V 障害者に関する世界行動計画と国連障害者の10年 (1983-1992年)(その1)
中野善達 編
エンパワメント研究所
V 障害者に関する世界行動計画と国連障害者の10年 (1983-1992年) (その1)
1.障害者に関する世界行動計画
「障害者に関する世界行動計画(World Programme of Action concerning Disabled Persons)」案は、国際障害者年諮問委員会第3期会議(1981年8月3~12日)で審議されることとなり、国際障害者年事務局が審議のための原案を1981年6月30日、印刷・公表した{1)}。諮問委員会では活発な論議があり、原案への追加・削除・修正が大幅になされ、第4期会議(1982年7月5~14日)で改訂案を審議・決定するため、加盟各国や関連組織にコメント提出を要請した。期限は1982年3月1日である。期限内にコメントを提出したのは、16か国、20の非政府組織、2つの国内委員会、8つの国連内専門機関、3つの地域委員会であった{2)}。のち、13か国その他からコメントがだされたが、それらは別扱いとなった。
これに関しわが国の国連活動・海外協力委員会は次のように記している。来日した(会議出席のため)北欧代表からたまたま修正案を入手したこと、日本政府から7項目にわたる修正意見が出されていることを知ったこと、修正意見を一番多く出しているのはスウェーデンで20項目近くにのぼり、次いで日本が多いこと{3)}。
社会開発・人道問題センターが準備した改訂案{4)}には、脚注欄に修正指摘箇所、修正提案内容、提案した国や機関名、センターによるコメント等が記されている。いささかわかりにくい箇所があるが、筆者が調べたところ、スウェーデンが23箇所、日本が7箇所、フィンランドが2箇所、FAOが4、UNDRO が1、国際計画的親業連盟2、GDR1、国際運動場協会1、ILO1となっている。しかし、これはコメントを寄せた国や組織数とはかなり異なっている。したがって、実際にはもっと多くの修正提案や意見が出たはずであり、日本も7かどうかはわからない。もちろん、コメントは修正提案だけでなく、感謝表明や反対表明もあったと思われる。日本による7箇所の修正要求については、国連活動・海外協力委員会が内容をきちんと紹介し、さらに適切な見解を示している。日本の修正意見は「機会均等化」に関するもので、決定過程への障害者の参加、教育、雇用、監視と評価(教育に関する部分)に集中しており、これは各省庁の担当課から出されたものを外務省でとりまとめたという。日本の修正意見はほとんど採り入れられていない。「日本政府は草案の内容に一定の枠をはめる方向で修正提案をしているのに対し、スウェーデン政府からは、…草案をさらに一歩すすめる形での修正案が出されている。世界行動計画草案への両政府の姿勢は、まさに対称的といえよう。」{5)}という指摘は十分に首肯しうるところである。
「障害者の権利に関する宣言」と「障害者に関する世界行動計画」の関係をTable 8に示した。また、世界行動計画の素案、改訂案、策定された行動計画それぞれの構成をTable 9に示してみた。改訂案と行動計画の構成は同じであるが、内容・項目数にかなりの相違がみられる。なお、策定された行動計画は1982年9月15日に、事務総長の報告の付録という形で印刷・公表された{6)}。
国連総会では、議題89「障害者に関する世界行動計画:事務総長の報告」として取り上げられ、第3委員会で10月18日から28日にかけ審議がなされた。ベルギーが提案国の代表となり、38か国が決議案「障害者に関する世界行動計画」の共同提案国となった(日本は入っていない)。また「障害者に関する世界行動計画の実施」という決議案はフィリピンが代表となり、30か国の共同提案であった(日本は入っていない)。この議題については90ほどの国や機関が演説をおこなった。
Table 8 「障害者の権利に関する宣言」と「障害者に関する世界行動計画」の関係
障害者の権利に関する宣言 | 障害者に関する世界行動計画 |
第1項:障害者の定義 | 第6-12項:インペアメント、ディスアビリティ、ハンディキャップの定義 |
第2項:諸権利の享受 | 第90、108-111、162-169項:障害者の人権保護 |
第3項:障害者の人としての尊厳と、可能な限り通常と同じ生活を享受する権利 | 第90、108-111、128-137、162-192項:障害者が職業的・社会的・文化的生活に十分参加することを保障するのに必要な政策や制度等 |
第4項:市民的・政治的権利 | 第90-94、108-111、162-169項:市民的・政治的権利 |
第5項:障害者の自立 | 第90-94、97-107、112-154項:リハビリテーションサービスと適切な装置提供の重要性 |
第6項:障害者がリハビリテーション、教育その他のサービスを受ける権利 | 第90、97-107、111、120-127、141-147、170-179項:諸サービス |
第7項:経済的・社会的保障を受ける権利、労働の権利 | 第111、116-119、128-133、162-169項:労働の権利、社会保障を受ける権利、働くための同等の機会 |
第8項:経済的・社会的計画立案にあたり障害者の特有なニーズが考慮される権利 | 第88-90、93、97-107、112-137、141-147、155-161項:障害をもつ人びとの特有なニーズ |
第9項:通常の環境で家族と生活する権利と、あらゆる社会的・レクリエーション活動等に参加する権利 | 第106、113-114、134-137、162-169項:家族と生活する権利、環境へのアクセス、レクリエーションなどの諸活動に参加する権利 |
第10項:あらゆる形態の搾取や差別からの保護 | 第108-111、162-169項:法律制定と人権 |
第11項:法的援助を受ける権利 | 第90、108-111、162-169項:他の市民と同じ機会を与えられるべきこと、人権の保護 |
第12項:障害者団体と協議することの有用性 | 第85、90-94、160-161項:障害者や障害者団体と協議することの重要性 |
第13項:障害者やその家族、社会に障害者の権利を十分に知らせる義務 | 第138-140、148-154、180-183項:障害者やその家族、社会に障害者の権利を十分に知らせる義務 |
(E/CN. 5/1983/13, pp. 8-10を参考にして作成)
Table 9 障害者に関する世界行動計画(及び計画案)の構成
1981.6.30 IYDP 諮問委員会素案{1)} |
1982.4.19 IYDP 諮問委員会改定案{2)} |
1982.9.15 障害者に関する世界行動計画 |
第I章 序、概念及び目的 | 第I章 目的、背景及び概念 | 第I章 目的、背景及び概念 |
序 障害及び新国際経済秩序 障害者に関する世界行動計画と法制的要求 概念的枠組みと目的 |
A.目的 B.背景 C.定義 D.予防 E.リハビリテーション F.機会均等化 G.国連システム内で採択された概念 |
A.目的 B.背景 C.定義 D.予防 E.リハビリテーション F.機会均等化 G.国連システム内で採択された概念 |
第II章 障害者の状況 | 第II章 現状 | 第II章 現状 |
全般的記述 教育 経済的・職業的面 社会的面 現存のサービス、施設、社会的行動 経済的・社会的発展の結果 |
