国連総会決議34/154 1979年12月17日

国際障害者年

国連総会は、
1981年を国際障害者年(International Year of Disabled Persons)と宣言した、1976年12月16日の決議31/123を想起し、
また、国際障害者年に対する諮問委員会の設置を定めた1977年12月16日の決議32/133および1978年12月20日の決議33/170を想起し、
国際障害者年が、社会的・経済的開発からもたらされる生活状態の改善を等しく分かちあえると同じく、障害者が社会生活や彼らが生活する社会の発展に、また、他の市民と同等の生活状態を享受することに完全に参加するという、障害者の権利の実現を促進する筈であることを認識し、
また、国際障害者年が、障害者が社会の完全な成員としてなしうる貢献を高めることになる筈であると認識し、
障害が個人と彼もしくは彼女の環境との関係とみなされるべきであることを認め、特別な困難さに、より十分に応じる社会をもたらすであろうことを確信し、
また、多数の障害者が戦争や他の形の暴力の犠牲者であるから、国際障害者年は、世界平和に対する加盟各国間の持続的および強化された協力の必要性を強調する機会として、適切に活用されるべきであることを確信し、
国際障害者年の諸活動を、長期計画によって追跡することの重要性を強調し、
事務総長が国際障害者年のための実行事務官{69)}を任命するであろうことに留意し、
世界の社会的事態に関する1978年報告{70)}の関連部分にも留意し、
1979年3月19日から23日まで開かれた、国際障害者年に対する諮問委員会第1会期の報告{71)}に心を留め、
1.国際障害者年のテーマを「完全参加と平等(full participation and equality)」に拡大することを決定し;
2.事務総長の報告{72)}に含められた、国際障害者年に対する諮問委員会第1会期における勧告を承認し、また、それらを障害者年に対する行動プラン{73)}として採択し;
3.国際障害者年の諸活動の実践的傾向を強調し;
4.地域レベルや国際レベルでの支援活動と共に、国際障害者年の主要な国内レベルでの焦点を確認し;
5.加盟各国に、国際障害者年の行動プランに沿った国内レベルの活動の検討と、各国の文化、慣習や伝統と合致した方法の検討とを求め;
6.また、関連する専門機関や関連のある国連諸組織が、国際障害者年の行動プランの実施に特別な関心を払うことを求め;
7.さらに、国際障害者年の行動プランの実施にあたり、障害の予防とリハビリテーションに関し、多方向のまた双方向の技術援助を提供することで、開発途上国の障害者に特別な注意が向けられるべきことを確認し;
8.この点に関し、諮問委員会が勧告した、障害分野における技術援助と開発途上国間の技術協力に関する専門家の国際シンポジウムの実施{74)}に、事務総長が優先性を認めることを要請し;
9.事務総長に、開発途上国の国際障害者リハビリテーション講習所の活動を継続する可能性を調査すること、また、この点に関し第35回総会に報告を提出することを要請し;
10.国際障害者年に対する諮問委員会の議長が障害者年の行事を促進することに加わることを求め、また、事務総長が、本部での調査機能を含め、この点で諮問委員会の議長を支援するあらゆる手段を提供するよう要請し;
11.公衆活動を含め、国際障害者年の行動プランを追跡するのに欠かせないあらゆる必要な資源を備えた、国際障害者年の事務局を準備するよう事務総長に要請し;
12.国際障害者年の行動プラン実施を検討し、また、長期行動計画の審議を開始するため、1980年に国際障害者年に対する諮問委員会の会議開催を事務総長に要請し;
13.国際障害者年を周知徹底させる緊急のステップを踏むこと、また、これに関連し、1979年末に障害者年のためのシンボルマークを選ぶことを事務総長に要請し;
14.専門機関や他の国連諸組織に、1980年の会期に諮問委員会に提出するため、国際障害者年のための具体的で調整されたプランを準備するよう要請し;
15.国連の地域経済委員会および他の地域政府間組織が、出来るだけ早く、国際障害者年の諸活動への貢献内容をはっきりさせることを求め;
16.国内レベルでも国際レベルでも、国際障害者年を支援するため、非政府組織とりわけ障害者自体の団体の積極的参加が重要なことを力説し;
17.すでにいくつかの政府によってなされている、国際障害者年への任意拠出による貢献を歓迎し、また、障害者年への今後の任意拠出による貢献を訴え;
18.加盟各国に、国際障害者年の行動プラン実施に関する国としての報告書を事務総長に提出すること、ならびに、とりわけ彼らの経験を基にして、障害分野における国内長期 行動計画の練り上げを検討することを求め;
19.第35回総会の暫定議題に「国際障害者年」と題した項目を含めることを決定し、また事務総長に、本決議の実施に関する報告を要請する。
69)See A/34/158 Add.1, para. 27.
70)E/CN.5/557/Add.2and3.
71)A/34/158 and Corr.1, annex.
72)Ibid., sect.III.
73)The Plan of Action for the International Year of Disabled Persons adopted by the General Assembly consists of the text appearing in paragraphs 57 to 7 6 of the annex to document A/34/158 and Corr.1, with the deletion of the phr ase following the words“(see subpara. (i)bellow)”in paragraph 74(c), of pa ragraph 74(u) and of the words following the word “nationally”in paragraph 75 (b).
74)See A/34/158 and Corr.1,.annex, para. 74 (b).

