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障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン
~福祉分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針~

平成27年11月
厚生労働大臣決定

はじめに

 平成28年4月1日から「障害者差別解消法」が施行されます。
 この法律は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体等及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。
 この対応指針は、「障害者差別解消法」の規定に基づき、福祉分野における事業者が障害者に対し不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しています。
 日々の業務の参考にしていただき、障害者差別のない社会を目指しましょう。

目次

(注)原本PDF版は、奇数ページに本文を掲載し、偶数ページに参考ページを掲載している。このHTMLは、テキスト版にしたがい、本文ページをまとめて掲載し、後半に参考ページを掲載する。

第1 趣旨

(1)障害者差別解消法制定の経緯

 近年、障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18年に国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択されました。我が国は、平成19年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めてきました。
 権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国に全ての適当な措置を求めています。
 我が国においては、平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定されました。  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定されました。我が国は、法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に権利条約を締結しました。
 法は、平成28年4月1日から施行されることになっています。

(2)対象となる障害者

 対象となる障害者・障害児(以下「障害者」という。)は、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、すなわち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」です。
 これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるというモデル(いわゆる「社会モデル」)の考え方を踏まえているものです。したがって、法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限りません。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれています。
 また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、さらに複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があります。

(3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針

 法第6条第1項の規定に基づき、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)が策定されました。
 基本方針は、障害を理由とする差別の解消の推進は、雇用、教育、医療、公共交通等、障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる分野に関連し、各府省の所掌に横断的にまたがる施策であるため、政府として、施策の総合的かつ一体的な推進を図るとともに、行政機関間や分野間における取組のばらつきを防ぐため、施策の基本的な方向等を示したものです。

(4)社会保険労務士の業務を行う事業者への対応指針

 法第11条第1項の規定に基づき、主務大臣は、基本方針に即して、事業者が法第8条に規定する事項に関し、適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めることとされています。
 本指針は、上に述べた法の目的を達成するため、特に福祉分野に関わる事業者の対応指針を定めたものです。
 本指針において定める措置については、「望まれます」と記載されている内容等法的義務ではないものも含まれますが、法の目的を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟な対応を積極的に行うことが期待されるものです。
 なお、事業者は、障害を理由とする差別を解消するための取組を行うに当たり、法、基本方針及び本指針に示す項目のほか、各事業に関連する法令等の規定を順守しなければなりません。
 また、福祉の専門知識及び技術をもって福祉サービスを提供する事業者は、日頃から、障害に関する理解や障害者の人権・権利擁護に関する認識を深めるとともに、より高い意識と行動規範をもって障害を理由とする差別を解消するための取組を進めていくことが期待されます。

 本指針の対象となる福祉事業者の範囲は、社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条に規定する社会福祉事業その他の福祉分野に関わる事業を行う事業者です。

「本指針の対象となる福祉事業者」

  • 生活保護関係事業(救護施設、更生施設などを経営する事業など)
  • 児童福祉、母子福祉関係事業(乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設を経営する事業、障害児通所支援事業、障害児相談支援事業、保育所、婦人保護施設、母子・父子福祉施設など)
  • 老人福祉関係事業(養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを経営する事 業、老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業など)
  • 障害福祉関係事業(障害者支援施設を経営する事業、障害福祉サービス事業、身体障害者生活訓練等事業、補装具製作施設など)
  • 隣保事業
  • 福祉サービス利用援助事業 など

 なお、基本方針において、「事業者は、商業その他の事業を行う者(地方公共団体の経営する企業及び公営企業型地方独立行政法人を含み、国、独立行政法人等、地方公共団体及び公営企業型以外の地方独立行政法人を除く。)であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者である。したがって、例えば、個人事業者や対価を得ない無報酬の事業を行う者、非営利事業を行う社会福祉法人や特定非営利活動法人も対象となる。」と規定されています。

注)事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされており、同法に基づき別途定められた「障害者差別禁止指針(※1)」及び「合理的配慮指針(※2)」を参照してください。
※1「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第116号)
※2「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の 有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成27年厚生労働省告示第117号)

第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方

(1)不当な差別的取扱い

①不当な差別的取扱いの基本的考え方

 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービス等の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付するなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。
 なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではないことに留意する必要があります。
 したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たりません。
 不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことです。

②正当な理由の判断の視点

 不当な差別的取扱いであるのかどうかの判断には、その取扱いを行う正当な理由の有無が重要となります。正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。
 正当な理由に相当するか否かについて、事業者は、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止など)の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。
 なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものです。
 また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨が形骸化されるべきではなく、抽象的に事故の危惧がある、危険が想定されるといった理由によりサービスを提供しないといったことは適切ではありません。

(2)合理的配慮

①合理的配慮の基本的な考え方

<合理的配慮とは>

 権利条約第2条において、合理的配慮は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。
 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めています。
 合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られ、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであり、事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及びません。
 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について様々な要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じ、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされるものです。合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変遷することにも留意すべきです。

<意思の表明>

 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。
 また、障害者からの意思の表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人からの意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。
 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者等を伴っていないことなどにより、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときには、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提供するために自主的に取り組むことが望まれます。

<環境整備との関係>

 法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者・支援者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場合において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしています。
 新しい技術開発が環境の整備に係る投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されています。また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれることが重要です。
 障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信における情報アクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要です。
 合理的配慮は、上述の、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、支援者・介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、その上で、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置です。従って、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなります。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要です。

②過重な負担の基本的な考え方

 過重な負担については、事業者において、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、過重な負担に当たると判断した場合、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。

*事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)

当該措置を講ずることによるサービス提供への影響、その他の事業への影響の程度。

*実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)

事業所の立地状況や施設の所有形態等の制約にも応じた、当該措置を講ずるための機器や技術、人材の確保、設備の整備等の実現可能性の程度。

*費用・負担の程度

当該措置を講ずることによる費用・負担の程度。複数の障害者から合理的配慮に関する要望があった場合、それらの複数の障害者に係る必要性や負担を勘案して判断することとなります。

*事務・事業規模

当該事業所の規模に応じた負担の程度。

*財務状況

当該事業所の財務状況に応じた負担の程度。

第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例

(1)不当な差別的取扱いと考えられる例

 事業者が福祉サービスを提供するに際して、次のような取扱いをすることは「不当な差別的取扱い」となるおそれがあります。
 ここに記載する事例はあくまで例示であり、これに限られるものではありません。また、客観的にみて正当な理由が存在する場合(第2(1)②参照)は、不当な差別的取扱いに該当しない場合があることにご留意ください。

○サービスの利用を拒否すること

  • 人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、医療的ケアの必要な障害者、重度の障害者、多動の障害者の福祉サービスの利用を拒否すること
  • 身体障害者補助犬の同伴を拒否すること

○サービスの利用を制限すること(場所・時間帯などの制限)

  • 正当な理由なく、対応を後回しにすること、サービス提供時間を変更又は限定すること
  • 正当な理由なく、他の者とは別室での対応を行うなど、サービス提供場所を限定すること
  • 正当な理由なく、サービス事業所選択の自由を制限すること(障害当事者が望まないサービス事業者をすすめるなど)
  • サービスの利用に必要な情報提供を行わないこと

○サービスの利用に際し条件を付すこと(障害のない者には付さない条件を付すこと)

  • 保護者や支援者・介助者の同伴をサービスの利用条件とすること
  • サービスの利用に当たって、他の利用者と異なる手順を課すこと(仮利用期間を設ける、他の利用者の同意を求めるなど)

○サービスの利用・提供に当たって、他の者とは異なる取扱いをすること

  • 正当な理由なく、行事、娯楽等への参加を制限すること
  • 正当な理由なく、年齢相当のクラスに所属させないこと
  • 本人を無視して、支援者・介助者や付添者のみに話しかけること
  • 正当な理由なく、本人の意思又はその家族等の意思(障害のある方の意思を確認することが困難な場合に限る。)に反して、福祉サービス(施設への入所、通所、その他サービスなど)を行うこと

