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第五章 校務の情報化の在り方

(校務の情報化の意義)
○ 学校における校務の情報化は、教職員等学校関係者(47)が必要な情報を共有することによりきめ細かな指導を可能とするとともに、校務の負担軽減を図り、教員が子どもたちと向き合う時間や教員同士が相互に授業展開等を吟味し合う時間を増加させ、ひいては、教育の質の向上と学校経営の改善に資するものである。
具体的には、学籍、出欠、成績、保健、図書等の管理や、教員間の指導計画・指導案・デジタル教材・子どもたちの学習履歴その他様々な情報の共有、学校ウェブサイトやメール等による家庭・地域との情報共有等が含まれる。

このような校務の情報化が進むことによって、教職員間や教職員・保護者間で共有する情報の充実、情報共有が増加することによる相互の気づき、校務の処理時間の短縮による時間の使い方の変化、業務の正確性の向上、学校からの情報発信が増えることにより保護者や地域住民の学校への理解が深まること等が期待される。

○ 平成22年3月末時点における公立学校の校務用コンピュータ整備率は、教員1人1台に大きく近づいた。今後はすべての学校への普及に向けて、校務支援システムの充実を図ることが重要な課題である。管理職は、校務の情報化を学校経営の中核として位置づけ、教職員間でその意義の共有に努めることが求められる。

(校務の情報化に関する課題)
○ 校務の情報化については、ほとんどの教育委員会や学校において必要性が認識されており(48)、既に校務支援システム等(49)を導入している地方公共団体や学校もある。また、教育委員会や学校において、各学校における創意工夫に配慮しつつ、必要な教育情報をデジタル化、データベース化して共有することも有効であり(50)、共有すべき教育情報の項目、様式、データ形式等の標準化について検討することも考えられる。また、教育委員会等で学校情報セキュリティポリシーを策定することなどにより、組織的に情報セキュリティを確保することが重要である。
なお、学校に対する行政調査について、例えばオンライン化を図ることなどにより、効率的実施に努めることも重要である。

○ さらに、費用対効果やセキュリティ等の観点を踏まえ、校務の情報化において、クラウド・コンピューティング技術を活用する可能性を検討することも考えられる。

○ なお、韓国では、既に全国すべての学校において、全国教育行政情報システム(NEIS/National Educational Information System)が整備され、日本の文部科学省に相当する韓国教育科学技術部(MEST(51))が韓国教育学術情報院(KERIS(52))を通じて、校務情報を集中的に管理運営している。中長期的には、費用対効果やセキュリティのリスク等の全体的な最適化の観点、地方自治体の要望等も把握・分析しつつ、全国ベースの総合的な校務の管理運営体制の構築の可能性も含めて検討することが考えられる(53)


47 教職員のほか、子どもたち、保護者、地域住民及び教育委員会が、必要に応じ情報を共有することも重要である。

48 「校務情報化の現状と今後の在り方に関する研究報告書」(平成18年度文部科学省委託事業)によれば、アンケートにおいて、8割以上の学校、9割以上の教育委員会で、校務の情報化が「是非必要である」又は「必要である」と回答している。

49 文部科学省の先導的教育情報化推進プログラムの一環として熊本県教育委員会が開発した校務支援システム、あるいは国立情報学研究所が開発した次世代情報共有基盤システム(Net Commons)、その他市販のソフトなどがある。

50 平成20年度「学校図書館の現状に関する調査」によれば、学校図書館の蔵書のデータベース化の状況は、平成20年5月現在、小学校44.5%、中学校44.7%、高等学校77.9%にとどまっており、学校図書館の情報化も望まれる。なお、デジタル教科書・教材と当該データベースとの連携も含めて検討することも考えられる。

51 Ministry of Education, Science and Technology

52 Korea Education and Research Information Service

53 その際、クラウド・コンピューティング技術の活用に加え、個々人の能力の向上等のために高度な演算能力を有する計算機資源を活用した子どもたちの学習履歴の管理の在り方等について検討することも考えられる。