国連総会決議35/133 1980年12月11日

国際障害者年

国連総会は、
1981年を国際障害者年と宣言した1976年12月16日の決議31/123を想起し、
また、国際障害者年に対する諮問委員会の設置を決めた1977年12月16日の決議32/133、1978年12月20日の決議33/170ならびに1979年12月17日の決議34/154を想起し、
さらに、1980年7月14日から30日までコペンハーゲンで開催された、国連女性の10年:平等、開発および平和の世界会議で採択された、「あらゆる年齢の障害女性の事態の改善」{63)}と題された決議2を想起し、
国際障害者年が、社会的・経済的開発からもたらされる生活状態の改善を等しく分かちあえると同じく、障害者が社会生活や彼らが生活する社会の発展に、また、他の市民と同等の生活状態を享受することに完全に参加するという、障害者の権利の実現を促進する筈であることを認識し、
障害の予防と障害者のリハビリテーションに対する計画立案のさい、国内レベル、地域レベル、国際レベルでの調整が重要であることを考慮し、
国際障害者年がこの年の諸活動を追跡する長期世界行動プランの確立に推進力を与える筈であることを確信し、
国際障害者年が、とりわけ効果的広報活動を通じて、身体障害、感覚障害および精神的障害の出現率と複雑さに関し、意識を高めるのに寄与する筈であることを確信し、
国際障害者年中に開かれる、障害分野における技術援助と開発途上国間の技術協力に関する専門家の国際シンポジウムの開催役を務めるというアルゼンチン政府の申し出{64)}に敬意を払い、
国際障害者年事務局に、障害者年の行動プランの実施{65)}とその追跡のために必要な資源を準備する必要性について懸念し、

