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渋川市手話言語条例

 手話は、物の名前や抽象的な概念等を手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。
 ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え文化を創造するために必要な言語として手話を愛おしみ大切に育んできた。しかしながら、長い間手話は言語として認められないばかりか、ろう者に対する差別や偏見から、手話を自由に使うこともできず、ろう者は、社会の中で孤立し、不便や不安に耐えながら暮らしてきた。
 こうした中で、昭和22年の戦後の混乱期、全国のろう者が伊香保の地に集結し、自らの手によってろう者の人権を守っていこうと「全日本ろうあ連盟」を旗揚げした。このことは、後のろう者の人権回復運動の礎として、永遠に語り継がれるものであり、全国のろう者の心の拠りどころになっている。
 平成18年に国際連合総会において「障害者の権利に関する条約」が採択され、言語に手話を含むことが明記された。日本においても障害者基本法が改正され、手話は言語として位置づけられた。平成28年4月には、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が施行され、障害のある人たちに対する差別が解消されるとともに人権が守られ、より一層の社会参加の推進が期待されている。
 渋川市は、全日本ろうあ連盟発祥の地である伊香保を有する市として、ろう者の歩んだ歴史に真摯に向き合い、手話が言語であるとの認識に基づき、ろう者及び手話への理解を深め、全ての市民の人権が守られ、地域で支え合い、お互いの個性と人格を尊重し合い共生する社会を実現するため、この条例を制定するものである。

(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解及び普及に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が実施する施策の基本的事項を定めることにより、全ての市民が共に生きる地域社会を実現することを目的とする。

(手話の意義)
第2条 手話は、ろう者が「手話は、ろう者のいのち」と言い、大切に受け継いできたものであって、音声言語と異なる独自の言語体系を持ち、豊かな人間性を涵(かん)養し、及び知的かつ心豊かな社会生活を送るための言語活動の文化的所産であると理解するものとする。

(基本理念)
第3条 ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを基本として、ろう者の手話による意思疎通を行う権利を尊重し、手話の普及を図るものとする。

(市の責務)
第4条 市は、第2条の手話の意義及び前条の基本理念(以下「基本理念」という。)に対する市民の理解の促進を図り、手話の普及及び手話を使用しやすい環境の整備に努めるものとする。
2 市は、第1条の目的及び基本理念に対する市民の理解の促進、手話の普及並びに手話を使用しやすい環境の整備に当たっては、群馬県と連携し、及び協力するよう努めるものとする。

(市民の役割)
第5条 市民は、手話への理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)
第6条 事業者は、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、及びろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(施策の策定)
第7条 市は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定により策定する渋川市障害者計画において、次に掲げる事項を総合的かつ計画的に推進するための施策を定めるものとする。
 (1) 手話への理解及び手話の普及に関すること。
 (2) 手話による情報の発信及び手話による情報の取得に関すること。
 (3) 手話による意思疎通支援に関すること。
 (4) 手話通訳者の確保及び手話通訳環境の充実に関すること。
 (5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項

(手話を学ぶ機会の確保)
第8条 市は、ろう者、手話通訳者、手話奉仕員及び手話を使用することができる者と協力して、市民が手話を学ぶ機会の確保を図るものとする。

(学校における手話の普及)
第9条 市は、学校教育における手話への理解及び手話の普及を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 市は、学校において、児童、生徒及び教職員に対する手話を学ぶ機会を提供するよう努めるものとする。
3 学校の設置者は、学校において手話を必要とする幼児、児童、生徒又は学生がいる場合、必要な支援を受けられるよう努めるものとする。

(医療機関における手話の啓発)
第10条 医療機関の開設者は、ろう者が手話を使用しやすい環境を整備するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 市は、医療機関において、ろう者が手話を使用しやすい環境となるよう、手話通訳者を派遣する制度の周知その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(事業者への支援)
第11条 市は、ろう者が手話を使用しやすい環境を整備するために事業者が行う取組に対して、必要な支援を講ずるよう努めるものとする。

(災害時の対応)
第12条 市は、災害時において、ろう者に対し、情報の取得及び意思疎通の支援に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(観光旅行者への対応)
第13条 市、市民及び事業者は、手話を必要とする観光旅行者が安心して滞在することができるよう、利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。

(その他の意思疎通支援の推進)
第14条 市は、手話、要約筆記その他の意思疎通支援を活用し、聴覚障害者の特性に応じた円滑な意思疎通支援に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(財政上の措置)
第15条 市は、手話に関する施策をより一層推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

附則

 この条例は、平成29年4月1日から施行する。