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沖縄県障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例

目次

 沖縄県では、県民の心に根ざした人と人とのつながりを大切にする相互扶助の精神に基づき、共に助け合う地域社会が築かれてきた。
 しかしながら、障害のある人については、障害を理由とする差別を受けたり、良好な居住環境、自由な移動、情報の利用等が十分に確保又は配慮されていないこと等の様々な要因により、自己の望む生活を十分に実現できているとは言えない。
 また、障害のない人にとって問題にならないことが障害があることにより社会的障壁となったり、障害のある人に対する理解の不足、誤解、偏見等により、今なお日常生活及び社会生活の中で、困難を余儀なくされている人も少なくない実態がある。
 さらに、本県においては、離島及びへき地における厳しい生活条件が、障害のある人にとって不利なものになっている。
 このような状況において、私たちに今こそ求められているのは、障害のある人に対する福祉、医療、雇用、教育等の充実とともに、障害のある人に対する障害を理由とする差別等をなくしていく取組である。
 ここに私たちは、国際社会や国内の動向を踏まえ、障害のある人もない人も全ての県民が等しく地域社会の一員としてあらゆる分野に参加できる共生社会の実現を目指して、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とした様々な困難を余儀なくされている人々の状況に鑑み、障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくりに関し、基本理念を定め、県の責務及び県民の役割を明らかにするとともに、障害を理由とする差別の禁止等を定め、障害を理由とする差別等を解消するための支援等を総合的かつ計画的に推進することにより、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく社会の対等な構成員として安心して暮らすことができる共生社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)その他の心身の機能障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(基本理念)
第3条 第1条に規定する共生社会の実現は、全ての障害のある人が障害のない人と等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、県、市町村及び県民の相互の連携協力の下に、社会全体として推進していかなければならない。

(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市町村と協力し、障害を理由とする差別等を解消するための支援等を総合的かつ計画的に実施するものとする。

(県民の役割)
第5条 県民は、基本理念にのっとり、障害のある人に関する理解を深めるとともに、第1条に規定する共生社会の実現に寄与するよう努めるものとする。

(財政上の措置)
第6条 県は、障害を理由とする差別等を解消するための支援等を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第2章 障害を理由とする差別の禁止等

(障害を理由とする差別の禁止等)
第7条 何人も、第3項及び次条から第17条までに規定する行為のほか、障害のある人に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
 何人も、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害のある人の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
 何人も、障害のある人に対し、虐待をしてはならない。

(福祉サービスの提供における差別の禁止)
第8条 福祉サービス(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第1項に規定する社会福祉事業に係る福祉サービス又はこれに類する福祉サービスをいう。以下同じ。)を提供する者は、障害のある人に福祉サービスを提供する場合において、障害のある人に対して、障害を理由として、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 本人の生命又は身体の保護のためやむを得ないことその他の正当な理由がなく、福祉サービスの提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為
(2) 福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援が行われることなく、本人の意に反して、入所施設における生活を強制する行為

(医療の提供における差別の禁止)
第9条 医師その他の医療従事者は、障害のある人に医療を提供し、又は受けさせる場合において、障害のある人に対して、障害を理由として、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 本人の生命又は身体の保護のためやむを得ないことその他の正当な理由がなく、医療の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為
(2) 法令に特別の定めがある場合を除き、本人が希望しない長期間の入院その他の医療を受けることを強制し、又は隔離する行為

(サービスの提供等における差別の禁止)
第10条 サービスの提供又は商品の販売を行う者は、障害のある人にサービスを提供し、又は商品を販売する場合(第8条、前条及び第12条から第15条までに規定する場合を除く。)において、障害のある人に対して、障害を理由として、サービスの本質を著しく損なうこととなることその他の正当な理由がなく、サービスの提供又は商品の販売を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為をしてはならない。

(雇用等における差別の禁止)
第11条 事業主は、障害のある人を労働者として雇用する場合において、障害のある人に対して、障害を理由として、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 労働者の募集又は採用に当たって、本人が業務の本質的部分を適切に遂行することができないことその他の正当な理由がなく、応募若しくは採用を拒み、又は条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為
(2) 賃金、労働時間その他の労働条件について、本人が業務の本質的部分を適切に遂行することができないことその他の正当な理由がなく、不利益な取扱いをする行為
(3) 本人が業務の本質的部分を適切に遂行することができないことその他の正当な理由がなく、解雇し、又は退職を強制する行為

(教育における機会の付与)
第12条 校長、教員その他の教育関係職員は、障害のある人に教育を行う場合において、障害のある人に対して、その障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制整備の状況等に応じ、本人に必要と認められる適切な指導及び支援を受ける機会を与えなければならない。