1.加盟各国、諸組織、国連内の諸組織や機関、非政府組織によって国際障害者年のための行動プラン実施について、すでにとられてきたステップを満足をもって留意し、また、障害者年の間の行動とその調整を強化するよう勧め;
2.障害者が生活のあらゆる側面に完全参加するのを促進する努力において、加盟各国、諸組織、国連内の諸組織や機関が、国際障害者年とその追跡に関連して着手された諸活動に、障害者自体やその団体の参加に格別の関心を払うべきであると勧告し;
3.国際障害者年のための国内委員会や類似組織をまだ設置していない加盟各国に、その設置を求め;
4.加盟各国に、障害者自身を含めリハビリテーションサービス、技術援助、適切な人材の養成という分野で、開発途上国における開発援助プロジェクトに高い優先性を与えるよう主張し;
5.国際障害者年に向け各政府によってなされた任意拠出の貢献を歓迎し、また、障害者年に向けての今後の任意拠出の貢献を訴え;
6.国際障害者年に対する行動プランと合致して開かれる、障害分野における技術援助と開発途上国間の技術協力に関する専門家の国際シンポジウムの1981年の開催役を務めるというアルゼンチン政府の申し出を受け入れることを決定し;
7.国際障害者年のための行動プランに含まれる諸勧告を実施するための、適切な計画をつくり上げるよう地域委員会に要請し;
8.事務総長に、感覚障害をもつ人びとが国連ビル、報告や情報にアクセスする問題を検討するよう要請し;
9.事務総長に、国際障害者年の情報活動の強化と、国際障害者年事務局に対し任務遂行に必要なあらゆる資源や人材を提供するよう、さらに要請し;
10.長期世界行動プランの起草中にすでになされた進歩を歓迎し、また国際障害者年に対する諮問委員会がその第2会期に提案したもの{66)}の採択に向けての手続きと予定時期設定を承認し;
11.1981年に諮問委員会の1会期を設けることを事務総長に要請し;
12.諮問委員会に、国際障害者年の経験に照らして、開発途上国の国際障害者リハビリテーション講習所の活動を継続する可能性の検討を要請し;
13.加盟各国もしくは政府のあらゆる首長、第35回国連総会の議長および事務総長に、国際障害者年の開始時に特別メッセージを出すことを求め;
14.第36回総会の暫定議題に「国際障害者年」という題目の項目を含めることを決定し、また、その重要性にかんがみ、この項目が障害者年の行事中に、総会の全体会で審議されるべきであると勧告し;
15.事務総長に、本決議の実施に関し、第36回総会に報告をするよう要請する。
63)See Report of the World Conference of the United Nations Decade for Woman :Equality, Development and Peace, Copenhagen, 14 to 30 July 1980. (United Nations publication, Sales No. E. 80. IV. 3 and corrigendum), chap.I, sect. B.
64)See A/C. 3/35/5
65)The Plan of Action for the International Year of Disabled Persons adopted by the General Assembly consists of the text appearing in paras. 57 to 76 of the annex to document A/34/158 and Corr. 1, with the deletion of the phrase following the words “(see subpara. (i) below)”in para. 74 (c), of para. 74 (u) and of the words following the word “nationally”in para. 75 (b).
66)A/35/444, annex. 

ヘレン・ケラー 盲聾青年・成人へのサービスに関する世界会議採択 1977年9月16日

盲聾者の権利に関する宣言

第1条 すべての盲聾者は、世界人権宣言によってあらゆる人に保障されている普遍的権利および、障害者権利宣言によってあらゆる障害者に与えられている権利を享受する資格をもっている。
第2条 盲聾者は、彼らの可能性および地域社会で通常の生活を送るという願望やそうすることの能力が、あらゆる政府機関、行政関係者、教育・リハビリテーション関係者や一般公衆によって認識され、尊重されるということを期待する権利をもっている。
第3条 盲聾者は、視覚や聴覚の回復のための可能な限り最善の医療やケアおよび、最も効果的な視覚補助具や補聴器、適切なさいは言語訓練、さらに最大限の自立を確保するための他の形のリハビリテーションの提供を含む、保有する視力や聴力を活用するのに必要なサービスを受ける権利をもっている。
第4条 盲聾者は、満足できる生活基準を確保するための経済的保障をうける権利ならびに、前提となる教育や訓練が提供され、彼らの可能性にふさわしい仕事を確保したり、他の有意義な仕事に従事する権利をもっている。
第5条 盲聾者は、ひとりで生活したり、結婚したりまた、家族を養う権利を含む、家族や地域社会の統合されたメンバーとして自立生活をする権利をもつものとする。盲聾者が家族の中で生活するさいには、適切な機関によって家族全体に最大限の支援が提供されるものとする。もしも施設でのケアが望ましい場合は、可能な限り通常の生活に近い環境や条件でそれが提供されるものとする。
第6条 盲聾者は、他人や周囲との接触を維持するのに、効果的にコミュニケーションがおこなえるよう通訳者のサービスを無償で受ける権利をもつものとする。
第7条 盲聾者は、彼らが理解できる媒体や形態で、現在のニュース、情報、読物や教材にふれる権利をもつものとする。
第8条 盲聾者は、彼らのために提供される余暇レクリエーション活動をおこなう権利および、自己啓発や社会的向上のために彼らによるクラブや協会を組織する権利や機会をもつものとする。
第9条 盲聾者は、彼らに直接関係するあらゆる問題について相談を受ける権利および、彼らの障害のために権利を不当に奪われることに対し法的な助言や保護を受ける権利をもつものとする。

盲聾者の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Deaf-Blind)を実施するにあたり、盲聾者は次のように定義される:
「視覚と聴覚に重大な損失があり、両者の結合によって、教育的・職業的・余技的もしくは社会的な諸技能を遂行するのがきわめて困難な人びと」

