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第六章 教員への支援の在り方

1.教員の役割と情報通信技術の活用指導力養成

○ 第一章で述べたような、21世紀にふさわしい学びと学校を創造するためには、教員が子どもたち一人一人の能力や特性を把握し、これらに応じた学習を産み出す役割が一層期待されることとなる。
他方で、実体験や対面のコミュニケーションなど、情報通信技術を伴わずに指導することがふさわしい場面もある。教員には、情報通信技術の可能性と限界を踏まえた、具体的な指導場面に応じた対応が求められる。

(教員研修)
○ 文部科学省が作成したチェックリストに基づく調査によれば、ICT活用指導力のある教員は、各項目について概ね平均6~7割程度(平成22年3月)であり、地域間の格差も顕著である(54)。また、平成21年度中にICT活用指導力に関する研修を受講した教員は、全体の19.2%にとどまっている(55)。教員のICT活用指導力の向上と地域間の格差是正は喫緊の課題であり、国として地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、大学との連携も含めた現職教員への研修に取り組むことが必要である。

○ 国においては、例えば、インターネットによるeラーニング研修(56)、対面による演習を中心とした地方公共団体の研修指導者の養成、テキストの作成・提供、ソーシャルネットワークサービス(SNS)などによる指導方法等に関する情報交換の機会の提供などを中心に実施することが考えられる。
他方、地方公共団体においては、例えば、教育委員会や教育センター等における、国が養成した研修指導者を活用した研修や校内研修等の指導者養成、大学等と連携したICT活用指導力向上のための講習・授業研究等の実施など、具体的授業に即した演習等を中心に実施することが考えられる。これらの研修の成果は、校内研修において学校全体に行き渡るようにすることが重要である(57)

(教員の養成・採用)
○ 教職課程の認定を受け教員を養成する大学等においては、教育職員免許法施行規則により、「情報機器の操作(2単位)」や「教育課程及び指導法に関する科目」として「教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む)」の履修が必須とされている。
現在、中央教育審議会において、教員の資質能力の総合的な向上方策について検討されているところであり、この中で、ICT活用指導力の育成、特に情報教育を担当する教員の免許の在り方等の課題についても十分検討する必要がある。今後、中央教育審議会における検討を踏まえつつ、教員養成を行う大学や教職大学院等においては、教育委員会や教育センター等とも連携し、これらの課題に対応する新たな教員養成カリキュラムの開発やそれに基づく効果的な履修体制の構築等を図る必要がある。

○ また、教員養成学部(附属学校を含む)をはじめ、大学の教職課程等においては、教員を目指す学生が授業や実習を通じて情報端末・デジタル機器やソフトウェアに触れる機会の充実を図ることが必要である。教員養成学部と密接に連携して教育実習や教育研究を行う役割を果たしてきている附属学校、既に先進的に取り組んでいる学校については、教育の情報化と21世紀にふさわしい学びと学校の創造のために牽引的な役割を果たすことが期待される。

○ さらに、各地方公共団体における教員採用についても、ICT活用指導力を十分に考慮して行われることが期待される。


54 平成21年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によれば、平成22年3月時点で、

  • ①教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力73.9%(都道府県別:最高86.8%、最低67.9%)
  • ②授業中にICTを活用して指導する能力58.5%(都道府県別:最高78.2%、最低50.5%)
  • ③児童・生徒のICT活用を指導する能力60.3%(都道府県別:最高78.0%、最低53.2%)
  • ④情報モラルなどを指導する能力68.6%(都道府県別:最高84.0%、最低60.1%)
  • ⑤校務にICTを活用する能力69.4%(都道府県別:最高83.1%、最低60.5%)

55 平成21年度「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」による。

56 eラーニング研修においては、インストラクショナル・デザイン(研修の効果と効率、そして魅力を高めるためのシステム的な方法論であり、受講者の特徴や与えられた研修環境やリソースの中で最も効果的で魅力的な研修方法を選択し、設計・実行・評価するもの)の手法を取り入れるなど、質の高いプログラム開発・提供が望まれる。

57 特に、高等学校の普通教科「情報」については、教員の質と量の確保の観点から、教員の研修の在り方や確保の在り方について検討していくことが望まれる。