A.全般的記述 B.予防 C.リハビリテーション D.機会均等化 E.障害と新国際経済秩序 F.経済的・社会的進歩の結果 |
A.全般的記述 B.予防 C.リハビリテーション D.機会均等化 E.障害と新国際経済秩序 F.経済的・社会的進歩の結果 |
第III章 障害者に関する世界行動計画実施のため提案された行動 | 第III章 障害者に関する世界行動計画実施への提案 | 第III章 障害者に関する世界行動計画実施への提案 |
障害者のインテグレーションと地域社会 国内レベル 国際レベル 監視と評価 |
A.序 B.国家の行動 C.国際的行動 D.調査研究 E.監視と評価 |
A.序 B.国家の行動 C.国際的行動 D.調査研究 E.監視と評価 |
文献(149項目) | 文献(161項目) | 注(201項目) |
1)A/AC. 197/9
2)A/AC. 197/9/Rev.1
日本代表の1人(Yamazaki)は、わが国における長期行動計画の策定や国内の促進組織、任意拠出金による貢献等に触れた後、世界行動計画への修正提案が受け入れられなかった点への遺憾の意を表明した(ここであげられている修正提案は前述の7項目中に入っていないものがいくつかあり、日本はかなり多数の修正提案をしたものと推察しうる)。また、国連障害者の10年は世界行動計画中の勧告と重なり合っているのではないかと指摘している。障害者用IDカードの設定例をあげ、障害の定義にはまだ国際的な合意がみられていないし、障害者政策は国ごとにさまざまに異なるので、慎重な考慮が必要だと述べている{7)}。
国連の公式記録には上記のような記載がなされているが、外務省の報告「総会の事業」{8)}には次のように記されている。「障害者のための世界行動計画案」:(我が国等)同案に対する各国コメントが十分反映されるよう同案の再検討を要請。「国連障害者の10年」:(ベルギー、英国、我が国等)世界行動計画との関連が不明確であり、その価値が薄いほか、無関係に「~の十年」を設定すべきではない。
11月15日、両決議案とも無投票で採択された。日本は採択後、「国連障害者の10年」の有効性に疑問をもつ旨の発言をおこなっている。
第3委員会は両決議案を含む報告書{9)}を本会議に提出した。本会議では12月3日、審議の上、両決議案とも無投票で採択した。
「障害者に関する世界行動計画」は、障害の予防、障害者のリハビリテーション、障害者に対する機会均等化という目標を達成するための具体的内容・方法を、国際的レベル、地域レベル、国内レベルでいかに取り組んだらよいかを明示した文書である。そして、1983年から1992年を「国連障害者の10年(United Nations Decade of Disabled Persons)」とし、加盟各国に対し、この期間を障害者に関する世界行動計画を実施する手段の一つとして活用することを勧めたのである。この世界行動計画は、障害者の10年が終結後も継続されて実施されることが後に決定されることになる。世界行動計画は、各国の国民に広く知らされることが重要なのである。
「障害者に関する世界行動計画」(1982年)は国連でWorld Programme of Action Concerning Disabled Persons, 1983-1992. 1983. United Nations.(索引つき74頁)という形で刊行されている。また、邦訳は以下で利用できる。
(1)国際障害者年日本推進協議会「障害者に関する世界行動計画」1982年、同協議会。
(2)国際障害者年推進会議編「国際障害者年国連・海外関係資料集」23-58頁。1983年、全国社会福祉協議会。
(3)一番ヶ瀬康子他編「(講座 障害者の福祉6)障害者福祉基礎資料集成」32-70頁 。1985年、光生館。
(4)総理府編「国連・障害者の10年」の記録」228-262頁。1994年、大蔵省印刷局。
わが国政府の訳は、実に障害者の10年終結後に出されたのである。このことは、世界行動計画に対するわが国の取り組みの姿勢を反映しているものといえよう。
障害者に関する世界行動計画
国連総会は、
1981年を国際障害者年と宣言した1976年12月16日の決議31/123、国際障害者年のための諮問委員会を設置した1977年12月16日の決議32/133、1978年12月20日の決議33/170、とりわけ国際障害者年のテーマを「完全参加と平等」に拡大することを決定した1979年12月17日の決議34/154、1980年12月11日の決議35/133ならびに1981年12月8日の決議36/77を想起し、
およそ5億の人がある形態もしくは他の形態の障害をもっていると推定され、うち約4億の人が開発途上国にいると推定されていることに深刻な懸念を示し、
社会的・経済的開発からもたらされる生活状態の改善を等しく分かちあえると同じく、障害者が社会生活や彼らが生活する社会の発展に、また、他の市民と同等の生活状態を享受することに完全に参加するという、障害者の権利実現を促進する持続的必要性を繰り返し表明し、
国際障害者年が、社会生活や社会の発展に障害者が完全に参加すること、また、周囲の市民と同等の生活状態を享受することの権利が地域社会に受け入れられたことに貢献したことを認識し、
国際障害者年が、あらゆるレベルでの予防とリハビリテーションと同じく、障害者に対する機会均等化に関連する諸活動に真正の、また有意義な推進力を与えたことを確信し、
障害者の状態や福祉、障害者やその団体が彼らに関するあらゆる問題に積極的に関与することの改善に、加盟各国が国際障害者年の間になした努力に満足の意を表明し、
世界のあらゆる地域における障害者団体の出現と、そのことが障害をもつ人びとのイメージや状態に及ぼしたプラスの影響に留意し、
障害の予防とリハビリテーションにおける開発途上国の技術協力と技術援助に関する専門家の世界シンポジウム{45)}によって採択されたウィーン確認行動プランを考慮し、
国際障害者年に対する諮問委員会がおこなった活動に謝意を表明し、
国際障害者年に対する諮問委員会第4会期の報告および、障害者に関する世界行動計画{46)}に対する提案を審議し、
国際障害者年の効果的追跡を保障することが望ましいこと、また、もしもこれが達成されたならば、加盟各国、国連内の諸機関や組織、非政府組織や障害者団体が、すでに着手している活動を継続し、また、新しい計画や活動を開始することが奨励されなければならないことを意識し、
障害の予防、リハビリテーションおよび障害者の社会生活および社会の発展への「完全参加」と「平等」の目標の実現に対する効果的手段を推進する主たる責任は、個々の国にあり、また、この点に関し、国際的行動は、国としての努力を支援したり支持することに向けられなければならないことを強調し、
1.国際障害者年諮問委員会第4会期の報告の付属文書の勧告1(IV){47)}に示されている「障害者に関する世界行動計画」を採択し、
2.あらゆる加盟国、あらゆる関連する非政府組織や障害者団体、国連内の諸組織や機関が、障害者に関する世界行動計画の早期実施を保障することを要求し、
3.障害者に関する世界行動計画の実施を、事務総長の助力を得て、第42回総会で評価することを決定する。
45)IYDP/SYMP/L.2/Rev.1.
46)A/37/351/Add.1and Add.1/Corr.1, annex.
47)Ibid., sect. VIII .