(2)合理的配慮と考えられる例

 事業者は、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合には、次のような合理的配慮を提供することが求められています。合理的配慮を提供する際には、障害者の性別、年齢、状態等に十分に配慮することが必要です。
 ここに記載する事例はあくまで例示であり、これに限られるものではありません。また、事業者に強制する性格のものではなく、ここに記載された事例であっても、事業者の事業規模等によっては過重な負担となる可能性があるため、事業者においては、法、基本方針及び本指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待されます。
 なお、合理的配慮の提供に当たっては、個別の支援計画(サービス等利用計画、ケアプラン等)に位置付けるなどの取組も望まれます。

○基準・手順の柔軟な変更

  • 障害の特性に応じた休憩時間等の調整などのルール、慣行を柔軟に変更すること

○物理的環境への配慮

  • 施設内の段差にスロープを渡すこと
  • エレベータ-がない施設の上下階に移動する際、マンパワーで移動をサポートすること
  • 場所を1階に移す、トイレに近い場所にする等の配慮をすること

○補助器具・サービスの提供

<情報提供・利用手続きについての配慮や工夫>

  • 説明文書の点字版、拡大文字版、テキストデータ、音声データ(コード化したものを含む)の提供や必要に応じて代読・代筆を行うこと
  • 手話、要約筆記、筆談、図解、ふりがな付文書を使用するなど、本人が希望する方法でわかりやすい説明を行うこと
  • 文書を読み上げたり、口頭による丁寧な説明を行うこと
  • 電子メール、ホームページ、ファックスなど多様な媒体で情報提供、利用受付を行うこと

<建物や設備についての配慮や工夫>

  • 電光表示板、磁気誘導ループなどの補聴装置の設置、点字サイン付き手すりの設置、音声ガイドの設置を行うこと
  • 色の組み合わせによる見にくさを解消するため、標示物や案内図等の配色を工夫すること
  • トイレ、作業室など部屋の種類や、その方向を示す絵記号や色別の表  示などを設けること
  • パニック等を起こした際に静かに休憩できる場所を設けること

<職員などとのコミュニケーションや情報のやりとり、サービス提供についての配慮や工夫>

  • 館内放送を文字化したり、電光表示板で表示したりすること
  • 必要に応じて、手話通訳や要約筆記者を配置すること
  • 口話が読めるようマスクを外して話をすること
  • ICT(コンピューター等の情報通信技術)を活用したコミュニケーション機器(データを点字に変換して表示する、音声を文字変換する、表示された絵などを選択することができる機器など)を設置すること

※ 第2(2)①合理的配慮の基本的な考え方<環境整備との関係>においても触れましたが、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前の改善措置については、合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとされています。そのうち、バリアフリーに関しては下記のような整備が一例として考えられます。

  • 施設内の段差を解消すること、スロープを設置すること
  • トイレや浴室をバリアフリー化・オストメイト対応にすること
  • 床をすべりにくくすること
  • 階段や表示を見やすく明瞭にすること
  • 車椅子で利用しやすい高さにカウンターを改善すること

(3)障害特性に応じた対応について

 障害者と接する際には、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。以下に、代表的な障害特性と対応時に配慮すべき事項について簡単にまとめています。
 このほか、障害児については、成人の障害者とは異なる支援の必要性があります。子どもは成長、発達の途上にあり、乳幼児期の段階から、個々の子どもの発達の段階に応じて一人ひとりの個性と能力に応じた丁寧に配慮された支援を行う発達支援が必要です。また、子どもを養育する家族を含めた丁寧かつ早い段階からの家族支援が必要です。特に、保護者が子どもの障害を知った時の気持ちを出発点とし、障害を理解する態度を持つようになるまでの過程においては、関係者の十分な配慮と支援が必要です。
 また、医療的ケアを要する障害児については、配慮を要する程度に個人差があることに留意し、医療機関等と連携を図りながら、個々の状態や必要な支援を丁寧に確認し、適切な支援を行うことが必要です。

視覚障害(視力障害・視野障害)

〔主な特性〕

  • 先天性で受障される方のほか、最近は糖尿病性網膜症などで受障される人も多く、高齢者では、緑内障や黄斑部変性症が多い
  • 視力障害:視覚的な情報を全く得られない又はほとんど得られない人と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる人に大きく分けられる(全盲、弱視といわれることもある)
    • 視力をほとんど活用できない人の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握している
    • 文字の読みとりは、点字に加えて最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うこともある(点字の読み書きができる人ばかりではない)
    • 視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用したり文字を拡大したり近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ている
  • 視野障害:目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなる
    • 「求心性視野狭窄」見える部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなる。遠くは見えるが足元が見えず、つまづきやすくなる
    • 「中心暗転」周囲はぼんやり見えるが真ん中が見えない。文字等、見ようとする部分が見えなくなる
  • 視力障害、視野障害の状況によって、明るさの変化への対応が困難なため、移動などに困難さを生じる場合も多い

〔主な対応〕

  • 音声や点字表示など、視覚情報を代替する配慮
  • 中途受障の人では白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な人も多いため留意が必要
  • 声をかける時には前から近づき「○○さん、こんにちは。△△です。」など自ら名乗る
  • 説明する時には「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」などと具体的に説明
  • 普段から通路(点字ブロックの上等)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害者が使用しているものの位置を変えないなど周囲の協力が不可欠
  • 主に弱視の場合、室内における照明の状況に応じて、窓を背にして座ってもらうなどの配慮が必要

聴覚障害

〔主な特性〕

  • 聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、その人が抱えている困難も他の人からは気づかれにくい側面がある
  • 聴覚障害者は補聴器や人工内耳を装用するほか、コミュニケーション方法には手話、筆談、口話など様々な方法があるが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせるなど使い分けている
  • 補聴器や人工内耳を装用している場合、スピーカーを通じる等、残響や反響のある音は、聞き取りにあまり効果が得られにくい
  • 聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより、聴覚障害者の国語力は様々であるため、筆談の場合は、相手の状況にあわせる

〔主な対応〕

  • 手話や文字表示、手話通訳や要約筆記者の配置など、目で見てわかる情報を提示したりコミュニケーションをとる配慮
  • 補聴器や人工内耳を装用し、残響や反響のある音を聞き取ることが困難な場合には、代替する対応への配慮(磁気誘導ループの利用など)
  • 音声だけで話すことは極力避け、視覚的なより具体的な情報も併用
  • スマートフォンなどのアプリに音声を文字に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができる

盲ろう(視覚と聴覚の重複障害)

〔主な特性〕

  • 視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいるが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられる(視覚障害、聴覚障害の項も参照のこと)
    • <見え方と聴こえ方の組み合わせによるもの>
      ①全く見えず聴こえない状態の「全盲ろう」
      ②見えにくく聴こえない状態の「弱視ろう」
      ③全く見えず聴こえにくい状態の「盲難聴」
      ④見えにくく聴こえにくい状態の「弱視難聴」
    • <各障害の発症経緯によるもの>
      ①盲(視覚障害)から聴覚障害を伴った「盲ベース盲ろう」
      ②ろう(聴覚障害)から視覚障害を伴った「ろうベース盲ろう」
      ③先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症する「先天性盲ろう」
      ④成人期以後に視覚と聴覚の障害が発症する「成人期盲ろう」
  • 盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、あるいは生育歴、他の障害との重複の仕方によって異なり、介助方法も異なる
  • テレビやラジオを楽しんだり本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられることが多い

〔主な対応〕

  • 盲ろう者関係機関に相談し、対応に関する助言を受ける
  • 障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害の人と同じ対応が可能な場合があるが、同様な対応が困難な場合が多く、手書き文字や触手話、指点字などの代替する対応や移動の際にも配慮する
  • 言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝える
    (例)状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など