国連経済社会理事会は1979年の第1回定期会期中の1979年5月9日、この盲聾者の権利に関する宣言を、「国際障害者年」と題された項目の下に提出される報告(A/34/50)の一部(A/34/309)として第34回国連総会に提出し、これに留意を求める決定1979/24を採択した{5)}。
1980年の第35回総会でも「国際障害者年」という決議35/133が採択された。これはリビアを代表とする49か国の共同提案(日本は入っていない)によるものである。第3委員会は11月7日に決議案を無投票で承認し、総会に採択を勧告した。総会は12月11日、決議を成立させた。この決議では、開発途上国の開発援助プロジェクトに高い優先性を与えること、諮問委員会に継続的活動を期待し、各国首脳らに国際障害者年の開始にあたり特別なメッセージを出すよう求めたりしている。これにより、1981年の冒頭、各国首脳が国民にメッセージを出したのである。

国際障害者年(1981年)

国際障害者年の目的は、障害者の社会生活と、生活する社会の発展に対する障害者の「完全参加」と、他の市民と等しい生活諸条件を意味する「平等」の目標の実現、社会的経済的発展による生活諸条件の改善の平等の享受などを促進することである。
事務総長は2月、国際障害者年に対する事務総長の特別代表として、社会開発・人道問題センターの事務次長(Shahani)を指名した。
10月に出された事務総長の報告{6)}では1月から7月までの期間を対象にしているが、これによると次のようである。
(1)国内委員会が141か国で設置されている。
(2)国際レベルの活動 ①「障害予防とリハビリテーションにおける開発途上国間の技術協力と技術援助に関する専門家の世界シンポジウム」10月12~23日にウィーンで開催予定。②「障害者に関する国際シンポジウム」9月27~10月4日、リビアのトリポリで開催予定。③「障害者の教育、障害の予防、統合についての行動と方略に関する世界会議」スペイン政府とユネスコの協力、11月2~7日、スペインのトレモリノスで開催予定。④国連事務局の建物改造等。⑤「障害者インターナショナル創設会議」11月30~12月6日にシンガポールで開催予定。
(3)各地域委員会による諸活動。