障害者に関する世界行動計画の実施
国連総会は、
1981年を国際障害者年と宣言した1976年12月16日の決議31/123、国際障害者年に対する諮問委員会を設置した1977年12月6日の決議32/133、1978年12月20日の決議33/170、とりわけ、国際障害者年のテーマを「完全参加と平等」に拡大することを決定した1979年12月17日の決議34/158、1980年12月13日の決議35/133、1981年12月8日の決議36/77、障害者に関する世界行動計画{47)}を採択した1982年12月3日の決議37/52を想起し、
国際障害者年が、社会生活や社会の発展に障害者が完全に参加すること、また、周囲の市民と同等の生活状態を享受することの権利が地域社会に受け入れられたことに貢献したことを認識し、
国際障害者年が、あらゆるレベルでの予防とリハビリテーションと同じく、障害者に対する機会均等化に関連する活動に真正の、また有意義な推進力を与えたことを確信し、
国際障害者年に対する諮問委員会の活動、とりわけ、障害者に関する世界行動計画の形成への貢献に感謝の念を表明し、
障害者の状態や福祉、障害者やその団体が彼らに関するあらゆる問題に積極的に関与することの改善に、加盟各国が国際障害者年の間になした努力に満足の意を表明し、
また、国連システムの専門機関、他の機関や組織、非政府組織、とりわけ障害者団体によってとられた率先性に満足の意を表明し、
世界のあらゆる地域における障害者団体の出現と、そのことが障害をもつ人びとのイメージや状態に及ぼしたプラスの影響に勇気づけられ、
開発途上国において、障害を予防する努力が強化されるべきであり、また、障害者に対するリハビリテーションの基準が可能な限り高く設定されるべきであることを強調した、障害予防とリハビリテーションにおける開発途上国間の技術協力と技術援助に関する専門家の世界シンポジウム{45)}によって採択されたウィーン確認行動プランを感謝の念をもって検討し、
リハビリテーション要員養成ならびに、地域で利用可能な資源を使用する義肢や補装具の生産に地域および下部地域レベルでのさらに効果的な技術協力の必要性を強調し、さらにまた、こうしたサービス開発のための国内計画の練り上げに、地域間での経験の交換の必要性を強調している地域委員会によって国際障害者年のために組織された会議の結果に留意し、
障害の予防、リハビリテーションおよび、障害者の完全参加と平等という目標の実現に対する効果的手段を推進する主たる責任は個々の国にあり、また、この点に関し国際的協力がきわめて望ましく、さらに、それが国としての努力を支援したり支持することに向けられなければならないことを強調し、
国内計画に加え、世界行動計画の効果的実施が国連システムの機関や組織、非政府組織や障害者団体による国際レベルでの活動によって支援されるであろうことを信じ、
かかる活動が現時点では財政的に困難であろうこと、および、国連システム内で現在の予算を再配分することにあらゆる努力が払われなければならないことを認識し、
1.事務総長に、障害者に関する世界行動計画の早期実施を、計画の幅広い配布と宣伝で支援することを要請し;
2.加盟各国に、予防とリハビリテーションと同じく、障害者の機会均等化に関連するプランを作成し、それによって障害者に関する世界行動計画の早期実施を保障することを要請し;
3.国連システムのあらゆる機関や組織に、障害者に関する世界行動計画の早期実施を保障するため、現存する資源の再配分を通じ、その能力の範囲内で諸手段を形成し着手することを要請し、さらに、地域委員会に、さまざまな団体間の効果的協議と調整が不可欠であることを理解した上で、適切な計画を実施することを要請し;
4.事務総長に、予防、リハビリテーション、および機会均等化の分野において、開発途上国、地域での国内・地域活動を支持するために機関間の調整をおこなうため、現存の制度内で国連総会決議36/77の第17項に組み込まれた支援サービスを実施するため、国際障害者年に対する諮問委員会がその第3会期と第4会期で勧告した{48)}組織間特 別委員会を設置するよう要請し;
5.事務局の社会開発・人道問題センターに、国際障害者年の追跡を保障することと、また、障害者に関する世界行動計画の実施を促進することを可能にするのに必要な資源を提供する方法を見出すよう、事務総長を励まし;
6.事務総長に、障害の予防、リハビリテーションおよび障害者の機会均等化に対する国内計画の構想に関し、加盟各国への協議サービスを継続すること、また、加盟各国政府との話し合い協議によって、障害者の機会均等化を扱う実際的なチェックリストを作成すること、さらに、障害の予防、リハビリテーションならびに機会均等化について開発 途上国を援助する、利用可能な技術的・財政的資源に関する情報を収集し、広布することを要請し;
7.事務総長に、障害者団体に関し、障害者に対する計画内の諸活動に適切な優先性を与え続けることをさらに要請し;
8.国連システムのあらゆる機関や組織に、あらゆるレベルでこれらの機関等の内で、障害者に対する雇用機会を改善するための新しい手段をとったり、すでに着手されている手段を促進すること、また、それらの建造物や施設、情報源へのアクセスを改善することを再度求め、さらに事務総長に、第39回国連総会にこれらの手段に関する報告の提出を要請し;
9.事務総長が各国政府と協議の上、障害者に関する世界行動計画の実施において、各政府の要請に応じ、各政府を援助する目的のため、国際障害者年に対する信託基金を継続する必要性と可能性を検討すること、ならびに、第38回国連総会にそれに関し報告を提案することを要請し;
10.障害者に対する国内政策や計画を立案するさい、その要請により、開発途上国の政府を援助するよう、そうする立場にあるあらゆる政府、国連開発計画およびあらゆる関連する国連機関・組織に要請し;
11.国連システムは、現在以上の資源をこの目的のために必要としないであろうことを理解した上で、長期プランとして1983年から1992年を国連障害者の10年(United Nations Decade of Disabled Persons)と宣言し、また加盟各国に、この期間を障害者に関する世界行動計画を実施する手段の一つとして活用することを勧め;
12.各政府に、国内障害者デーを宣言することを勧め;
13.国際組織や基金団体に、人的資源の開発とりわけ予防とリハビリテーション分野における要員養成活動および、障害者の機会均等化と参加を高めることに高い優先性を与えるよう求め;
14.国連システムの諸組織に、国際青年年(International Youth Year)に関する活動およびそれらが主催する国際・地域会議や会合において、障害者のニーズを認識するよう要請し;
15.国際障害者年の経験に照らし、WHOが障害者団体や他の適切な団体と協議し、インペアメント、ディスアビリティおよびハンディキャップの定義をレヴューすることを要請し;
16.事務総長に、総会決議37/52の第3項に規定されている、第42回総会で障害者に関する世界行動計画の実施を評価するのを事務総長が助力するのを可能にさせる報告書を準備するため、主として障害者から構成される専門家会議を1987年に開催する可能性を探ることを要請し;
17.事務総長に、障害者に関する世界行動計画の実施に関し、第39回総会に報告するよう要請する。
47)A/37/351/Add. 1and Add.1/Corr. 1, annex., sect. VIII .
45)IYDP/SYMP/L. 2/Rev. 1.
48)See A/36/471/Add. 1, annex, sect. IV, recommendation 3(III)and A/ 37/351 /Add. 1and Add. 1/Corr. 1, annex, sect. , recommendation 2(IV).
注
1)A/AC. 197/9
2)A/37/351/Add.1
3)「障害者に関する世界行動計画」(草案)への日本政府の修正意見、IYDP情報、1982年8月号(№24)
4)A/AC. 197/9/Rev. 1
5)上記3)
6)A/37/351/Add. 1
7)A/C. 3/37/SR. 21
8)国際連合第37回総会の事業(上)、622-3
9)a/37/632
1983年2月7~16日、ウィーンで開催された社会開発委員会で、障害者に関する世界行動計画と題する決議が採択され、経済社会理事会に採択を勧告した。理事会は第2委員会(社会)に審議を付託、第2委員会は5月10日に決議を承認し、理事会は5月26日、決議1983/19を採択して総会に送付した。
総会第3委員会には36か国の共同提案(日本は入っていない)として10月21日に提出され、11月3日に無投票採択された。総会では11月22日、無投票で採択された。この決議は、もっぱら国際障害者年のための信託基金の継続と、基金への貢献の要請をおこなったものである。