肢体不自由

○車椅子を使用されている場合

〔主な特性〕

  • 脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害など)
  • 脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、言語障害、知的障害重複の場合もある)
  • 脳血管障害(片麻痺、運動失調)
  • 病気等による筋力低下や関節損傷などで歩行が困難な場合もある
  • ベッドへの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で援助が必要な人の割合が高い
  • 車椅子使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになる
  • 手動車椅子の使用が困難な場合は、電動車椅子を使用する場合もある
  • 障害が重複する場合には、呼吸器を使用する場合もある

〔主な対応〕

  • 段差をなくす、車椅子移動時の幅・走行面の斜度、車椅子用トイレ、施設のドアを引き戸や自動ドアにするなどの配慮
  • 机アプローチ時に車椅子が入れる高さや作業を容易にする手の届く範囲の考慮
  • ドア、エレベータの中のスイッチなどの機器操作のための配慮
  • 目線をあわせて会話する
  • 脊髄損傷者は体温調整障害を伴うことがあるため、部屋の温度管理に配慮

○ 杖などを使用されている場合

〔主な特性〕

  • 脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調)
  • 麻痺の程度が軽いため、杖や装具歩行が可能な場合や、切断者などで義足を使用して歩行可能な場合は、日常生活動作は自立している人が多い
  • 失語症や高次脳機能障害がある場合もある
  • 長距離の歩行が困難であったり、階段、段差、エスカレーターや人ごみでの移動が困難な場合もあり、配慮が必要

〔主な対応〕

  • 上下階に移動するときのエレベータ-設置・手すりの設置
  • 滑りやすい床など転びやすいので、雨天時などの対応
  • トイレでの杖おきの設置や靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮
  • 上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができる配慮

構音障害

〔主な特性〕

  • 話す言葉自体を聞き取ることが困難な状態
  • 話す運動機能の障害、聴覚障害、咽頭摘出などの原因がある

〔主な対応〕

  • しっかりと話を聞く
  • 会話補助装置などを使ってコミュニケーションをとることも考慮する

失語症

〔主な特性〕

  • 聞くことの障害
    • 音は聞こえるが「ことば」の理解に障害があり「話」の内容が分からない
    • 単語や簡単な文なら分かる人でも早口や長い話になると分からなくなる
  • 話すことの障害
    • 伝えたいことをうまく言葉や文章にできない
    • 発話がぎこちない、いいよどみが多くなったり、誤った言葉で話したりする
  • 読むことの障害
    • 文字を読んでも理解が難しい
  • 書くことの障害
    • 書き間違いが多い、また「てにをは」などをうまく使えない、文を書くことが難しい

〔主な対応〕

  • 表情がわかるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短いことばや文章で、わかりやすく話しかける
  • 一度でうまく伝わらない時は、繰り返して言ったり、別のことばに言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすい
  • 「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすい
  • 話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなる

*「失語症のある人の雇用支援のために」(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター)より一部引用

高次脳機能障害

 交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害。身体的には障害が残らないことも多く、外見ではわかりにくいため「見えない障害」とも言われている。

〔主な特性〕

  • 以下の症状が現れる場合がある
    • 記憶障害:すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする
    • 注意障害:集中力が続かなかったり、ぼんやりしていてしまい、何かをするとミスが多く見られる。
      二つのことを同時にしようとすると混乱する。
      主に左側で、食べ物を残したり、障害物に気が付かないことがある
    • 遂行機能障害:自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てられない
    • 社会的行動障害:ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい。
      こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢できない。
      思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする
    • 病識欠如:上記のような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになる
  • 失語症(失語症の項を参照)を伴う場合がある
  • 片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害を持つ場合がある

〔主な対応〕

  • 本障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関、家族会等に相談する
  • 記憶障害
    • 手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩いてもらうなどする
    • 自分でメモを取ってもらい、双方で確認する
    • 残存する受傷前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲では迷わず行動できるなど)
  • 注意障害
    • 短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩を取るなどする
    • ひとつずつ順番にやる
    • 左側に危険なものを置かない
  • 遂行機能障害
    • 手順書を利用する
    • 段取りを決めて目につくところに掲示する
    • スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認する
  • 社会的行動障害
    • 感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る
    • 予め行動のルールを決めておく

内部障害

〔主な特性〕

  • 心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝機能、HIVによる免疫機能のいずれかの障害により日常生活に支障がある
  • 疲れやすく長時間の立位や作業が困難な場合がある
  • 常に医療的対応を必要とすることが多い

〔主な対応〕

  • ペースメーカーは外部からの電気や磁力に影響をうけることがあるので注意すべき機器や場所などの知識をもつ
  • 排泄に関し、人工肛門の場合、パウチ洗浄等特殊な設備が必要となることへの配慮
  • 人工透析が必要な人については、通院の配慮
  • 呼吸器機能障害のある方は、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらうよう配慮
  • 常時酸素吸入が必要な方は、携帯用酸素ボンベが必要な場合があることを理解

重症心身障害・その他医療的ケアが必要な者

〔主な特性〕

  • 自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複している
  • 殆ど寝たままで自力では起き上がれない状態が多い
  • 移動、食事、着替え、洗面、トイレ、入浴などが自力ではできないため、日常の様々な場面で介助者による援助が必要
  • 常に医学的管理下でなければ、呼吸することも栄養を摂ることも困難な人もいる
  • 重度の肢体不自由や重度の知的障害はないが、人工呼吸器を装着するなど医療的ケアが必要な人もいる

〔主な対応〕

  • 人工呼吸器などを装着して専用の車椅子で移動する人もいるため、電車やバスの乗降時等において、周囲の人が手伝って車椅子を持ち上げるなどの配慮が必要
  • 体温調整がうまくできないことも多いので、急な温度変化を避ける配慮が必要

知的障害

〔主な特性〕

  • 概ね18歳頃までの心身の発達期に現れた知的機能の障害により、生活上の適応に困難が生じる
  • 「考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したり」する等の知的な機能に発達の遅れが生じる
  • 金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応に状態に応じた援助が必要
  • 主な原因として、ダウン症候群などの染色体異常、または先天性代謝異常によるものや、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患があるが、原因が特定できない場合もある
  • てんかんを合併する場合もある
  • ダウン症候群の場合の特性として、筋肉の低緊張、多くの場合、知的な発達の遅れがみられること、また、心臓に疾患を伴う場合がある

〔主な対応〕

  • 言葉による説明などを理解しにくいため、ゆっくり、ていねいに、わかりやすく話すことが必要
  • 文書は、漢字を少なくしてルビを振る、文書をわかりやすい表現に直すなどの配慮で理解しやすくなる場合があるが、一人ひとりの障害の特性により異なる
  • 写真、絵、ピクトグラムなどわかりやすい情報提供を工夫する
  • 説明が分からないときに提示するカードを用意したり、本人をよく知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる環境を工夫する

発達障害

○自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)

〔主な特性〕

  • 相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い
  • 見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきっちりしている
  • 大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある。

〔主な対応〕

  • 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く
  • 肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫(「○○をしましょう」といったシンプルな伝え方、その人の興味関心に沿った内容や図・イラストなどを使って説明するなど)
  • スモールステップによる支援(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするなど)
  • 感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う(イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど)

○学習障害(限局性学習障害)

〔主な特性〕

  • 「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手

〔主な対応〕

  • 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く
  • 得意な部分を積極的に使って情報を理解し、表現できるようにする(ICTを活用する際は、文字を大きくしたり行間を空けるなど、読みやすくなるように工夫する)
  • 苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減する、柔軟な評価をする

○注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害)

〔主な特性〕

  • 次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い

〔主な対応〕

  • 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く
  • 短く、はっきりとした言い方で伝える
  • 気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などの配慮
  • ストレスケア(傷つき体験への寄り添い、適応行動が出来たことへのこまめな評価)