国連総会決議36/77 1981年12月8日

国際障害者年

国連総会は、
1981年を国際障害者年と宣言した1976年12月16日の決議31/123を想起し、
また、国際障害者年に対する諮問委員会を設置した1977年12月16日の決議32/133、1978年12月20日の決議33/170、国際障害者年のテーマを「完全参加と平等」へと拡大することを決定した1979年12月17日の決議34/154、さらに1980年12月13日の決議35/133を想起し、
およそ5億の人がある形態もしくは他の形態の障害をもっていると推定され、うち約4億の人が開発途上国にいると推定されていることに深刻な懸念を示し、
社会的・経済的開発からもたらされる生活状態の改善を等しく分かちあえると同じく、障害者が社会生活や彼らが生活する社会の発展に、また、他の市民と同等の生活状態を享受することに完全に参加するという、障害者の権利の実現を促進する持続的必要性を繰り返し表明し、
国際障害者年の行事が、これら諸目的の達成に貢献していることを認識し、
また、多数の障害者が戦争や他の形の暴力の犠牲者であり、また、国際障害者年は世界平和に対する各国間の持続的および強化された協力の必要性を再認識することに貢献していることを認識し、
国際障害者年中に国際社会によってなされた諸活動が、障害者年の諸目的の達成に向けての不可欠な第一歩であることを信じ、
国際障害者年の諸活動によって生み出された時宜を得た重要な推進力が、あらゆるレベルでの適切な追跡によって維持され、また、強化されなければならないことを確信し、
障害者の諸状態や福祉を改善するため、国際障害者年の間になされた加盟各国の努力に留意し、
1981年10月12日から23日にかけてオーストリアのウィーンで開催された、「障害予防とリハビリテーションにおける開発途上国間の技術協力と技術援助に関する専門家の世界シンポジウム」{75)}に満足の念を表明し、
また、国際障害者年の間にユネスコによって組織された、1981年11月2日から7日までスペインのトレモリノスで開かれた「教育・予防・統合に対する行動と方略に関する世界会議」{76)}に満足の意を表明し、
障害者に関する世界行動計画{77)}を練り上げるためになされた進歩に感謝の念をもって留意し、
総会の決議35/133の実施に関する事務総長の報告{78)}を考慮し、
また、国際障害者年に対する諮問委員会第三会期の報告{79)}を考慮し、
1.国際障害者年の諸目的を実施するため国内政策や計画を練り上げたあらゆる加盟各国に満足の意を表明し;
2.国際障害者年の間に国連の諸組織および関連する非政府組織によってなされた諸活動に留意し;
3.国際障害者年の結果を基に、障害の予防、リハビリテーション、社会への障害者の完全な統合を強固なものとし、さらに発展させ、また、この点に関し、障害者年のために設置した国内委員会もしくは類似の組織の維持をはかるため、加盟各国にあらゆる努力を傾けることを求め;
4.さらにまた、加盟各国に、国際障害者年に対する行動プランの実施に関し、事務総長に報告を提出することを請い、また、とりわけ各国がその経験を基にし、障害分野における国内長期行動計画の練り上げをおこなうことを請い;
5.加盟各国、国際組織や関連する非政府組織からの、第37回国連総会での採択への見解を含めたコメントを参考にし、「障害者に関する世界行動計画」案を最終的にまとめ上げるための、国際障害者年諮問委員会の会合を1982年に開くことを事務総長に要請し;
6.諮問委員会に、その第4会期に1983年から1992年の期間を「国連障害者の10年」と宣言することの妥当性を審議し、その見解を第37回国連総会に提出することを要請し;
7.諮問委員会に、障害者の国際旅行を促進する目的で、任意の障害者用国際身元証明書を作成する可能性の検討を要請し;
8.事務総長に、国際障害者年の好ましい追跡を保障するのに必要な手段をとること、とりわけ、障害者に関する世界行動計画の最終的取りまとめをすることを求め;
9.また、事務総長と国連の専門機関や他の関連組織の責任者に、障害者に関連する諸活動への必要な協力と調整を保障することを要請し;
10.さらに、地域委員会に、障害の予防とリハビリテーションと同じく、障害者の機会均等化に関する地域プログラムの形成と実施に高い優先性を与えるよう要請し、また、国連内の専門機関や関連機関に、こうした計画の実施を続行することを求め;
11.関連する非政府組織に、国際障害者年によって与えられた推進力を維持するため、障害者に関連する計画を持続し、また拡大することを求め;
12.国際障害者年のための国連信託基金への政府や私人によってなされた貢献を歓迎し、また、障害者年の追跡を促進するであろう任意拠出による貢献がさらになされることを訴え;
13.事務総長に、障害者団体の強化を含め、国際障害者年に関連する開発途上国での活動を支持し、強化するため、任意拠出による貢献の適切な割合を使用するよう要求し;
14.事務総長、専門機関、他の国連組織に、これら組織があらゆるレベルで障害者の雇用機会を改善するため、また、それらの建物や施設、情報源へのアクセスを改善するため、すでに進行中の手段に着手するなり促進することを求め;
15.加盟各国に、障害の予防と障害者のリハビリテーションに関する技術や研究結果の移転、情報の交換を通して、開発先進国と開発途上国との間に密接で効果的な協力を促進することを求め;
16.また、事務総長と専門機関の責任者に、とりわけ障害の予防、リハビリテーション、社会への障害者の統合に関し、継承されてきている能力や可能性の開発や強化の必要性を特に強調しながら、障害者に関し開発途上国における技術協力活動を強化し、拡大するのに必要なあらゆる手段をとるよう要求し;
17.開発途上国における予防、リハビリテーションおよび機会均等化の分野での技術協力の発展のための他の活動と同じく、技術情報の交換や技術とノウハウの移転のための支援サービスを強化することの重要性を強調し、また、この方向での寄与をしたいというユーゴスラビア政府の申し出{80)}に感謝の念をもって留意し;
18.加盟各国、国連内の機関が、関連する政府組織や非政府組織、マスメディアと同じく、社会開発・人道問題センターが障害者に関連する問題が増大してきていることを認識しながら国内委員会に対しおこなっている現在の情報活動の継続を含め、広報計画の実施継承を優先的に取り組むよう求め;
19.第37回国連総会の暫定議題に「障害者に関する世界行動計画(World Programme of Action concerning Disabled Persons)」という項目を含めることを決定し、また、本決議の実施に関し、第37回総会に報告するよう事務総長に要請する。
75)See A/36/471/Add. 3.
76)See A/36/766.
77)See A/36/471/Add. 1, annex, sect. II.
78)A/36/471.
79)A/36/471/Add. 1, annex.
80)A/36/711.

