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2.教育の情報化が果たす役割

○ 前節で述べた21世紀を生きる子どもたちに求められる力をはぐくむ教育を行うためには、情報通信技術の、時間的・空間的制約を超える、双方向性を有する、カスタマイズ(18)を容易にするといった特長を生かすことが重要である。子どもたちの学習や生活の主要な場である学校において、その情報化を推進し、教員がその役割を十分に果たした上で、情報通信技術を活用し、その特長を生かすことによって、子どもたち一人一人の能力や特性に応じた学びを構築していくとともに、子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学び(19)を創造していくことができる。

○ 具体的には、教育の情報化は、次の3つの側面を通して教育の質の向上を目指している。

  • ① 情報教育(20)(子どもたちの情報活用能力の育成)
  • ② 教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用した、わかりやすく深まる授業の実現等)
  • ③ 校務の情報化(教職員が情報通信技術を活用した情報共有によりきめ細かな指導を行うことや、校務の負担軽減等)

○ 情報通信技術を活用することが極めて一般的な社会にあって、学校教育の場において、社会で最低限必要な情報活用能力を確実に身に付けさせて社会に送り出すことは、学校教育の責務である。これらは、我が国が国際競争力を維持・強化し、国際社会に貢献するとともに、将来にわたって、世界のフロントランナーとして、国民に豊かな生活を提供し続けるという見地からも極めて重要である。

○ 教科指導における情報通信技術の活用は、教員が、任意箇所の拡大、動画、音声朗読等を通して、学習内容をわかりやすく説明したり、子どもたちの学習への興味関心を高めたりすることに資するものである(21)。また、繰り返し学習によって子どもたちの知識の定着や技能の習熟を図ったり、子どもたちが情報を収集・選択・蓄積し、文書や図・表にまとめ、表現したりする場合や、教員と子どもたちが相互に情報伝達を図ったり、子どもたち同士が教え合い学び合うなど双方向性のある授業等を行ったりする場合にも有効である。その際、情報通信技術は、教員が子どもたちの学習履歴を把握したり分析したりすること等にも資するものである。これらによって、子どもたちにとって教科内容についてよりよく理解したり表現したりできるようになると考えられる。

○ 特別支援学校や小・中学校の特別支援学級に在籍したり、通級による指導を受けたりする子どものほか、通常の学級に在籍する発達障害のある子どもなど、特別な支援を必要とする子どもたちにとって、情報通信技術は、障害の状態や特性等に応じて活用することにより、各教科や自立活動等の指導において、その効果を高めることができる点で極めて有用である。特に、情報の収集・編集・表現・発信などコミュニケーション手段としての活用が期待される。

○ なお、授業において黒板等を使った指導も効果をあげているところであり、これに加えて情報通信技術を効果的に活用して、「21世紀にふさわしい学びと学校の創造」の実現に向けて、指導方法を発展・改善していくことが求められる。情報通信技術は重要な技術であるが、あくまでもツールであり、その活用に当たっては、学校種、発達の段階、教科、具体的な活用目的や場面等に十分留意しつつ、学びの充実に資するものでなければならない。子どもたちへの情報モラル教育(22)、教員や保護者への情報モラルの普及啓発、有害環境対策など、情報化の影の部分への対応(23)も併せて講じる必要がある。 さらに、実体験や対面でのコミュニケーションの充実等を図っていく(24)ことは、学校現場において一層重要性を増してくるものと考えられる(25)。情報通信技術の可能性とともに限界にも留意しつつ、教育の情報化を推進することが重要である。

○ 校務の情報化については、例えば、学級担任だけでなく全教職員が子どもたちのよいところを見つけて入力・共有して指導に生かす取組が行われたり(26)、校務支援システム導入前後を比較すると教員が直接的に子どもたちの指導を行う時間が1日当たり30分以上増加したという調査結果が報告されている(27)。このことは、校務の情報化が、子どもたちの教育の質の向上や校務負担の軽減に寄与することを示していると考えられる。

○ また、情報通信技術を活用することにより、学校で学んだことについて家庭や地域における学習支援も可能となり、子どもたちの学習機会の一層の充実に資すると考えられる(28)


18 既存のものに手を加えて好みのものに作りかえること。

19 例えば、他人との意見交換など協調的な活動を通じて知識を構築し、それぞれの視点を統合すること等により、新たな価値を生み出すことなどが期待される。

20 情報教育は、情報活用能力をはぐくむ教育である。

21 文部科学省委託事業「教育の情報化の推進に資する研究」(平成19年3月 独立行政法人メディア教育開発センター)においては、教科指導において情報通信技術を活用した場合に、活用しない場合よりも高い学習効果が得られた例も示されている。

22 情報モラル教育とは、情報社会で適正に活動するための基となる考え方や態度に関する教育をいう。文部科学省では、情報モラル指導モデルカリキュラムの作成(平成18年度)、情報モラル指導ポータルサイトの構築(平成19年度)などに取り組んできた。

23 インターネット上の誹謗中傷やいじめ、個人情報の流出やプライバシーの侵害、有害情報やウィルス被害に巻き込まれるなどの問題への対応として、学校では家庭、地域及び関係機関と連携しながら、情報モラルについて指導することが重要である。

24 野外における観察の際に情報通信技術を活用して発信・伝達するなど、実体験が情報通信技術と融合することにより、新たな学びの可能性が生まれることも考えられる。

25 この点を踏まえ、文部科学省では、平成22年5月から「コミュニケーション教育推進会議」を開催し、子どもたちのコミュニケーション能力の育成を図るための具体的な方策や普及の在り方について調査・検討を行っている。

26 例えば、愛知県小牧市において行われている「いいとこ見つけ」。

27 熊本県教育委員会は、平成19年度より、子どもたちに関する情報共有や服務の電子決裁を行うためのグループウェア、成績処理や指導要録の電子化を行うための教務支援システム、学校が保有する個人情報や各種書類を管理する文書セキュアシステムの開発・導入を進めてきた。

28 例えば、文部科学省委託事業先導的教育情報化推進プログラムにおいて、千歳科学技術大学が中心となり、学校・行政・家庭の連携により、eラーニングを通じた家庭学習支援に取り組んできた。