○その他の発達障害

〔主な特性〕

  • 体の動かし方の不器用さ、我慢していても声が出たり体が動いてしまったりするチック、一般的に吃音と言われるような話し方なども、発達障害に含まれる

〔主な対応〕

  • 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く
  • 叱ったり拒否的な態度を取ったり、笑ったり、ひやかしたりしない
  • 日常的な行動の一つとして受け止め、時間をかけて待つ、苦手なことに無理に取組まず出来ることで活躍する環境を作るなど、楽に過ごせる方法を一緒に考える

精神障害

  • 精神障害の原因となる精神疾患は様々であり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なる
  • 精神疾患の中には、長期にわたり、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがある
  • 代表的な精神疾患として、統合失調症や気分障害等がある
  • 障害の特性もさまざまであるため、積極的に医療機関と連携を図ったり、専門家の意見を聴くなど、関係機関と協力しながら対応する

○統合失調症

〔主な特性〕

  • 発症の原因はよく分かっていないが、100人に1人弱かかる、比較的一般的な病気である
  • 「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている
  • 陽性症状
    • 幻覚:実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。なかでも、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い
    • 妄想:明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがある
  • 陰性症状
    • 意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる
    • 疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる
    • 入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となる  など
  • 認知や行動の障害:
    • 考えがまとまりにくく何が言いたいのかわからなくなる
    • 相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない  など

〔主な対応〕

  • 統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある
  • 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する
  • 社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る
  • 一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心掛ける
  • 一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心掛ける
  • 症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに主治医を受診することなどを促す

○気分障害

〔主な特性〕

  • 気分の波が主な症状としてあらわれる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ
  • うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状がでる
  • 躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなったりする

〔主な対応〕

  • 専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する
  • 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する
  • うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する
  • 躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する
  • 自分を傷つけてしまったり、自殺に至ることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全に配慮した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す

○依存症(アルコール)

〔主な特性〕

  • 飲酒したいという強い欲求がコントロールができず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じる
  • 体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出る
  • 一念発起して断酒しようとしても、離脱症状の不快感や、日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまう

〔主な対応〕

  • 本人に病識がなく(場合によっては家族も)、アルコール依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲が理解する
  • 周囲の対応が結果的に本人の飲酒につながってしまう可能性があるため、家族も同伴の上で、アルコール依存症の専門家に相談する
  • 一度断酒しても、再度飲酒してしまうことが多いため、根気強く本人を見守る

○てんかん

〔主な特性〕

  • 何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作がおきる
  • 発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある

〔主な対応〕

  • 誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの者が一般的な生活が送れることを理解する
  • 発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない
  • 内服を適切に続けることが重要である。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する

○認知症

〔主な特性〕

  • 認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態である
  • 原因となる主な疾患として、 アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病など)がある
  • 認知機能の障害の他に、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)がある

〔主な対応〕

  • 高齢化社会を迎え、誰もが認知症とともに生きることになる可能性があり、また、誰もが介護者等として認知症に関わる可能性があるなど、認知症は皆にとって身近な病気であることを理解する
  • 各々の価値観や個性、想い、人生の歴史等を持つ主体として尊重し、できないことではなく、できることに目を向けて、本人が有する力を最大限に活かしながら、地域社会の中で本人のなじみの暮らし方やなじみの関係が継続できるよう、支援していく
  • 早期に気付いて適切に対応していくことができるよう、小さな異常を感じたときに速やかに適切な機関に相談できるようにする
  • BPSDについては、BPSDには 、何らかの意味があり、その人からのメッセージとして聴くことが重要であり、BPSDの要因として、さまざまな身体症状、孤立・不安、不適切な環境・ケア、睡眠や生活リズムの乱れなどにも目を向ける
  • 症状が変化した等の場合には、速やかに主治医を受診し、必要に応じて専門機関に相談することなどを促す

難病

〔主な特性〕

  • 神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により多彩な障害を生じる
  • 常に医療的対応を必要とすることが多い
  • 病態や障害が進行する場合が多い

〔主な対応〕

  • 専門の医師に相談する
  • それぞれの難病の特性が異なり、その特性に合わせた対応が必要
  • 進行する場合、病態・障害の変化に対応が必要
  • 排泄の問題、疲れやすさ、状態の変動などに留意が必要
  • 体調がすぐれない時に休憩できる場所を確保する

第4 事業者における相談体制の整備

 障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要です。そのためには、法で定められた国や地方公共団体における相談及び紛争の防止等のための体制整備のみならず、障害者にサービス提供を行う事業者において、直接、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に応じるための体制の整備や職員の研修・啓発を行うことが重要です。
 中でも、福祉の専門知識及び技術をもって福祉サービスを提供する事業者については、特に、その基本的専門性に鑑み、より充実した相談体制の整備をはじめ、日頃から、障害に関する理解や人権意識の向上・障害者の権利擁護に向けた職員の研修に積極的に取り組むことが重要です。
 なお、事業所において相談窓口等を設置(事業所における既存の苦情解決体制や相談窓口を活用することも考えられます)する際には、ホームページ等を活用し、相談窓口等に関する情報の周知を図り、利用しやすいものとするよう努めるとともに、対面のほか、電話、ファックス、電子メールなどの多様な手段を用意しておくことが重要です。また、相談等に対応する際には、障害者の性別・年齢・状態等に配慮することが重要です。実際の相談事例については、相談者のプライバシーに配慮しつつ順次蓄積し、以後の合理的配慮の提供等に活用することが望まれます。あわせて、地方自治体の相談窓口や障害者差別解消支援地域協議会、障害当事者団体、医療、教育、労働関係機関などとも連携して、差別解消に向けた取組を着実に進めていくことが望まれます。

第5 事業者における研修・啓発

 障害者差別は、障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りなどにより引き起こされることが大きいと考えられることから、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重する共生社会を目指すことの意義を職員が理解することが重要です。
 また、こうした理念が真に理解されることが、障害者差別や、障害者が時に感じる大人の障害者に対する子ども扱い、障害者に対する命令的、威圧的、強制的な発言などの解消にもつながるものと考えられます。
 このため、事業者においては、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、事業所の地域の取組のなかで近隣住民への理解を促していくことが重要です。
 なお、障害者差別の理解には、障害者虐待防止に関する理解も極めて重要になってくることから、併せて研修を行うことが望まれます。

第6 国の行政機関における相談窓口

 法第14条において、「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする」と規定されています。
 相談に際しては、地域の自治体の様々な相談窓口(福祉事務所、児童相談所など)や各都道府県において組織される障害者差別解消支援地域協議会などもご活用ください。
 厚生労働省における福祉関係の担当窓口は以下のとおりです。

(1)子ども・子育て関係

雇用均等・児童家庭局家庭福祉課

〃総務課少子化総合対策室

〃保育課

〃母子保健課

(2)生活保護関係

社会・援護局保護課

(3)地域福祉、生活困窮者自立支援関係

社会・援護局地域福祉課

社会・援護局地域福祉課 生活困窮者自立支援室

(4)障害福祉、精神保健関係

障害保健福祉部企画課 

〃障害福祉課

〃精神・障害保健課

(5)高齢者福祉関係

老健局総務課

第7 主務大臣による行政措置

 事業者における障害者差別解消に向けた取組は、本指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待されています。しかし、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣は、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるとされています。(法第12条)

おわりに

 障害者差別解消法の理念を実現していくには、国民一人ひとりの障害に対する理解と適切な配慮が不可欠であり、差別と解される事例についても、お互いの意思疎通不足や理解の不足が起因していると思われることも見受けられます。法に定められたから義務としてやるという姿勢ではなく、事業者や障害者が歩み寄り理解を深めていくことが、差別解消の第一歩につながると考えられます。
 本指針は、そうした事業者の取組に資するよう、今後も、より具体的な事例、特に好事例をお示しできるよう随時見直しを図るなど努めてまいります。 事業者のみなさまの本法に関するより深い理解と、障害者差別解消に向けた取組を積極的に進めて頂きますようお願いします。