この年、社会開発委員会は「国際障害者年」決議草案をまとめ、経済社会理事会に採択を勧告した。理事会では第2委員会が検討し、4月29日、決議案を承認し、理事会は5月6日に決議1981/22を採択した。この案件は総会に直接出されたが、11月13日、第3委員会が検討するよう決定がなされた。第3委員会では11月19日から12月1日にわたって審議がおこなわれた。提案はリビアを代表とする43か国の共同提案(日本は入っていない)であった。障害者年ということもあり、56か国その他が総会で12月7日と8日に各国内の取り組みや国連の諸活動について演説した。
①開発途上国への援助の必要性、技術的協力と努力(ベルギー、日本、リビア、インドなど)。②長期世界行動計画採択を支持(オーストラリア、カナダ、リビア、イギリス、EC諸国をはじめ多数の国々)。③障害者の10年の設定支持(リビア、モロッコ、オマーン、ソマリア)。④障害者の社会への統合(アルジェリア、カナダ、中国、EC諸国など多数)。⑤長期行動計画への実際の第一歩は、まず国内レベルの取り組みを(ベラルーシ、ハンガリー、ソビエト、ギニア、マラウイ、モロッコ、ソマリア)。⑥信託基金の使用保留(カナダ)。
この問題について日本は演説をしなかったが、12月1日の第3委員会による無投票採択の後で発言をした。日本代表(Akamatsu)は、1982年からの国内長期行動計画を策定中であること、決議案第6項の国連障害者の10年(1983-1992年)に関し、この目的は世界行動計画案と重なり合っており、10年の宣言で意図することは世界行動計画案の実施によって達成できるとして10年の宣言に反対した。カナダも障害者の10年に賛成しかねると主張した{7)8)}。第3委員会は直ちに総会に採択を勧告した{9)}。総会は12月8日、決議36/77を採択した。


1)A/31/395
2)A/32/288
3)A/34/158 and Corr. 1, annex.
4)A/34/309
5)A/34/782
6)A/36/471
7)A/C. 3/36/SR. 56, 60, 63, 66, 67, 68
8)A/36/PV. 57, 86-89
9)A/36/764 

付:国際障害者年を契機に出版された国連の刊行物

(1)「地域社会生活への障害者の統合(Integration of Disabled Persons into Community Life)」1981。事務局の国際経済・社会問題部と社会開発・人道問題センター共編。1978-1979年、地域社会生活への障害者の統合に関する国内計画の調査を実施した。国内責任機関への質問紙調査と直接インタビューによる。この結果が1980年6月30~7月4日、ウィーンで開催された専門家会議で検討された。第1部:障害者の地域社会生活への統合のための国内計画の開発。第2部:障害者の地域社会生活への統合へのさまざまな政策的アプローチ。
(2)「教育・予防・統合のための行動・方略に関する世界会議(World Conference on Actions and Strategies for Education, Prevention and Integration)」1982。スペイン政府およびユネスコ。 1981年11月2~7日、スペインのトレモリノスで開かれた会議の最終報告書。103か国(日本も出席)、6国際組織、4地域組織、17非政府組織等が参加。第1条:すべての障害者は教育、訓練、文化、情報への完全なアクセスができる基本的権利を行使することができなければならない。全16か条の国際障害者年サンドバーク(Sundberg)宣言が採択された。Nils-Ivar Sundberg は1968-1981年にわたり、ユネスコの特殊教育計画担当者であった。統合に関し、現状や見通し、前提条件などが各国から報告され、討議がおこなわれた。
(3)「配慮された建築計画:障害者のために建造物環境を調整するためのガイド(Designing With Care : a guide to Adaptation of The Built Environment for Disabled Persons, International Year of Disabled Persons 1981.)」1983。国際障害者年行動プランの実施の結果、このガイドが準備された。障害者の定義に始まり、障害者用機器や建造物について豊富な図入りで説明している。104頁。


主題 国際連合と障害者問題 - 重要関連決議・文書集 -
編者 中野善達 (Yoshitasu Nakano)
発行日 1997年6月25日 第一刷
発行所 エンパワメント研究所