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第七章 教育の情報化の着実な推進に向けて(60)

(ソフト・ヒューマン・ハードの総合的計画的推進)
○ 教育の情報化に当たっては、ソフト・ヒューマン・ハード面での整備を総合的かつ計画的に進めることが重要である。この点、地方交付税措置のみでは、効果的な推進や地域間格差の解消等の点において限界があることも指摘されている(61)。英国ではデジタルコンテンツに使途を限定した交付金が措置された(62)。教育の情報化を集中的に進めるためには、このような例を参考として、例えば、地方交付税措置と併せ、一定程度使途を限定した支援措置により整備を進めていくことも検討することが重要である。

(総合的な実証研究の実施)
○ また、これまで述べてきた方向性に沿って、教育の情報化を実効的に推進するためには、様々な学校種、子どもたちの発達の段階、教科等を考慮しつつ、モデル地域・学校などで総合的な実証研究を早急に多角的な観点から行う必要がある(63)。その際、21世紀を生きる子どもたちに求められる力をはぐくむために情報通信技術をどのように生かせるかという観点等も踏まえ、教育、情報通信技術の専門家はもとより、幅広く各方面の関係者と連携しつつ実施していくことが重要である。

(総合的な推進体制の構築)
○ 諸外国においては、韓国の教育学術情報院(KERIS)や英国の教育工学通信庁(BECTA(64))等により、情報提供、調査研究、研修、校務の情報化等の事業が国主導の下、総合的に推進されている例がある。
これらの例も参考として、例えば、第三章第1節において述べたようなデジタル教材等の配信等に加え、第五章で述べたような校務の情報化に関する全国ベースの総合的な管理運営体制の構築、学校CIOや教員向けの研修用コンテンツの提供、教員同士が自主的に開発した教材等を通じて学び合う情報プラットフォームやICT支援員相互の交流のためのサイトの開設などを展開することとし、そのための総合的なポータルサイト創設に向け、国立教育政策研究所のサイトである教育情報ナショナルセンター(NICER)に関する機能・体制の強化を図るとともに、同研究所による教育の情報化に関する調査研究の充実やその成果等の普及を図ることが重要である(65)

○ また、教育の情報化は、学識経験者、地方教育行政関係者、教員、民間企業、地域や家庭等における関係者が一体となって推進することが重要である。このため、産学官等連携による広範なネットワークの形成、教育の情報化のための社会的機運の醸成を図ることが重要である(66)

○ 今後、「新たな情報通信技術戦略」工程表(67)を踏まえて必要な措置を講じるとともに、本骨子に記載された事項について可能なものは早急に実施することとする。また、懇談会のワーキンググループにおいて更に検討を行い、本年度中に「教育の情報化ビジョン」を策定することとする。
も考えられる。懇談会では、教育関連コンテンツの研究、創造、開発、供給を専門に扱う機関を創設すべきとの意見もあった。


60 本章では、これまで各章において述べてきた重要な事項等のほかに、各章横断的に教育の情報化の推進に必要な事項等を記述した。

61 例えば、校務用コンピュータの整備については、地方交付税のみで措置された平成20年度には前年度に比べ4%弱の増加にとどまっていたのに対して、平成21年度第1次補正予算において補助金で措置されたことにより約35%増加した。

62 英国では、2005年から3年間にわたり、デジタルコンテンツの購入を目的としたeクレジット(eLCs : e Learning Credits)と呼ばれる使途特定交付金が総額5億ポンド超交付された。

63 デジタル教科書・教材の提供、1人1台の情報端末(具体的内容については、第三章第1節を参照)、デジタル機器等の配備、無線LAN整備、校務の情報化、教員研修、教員へのサポート体制の構築などを総合的に行うことが望ましい。

64 BECTA(British Educational Communications and Technology Agency)については、近時英国政府において行政改革の一環として廃止する動きも見られるが、近年の英国の学校における教育の情報化の進捗に多大な貢献をしてきた。

65 こうした推進体制の構築に当たっては、独立行政法人教員研修センターや独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の活用

66 例えば、シンポジウムやフォーラム等で、21世紀にふさわしい学びと学校を創造するための情報通信技術の役割や、地域において必ずしも教育の情報化が進んでこなかった原因、平成21年度第1次補正予算等によって整備されたデジタル機器等の活用に係る好事例、効果、課題等について広く情報共有を図ることなどが考えられる。

67 別添参考資料2を参照。