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II 障害者に関する国連総会決議と決議案への各国の対応

中野善達 編
エンパワメント研究所

主題 国際連合と障害者問題 - 重要関連決議・文書集 -
編者 中野善達 (Yoshitasu Nakano)
発行日 1997年6月25日 第一刷
発行所 エンパワメント研究所

障害および障害者に関する国連総会決議の名称ならびに採択年月日に関しては、本書のTable I(10頁)を参照していただきたい。決議案への各国の対応については、当初、総会第3委員会(社会・人道・文化に関係する問題を担当)における各国代表のスピーチ内容を整理・検討する予定であったが、作業を進める時間的余裕がないため、決議案の提案国に名を連ねたかどうかという、形式的な問題だけを扱うことにした。
Table IVにこれらを一覧にして示した。国名および国連への加盟年は、日本国際連合協会編『国連要語事典』(日本国際連合協会、1993年)によった。人権指数は、C.Humana(1992)World Human Rights Guide, Third Edition(チャールズ・フマーナ編著、竹澤千恵子訳『世界人権ハンドブック』明石書店、1994年)によった。決議案の提案国に名を連ねた国は丸印、代表者となった国は二重丸で表記した。
提案国となったかどうかは、各総会の第3委員会報告で確認し、さらに、各年度のYearbook of United Nations (1989年度、1990年度は未刊である。)を参照した。外務省『国際連合第○○総会の事業』では、決議31/123、44/70、46/96、47/88の共同提案国をそれぞれ41、32、39、54とし、42/58の提案国代表をベルギーであるかのように記しているが、正しくはTable IVの通りであろう。

第3委員会の報告は以下の通りである。1975年:決議30/3447、A/10284/Add.1、1976年:決議31/82、A/31/389、決議31/123、A/31/395、1977年:決議32/133、A/32/437、1978年:決議33/170、A/33/509、1979年:決議34/154、A/34/782、1980年:決議35/133、A/35/638、1981年:決議36/77、A/36/764、1982年:決議37/52、A/37/632、決議37/53、A/37/632、1983年:決議38/28、A/38/575、1984年:決議39/26、A/39/661、1985年:決議40/31、A/40/880、1986年:決議41/106、A/41/801、1987年:決議42/58、A/42/774、1988年:決議43/98、A/43/810、1989年:決議44/70、A/44/406/Rev.1、A/44/755、1990年:決議45/97、A/45/748、1991年:決議46/96、A/46/704、A/46/704/Coor.2、1992年:決議47/88、A/47/703、1993年:決議48/99、A/48/627、1994年:決議49/153、A/49/605、1995年:決議50/144、A/50/628

提案国代表は、ベルギー、リビア・アラブ、フィリピンの3か国がもっぱら担っている。ベルギーは人権指数も96%と高く、個人の権利が保障され、民主主義の制度と伝統、報道の自由が守られ、生活水準も高く、人権諸条約も尊重されているという。リビア・アラブはテロ容認国として悪名高いが、国連の活動では、1979年から1982年まで、国際障害者年のための諮問委員会の委員長を出し、国際障害者年行動計画や障害者に関する世界行動計画の取りまとめに尽力した。フィリピンは、国連社会開発・人道問題センターの副センター長を出すなど障害者問題に深い関わりをもってきた。
ここで「人権指数」について紹介しておこう。国連の主要な法律文書を基にした40の項目に、4段階の評価をおこない、その合計点(項目による重みづけがある)をパーセントで表したものが人権指数である。国内を自由に移動できるか、超法規的な処刑が行われていないか、女性の権利は尊重されているか、などの質問項目である。
日本は人権指数が82%となっている。新憲法(1947年)のもとで人権が保障されるようになったが、いくつかの深刻な人権侵害が続いているという。さらに、表向きは整然とした社会だが、女性は権利を侵害され、「部落民」と在日韓国・朝鮮人に対する差別が深刻、警察の長時間にわたる尋問や虐待があったりする。大規模汚職の摘発がよくあるが、有力者は軽い刑ですんだりしている、という。

この「人権指数」について国連開発計画「人間開発報告書1991年」は、「フマーナによる人権指数は、最も系統的で広範囲にわたっている。フマーナは国連の法律文書と国際諸条約を研究し、その中から自由度を評価する40項目の基準を設定した。……この指数は政治的自由、あるいは人権状況を示すにとどまらず、まさに人間の自由度指数そのものになっている。」と高く評価している。フマーナ氏は1992年に逝去されたという。
Table IVをみると、提案国のいわば常連ともいえる国々と、まったく名を連ねない国々があることがよくわかる。障害者の問題は普遍的な問題とはいえず、各国が国情に応じて対応すればよいといった国や、そう主張していたのに態度が変わり、積極的になっているロシア、中国、韓国、ベラルーシといったような国々もある。こうしたなかで、日本はいったいどうしているのであろうか。先進国のなかでは、障害者問題にきわめて消極的な姿勢の国であることがよくわかる。障害者問題に対する全般的な消極姿勢が、この表に如実に現れているといえるのではないだろうか。