1984年には、決議39/26国連障害者の10年が11月23日に無投票採択された。フィリピンが代表となっている37か国の共同提案(日本は入っていない)である。この決議は、国内政策や計画を立案・実施している国々に感謝し、まだ着手していない国々には早急に計画や政策の策定・実施を求め、信託基金への貢献要請などをおこなっている。
1985年には国連総会で決議40/31が採択された。これは経済社会理事会の第2委員会が5月24日に承認し、5月29日に理事会が決議1985/35として採択したものが土台となっている。総会第3委員会にはフィリピンを代表とする35か国の共同提案(日本は入っていない)として10月18日に提出され、審議ののち無投票採択され、総会では11月29日に無投票採択された。ここでは、信託基金の継続・強化の必要性が訴えられ、各国に対し、障害の予防、リハビリテーション、障害者の機会均等化の計画に優先度を与えること、障害者の10年を広く知らせること、世界行動計画を自国の言語に翻訳することを奨励した。この第5項では各国に対し、世界行動計画のモニターと実施に関する質問紙への回答を事務総長に提出することを求めている。
この質問紙は1985年12月23日に送付され、1986年6月末までに返送するよう各国に要請した。質問項目は94もあり、1986年9月30日現在で、74か国が返送している(日本もこの中に入っている){1)}。
1986年には総会決議41/106が12月4日に採択された。経済社会理事会第2委員会が5月20日に承認し、理事会は5月22日、決議1986/16を採択した。総会第3委員会では、10月16日に14か国の共同提案(日本は入っていない)として決議案が提出され、10月31日に承認し、総会では12月4日に無投票採択をした。決議では、信託基金への拠出要請がなされ、さらに、1987年に専門家会議を開催するというスウェーデン政府の申し出を歓迎している。
この年、国連では障害者の10年という枠内で次のような活動をしている。①国連システム内の諸活動を調整する会議が、3月5~7日にわたって開かれた。②社会開発・人道問題センターの活動(i)Disabled Persons Bulletinの発行。(ii)世界行動計画を国連の公用語(中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語)すべてで発行。英語点字版も刊行した。(iii)機会均等化のための法制化に関する専門家会議の共催。(iv)障害に関する研究書の発行(iiiとivについては後述)。③国際経済・社会問題部(i)「障害者統計の開発:事例研究」という報告書の発行(VI参照)。(ii)機会均等化に関する手引の発行(後述)。④地域委員会や非政府組織によるさまざまな活動。
1987年の活動については「3『国連障害者の10年』中間点の評価」で扱っている。
障害者に関する世界行動計画
国連総会は、
1977年12月16日の決議32/133および、国際障害者年への寛大な任意拠出による貢献をおこなうよう加盟各国に訴えた1979年12月17日の決議34/154を想起し、
また、国際障害者年に対する国連信託基金へ各国政府や私人がおこなった貢献を歓迎し、さらに、障害者年の追跡を促進するであろう今後の任意拠出の貢献を訴えた1981年12月8日の決議36/77を想起し、
およそ5億の人がある形態もしくは他の形態の障害をもっていると推定され、うち約4億の人が開発途上国にいると推定されていることに深刻な懸念を示し、
国際障害者年が、あらゆるレベルの予防とリハビリテーションと同じく、障害者の機会均等化に関連した活動に正真正銘の、また、有意義な推進力を与えたことを確信し、
世界のあらゆる地域に障害者団体が現れたこと、ならびに、それが障害をもつ人びとのイメージや状態に関しプラスの影響を与えていることに留意し、
国際障害者年の効果的追跡を保障することが望ましいこと、また、もしもこれが達成されたならば、加盟各国、国連システムの諸機関や組織、非政府組織や障害者団体が、すでに着手している活動を継続し、また、新しい計画や活動を開始することが奨励されなければならないことを意識し、
障害の予防、リハビリテーションおよび障害者の社会生活および社会の発展への「完全参加」と「平等」の目標の実現に対する効果的手段を推進する主たる責任は、個々の国にあり、また、この点に関し、国際的行動は、国としての努力を支援したり支持することに向けられなければならないことを強調し、
国際障害者年に対する諮問委員会がおこなった活動、とりわけ障害者に関する世界行動計画{64)}の構築への貢献に対する感謝を繰り返し、
障害者に関する世界行動計画を採択した1982年12月3日の総会決議37/52、世界行動計画の第157項{65)}で、国際障害者のために総会によって設立された信託基金は開発途上国と障害者団体からの援助要請に応えることおよび、世界行動計画の実施をいっそうすすめるために使用されるべきであると述べられていること、第158項で、全体的に、世界行動計画の目的を実施するため、開発途上国に資源の流れを増加させる必要があることを示したこと、そのため、事務総長は任意拠出金を増大させる新しい方法や手段を探索し、資源の運用にとって必要な追跡手段をとるべきこと、また、政府や民間からの任意拠出の貢献が奨励されるべきことを想起し、
さらに、国連システムは現在以上の資源をこの目的のために必要としないであろうことを理解した上で、長期活動プランとして1983年から1992年を国連障害者の10年と宣言し、また加盟各国に、この期間を障害者に関する世界行動計画を実施する手段の一つとして活用することを勧めた1982年12月3日の総会決議37/53を想起し、
開発途上国が、とりわけ基本的ニーズに関するほかの優先順位の高いものへの緊急な要求に直面し、障害の予防、リハビリテーションおよび、障害をもつ数百万の人びとの機会均等化の分野における緊急なニーズをみたすため、十分な資源を動員することに困難が増大してきている事態に際会しつつあることを懸念し、
国連障害者の10年が、障害者に関する世界行動計画の実施および、その重要性の広範な理解に強力なはずみを与えるべきであることを確信し、
事務総長が、通常予算外の資源によって障害者に関する世界行動計画の実施や支援をするよう要請された、1983年5月26日の経済社会理事会決議1983/13を心に留め、
各国政府、組織および個人によってすでになされた多くの寛大な任意拠出の貢献ならびに寄付申込みに深い感謝の念をもって留意し、
障害者年とその後において、国際障害者年のための国際信託基金によって達成された諸結果に関する事務総長の報告{66)}に感謝の念をもって留意し、
国際障害者年のための信託基金が、障害者に関する世界行動計画実施のための重要な一手段であることを認識しつつ、
1.障害者、とりわけ開発途上国の障害者のため、国連障害者の10年を通して国際障害者年のための信託基金を継続する必要性を認識し;
2.国際障害者年のための信託基金は、障害者に関する世界行動計画の以後の実施、任意拠出によるこうした活動への財政支出、国連障害者の10年のための信託基金の可能な設定期間、総会決議37/53にあげられた特別委員会の設置と同じく、障害者のための技術協力支援サービス組織に関する総会決議36/77に含まれている諸規定の実施に関する勧告を含む筈である、第39回総会への事務総長報告が出されるまでその活動を継続すべきであることを決定し;
3.信託基金の運営が、国連事務局による障害問題に対する実質的責任の不可欠な一部として実行され続けなければならない必要性を強調し;
4.信託基金の資源が、国連障害者の10年の枠組み内で、障害者に関する世界行動計画の実施に向けて、また、障害をもつ人びとが彼ら自身を組織化することに向けて、総会決議36/77と37/53であげられた技術協力のための支援・助言サービスと組織間特別委員会設置の支援に向けて、さらに、障害予防および障害をもつ人びとの進歩といった分野における地域委員会活動を強化することに向けて調整されるべきであることを勧告し;
5.事務総長に、障害者に関する世界行動計画の第158項{65)}に示された信託基金を強化するのに必要なステップに着手することと、これに予算外資源を入れることを要請し;
6.各国政府や民間に、信託基金への寛大な任意拠出の貢献を継続するよう訴え;
7.あらゆる加盟各国、あらゆる関連非政府組織および障害者団体、さらに国連システムのあらゆる機関や組織に、現存する資源の再配分によって、障害者に関する世界行動計画の早期実施の確保を持続するよう要求し;
8.事務総長に、障害者に関する世界行動計画の実施についての国連総会への報告中に、信託基金による活動に関する部分を含めるよう要請する。
64)A/37/351/Add. 1 and Add. 1/Corr. 1, annex.
65)Ibid., sect. VIII , recommendation I(IV).
66)A/38/506.
