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大阪市こころを結ぶ手話言語条例

 手話は、音声ではなく手や指、体などの動きや顔の表情を使う独自の語彙や文法体系を持つ言語である。ろう者にとって、手話は大切なアイデンティティーであり、聞こえる人たちの音声言語と同様に、大切な情報の獲得とコミュニケーションの手段として重要な役割を担っている。
 平成18年12月に国連総会で採択され、我が国も批准している「障害者の権利に関する条約」において、言語は「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語」と定義され、手話は言語として国際的に認知された。
 「障害者基本法」は手話を言語として位置づけるとともに、すべての障がい者が、可能な限り、意思疎通のための手段について選択の機会が確保され、情報の取得又は利用のための手段について選択の機会の拡大が図られることを通じて、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指している。
 手話を必要とするすべての人が、日常生活及び社会生活において、手話を通じて容易に必要な情報を取得し、十分なコミュニケーションを図ることのできる社会を実現するためには、市民一人ひとりが、手話がかけがえのない言語であることについて理解を深めるとともに、手話を普及し手話を使用できる環境を整備していくことが重要である。
 大阪市は、手話が言語であるという認識に基づき施策を推進し、手話を必要とするすべての人の社会参加の促進と安心して暮らせる地域社会の実現を目指して、この条例を制定する。

(目的)
第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関し、基本理念を定め、本市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、手話に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もってすべての市民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)
第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であること及びろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、ろう者とろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。

(本市の責務)
第3条 本市は、前条の基本理念(以下、「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を行うとともに、日常生活及び社会生活において手話が使用できる環境の整備に努め、手話に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 本市は、手話に関する施策を内部組織が連携して推進するための体制を整備するものとする。

(市民の役割)
第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する本市の施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)
第5条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する本市の施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、手話をコミュニケーションの手段として活用するよう努めるとともに、手話を必要とする人が利用しやすいサービスを提供し、手話を必要とする人が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(施策の推進方針)
第6条 本市は手話に関する施策を推進するための方針(以下、「施策の推進方針」という。)を策定するものとする。
2 施策の推進方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 (1) 手話への理解の促進及び手話の普及に関する事項
 (2) 手話による情報取得に関する事項
 (3) 手話による意思疎通の支援に関する事項
 (4) 手話を必要とする人への相談支援に関する事項
 (5) 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な事項
3 施策の推進方針は、本市が定める障がい者のための施策に関する基本的な計画と調和が保たれたものでなければならない。
4 施策の推進方針は、これを公表するものとする。

(協議の場)
第7条 施策の推進方針を策定若しくは変更する場合、又は施策の推進方針に基づく施策の実施において必要がある場合、市長は、ろう者、手話通訳者及びその他関係者から意見を聴くため、協議の場を設置しなければならない。

(手話を使用できる職員の増員)
第8条 本市は、手話を使用することができる職員を増やすよう努めるものとする。

(公共施設等に対する啓発)
第9条 本市は、病院及び広く市民に公共サービスを提供する施設その他関係機関における手話への理解の促進及び手話の普及を図るため、これらに対する積極的な啓発に努めるものとする。

(学校における理解の促進)
第10条 本市は、学校教育の場において、基本理念にのっとり、手話に接する機会の提供その他の手話に親しむための取組を通じて、手話への理解の促進に努めるものとする。

(財政上の措置)
第11条 本市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任)
第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市規則で定める。

附則

1 この条例は、公布の日から施行する。

2 市長は、この条例の施行の日から起算して3年を経過するごとに、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。