(建築物等の利用における差別の禁止)
第13条 不特定かつ多数の者の利用に供される建築物その他の施設の所有者、管理者又は占有者は、障害のある人が建築物その他の施設を利用する場合において、障害のある人に対して、障害を理由として、当該施設の構造上やむを得ないことその他の正当な理由がなく、当該施設の利用を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為をしてはならない。

(公共交通機関の利用における差別の禁止)
第14条 公共交通事業者等(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第2条第4号に規定する公共交通事業者等をいう。)は、障害のある人が旅客施設(同条第5号に規定する旅客施設をいう。以下この条において同じ。)又は車両等(同条第7号に規定する車両等をいう。以下この条において同じ。)を利用する場合において、障害のある人に対して、障害を理由として、その管理する旅客施設及び車両等の構造上やむを得ないことその他の正当な理由がなく、旅客施設及び車両等の利用を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為をしてはならない。

(不動産取引における差別の禁止)
第15条 不動産の取引を行う事業者は、不動産の取引を行う場合において、障害のある人又は障害のある人と同居する者に対して、障害を理由として、不動産の構造上やむを得ないことその他の正当な理由がなく、不動産の売却、賃貸、転貸又は賃借権の譲渡を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為をしてはならない。

(意思の表明の受領における差別の禁止)
第16条 障害のある人から意思の表明を受けようとする者は、当該障害のある人に対して、障害を理由として、当該障害のある人が選択した意思の表明の方法によっては表明しようとする意思を確認することに著しい支障のあることその他の正当な理由がなく、意思の表明を受けることを拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為をしてはならない。

(情報の提供における差別の禁止)
第17条 障害のある人から情報の提供を求められた者は、当該障害のある人に対して、障害を理由として、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 情報を提供することにより他の者の権利利益を侵害するおそれがあることその他の正当な理由がなく、情報の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を課す行為その他不利益な取扱いをする行為
(2) 手話、点字その他障害の特性に応じた手法での情報の提供が可能である場合に、当該情報の提供を拒む行為

第3章 障害を理由とする差別等を解消するための支援

(障害のある人に関する理解の促進)
第18条 県は、障害のある人に関する県民の理解を深めるため、障害のある人と協力し、障害のある人が権利の主体であることを踏まえた啓発活動の推進、公共的団体の関係者への研修その他の必要な施策を講ずるものとする。

(差別事例相談員に対する支援等)
第19条 県は、市町村が行う事務又は事業のうち、前章の規定に違反する行為(以下「差別等」という。)に該当すると思われる事例に関する相談業務及び相談事業を遂行するもの(以下「差別事例相談員」という。)に対して、技術的助言その他の必要な支援を行うものとする。
 県は、前項に規定するもののほか、市町村が地域の実情に応じて行う障害を理由とする差別等を解消するための施策を策定し、又は実施する場合は、市町村に対して、情報の提供、技術的助言その他の必要な協力を行うものとする。

(広域相談専門員)
第20条 知事は、次に掲げる業務を適正かつ確実に行わせるため、障害を理由とする差別等の解消に関し優れた識見を有するものと認められる者を広域相談専門員として任命することができる。
(1) 専門的な見地から行う差別事例相談員への必要な技術的助言に関する業務
(2) 差別等に関する相談事例の調査及び研究に関する業務
(3) 前2号の業務に付随する業務
 知事は、前項の規定により任命をしようとする場合は、あらかじめ、沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会(第24条に規定する沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会をいう。第22条及び第23条において同じ。)の意見を聴かなければならない。
 広域相談専門員は、中立かつ公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
 広域相談専門員は、正当な理由がなく、この条例の規定により業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

(助言又はあっせんの求め)
第21条 差別等を受けた障害のある人、その家族、保護者、後見人その他の関係者は、知事に対し、助言又はあっせんを求めることができる。ただし、当該求めをすることが当該障害のある人の意に反することが明らかであると認められる場合は、この限りでない。

(助言又はあっせん)
第22条 知事は、前条の規定による求めがあった場合は、沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会に対して助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。
 沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会は、前項の規定により知事 から求めがあった場合は、助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき、又は差別 等の性質上助言若しくはあっせんをすることが適当でないと認めるときを除き、助言又 はあっせんを行うものとする。
 沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会は、助言又はあっせんのために必要があると認める場合は、差別等に係る関係者に対し、助言又はあっせんを行うために必要な限度において、必要な資料の提出又は説明を求めることができる。
 沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会は、差別等の解消に必要なあっせん案を作成し、これを当該差別等に係る関係者に提示することができる。

(勧告)
第23条 沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会は、前条第4項に規定するあっせん案を提示した場合において、差別等をしたと認められる者が正当な理由がなく当該あっせん案を受諾しないときは、当該差別等をしたと認められる者が必要な措置をとるよう勧告することを知事に対して求めることができる。
 知事は、前項の規定による求めがあった場合において、必要があると認められるときは、差別等をしたと認められる者に対して、必要な措置をとるよう勧告することができる。

(沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会)
第24条 障害を理由とする差別等の解消に関し、助言又はあっせんを行わせ、及び必要な事項を調査審議させるため、沖縄県障害を理由とする差別等の解消に関する調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
 調整委員会は、委員15人以内で組織する。
 委員は、障害を理由とする差別等の解消に関して優れた識見を有する者であって、次に掲げるもののうちから、知事が任命する。
(1) 障害のある人又はその家族
(2) 福祉、医療、雇用、教育等の関係団体を代表する者
(3) 経営者又は経営団体を代表する者
(4) 学識経験のある者
(5) 前各号に掲げるもののほか、知事が必要と認める者
 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
 委員は、再任されることができる。
 委員は、正当な理由がなく、この条例の規定により業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする
 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第4章 障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくりに関する基本的施策

(障害福祉サービスの充実)
第25条 県は、市町村が実施している障害福祉サービスの種類及び量の把握に努め、広域的な見地から障害福祉サービスの充実に必要な施策を講ずるものとする。

(雇用の場の拡大)
第26条 県は、事業者に対する障害のある人の雇用の啓発、障害のある人が働きやすい環境の整備及び一般就労への移行を促進し、雇用の場の拡大等に必要な施策を講ずるものとする。

(教育の充実)
第27条 県は、障害のある人が障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善し、又は克服し、自立を目指すようにするため、特別支援教育の充実に必要な施策を講ずるものとする。
 県は、市町村と協力し、障害のある人が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために、障害のある児童及び生徒の就学指導その他の支援に関して、障害のある児童及び生徒並びに保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重するよう必要な施策を講ずるものとする。

(移動等の円滑化を図るための都市等のデザイン及びバリアフリー化の促進)
第28条 県は、障害のある人の移動又は施設の利用の円滑化を図るため、障害の有無、性別、年齢等にかかわらず多様な人々が利用しやすいように考えられた都市又は生活環境のデザイン並びに障害のある人が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(駐車場の確保等)
第29条 県は、障害のある人の自動車による円滑な移動に資するため、自動車の乗降に支障のない広さを有する路外駐車場(駐車場法(昭和32年法律第106号)第2条第2号に規定する路外駐車場をいう。)の確保及び自動車の乗降に支障のある人の駐車を妨げる行為の防止その他の適切な駐車場の利用に関する必要な施策を講ずるものとする。

(住宅環境の整備)
第30条 県は、障害のある人が地域で自立して生活するため、不動産事業者、障害福祉サービス事業者等と協力し、住宅環境の整備に関する必要な施策を講ずるものとする。

(障害の特性に応じた情報提供)
第31条 県は、障害のある人に関する障害の特性に応じた情報の提供に必要な施策を講ずるものとする。

(差別等をなくすための民間の活動の促進)
第32条 県は、障害のある人に関する県民の理解を深めるため、障害のある人に対する差別等をなくすための民間の活動を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

(障害のある人同士による相談体制の充実)
第33条 県は、障害のある人が自己の抱える課題を主体的に解決する力を取り戻し、又は高めるため、同様の経験を有する障害のある人同士による問題解決のための相談体制の充実に必要な施策を講ずるものとする。

(文化芸術活動等に参加できる環境の整備)
第34条 県は、障害のある人の地域における生活の質を高めるため、文化芸術活動、観光、スポーツ又はレクリエーションに参加できる環境の整備に関する必要な施策を講ずるものとする。

(市町村防災計画に関する情報提供等)
第35条 県は、障害のある人の防災及び災害時の避難について、市町村における防災計画に関する市町村への情報の提供、技術的な助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

(離島等における障害のある人に対する福祉の充実)
第36条 県は、障害のある人が生まれ育った地域で暮らすことができるよう、事業者、障害福祉サービス事業者、関係行政機関等と協力し、離島及びへき地における地域の実情や課題に対応する障害のある人に対する福祉に関し必要な施策を講ずるものとする。

(基本的施策の計画的推進)
第37条 県は、市町村と協力し、この章に規定する基本的施策の計画的推進を図るものとする。

第5章 雑則

(規則への委任)
第38条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

第6章 罰則

第39条 第20条第4項又は第24条第6項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

附則

(施行期日)
 この条例は、平成26年4月1日から施行する。ただし、第24条及び次項の規定は、公布の日から施行する。

(準備行為)
 第20条第1項の規定による広域相談専門員の任命に関し必要な行為は、この条例の施行前においても、同項及び同条第2項の規定の例により行うことができる。

(検討)
 知事は、この条例の施行後3年を目途として、障害のある人を取り巻く社会経済情勢の変化等を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。