国連障害者の10年
国連総会は、
障害者に関する世界行動計画{53)}を採択した1982年12月3日の決議37/52および、とりわけ長期行動プランとして1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した1982年12月3日の決議37/53を想起し、
障害者の10年を通して、国際障害者のための国連信託基金を継続することが望ましいことを認識した1983年11月22日の決議38/28を想起し、
事務総長が、特別予算の財源で障害者に関する世界行動計画の実施をモニターし、支援するよう要請された、1983年5月26日の経済社会理事会の決議1983/19に留意し、
1984年3月12日の人権委員会決議1984/31{54)}および、人権と基本的自由の侵害と障害に関するマイノリティの差別の予防と保護に関する小委員会の決議案{55)}ならびに、事務局の社会開発・人道問題センターと協力してこの問題を研究する特別調査研究担当者の指名を満足をもって留意し、
障害者に関する諸活動を支援するほかの任意拠出による貢献と同じく、各国政府や他の寄金者たちによってなされた寛大な任意拠出の貢献ならびに寄付申込みに深い感謝の念をもって留意し、
また、他の任意な貢献を通してと同じく、国際障害者年の間に信託基金からの資金を通じて達成された結果やその追跡活動を感謝の念をもって留意し、
世界行動計画の効果的実施が確保されることを希望し、また、この達成のためには、加盟各国、国連システムの機関や組織、非政府組織や障害者の団体が、すでに着手されている活動を継続し、新しい計画や活動を始めるよう奨励されなければならないことを承知し、
世界行動計画の諸目的実現のための主たる責任は個々の国にあること、および、この点に関し、国内での努力を支援し支持する国際行動がなされなければならないことを強調し、
世界のあらゆる地域に障害者の団体が出現したことおよび、世界行動計画の実施におけるその重要性に留意し、
国連障害者の10年に関連する活動や計画の立案、運営および資金提供に高い優先順位が与えられ続けなければならないことを確信し、
障害者の10年が、世界行動計画の実施および、その重要性の広範な理解に有意義で強力なはずみを与えるであろうことを確信し、
開発途上国が、とりわけ基本的ニーズに関するほかの優先順位の高いものへの緊急な要求に直面し、障害の予防、リハビリテーションおよび、障害をもつ数百万の人びとの機会均等化の分野における緊急のニーズをみたすため、十分な資源を動員することに困難が増大してきている事態に際会しつつあることを懸念し、
障害者に関する世界行動計画の第157項{53)}において、開発途上国や障害者団体からの援助要請に応じるため、また、世界行動計画をさらに実施するため、信託基金が使用されるべきであると述べられていること、ならびに、第158項で、世界行動計画の諸目的実施のため開発途上国に資源の流れを増大させる必要性のあること、さらに、そのため事務総長が財源増大の新しい方法・手段を探り、資源を動員するために必要な追跡手段を取るべきであること、また、各国政府や私人・私的組織からの任意の貢献が奨励されるべきであることが示されていることを想起し、
障害に関する技術情報の収集と普及に対する効果的システムの重要性を強調し、
さらに、予防、リハビリテーションおよび機会均等化の分野における公的情報と教育活動の重要性を強調し、
障害者に関する世界行動計画の実施に関する事務総長の報告{56)}を検討し、
1.障害者に関する世界行動計画の実施および、国連障害者の10年のため、国内政策や計画を練り上げたあらゆる加盟各国に感謝の念を表明し、また、まだそうした計画を作り上げていない加盟各国にそうするよう求め;
2.国連システムや関係する非政府組織によって着手されている、世界行動計画の実施に関連する活動を感謝の念をもって留意し;
3.加盟各国に、世界行動計画の諸目的達成のため、関係する非政府組織と協力してすべての努力をおこなうこと、また、計画実施に関連する立案や決定過程に障害者を関与させるよう求め;
4.加盟各国に、国内レベルや地方レベルで、障害者の10年の諸目的を支援する活動の実行を立案し、調整し、奨励するさい、最も高次のレベルで、障害者団体の参加を求めることを、障害者の10年のための国内委員会もしくは類似の組織を強化したり設置するさいに優先的事項とすることを請い;
5.事務総長に、今会期への事務総長の報告{56)}および、加盟各国と障害者団体を含む諸組織からの応答に基づき、障害者の10年期間中の優先活動に対するガイドラインを練り上げるよう要請し;
6.事務総長に、現存する財源の再配分により、障害分野の核に、とりわけ上記5の目的のため役立ち続けられるよう、事務局の社会開発・人道問題センターの強化を求める要請を繰り返し;
7.事務総長と国連システムの関連組織に、障害者の10年と世界行動計画の目標を宣伝する特別計画の作成を要請し、さらに、加盟各国と非政府組織に、この企てへの支援を請い;
8.加盟各国、国連システムの諸組織および非政府組織に、国家レベル、地域レベルおよび地域間レベルで障害者の10年を立案し、運営し、資金提供をする目的のため、基金や要員といった形で利用可能な資源を設けることを請い;
9.国連システムのあらゆる組織に、それぞれの能力分野で全体的目的を遂行しようとするさい、世界行動計画の効果的実施と同じく、障害者の関心を考慮することを求め;
10.上記5に上げられているガイドラインの練り上げと採択が、懸案事項のままであることから、国際障害者年のための国連信託基金が、世界行動計画の第157項{53)}と国連総会決議38/28の第4項に従った活動を支援しつづけるべきであることを決定し;
11.加盟各国および他の寄付者に、信託基金への寛大な貢献の継続を要求し;
12.事務総長に、国連システム内により多くの障害者の雇用を促進するよう要請し;
13.障害者の10年の中間点で進歩を評価する、主として障害者から構成される専門家会議を1987年に開催することを再び事務総長に要請し、また、総会決議37/52の第3項で規定された、第42回総会が世界行動計画の実施を評価するのを助力するため、事務総長が報告を準備することを要請し;
14.事務総長に、信託基金に関する活動についての詳細な情報を含む、本決議の実施に関し、第40回総会に報告することを要請し、さらに、「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題された項目を第40回総会の暫定議題に含めることを決定する。
53)A/37/351/Add. 1 and Add. 1/Corr. 1, annex, sect. VIII , recommendation I( IV).
54)See Offical Records of the Economic and Social Council, 1984, Supplement N o.4(E/1984/14 and Corr. 1), chap.II sect. A.
55)E/CN. 4/Sub. 2/1984/L. 24.
56)A/39/191 and Corr. 1.
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年
国連総会は、
障害者に関する世界行動計画{54)}を採択した1982年12月3日の総会決議37/52、とりわけ1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した1982年12月3日の総会決議37/53、国際障害者年のための国連信託基金が障害者に関する世界行動計画の実施にとって重要な手段の一つであり、国連障害者の10年を通じて継続されることが望ましいことを認識した1983年11月22日の総会決議38/28、世界行動計画実施のためのさらに特別な手段を採択した1984年11月23日の総会決議39/26を想起し、
1985年5月29日の経済社会理事会決議1985/35、そこにおいてとりわけ、各国政府による貢献を促進するため、国際障害者年のための国連信託基金を、「国連開発活動への提供寄金会議」(United Nations Pledging Conference for Development Activities)で基金が提供される計画に毎年組み込むよう事務総長が要請されたことに留意し、
国連障害者の10年の枠組み内で世界行動計画の諸目的を実施するため、加盟各国の政府、国連システムの機関や組織、非政府組織によってすでに遂行されてきた具体的手段を満足の念をもって留意し、
障害者に関する世界行動計画の実施を監視する手続きを確立し、さらに、監視のためのきちんとした質問紙を準備するため、国連システムおよび関連する非政府組織によってとられたステップを感謝の念をもって心に留め、
1981年から1985年の間に各国政府によってなされた多くの貢献ならびに、障害者に対する活動への資金提供への貢献に関する国連総会および他の国連機関による継続的訴えにもかかわらず、開発途上国における障害者の状態改善に向けての進歩は緩慢であり続けたことに関心を示し、
開発途上国における障害者の憂慮すべき事態および多くの国々、とりわけアフリカ、ラテンアメリカや低開発途上国における危機的な経済状況に深刻な懸念を示し、
開発途上国は資源を動員するのに困難を経験しつつあることから、世界行動計画および国連障害者の10年の実施に向けての国内での努力を支援するため、国際的な協力が奨励されなければならないことを心に留め、
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年に関する事務総長の報告{55)}に留意し、
加盟各国および諸組織、とりわけ過去数ヶ年にわたって160万ドルを寄付してくださった25ヶ国に感謝の意を表明し、
世界行動計画の実施にさいし、国際障害者年のための国連信託基金による有用な役割に感謝の意を表し、
1.あらゆる加盟各国および他の寄付者が信託基金にさらに寛大な貢献を考慮するよう求め;
2.障害分野における調整活動のための国内委員会もしくは類似の組織を設置した加盟各国に感謝の念を表明し、さらに、あらゆる加盟各国がそうするよう奨励し;
3.加盟各国に、国連障害者の10年に対する焦点としての国内委員会を強化すること、国内レベルでの諸活動を刺激すること、10年に関し公衆の見解を喚起すること、国際障害 者年に関連する障害プロジェクトの実施に参加すること、ならびに、障害者に関する世界行動計画の実施をモニターし、評価することを支援するよう求め;
4.加盟各国に、世界行動計画を自国の言語に翻訳するよう奨励し;
5.加盟各国が国内委員会および関連のある非政府組織と密接な協力の下、第42回国連総会に事務総長が提出する、障害者の10年中間点での進歩の評価に関する報告に含められるよう可能な限りすみやかに、世界行動計画の前半までのモニターと実施に関する質問紙への回答を提出することを求め;
6.事務総長に、世界行動計画の第157項と158項に従うよう主張し;
7.あらゆる国々に、相互援助の枠組み内で障害の予防、リハビリテーションおよび障害者の機会均等化に関するプロジェクトの検討に高い優先順位を与えるよう求め;
8.国連障害者の10年にいっそう大きな宣伝をおこなう必要性を繰り返し、また、加盟各国、国内委員会や非政府組織が、あらゆる適切な手段で障害者の10年の宣伝を支援するよう要求し;
9.国連システムの機関や組織が、障害者の平等な雇用機会を促進するためにとった手段に留意し、さらに、この分野でこうした努力が継続されることを主張し;
10.とりわけ、国際障害者年のための国連信託基金に対し、事務総長の報告{55)}で提起された権限により、今後は「国連障害者の10年のための任意拠出基金」(Voluntary Fund for the United Nations Decade of Disabled Persons)と呼称することに賛同し;
11.事務総長に、信託基金の現在の仕組みの下で、それらをプロジェクトに使用し、寄付された基金を運営し続けること、またさらに、「特別目的のための貢献」(Special Pu rpose Contribution)の下で、特定の計画への財政支出を積極的におこなおうとする寄付金拠出の国々に、プロジェクトの選択の可能なように新しい規定を設けることを要請し;
12.信託基金の資源が、国連障害者の10年の枠組み内で、低開発途上国の計画やプロジェクトに、適切に、優先順位に従い、世界行動計画の諸目的のいっそうの実施を進めるため、触媒的・革新的活動を支援するために使用されるべきであることを再確認し;
13.支援プロジェクトを運営するあらゆる国連機関や組織に、諸目的の全体的計画の立案に障害者を含めることと同じく、リハビリテーションや社会への障害者の統合に関するプロジェクトにおいて、障害者の関心事を考慮するよう要請し;
14.事務総長に、第41回国連総会に本決議の実施に関し報告することを要請し;
15.さらに事務総長に、総会決議37/53の第16項および総会決議39/26の第13項に規定された、障害者の10年の中間点での進歩を評価する専門家会議の準備状況に関する情報ならびに、開発途上国における技術情報の交換や技術ノウハウの移転のための支援サービスや予防、リハビリテーションと機会均等化としての分野での他の活動を提供するために、国際障害者年諮問委員会の第3会期と第4会期、さらに総会決議36/77の第14項で要請した報告に含めるよう要請し;
16.「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題された項目を第41回総会の暫定議題に含めることを決定する。
54)A/37/351/Add. 1 and Add. 1/Corr, 1, annex, sect. VIII . recommendation I( IV).
