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高崎市手話言語条例

 言語は、お互いの意思疎通を図り、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。
 手話は、音声言語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解するため、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として、手話を大切に育んできた。
 高崎市では、大正11年4月10日に「私立高崎聾唖(ろうあ)学校」が設立され、群馬県で最初のろう教育が始まった。県内各地から集まったろう児によって育まれてきた手話は、ろう者をはじめ手話を必要とする人にとって生活を営むために不可欠な意思疎通を図るための手段として用いられてきた。
 しかし、海外から伝えられた「口話法」の普及に力を入れた昭和の初め頃から、全国のろう学校では事実上、手話の使用が禁止された。当時のろう教育は、手話とろう者に対する理解が乏しかったため、結果的に、十分に手話を使う権利やろう者の尊厳が少なからず損なわれてきた。
 この状況の中においても、手話はろう者の間で日常的に使用され続け、大切に守られてきた。そして、聞こえる者に手話を広め、ろう者と聞こえる者との懸け橋となる手話サークルが全国各地で作られていった。高崎市においては、昭和48年にろう者とろう者に関わってきた聞こえる者が共同して手話サークルを立ち上げ、手話やろう者に対する理解を広げ、多くの手話通訳者を育ててきた。
 近年、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、言語に手話を含むと規定されたが、手話に対する理解の広がりは、まだ不十分である。そのため、高崎市は、手話は言語であるとの認識に立ち、この条例を制定するものである。

(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、市民の手話への理解及び手話の普及の促進を図り、もってろう者及びろう者以外の者が共に生きる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(手話の意義)
第2条 手話は、ろう者が自ら生活を営むために使用している独自の体系を持つ言語であって、豊かな人間性を涵(かん)養し、及び知的かつ心豊かな生活を送るための言語活動の文化的所産であると理解するものとする。

(基本理念)
第3条 ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本として、ろう者の意思疎通を行う権利を尊重し、手話の普及を図るものとする。

(市の責務)
第4条 市は、この条例の目的及び基本理念を踏まえ、市民の手話への理解、手話の普及促進及び手話を使用しやすい環境の整備を図るための施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。
2 市は、この条例の目的及び基本理念に対する市民の理解の促進、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備に当たっては、群馬県その他の関係団体と連携し、及び協力するよう努めるものとする。

(市民の役割)
第5条 市民は、この条例の目的及び基本理念を理解するよう努めるものとする。

(事業者の役割)
第6条 事業者は、ろう者が利用しやすい手話に関するサービスを提供し、及びろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(計画の策定及び推進)
第7条 市は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定により策定する高崎市障害者福祉計画において、手話を使用しやすい環境を整備するために必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するよう努めるものとする。

(手話を学ぶ機会の確保)
第8条 市は、ろう者、手話通訳者等と協力して、市民が手話を学ぶ機会の確保に努めるものとする。

(事業者への支援)
第9条 市は、第6条に規定する役割を果たすために事業者が行う取組に対して、必要な支援に努めるものとする。

(学校における手話の普及)
第10条 聴覚障害のある幼児、児童又は生徒(以下「ろう児等」という。)が通学する学校の設置者は、ろう児等が手話を獲得し、手話で各教科・領域を学べるように、幼児期からの手話の教育環境を整備し、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講じるよう努めるものとする。
2 ろう児等が通学する学校の設置者は、ろう児等及びその保護者に対する手話に関する学習の機会の提供並びに教育に関する相談及び支援に努めるものとする。
3 ろう児等が通学する学校の設置者は、前2項に規定する事項を推進するため、ろう者である教員その他手話に通じた教員の確保及び教員の専門性の向上に関する研修等に努めるものとする。

(財政上の措置)
第11条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるよう努めるものとする。

附則

 この条例は、平成29年4月1日から施行する。