(以降、参考ページ)

■障害者差別解消法関係の経緯

平成16年6月4日 障害者基本法改正 ※ 施策の基本的理念として差別の禁止を規定

平成18年12月13日 第61回国連総会において障害者権利条約を採択

平成19年9月28日 日本による障害者権利条約への署名

平成23年8月5日 障害者基本法改正 ※ 障害者権利条約の考え方を踏まえ、合理的配慮の概念を規定

平成25年4月26日 障害者差別解消法案閣議決定、国会提出

〃6月26日 障害者差別解消法 公布・一部施行

平成26年1月20日 障害者の権利に関する条約締結

平成27年2月24日 障害者差別解消法「基本方針」閣議決定

平成28年4月1日 障害者差別解消法施行(予定)

■障害者権利条約とは

 障害者権利条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定めた条約です。
 2006(平成18)年12月13日に国連総会において採択され、2008(平成20)年5月3日に発効しました。我が国は2007(平成19)年9月28日に条約に署名し、2014(平成26)年1月20日に批准書を寄託しました。また、同年2月19日に同条約は我が国について効力を発生しました。

 この条約の主な内容としては、以下のとおりです。

(1)一般原則

 障害者の尊厳、自律及び自立の尊重、無差別、社会への完全かつ効果的な参加及び包容等

(2)一般的義務

 合理的配慮の実施を怠ることを含め、障害に基づくいかなる差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進すること等

(3)障害者の権利実現のための措置

 身体の自由、拷問の禁止、表現の自由等の自由権的権利及び教育・労働等の社会権的権利について締約国がとるべき措置等を規定。社会権的権利の実現については漸進的に達成することを許容

(4)条約の実施のための仕組み

 条約の実施及び監視のための国内の枠組みの設置。障害者の権利に関する委員会における各締約国からの報告の検討

■本指針に関する障害者差別解消法の参照条文

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)

(目的)
第1条 この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

第6条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を定めなければならない。
2~6 (略)

(事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

(事業者のための対応指針)
第11条 主務大臣は、基本方針に即して、第8条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針を定めるものとする。
2 (略)

(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第12条 主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認める時は、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

■国の「基本方針」に定められた「対応指針」に関する規定

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)

Ⅳ 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項

2 対応指針

(1)対応指針の位置付け及び作成手続

 主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応指針を公表しなければならない。
 なお、対応指針は、事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。

(2)対応指針の記載事項

対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。

①趣旨
②障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方
③障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例
④事業者における相談体制の整備
⑤事業者における研修・啓発
⑥国の行政機関(主務大臣)における相談窓口

■障害者に関するマーク「H26年版障害者白書」(内閣府)より

【障害者のための国際シンボルマーク】所管:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会

【身体障害者標識】所管:警察庁

【聴覚障害者標識】所管:警察庁

【盲人のための国際シンボルマーク】所管:社会福祉法人日本盲人福祉委員会

【耳マーク】所管:一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

【ほじょ犬マーク】所管:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部

【オストメイトマーク】所管:公益社団法人日本オストミー協会

【ハート・プラスマーク】所管:特定非営利活動法人ハート・プラスの会

■コミュニケーション支援用絵記号の例「H26年版障害者白書」(内閣府)より

【絵記号の例】

  • わたし
  • あなた
  • 感謝する
  • 助ける

【絵記号による意思伝達の例】

  • 朝起きたら、顔を洗って歯を磨いてください

■身体障害者補助犬とは        

 「身体障害者補助犬」は、目や耳や手足に障害のある方の生活をお手伝いする、「盲導犬」・「聴導犬」・「介助犬」のことです。  身体障害者補助犬法に基づき認定された犬で、特別な訓練を受けています。

補助犬の種類

○盲導犬

 目の見えない人、見えにくい人が街なかを安全に歩けるようにサポートします。障害物を避けたり、立ち止まって曲がり角を教えたりします。ハーネス(胴輪)をつけています。

○介助犬

 手や足に障害のある人の日常の生活動作をサポートします。物を拾って渡したり、指示したものを持ってきたり、着脱衣の介助などを行ないます。“介助犬”と書かれた表示をつけています。

○聴導犬

 音が聞えない、聞こえにくい人に、生活の中の必要な音を知らせます。玄関のチャイム音・FAX着信音・赤ちゃんの泣き声などを聞き分けて教えます。“聴導犬”と書かれた表示をつけています。

 補助犬の同伴については、「身体障害者補助犬法」で、人が立ち入ることのできるさまざまな場所で受け入れるよう義務づけられています。「犬だから」という理由で受け入れを拒否しないでください。

補助犬の同伴を受け入れる義務がある場所

  • 国や地方公共団体などが管理する公共施設・ 公共交通機関(電車、バス、タクシーなど)
  • 不特定かつ多数の人が利用する民間施設-商業施設、飲食店、病院、ホテルなど
  • 事務所(職場)-国や地方公共団体などの事務所-従業員50人以上の民間企業

補助犬の同伴を受け入れる努力をする必要がある場所

  • 事務所(職場)-従業員50人未満の民間企業
  • 民間住宅

補助犬の受け入れ施設の方へ

●補助犬は、ユーザーの指示に従い待機することができるので、特別な設備は必要ありません。

●補助犬の同伴を受け入れる際に他のお客様から苦情がある場合は、「身体障害者補助犬法」で受け入れ義務があること、補助犬の行動や健康の管理はユーザーが責任をもって行なっていることを説明し、理解を求めてください。

●補助犬が通路をふさいだり、周りのにおいを嗅ぎ回ったり、その他、何か困った行動をしている場合は、そのことを補助犬ユーザーにはっきり伝えてください。

●補助犬を同伴していても、補助犬ユーザーへの援助が必要な場合があります。補助犬ユーザーが困っている様子を見かけたら、まずは声をかけたり、筆談をしたりコミュニケーションをとってください。

■障害特性や特性ごとの配慮事項等

※障害特性や特性ごとの配慮事項等を知るには、例えば、以下のようなホームページがあります。

【内閣府】公共サービス窓口における配慮マニュアル ‐障害のある方に対する心の身だしなみ-
http://www8.cao.go.jp/shougai/manual.html

【厚生労働省】みんなのメンタルヘルス
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

【青森県】障害を知るためのガイドブック
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/kyouseishakai.html

【群馬県障害者社会参加推進協議会】障害のある方へのマナーブック
http://www.normanet.ne.jp/~gunmasin/pdf/syogai_mb.pdf

【千葉県】障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン
https://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/shougai-kurashi/jouhouhoshou/guideline.html

【東京都心身障害者福祉センター】改訂版「障害のある方への接遇マニュアル」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/tosho/hakkou/index.html

【八王子市】みんなちがってみんないい(障害のある人を理解するためのガイドブック)
http://www.city.hachioji.tokyo.jp/korei_shogai/36129/37422/index.html

【武蔵野市】心のバリアフリーハンドブック
http://www.city.musashino.lg.jp/shogai/shogaishafukushi_c/015620.html

【厚木市】この街でともに…~障害のある人を理解するためのガイドブック~
http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/iryofukusi/fukushi/shougai/guide/d014788.html

【富山県】障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちづくりのためのアドバイス事例集(障害のある人が「困った」事例から)
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1209/kj00011743.html

【大阪府】障がい者が必要とする社会的障壁の除去のための配慮や工夫の事例について
http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/go-hai/

【島根県・鳥取県】障がいを知り、共に生きる~まず、知ることからはじめましょう~
http://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/syougai/ippan/aisupport/supporter.data/H26panhu.pdf http://www.pref.tottori.lg.jp/aisupport/

【熊本県】障害のある人もない人も共に生きる熊本づくりのために(パンフレット)
http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_3020.html