55)A/40/728 and Corr, 1.
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年
「障害者に関する世界行動計画」{49)}を採択した1982年12月3日の総会決議37/52および、とりわけ1983年から1992年の期間を「国連障害者の10年」と宣言した1982年12月3日の総会決議37/53を含む、あらゆる関連する決議を想起し、
1985年11月29日の総会決議40/31を想起し、さらに、あらゆるその関連規定に重ねて言及し、
国連障害者の10年の枠組みの中で、世界行動計画の諸目的を実施するため、加盟各国の政府、国連システムの諸機関や諸組織、非政府組織によってすでに着手されてきた具体的手段を満足の念をもって心に留め、
世界行動計画の実施をモニターすることに関連のある国連システムや非政府組織によってとられたステップに感謝の念をもって留意し、
開発途上国は資源の運用に困難を経験しつつあるので、世界行動計画の実施および国連障害者の10年における国内努力を支援するため、国際協力が奨励されるべきであることに留意し、
障害者に関する世界行動計画の実施および国連障害者の10年に関する事務総長の報告{50)}に意を留め、
1.加盟各国に、国連障害者の10年に対する焦点として国内委員会を強化すること、国内レベルで諸活動を刺激すること、障害者の10年に関し公衆の見解を求めること、国際障害者年に関する障害プロジェクトの実施に参加することならびに、障害者に関する世界行動計画の実施をモニターし評価することを支援することを再び求め;
2.相互支援の枠組み内で、障害の予防、リハビリテーションおよび障害者の機会均等化に関するプロジェクトを最優先にすることをあらゆる国に再度求め;
3.事務総長に、国連障害者の10年のための任意拠出基金{51)}の現在の仕組みの下で、それらをプロジェクトに使用し、寄付された基金を運営し続けること、またさらに、「特別目的のための貢献(Special Purpose Contribution)」の下で、特定の計画への 財政支出を積極的におこなおうとする寄付金拠出の国々に、プロジェクトの選択が可能なよう新しい規定を設け続けることを要請し;
4.任意拠出基金の資源は、適切に、低開発途上国の計画やプロジェクトを優先し、国連障害者の10年の枠組み内で世界行動計画の諸目的をさらに実施するため、触媒的・革新的活動を支持するために、使用されるべきことを再確認し;
5.各政府および非政府組織に、任意拠出基金への貢献を継続するよう求め、また、まだそうしていない各政府および非政府組織に基金への貢献を検討するよう要求し;
6.1984年11月23日の総会決議39/26の関連規定に従い、主として障害者から構成される専門家会議を1987年に開催するというスウェーデン政府の申し出を歓迎し;
7.予定されている専門家会議のための準備状態を感謝の念をもって留意し;
8.事務総長に、本決議の実施および専門家会議の結果に関する報告を第42回総会にするよう要請し;
9.「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題された項目を第42回総会の暫定決議に含めることを決定する。
49)A/37/351/Add. 1 and Add. 1/Corr, 1, annex, sect. VIII , recommendation I( IV).
50)A/41/605 and Corr, 1.
51)Formerly Known as the United Nations Trust Fund for the International Year of Disabled Persons.
付:障害者の10年前半に出された国連の発行物
(1)「障害者の機会均等化に関する手引(United Nations Decade of Disabled Persons, 1983-1992, Manual on The Equalization of Opportunities for Disabled Persons)」1986{2)}。事務局の国際経済・社会問題部発行、28頁。ノルウェー政府の基金によって刊行された。「障害者に関する世界行動計画」の枠組みに従い、国内障害計画を作成するさい、政府にアドヴァイスするコンサルタントが使用するための手引書であり、さまざまな開発レベルにある国々で使用されることを意図している。
(2)「障害をもつ人びとの機会均等化のための法制化に関する国際的専門家会議報告書(Report of the International Expert Meeting on Legislation for Equalization of Opportunities for People with Disabilites)」1986年。1986年6月2~6日、ウィーンで開催(社会開発・人道問題センターと提携してリハビリテーション・インターナショナルが設定)された会議の報告書。各国の現状や、障害者のための特別な法制化が必要かどうかといった報告と討議が盛り込まれている。日本からは厚生省の Moriyama が、「第2次世界大戦後の日本における社会保障とリハビリテーションに関する立法の進展」と題する報告をした。
(3)「障害:状況、方略、政策(United Nations Decade of Disabled Persons, 1983-1992, Disability : Situation, Strategies and Policies)」1986年、60頁。社会開発・人道問題センターは、1981年の国際障害者年をめぐって、各国や国連システムから提供された大量の資料を整理・分析し、障害者問題を検討するさいの資料提供をめざし、この刊行物をまとめ上げた。この中には、1980年3月に各国に送付し、1981年5月末に回答してもらった質問紙調査(64か国が回答、日本は回答してないようである)の結果なども含まれている。日本に関しては他の資料(例えば Economics of Disability に引用されている障害者リハビリテーション協会の「日本における障害者に対するリハビリテーションサービス」など)を利用し、障害者数、社会福祉、独特な特殊教育などについて記している。
注
1)A/41/605
2)ST/ESA/177
国連障害者の10年の中間点である1987年の第42回総会で、障害者に関する世界行動計画の実施を評価すること、そのため、主として障害者によって構成される専門家会議を同年に開催することを総会決議37/53第16項で事務総長に要請した。決議39/26、40/31でも同じことが要請され、決議41/106でスウェーデン政府が専門家会議開催を申し出たことを歓迎している。決議42/58では開催したことに対し、スウェーデン政府と参加した専門家に感謝する(第16項)と共に、専門家会議による勧告へのコメントを加盟各国や関連機関が事務総長に提出する(第17項)ことを要請している。
「国連障害者の10年の中間点で障害者に関する世界行動計画の実施をレヴューするグローバルな専門家会議(Global Meeting of Experts to Review the Implementation of The World Programme of Action Concerning Disabled Persons at The Mid-Point of The United Nations Decade of Disabled Persons)」は1987年8月17~22日、ストックホルムで開催された。出席した専門家はエチオピア、アメリカ、サウジアラビア、ウルグアイ、ドイツ民主共和国、アルジェリア、モーリタニア、スウェーデン、シンガポール、ユーゴ、フランス、カナダ、アルゼンチン、ポーランド、トリニダード・トバコ、中国、コンゴ、イタリー、タイ、英国、コロンビア、フィリピン、ノルウェーの23名である。オブザーバーとして国連事務局(5部門)、国連諸機関(6)、政府間機関(2)、非政府組織(14)その他が出席した。専門家の大多数は障害者であり、国連関係の会議としては初めて手話通訳、点字、オーディオカセットが活用された。
