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福知山市手話言語及び障害のある人の多様なコミュニケーション促進条例

目次

 言語は、互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。
 手話は、音声ではなく手指や身体の動き、表情を使って視覚的に表現する独自の語彙や文法体系を持つ言語であり、ろう者は、生活の中から手話を発展させ、聞こえる人たちの音声言語と同様に、生きるために必要な言語として、大切に育んできました。
 しかし、過去において手話は、言語として認められず、ろう学校で使用が禁止されるなど、使用することができる環境が十分に整えられてこなかったため、ろう者は、必要な情報が得られず、様々な誤解や偏見を受けるなどして、尊厳が著しく傷つけられてきた歴史があります。
 このような中、障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)への批准に向けて障害者基本法(昭和45年法律第84号)が改正され、手話は、言語であると明確に定められました。
 わたしたちは、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が日常生活や社会生活を営むために大切に受け継いできた言語であることを深く認識し、その理解の普及に努めていかなければなりません。
 また、障害者の権利に関する条約において、コミュニケーション手段には、手話を含む言語、文字の表示、点字、音声、平易な表現など多様な手段があると規定され、障害者基本法においても、コミュニケーション手段の選択と利用の機会の確保が求められています。
 その一方で、障害の特性や障害のある人のニーズに応じたコミュニケーション手段への理解や環境整備が十分に進んでおらず、障害のある人は、日常生活や社会生活を営む上で、不便や不安を感じている現実があります。
 このような状況から、全ての障害のある人が十分に必要な情報の取得や相互理解を深めるためのコミュニケーションを図ることができる環境を整備することが必要です。
 ここに福知山市は、手話が言語であることへの理解の普及に努めるとともに、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用を促進することにより、障害や障害のある人への市民の理解を深め、障害のある人の社会参加を促進し、障害のある人もない人も全ての市民が、互いに人格と個性を尊重し合うことのできる「共に幸せを生きる」社会の実現のため、この条例を制定します。

第1章 総則

(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であること(以下「手話言語」という。)への理解の普及及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進に関し必要な事項を定めることにより、障害のある人もない人も分け隔てられることなく、理解し合い、互いに一人一人の尊厳を大切にし、安心して暮らすことができる共生社会を実現することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 (1) 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下単に「障害」という。)がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 (2) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
 (3) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段 手話、要約筆記、点字、音声、拡大文字、触手話、指点字、ひらがな表記、サイン、写真、絵図その他障害のある人が日常生活及び社会生活において使用する意思疎通の手段をいう。
 (4) 事業者 市内に事業所又は事務所を有する個人、法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)をいう。
 (5) 合理的配慮 障害のある人が、日常生活及び社会生活において障害がない人と同等の権利を行使するために行われる必要かつ適当な変更及び調整であって、その実施に伴う負担が過度でないものをいう。
 (6) コミュニケーション支援者 手話通訳者及び手話通訳士(以下「手話通訳者」という。)、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、盲ろう者向け通訳・介助員その他障害のある人の意思疎通の支援等を行う者をいう。
 (7) 学校等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第7条第5項に規定する地域型保育事業を行う事業所をいう。

(基本理念)
第3条 手話言語への理解の普及は、手話が独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が日常生活及び社会生活を営むために大切に受け継いできた言語であるという認識の下に行われなければならない。
2 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進は、障害のある人の多様な意見及び要望に適合したものを自ら選択する機会が保障されることを基本として行われなければならない。

(市の責務)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話言語への理解の普及及び障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策を推進するものとする。

(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、基本理念にのっとり、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進のため、障害のある人が利用しやすいサービスを提供し、及び障害のある人が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(施策の基本方針)
第7条 市は、第4条の規定による責務を果たすため、次に掲げる施策を障害者基本法第11条第3項に規定する市町村障害者計画において定め、総合的かつ計画的に推進するものとする。
 (1) 手話を学ぶ機会の提供等に関する施策
 (2) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段への理解の普及に関する施策
 (3) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を容易に利用できるようにするための環境整備に関する施策
 (4) コミュニケーション支援者等の確保及び養成に関する施策
 (5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

(財政上の措置)
第8条 市は、前条各号に規定する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

第2章 手話言語への理解の普及

(手話を学ぶ機会の提供等)
第9条 市は、手話言語への理解を普及させるため、ろう者、手話通訳者、事業者及び関係機関と協力し、市民が手話に触れ、手話を学ぶ機会を提供するものとする。
2 市は、事業者及び関係機関が手話に関する学習会等を開催する場合において、その支援を行うものとする。

第3章 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段の利用の促進

(障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段への理解の普及)
第10条 市は、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を必要とする障害のある人、コミュニケーション支援者、事業者及び関係機関と協力して、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段に対する市民の理解を普及させるため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、学校等において、幼児、児童、生徒等が障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を学ぶことができるよう、学習機会の確保及びその支援に努めるものとする。

(障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を容易に利用できるようにするための環境整備)
第11条 市は、障害のある人が日常生活及び社会生活において容易に情報を取得し、円滑にコミュニケーションを図ることができるよう、次に掲げる事項の推進に努めるものとする。
 (1) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段による市政に関する情報の発信
 (2) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段による災害時における避難等に関する情報の発信及び支援
 (3) 市が主催する講演会その他行事における手話通訳者及び要約筆記者の配置
 (4) 聴覚に障害のある人への手話通訳者又は要約筆記者の派遣
 (5) 市職員に対する障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段に関する研修の実施
 (6) 前各号に掲げるもののほか、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用するに当たっての環境整備
2 市は、事業者が行う障害のある人への必要な情報の発信及び障害のある人のコミュニケーションの促進のための合理的配慮の提供について、支援を行うものとする。

(コミュニケーション支援者等の確保及び養成)
第12条 市は、障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を必要とする障害のある人が地域社会において安心して日常生活及び社会生活を営むことができるよう、障害のある人、コミュニケーション支援者、事業者及び関係機関と協力して、コミュニケーション支援者及びその指導者の確保及び養成を行うものとする。

第4章 福知山市手話言語・障害のある人の多様なコミュニケーション施策推進会議

第13条 第7条各号に規定する施策(次項において「施策」という。)を的確に推進するため、福知山市手話言語・障害のある人の多様なコミュニケーション施策推進会議(以下「会議」という。)を設置する。
2 会議は、市長の諮問又は要請に応じ、施策の推進について必要な事項を調査し、又は審議するものとする。
3 会議は、委員15人以内をもって組織する。
4 委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
 (1) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段について優れた識見を有する者
 (2) 障害の特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用する者の代表者
 (3) コミュニケーション支援者
 (4) 公募により選考された市民
 (5) 前各号に掲げる者のほか、市長が適当であると認める者
5 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

附則

(施行期日)
1 この条例は、平成30年4月1日(次項において「施行日」という。)から施行する。ただし、同項の規定は、公布の日から施行する。

(準備行為)
2 第13条第4項の規定による会議の委員の委嘱に関し必要な行為は、施行日前においても行うことができる。