【宮崎県】障がい理解のためのハンドブック
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/shogaifukushi/kenko/shogaisha/shougairikai.html

【沖縄県】こころのバリアフリー2(各種冊子)
http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kodomo/shogaifukushi/keikaku/jorei/bf2.html

【名古屋市】こんなときどうする?‐障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック‐
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/22-2-0-0-0-0-0-0-0-0.html

【福岡市】ユニバーサルデザインに配慮した印刷物作成の手引き
http://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/kankoubutsu-video/ud.html

■障害特性に応じた具体的対応例(その1)

自分のタイミングで移動したい(視覚障害①)

 全盲の視覚障害者Aさんは、地域の福祉センターを訪問する際、案内看板等が見えず単独で行くことができませんでした。しかしセンター入り口付近にガイドボランティアが配置され、手助けが必要な人に一声かけてくれるようになったことから、付き添いがなくても一人で通うことができるようになりました。 また併せて、エレベーターや階段の手すりにも点字シールを表示することになり、ガイドボランティアと離れていても、自分のタイミングで移動することが可能になり、御本人の気持ちもとても自由になりました。

アンケートも多様な方法で(視覚障害②)

 アンケートを取る際に、印刷物だけを配布していました。すると、視覚障害の方から、電子データでほしいと要望がありました。電子データであればパソコンの読み上げソフトを利用して回答できるからとのことでした。
 紙媒体という画一的な方法ではなく、テキストデータでアンケートを送信し、メールで回答を受け取るという方法をとることで、視覚障害の方にもアンケートに答えてもらえるようになりました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その2)

研修会等での配慮(聴覚障害①)

 聴覚障害者(2級)のAさんは、ある研修会に参加することとなりました。事務局から研修担当者には、Aさんは聴覚障害があるので配慮するよう伝えていましたが、研修担当者はAさんは補聴器を付けていたので問題ないと思い、特段の配慮もなく研修が進められ第1日目が終わってしまいました。Aさんは、補聴器をつけていても、すべて聞き取れる訳ではないことを事務局に相談したところ、次回以降、手話通訳者か要約筆記者(ノートテイク)で対応してくれることとなりました。

呼び出し方法の改善(聴覚障害②)

 聴覚障害者(発語可能・4級)のBさんは事務手続きのため、受付を済ませ呼び出しを待っていましたがなかなか呼ばれませんでした。受付に、呼ばれていないことを申し出ると、「名前を呼びましたが、返事がありませんでした」とのことでした。音声による通常の呼び出ししか行われなかったためです。
 その後、事務局は対応を検討し、聴覚障害のある方には、文字情報などでも呼び出しを伝え、手続きに関するやりとりに関しても筆談等で対応することとしました。

盲ろう者とのコミュニケーション(盲ろう者)

 盲ろう者であるAさんは、通訳・介助者を同伴し、パソコン訓練を実施する施設に相談に行きましたが、盲ろう者との特殊なコミュニケーション方法である「手書き文字」「点字筆記」「触手話」「指点字」ができる職員がいないとの理由で受け入れを断られてしまいました。
 後日、Aさんは通訳・介助者を同伴して盲ろう者関係機関に相談したところ、「Aさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設側に伝えたらよいのでは。」との助言を受け、あらためて、Aさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設に説明した結果、施設側も理解を示し、前向きに受け入れる方向で話が進展しました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その3)

建物の段差が障壁に(肢体不自由①)

 車椅子を使用している身体障害者(1級)Aさんが、外出中、建物に入ろうとすると大きな段差があり立ち往生してしまいました。
 スタッフに協力をお願いしてみると、段差を車椅子で乗り越える手伝いを申し出てくれました。介助のお陰で、無事に建物に入ることができました。

障害への理解が深まれば(肢体不自由②)

 座骨部に褥瘡(床ずれ)発生を繰り返している脊髄損傷者Bさん。褥瘡は、長時間座位を保持していることが原因で発生していました。褥瘡悪化による手術で数ヶ月単位の入院を繰り返していました。
 納期がせまっており長時間作業をしなければならない場面でも、時間調整や褥瘡予防できる姿勢を確保するため途中で休憩をとることなど周囲の理解と協力を得ることで、褥瘡の発生をおさえ、入退院を繰り返すことなく生活することが可能になりました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その4)

施設での電動車椅子による自立移動(肢体不自由③)

 重度の脳性麻痺であるCさんは、介助用車椅子を使用し、施設職員や家族の介助による移動が主でした。リハビリテーションセンターにおいて、施設での電動車椅子による自立移動が可能か検討したところ、座位保持装置や特殊スイッチを装備・使用した電動車椅子で安全に施設内を移動できることがわかりました。
 当初、施設側が電動車椅子移動による安全性の確保について懸念していましたが、リハビリテーションセンター担当職員による実地確認や使い方の指導により安全な移動が可能であることが理解され、その結果、施設内で本人の意思により自由に移動することが可能となりました。

脳卒中の後遺症があるが、働くことを希望する方への支援(肢体不自由④)

 50歳代で脳梗塞(脳卒中の種類の1つ)を発症し、入浴、更衣、屋外の外出などに介助が必要であることから、日中自宅に閉じこもりがちであるが、今後、働くことを希望しているDさん。本人の残存能力を踏まえ、更衣や外出練習などを提供する通所リハビリテーションに通うことになりました。訓練により、就労に向けて活動するための機能が向上し、地域の就労継続支援事業所に通うことで社会参加できるようになりました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その5)

話すことの障害(失語症)

 失語症(発語がうまくできない)のAさんが、買い物に行きましたが、自分の欲しいものを探すことができませんでした。店員にどこにあるのか尋ねようとしましたが、欲しいものをうまく伝えられず、時間が経過するばかりでした。
 店員は、Aさんが言葉をうまく話せないことがわかったため、「食べ物」、「飲み物」、「日用品」等と的を徐々に絞って確認していく方法をとったところ、Aさんの欲しいものが判明し購入することができました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その6)

メモを活用して行き違いを防止(高次脳機能障害)

 高次脳機能障害のAさんに、先ほど伝えたことを忘れて勝手な行動をしていると注意したところ、聞いていなかった、知らないと逆に怒り出してしまいました。Aさんは普段、難しい言葉を使ったり、以前のことをよく覚えている方なので、高次脳機能障害の特性を知らない周囲の人は、Aさんはいい加減な人だと腹を立てて、人間関係が悪化してしまいました。
 高次脳機能障害者は受傷前の知識や経験を覚えている場合が多いのですが、直近のことを忘れてしまいがちであるという説明を受け、周囲の人は、障害の特性であることを理解することができました。また、口頭で伝えたことは言った、言わないとトラブルのもとになりやすいので、メモに書いてもらい、双方で確認するようにしたら、トラブルがおきなくなりました。

■介護予防・日常生活支援総合事業における共生の場

 介護保険制度では、市町村の事業として、住民等の多様な主体が参画し、地域の支え合い体制を推進することで要支援者等の自立支援や介護予防につなげる介護予防・日常生活支援総合事業が平成27年度から順次施行されています。
 介護予防・日常生活支援総合事業は、市町村が地域の実情に応じて独自のサービスを設定していくこととなりますが、市町村がこの事業を円滑に実施できるよう、設定されるであろうサービス内容の例などを記載したガイドラインをお示ししています。
 その中で、高齢者のみならず障害者や児童など分け隔てなく自主的に集まり互いに支え合う場を作り出すことに対して、補助などを行い促進することができる共生型の通いの場を紹介しています。
 障害者差別解消法は共生社会の実現を目的としており、共生型の通いの場は、同目的にも資するものであると考えられます。

■障害特性に応じた具体的対応例(その7)

作業能力を発揮するための一工夫(知的障害①)