まとめられた報告書の内容は①行動のための勧告(第1~9項:序、第10~39項:勧告)、②討議の要約、③会議の構成と他の諸側面で、18頁の小冊子である{1)}。この報告書は事務総長に提出され、事務総長はこの内容を含んだ報告書{2)}を総会に提出した。さらに事務総長は、国内委員会の活動、障害の予防・リハビリテーション・機会均等化に関する二国間援助、障害者の10年の任意拠出基金の活動に関する情報を提供する報告書{3)}も提出した。
専門家会議の報告書では第11項(勧告の第2)で、障害者に対するあらゆる形態の差別撤廃に関する国際条約(international convention on the elimination of all forms of discrimination against disabled persons)の起草と、障害者の10年の終結までにそれを加盟各国が批准することがあげられていた。この草案をイタリー代表が提出したため、第3委員会ではきわめて活発な論議が展開された。専門家会議による勧告の多くは支持されたが、拘束力をもつ国際条約の制定には多数の国々が反対もしくは留保を表明した。日本代表(Ito)は「会議で採択された30の勧告はたしかに有用ではあるが、おそらくあまりに野心的でありすぎる(probably too ambitious)。国際条約を起草することのメリットを認めることは困難である。」{4)}これは第3委員会の公式記録ではあるが、発言を要約したものである。外務省の記録によると、日本代表は、「国連が直面している財政危機という観点から、これら勧告は a little ambitious である。率直にいって、障害者10年の効果的実施における緊急性と必要性という点からして、国際条約を起草するという考え方には疑念(some doubts)を抱かざるをえない。」{5)}といった陳述をしている。
北欧諸国を代表してスウェーデンの代表(Lindqvist)は、障害者の人権の重要性を強調しながらも、現存する人権に関する条約、規約、宣言(精神遅滞者の権利宣言、障害者の権利宣言を含む)の履行で十分だと主張した{6)}。もっとも、スウェーデン政府は、自国では特別な条約策定の必要性を認めないが、世界の現状では条約起草の緊急性があるとし、第44回総会に条約案を提出した{7)}。家族・障害者・高齢者問題担当大臣でもあり、自身が視覚障害者である Bengt Lindqvist は各国代表と折衝し、反対の多い条約ではなく、強制力・拘束力をもたない国際的最低基準原則(international minimum standard rule)といったものなら賛同を得やすいことを認識した{8)}。こうしてスウェーデンから機会均等化の基準原則策定の提案がなされ、Lindqvist がその素案を作成・提出することになるのである。
条約反対論は、おおむね次の4つにまとめられる。①障害者問題は普遍的問題というよりも、国内問題である。各国が国情に応じた対応をすればよい。②国連は財政的にきわめて苦しく、こうした問題を扱うのは無理である。③人権宣言をはじめ各種の文書があり、新しい条約は屋上屋を架することになる。④万人のための社会をめざすべきであり、障害者だけを対象とするものには反対である。
これら反対もしくは慎重論に対し、イタリー代表(Saulle)は次のように述べている。①人権に関してはすでにいくつもの国際的文書がある。しかし、これらは一般的性格のもので、障害者特有の事態や特別なニーズに対応できていない。②精神遅滞者権利宣言や障害者権利宣言は拘束力がなく、障害者保護のための最低限の国際基準になりえていない。③障害の問題は放置できない深刻な事態にあり、条約という強制的な拘束力のあるものが必要である。④国連は財政的に窮迫状態にあるが、それでもやらなければならない問題には積極的に取り組むべきである{9)}。
ストックホルムの専門家会議に先立ち、多くの予備的作業がおこなわれていた。国連障害者の10年に関する機関間会議は1986年3月と1987年2月に会議をし、インペアメント、ディスアビリティ、ハンディキャップの定義をレヴューする必要性、各レベルでの情報交換の必要性、国連システム内における障害者の平等雇用機会などを検討した。社会開発委員会は1987年2~3月の第30回会期で、10年後半期の「障害者に関する世界行動計画」実施に関する審議をしている。WHOは障害概念の検討だけでなく、disability と handicap を英語以外の言語に訳すさいの問題の検討、地域リハビリテーションや障害の予防問題も審議された。また、障害者に関するウィーン非政府組織委員会も、10年後半期の行動計画を検討した。さらに、障害者に関する世界行動計画実施に関する地域専門家会議も1987年3月、ユーゴで、同月にウルグアイで、6月にはタイで開催され、これまでの到達点、今後の取り組みへの提言が検討された{10)}。
事務総長の報告{11)}によれば、10年前半における達成点は以下の通りである。①障害者の問題と彼らの権利への認識を高めた。②障害者団体の増大。③諸調査による障害者の把握と、障害者数増加が明確となった。④地域サービス概念の適用が増大した。達成を妨げたものとしては、次のものが指摘された。①10年の推進、世界行動計画推進におけるリーダーシップの役割に影響する、国連における資源の制約。②10年に関する情報が不十分・不適切。③多くの国で、資源の限定と、計画の優先順位が低かったこと。④決定過程への障害者の参加が促進されなかったこと。⑤国内レベル、地域レベル、国際レベルでの協力の欠如。⑥ほとんどの国、とりわけ開発途上国において、障害者とその家族への援助を提供する包括的な社会保障システムが存在しなかったこと。
また、精神障害者、障害をもつ女性、聴覚障害者、高齢障害者、家族がいなかったり移民や難民家族の障害児、障害をもつ移民や難民、重複障害者への取り組みがとりわけ不十分であり、後半期の大きな課題となることが指摘された。その他、各種の問題への対応が不適切・不十分なことが認識され、今後の適切・十分な対応が要請された。
「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題された決議は、第3委員会で11月3日に無投票採択された。次いで11月30日、総会でも決議42/58として無投票採択された。決議第17項では、事務総長の報告および専門家会議による勧告への各国政府からのコメント提出が要請された。これを受け、事務総長は12月16日、各国政府に対し、1988年2月28日までにコメント提出をするよう要請した。しかし、期限までには1つしかコメントが寄せられなかった。4月7日時点で20か国、12の専門機関や組織からのコメント提出がみられた(これに日本は入っていない)。これらには、財政事情が苦しいこと、勧告の再検討をなすべきこと、世界行動計画の自国語への翻訳に取り組むこと、キャンペーンの必要なこと、財政上の問題から手話通訳や点訳が困難なこと(これはUNESCO、FAO)等が述べられている。国際条約に関しては支持表明がベラルーシ、エクアドル、エチオピア、ギリシャ、クウェート、ルクセンブルク、ルワンダ、アジア太平洋経済社会委員会、UNESCOからあった。条約への慎重・反対姿勢をベルギー、カナダ、スウェーデン、オランダ、ILOが示している。 フィンランドは現存の人権諸規約の実施を主張した{12)}。
いずれにせよ、コメント数のこの少なさは各国政府の障害者問題、すなわち障害者の10年への取り組みに対する消極的態度の顕在化といえるであろう。
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年
国連総会は、
障害者に関する世界行動計画{33)}を採択した1982年12月3日の決議37/52、とりわけ1983年から1992年の期間を国連障害者の10年と宣言した1982年12月3日の決議37/53を含む、あらゆる関係のある決議を想起し、
1986年12月4日の決議41/106を想起し、また、そのあらゆる関連規定を再確認し、
とりわけ、障害者の10年のための国際的支援と活動を動員するための、あらゆる適切な努力をおこなうよう事務総長に要請した、1987年5月28日の経済社会理事会決議1987/43に留意し、
さらに、1987年9月7日から15日までウィーンで開催された、「開発中の社会福祉政策・計画に関する地域間協議」によって採択された、「近い将来における開発中の社会福祉政策・計画のための指導指針」{21)}(Guiding Principles for Developmental Social Welfare Policies and Programmes in the Near Future)に留意し、