 Aさんは、作業能力はあるけれど、不安が強くなると本来の作業能力が発揮できなくなってしまいます。Aさんの担当は清掃作業。1フロアーを一人で担当するように任されていましたが、広い範囲を一人で任されることに不安を感じ、本来の作業能力を発揮できずミスが増えていました。
 作業量は変えずに2フロアーを2人で担当する様にしたところ、Aさんの不安が減少し、本来の能力を発揮できるようになり、ミスも減りました。

対人コミュニケーションに困難を抱える若者の就労支援(知的障害②)

 Bさんは、高校を中退後、一時アルバイトを経験したものの、すぐに辞めてしまってからは就労から遠ざかった生活を続けていました。軽度の知的障害が疑われ、対人コミュニケーションに課題を抱えるBさんは、以前、アルバイト先の上司から強く叱責を受けたことで、すっかり自信と意欲を失っていたのです。
 生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関は、すべての書類にルビを振り、また、Bさんが理解するまで繰り返し丁寧な説明を行うなど、Bさんの社会参加に向けて粘り強い支援を行いました。並行して、就労支援員がBさんの特性に理解のある職場の開拓をすすめました。その結果、アルバイト経験があり、本人の関心の高い飲食業界において、就労訓練事業として週3日、3時間程度の就労から始めることになりました。現在も、自立相談支援機関がBさん本人と就労先双方へのフォローを行いながら就労の継続を支援しています。

一人暮らしの金銭管理をサポート(知的障害③)

 一人暮らしをしながら地域の作業所に通うCさんは、身の回りのことはほとんど自分でできますが、お金の計算、特に何を買うのにいくらかかるのかを考えて使うのが苦手なため、日常の金銭管理をしてくれる福祉サービス(日常生活自立支援事業)を利用することになりました。
 生活支援員と必要なお金について1週間単位で相談し、一緒に銀行に行ってお金を下ろし、生活することになりました。買い物のレシートをノートに貼ることもアドバイスをうけ、お金を遣い過ぎることがなくなりました。また、お金がどれくらいあるのか心配なときは、支援員さんに聞けば分かるので安心とCさんは話しています。

■障害特性に応じた具体的対応例(その8)

コミュニケーション支援機器を用いた就労訓練(発達障害①)

 発達障害のAさんは、就労訓練サービスを利用しています。挨拶、作業の終了時、作業中に必要と思われる会話(「おはようございます」「さようなら」「仕事が終わりました」「袋を持ってきてください」「紐を取ってください」「トイレへ行ってきます」「いらっしゃいませ」「100円です」等)をVOCA(会話補助装置)に録音し、伝えたいメッセージのシンボル(絵・写真・文字)を押してコミュニケーションをとるようにしたことで作業に集中することができ、休みなく事業所へ通う事ができるようになりました。

個別の対応で理解が容易に(発達障害②)

 発達障害のBさんは、利用者全体に向けた説明を聞いても、理解できないことがしばしばある方です。そのため、ルールや変更事項等が伝わらないことでトラブルになってしまうことも多々ありました。
 そこで、Bさんには、全体での説明の他に個別に時間を取り、正面に座り文字やイラストにして直接伝えるようにしたら、様々な説明が理解できるようになり、トラブルが減るようになりました。

本人が安心して過ごすための事前説明(発達障害③)

 発達障害のCさんは、就労継続支援事業を利用していますが、広い作業室の中で職員を見つけることが出来ない方でした。職員に連絡したくても連絡できず、作業の中で解らないことや聞きたいことがあってもそれが聞けず、不安や混乱が高まっていました。
 そこで、来所時にあらかじめCさんに職員の場所を図で示したり、現地を確認する、ユニフォームの違いを伝えるなど、職員をみつけるための手がかりを知らせておくようにしたら、Cさんは安心して作業に集中できるようになりました。

苦手なことに対しては、事前のサポート(発達障害④)

 発達障害のDさんは文字の読み書きが苦手であり、様々な手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。
 そこで、Dさんの相談を受けている職員は、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」「職員が鉛筆で下書きする」などを試したところ、書類作成を失敗する回数が少なくなりました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その9)

自己コントロール力をつけるために (障害児①)

 自閉症スペクトラム(発達障害)のAさんは知的にはかなり高い児童ですが、ちょっとした思い込みや刺激が元で、トイレや空室に長時間(長い場合は10時間近く)急に籠もってしまうことが多くありました。
 そこで、不適応を起こしそうになった場合(「起こす前」がポイント)に、事前に決めておいたルールに基づいて(例えば何色かのカードを用意し、イエローカードを見せたら事務室でクールダウンする、レッドカードであったら個別対応の部屋に行きたい等)自らがサインを出して対応方法を選択する経験を繰り返し積むことで、徐々にカードを使用せずに感情の自己コントロールができるようになってきました。約半年ほどで不適応を示すことが殆どなくなり、生活が安定しました。

日常生活動作を身につけるために(障害児②)

 保育所に通う発達障害児のBちゃんは、靴をそろえる、トイレにしっかり座るといった日常生活の動作の一部が十分に身についていません。言葉による説明よりも、視覚情報による説明の方が伝わりやすいため、これらの動作の順番を具体化した絵を作成し、必要に応じて見せるようにしています。また、話しかける際にも、顔を見ながら、穏やかに静かな声で話しかけるようにしています。

■障害特性に応じた具体的対応例(その10)

薬が効くまでの時間をもらえると(精神障害)

Aさんは、精神障害当事者としての経験を活かして、福祉サービス事業所でピアサポーターとして活動しています。しかし、月に一度位は幻聴が出現することがあり、Aさんは活動に支障が出ることをとても心配していました。職員に相談すると、「普段はどうしているのですか?」と質問され、Aさんは頓服薬を飲んで1時間位静養すると治まってくると説明しました。すると、「ご自分で対処できるならそうして下さい」「症状があっても、工夫をしながら活動を続けられるといいですね」「他の利用者の励みになるのだから気にする必要はないと思います」と言われて、幻聴が出た時は頓服が効くまで静養できることになりました。その後、Aさんは、ピアサポーターとして自信を持ちながら、安心して活動を続けています。

■障害特性に応じた具体的対応例(その11)

介護老人保健施設での対応(高齢者①)

 様々な障害があっても生活がしやすいように、点字ブロック、車いす用のトイレ、入所者用の居室階へ行くためのエレベーターの設置などを行いました。また、聴覚障害のある入所者とコミュニケーションを図れるよう部屋に筆談用の用具を置くなどの配慮を行っています。

特別養護老人ホームにおける対応(高齢者②)

 特別養護老人ホームにおいて地域交流活動を行う際、ボランティアのAさん(視覚障害者)が資料や小道具を作ろうとしましたが、パソコンでの作業に手間取ってしまいました。そこで、施設は、職員や他のボランティアの人が共同して作成することに加え、施設で導入していた音声認識ソフトや点字付きキーボードを利用してもらうことによって、Aさんが作業しやすい環境を作るように働きかけました。

デイサービスを利用する前の交流(高齢者③)

 Bさん(精神障害者)は、要介護認定を受け、介護保険のデイサービスを利用することとなりました。しかし、家族から、Bさんは、知らない人と接することが苦手でありデイサービスのような人が集まる場に行くことは、精神的な負担が大きいのではないか、と心配の声が寄せられていました。
 そこで、デイサービスの職員は、いきなりデイサービスを利用するのではなく、まずはBさんの自宅で交流を重ね、Bさんと親しくなることにしました。その後、Bさんは親しい職員がいることで、安心してデイサービスの場に通うことができるようになりました。

■障害特性に応じた具体的対応例(その12)

色素性乾皮症(XP)児の保育所における対応(難病)