1987年が国連障害者の10年の中間点であり、また、世界行動計画の実施に関しておこなわれたレヴューにおいて、最も重要な評価基準は国際障害者年のテーマ「完全参加と平等」と示唆されたことを心に留め、
国連障害者年の10年の枠組み内で世界行動計画の諸目的を実施するため、加盟各国の政府、国連システムの機関や組織、非政府組織によってすでにとられてきた具体的手段を満足の念をもって留意し、
障害者に人権と基本的自由の享受を保障するための継続的努力に対する有用な基礎として役立ちうる、人権と障害に関する「マイノリティの差別防止と保護に関する小委員会」(Sub-Commission on the Prevention of Discrimination and Protection of Minorities)によって現在着手されている重要な努力に注目し、
世界行動計画の実施をモニターするために、国連システムおよび関連のある非政府組織によってとられたステップを感謝と共に留意し、
国連障害者の10年を再活性化させるため、よりいっそう宣伝をおこなう必要性を繰り返し、
障害をもつ人びとの地位や福祉を前進させるため、より効果的な方略や政策に向けての情報・経験・実際的見解の交換や、密接な地域・地域間の協力を促進するさいの国連の中軸的役割を認識し、
社会開発・人道問題センターが、世界行動計画の実施をモニターするさいの国連における中心であることを強調し、
障害者の10年の中間点で、国連障害者の10年のための任意拠出基金の資源が10年前半の間に著しく減少しており、また、この傾向が逆転しないかぎり、基金の資源が枯渇するであろうし、運用の活動が1992年の10年終結前に衰退してしまうであろうことに関心を払い、
開発途上国は資源の動員に困難を経験しつつあるので、世界行動計画および国連障害者の10年の諸目的を実施するさいの国内努力を支援する国際協力が奨励されなければならないことに心配りをし、
障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年に関する事務総長の報告{34)}を感謝の念をもって心に留め、
また、国連障害者の10年前半における障害者に関する世界行動計画の実施の評価に関する事務総長の報告{35)}を感謝の念をもって留意し、
1.障害者に関する世界行動計画の妥当性を再認識し、また、計画の早期の効果的実施のため、計画に再び熱心に取り組むことを加盟各国に請い;
2.国連障害者の10年のための焦点としての、障害者およびその団体と協議するための国内委員会をまだ設置していない加盟各国に、委員会の設置を求め;
3.加盟各国に、国連障害者の10年の焦点としての国内委員会を強化すること、国家レベルでの諸活動を刺激すること、10年に関する公衆の見解を喚起すること、国際障害者年に関連する障害プロジェクト実施に参加すること、また、10年後半における障害者に関する世界行動計画をモニターし、評価するのを支援することを再び求め;
4.事務総長に、現存する資源内で、障害者の10年後半の間に、見解と情報の交換を通じ、国内障害委員会の能力を高めることをめざした、国内委員会代表者の国際会議の開催を検討するよう要請し;
5.加盟各国に、国内開発プランと方略プロジェクトに障害をもつ人びとを支援することを組み込むこと、また、国連開発委員会の国内計画にこうしたプロジェクトを含むことを求め;
6.あらゆる加盟各国に、相互援助の枠組み内で障害の予防、リハビリテーション、障害者の機会均等化に関するプロジェクトに高い優先順位を与えることを再び求め;
7.事務総長に、地域委員会、国際機関や専門機関を含め、国連のあらゆる機関や組織が、計画や運用する活動を練り上げるさい、障害者の特定のニーズを考慮に入れるよう奨励することを要請し;
8.事務総長および加盟各国に、雇用機会の提供を含め、国連の計画や活動に障害者が真に関与することの奨励を求め;
9.事務総長に、現存する資源内で、障害問題に高い視度を与えることを保障し、また、国連システムや関連する国連外のネットワークの利用可能な資源を活用する、専門的促進機関としての社会開発・人道問題センター障害者部を発展させることを保障することを検討するよう要請し;
10.センターが非政府組織と密接な協力を拡大し、また、世界行動計画の実施に関連する問題に対し、定期的・組織的にそれら組織と協議することを求め;
11.加盟各国、国内委員会、国連システムおよび非政府組織に、あらゆる適切な手段を通じて障害者の10年を宣伝するグローバルな情報キャンペーンを支援するよう要求し;
12.非政府組織とりわけ障害をもつ人びとを代表する団体が、世界行動計画の効果的実施、障害をもつ人びとの関心事への国際的関心の高揚、障害者の10年の間に達成された進歩のモニターと評価における重要な役割を認識し;
13.事務総長に、国連障害者の10年のための任意拠出基金の現在の仕組みの下でプロジェクトにそれを使用し、寄付された基金を運用し続けること、またさらに「特別な目的の貢献」の下で特定の計画に積極的に財政支出をしようとする寄付金拠出国にプロジェクトの選択を可能にさせる新しい規定を作ることを要請し;
14.任意拠出基金の資源は、国連障害者の10年と枠組み内で、適切に、優先順位に従い、低開発途上国の計画やプロジェクト、世界行動計画の諸目的をさらに実施するための触媒的・革新的活動を支援するために使用されるべきであることを再認識し;
15.各国政府と非政府組織に、任意拠出基金への貢献を続けるよう求め、また、まだ基金への貢献を検討していない各国政府や非政府組織に、増大しつつある支援要請に効果的に対応することを可能にするため貢献への検討を要求し;
16.1987年8月17日から22日までストックホルムで開かれた、国連障害者の10年の中間点での障害者に関する世界行動計画の実施をレヴューするためのグローバルな専門家会議を開催したスウェーデン政府および、参加した専門家に感謝の念を表明し;
17.加盟各国および国連システムのすべての関連機関が、国連障害者の10年前半の間における障害者に関する世界行動計画の実施の評価についての事務総長の報告{35)}に関してと同じく、グローバルな専門家会議の報告{36)}の第10項から39項に示された勧 告に関するコメントを事務総長に提出するよう要請し、また、事務総長に、1988年の経済社会理事会第1定期会期にそれに関する報告を提出するよう要請し;
18.事務総長に、本決議の実施に関し第43回総会に報告することを要請し;
19.「障害者に関する世界行動計画の実施と国連障害者の10年」と題する項目を第43回総会の暫定議題に含めることを決定する。
33)A/37/351/Add. 1 and Add. 1/Corr. 1, annex, sect. VIII , recommendation I(IV).
21)E/CONF. 80/10.
34)A/42/551.
35)A42/561.
36)See CSDHA/DDP/GME/7 of 1 September 1987.
注
1)CSDHA/DDP/GME/7
2)A/42/561
3)A/42/551
4)A/C. 3/42/SR. 18
5)United Nations Bureau, Ministry of Foreign Affairs. Statements Delivered by Delegate of Japan during the 42nd Session of the General Assembli of the United Nations. p. 189
6)A/C. 3/42/SR. 19
7)A/C. 3/44/SR. 16
8)A/C. 3/45/7
9)A/C. 3/42/SR. 16
10)Disabled Persons Bulletin. Nos. 12 and 13. pp. 7-10. 1987.
11)前掲2)
12)E/1988/32
主題 | 国際連合と障害者問題 - 重要関連決議・文書集 - |
編者 | 中野善達 (Yoshitasu Nakano) |
発行日 | 1997年6月25日 第一刷 |
発行所 | エンパワメント研究所 |