 遮光対策が必要な疾病である色素性乾皮症患児のAちゃんは、紫外線対策がなされていない保育所に入所することは困難です。
 入所を希望する保育所と話し合った結果、UVカットシートを保育室等の窓ガラスに貼ること、紫外線を遮断するため窓は常時閉鎖しておくのでエアコンをとりつけること、日光に当たってしまった際の対応策などを保育所側に十分把握してもらったうえで、他の保育園児・保護者への説明も十分行うことで疾病に対する理解を得て、安心して保育所に通うことができるようになりました。

■障害者総合支援法の対象となる疾病について

 平成25年4月より、難病等が障害者総合支援法の対象となり130疾病を対象としていましたが、指定難病(医療費助成の対象となる難病)の検討を踏まえ、平成27年1月より、障害者総合支援法の対象疾病が151疾病に拡大されました(第1次検討)。
 また、第2次検討の結果、平成27年7月から332疾病に拡大されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hani/index.html

 対象となる方は、障害者手帳(※1)をお持ちでなくても、必要と認められた障害福祉サービス等(※2)が受けられます。

※1身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳

※2障害者・児は、障害福祉サービス・相談支援・補装具及び地域生活支援事業(障害児は、障害児通所支援と障害児入所支援も含む)

*難病の特徴(症状の変化や進行、福祉ニーズ等)については、「難病患者等に対する認定マニュアル(平成27年9月)」を参照ください
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/1_13.pdf

■障害者差別解消支援地域協議会とは

 障害者差別解消法では、国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事する者(以下「関係機関」)は、社会生活を円滑に営む上での困難を有する障害者に対する支援が効果的かつ円滑に実施されるよう、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「地域協議会」)を組織できるとされています。(法第17条第1項)

1 地域協議会とは

<地域協議会の事務>

 障害者差別に関する相談等に係る協議や地域における障害者差別を解消するための取組に関する提案に係る協議を行う

※個別事案ごとに差別か否かの判断を行うことまでは想定されていない

  • 事案の情報共有や構成機関への提言
  • 地域における障害者差別解消の推進のための取組に関する協議・提案
  • 事案の解決を後押しするための協議 など

<対象となる障害者差別に係る事案>

 一般私人による事案は地域協議会における情報共有の対象としないが、環境の整備に関する相談、制度等の運用に関する相談については情報共有の対象とする

2 地域協議会の組織

都道府県、市町村、特別区など地方公共団体が主導して組織する

詳細については、内閣府ホームページに掲載されています。

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

■権利擁護に関連する法律(その1)

【障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)】

1.目的

 障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み、障害者に対する虐待の禁止、国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者に対する支援のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利利益の擁護に資することを目的としています。

2.障害者に対する虐待の禁止と早期発見の努力義務

 何人も障害者を虐待してはならない旨を定め、障害者の虐待の防止に係る国等の責務や、障害者虐待の早期発見の努力義務を定めています。

3.「障害者虐待」の通報義務

 「障害者虐待」を受けたと思われる障害者を発見した者に速やかな通報を義務付けています。

4.「障害者虐待」とは

①~③の人たちが、ア~オの5つの虐待行為を行った場合を「障害者虐待」としています。

①養護者(障害者の世話をしている家族等)
②障害者福祉施設従事者等(障害福祉サービスの職員等)
③使用者(障害者を雇用している者等)

5つの行為(具体的要件は、虐待を行う主体ごとに微妙に異なる。)

ア)身体的虐待:障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること
イ)放棄・放置:障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置等による???の行為と同様の行為の放置等
ウ)心理的虐待:障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
エ)性的虐待:障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること
オ)経済的虐待:障害者から不当に財産上の利益を得ること

5.通報先

市町村・都道府県の部局等は、障害者虐待の通報や対応の窓口等となる「市町村障害者虐待防止センター」、「都道府県障害者権利擁護センター」の機能を果たしています。

6.学校、保育所、医療機関における虐待の防止

就学する障害者、保育所等に通う障害者及び医療機関を利用する障害者に対する虐待への対応について、その防止等のための措置の実施を学校の長、保育所等の長及び医療機関の管理者に義務付けています。

■権利擁護に関連する法律(その2)

【児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)】

 児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的とする法律です。

○「児童虐待」とは保護者がその監護する児童について行う次の行為をいいます。

①身体的虐待:殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
②性的虐待 :子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
③ネグレクト:家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
④心理的虐待:言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV) など

【高齢者に対する虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)】

 高齢者の虐待防止等に関する国等の責務、虐待を受けた高齢者の保護及び養護者に対する支援の措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止に関する施策を促進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする法律です。

○虐待防止施策には、①養護者(家族等)による虐待に対するものと、②養介護施設従事者等による虐待に対するものに大別されます。

○虐待の類型には、①身体的虐待、②養護を著しく怠る(ネグレクト)、③心理的虐待、④性的虐待、⑤経済的虐待があります。

詳細は、http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/boushi/index.htmlよりご覧ください。

【配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法)】

 配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的とする法律です。

○配偶者:男性、女性を問いません。事実婚や元配偶者*も含まれます。

*離婚前に暴力を受け、離婚後も引き続き暴力を受ける場合
*生活の本拠をともにする交際相手、元生活の本拠をともにする交際相手も対象

○暴力:身体的暴力のみならず、精神的・性的暴力*も含まれます。

*保護命令の申し立ては身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫のみ対象

詳細は、http://www.gender.go.jp/e-vaw/law/index2.htmlよりご覧ください。

■発達障害者支援法とは

Ⅰ.目的

親をはじめとする身近な人、保育所や学校などの担任、病院や福祉機関で支援に携わる者、行政機関の職員、その他様々な立場の国民全体が、発達障害の特性を理解し支援ができるようにするために

  • 早期発見・発達支援に関する国・地方公共団体の責務を明らかにしました。
  • 発達障害のある人の自立や社会参加のために、様々な分野で支援の充実を図る必要性があることが示されました。

Ⅱ.定義(発達障害とは)

 自閉症やアスペルガー症候群などを含む広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などが代表的ですが、このほかにもトゥレット症候群、吃音症など様々なものがあります。
 現時点では、確かな原因は明らかにはなっていませんが、様々な調査から、脳の機能が平均的な世の中の人とは違う発達の仕方をしているらしいということが徐々に分かってきています。
 「発達障害」という名前から、「発達しない」「子どもの時期だけの障害」などというイメージが持たれることもありますが、これは誤解です。その人に合った支援があれば、自立や社会参加の可能性は高まります。また、発達障害の特性を踏まえた支援は、子どもの時期だけではなく成人期や老年期にも必要になります。

Ⅲ.相談機関等(発達障害について相談したいとき)

 まずは、現在住んでいる地域の中にある様々なサービス機関(たとえば、市町村の役場、保育所、学校、医療機関、ハローワークなど)でも、発達障害に対する知識が年々高まってきています。
 また、都道府県や政令市には、発達障害者支援センターが必ず置かれていますので、お住まいの地域の発達障害者支援センターに連絡をしたりホームページを確認したりするのも良いでしょう。
 国においても、発達障害情報・支援センターのホームページを随時更新し、様々な情報を掲載しています。  (掲載先) http://www.rehab.go.jp/ddis/

Ⅳ.普及啓発

 発達障害については、日本だけではなく世界中で関心が高まりつつあります。たとえば、平成19年には国連総会において「4月2日を世界自閉症啓発デーと定める」決議、平成24年には「自閉症スペクトラム障害、発達障害及び関連する障害により影響を受けている個人、家族及び社会の社会経済的ニーズへの対応」に関する決議が採択されています。
 日本国内でも、4月2日の世界自閉症啓発デーには様々な場所で建物を青くライトアップする取組や、4月2日から8日を発達障害啓発週間として様々な啓発イベントが行われるようになっています。  (掲載先)http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/

■関連ホームページ

障害者権利条約(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

障害者差別解消法(内閣府)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

障害者基本法(内閣府)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/wakugumi.html

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/


出典:厚生労働省.厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進.http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html (参照 2015-12-9).