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第4部 専門家用

巡回相談員用

1.巡回相談の目的と役割

(1)目的

児童生徒一人一人のニーズを把握し,児童生徒が必要とする支援の内容と方法を明らかにするために,担任,特別支援教育コーディネーター,保護者など児童生徒の支援を実施する者の相談を受け,助言することが巡回相談の目的です。また,支援の実施と評価についても学校に協力します。

(2)役割

巡回相談の役割としては,次のようなことが求められます。

  • 対象となる児童生徒や学校のニーズの把握と指導内容・方法に関する助言
  • 校内における支援体制づくりへの助言
  • 個別の指導計画の作成への協力
  • 専門家チームと学校の間をつなぐこと
  • 校内での実態把握の実施への助言
  • 授業場面の観察 等

このような役割を担うこととなりますので,機動的かつ柔軟に学校への助言等が行えるようにすることが求められます。また,学校に対して適切な助言を行うためには,校内の窓口となるコーディネーター等との連携を深めるとともに,専門家チームと有機的・効果的に連携協力していくことが大切です。

(3)巡回相談員に必要な知識と技能

巡回相談を実施していくためには次のような知識と技術が必要とされます。

1.特別支援教育に関する知識と技能
2.LD,ADHD,高機能自閉症など発達障害に関する知識
児童生徒のつまずきや困難さを理解し,LD,ADHD,高機能自閉症の特性を配慮した支援を行うために,LD,ADHD,高機能自閉症など発達障害などに関する知識が必要です。
3.アセスメントの知識と技能
心理検査等を実施し,結果を解釈するだけではなく,行動観察や生育歴等の情報も総合して児童生徒のニーズを把握することが大切です。
4.教師への支援に関する知識と技能
5.他機関との連携に関する知識と技能
各機関の役割を把握し,密接な連携が行われるような配慮をしつつ連携体制を推進していくことが必要です。
6.学校や地域の中で可能な支援体制に関する知識
7.個人情報の保護に関する知識
対象となる児童生徒のニーズを把握していくときに,多くの個人情報を収集しなければならないこともありますが,個人情報の取扱いに留意することが必要です。

2.学校への支援

(1)学校のニーズの把握

教師や保護者の気付きによって対象となる児童生徒が特定されている場合は,その児童生徒について,担任やコーディネーター,管理職等の学校関係者との情報交換や保護者等との面談,授業場面の観察,授業以外の活動場面の観察,検査等を行って児童生徒の状態を把握するとともに,学校のニーズも把握します。また,特定されている児童生徒以外にも支援を必要とする児童生徒がいることを想定して,担任及び学校全体の気付きを促していくことも大切です。

(2)教師への支援

教師の悩みや迷いを明確にし,対象児童生徒の実態を正確に把握することができるような情報を提供します。児童生徒の実態を把握するための視点を提供することが必要な場合もあります。また,具体的な対応方法について,教師の主体性を重視しながらも,支援の方法についてのアイディアや教材を紹介します。

(3)校内委員会への支援

支援が継続して行われるよう,校内支援体制の整備に協力します。既存の分掌・委員会等を有効に生かすことに留意しつつ,新しい取組で成功した例などを紹介することにより,柔軟な取組が行われるように助言します。

(4)校内研修会や理解推進等の支援

校内研修会には次のような目的があります。第1に特別な支援を必要としている児童生徒への気付きを促すことです。第2に,支援が必要な児童生徒に対する具体的な対応の方法に関する知識を提供することです。第3に,校内支援体制の意義と体制づくりについての理解を深めることです。これらの目的が十分に達成される形で校内研修会が実施されるように,学校のニーズに合う講師を紹介したり,自らが講師として協力したりします。また,学校のニーズに合うように,研修会の内容について助言します。さらに,児童生徒を対象とした理解推進のための活動について助言,協力することも大切です。

(5)保護者との連携・支援

校内で行われる保護者向けの研修会に協力します。また,校内委員会からの要請に応じて,児童生徒の状態を保護者に説明したり,家庭での対応について助言したりします。

3.専門家チームとの連携

(1)学校と専門家チームをつなぐ

校内委員会から専門家チームに判断を依頼する場合,必要に応じて,巡回によって把握した児童生徒の実態を基礎資料として提供します。また,専門家チームから判断と助言が提示された場合,その内容を授業や学校生活に具体的に位置付けるために,教師に対して説明や助言をします。なお,専門家チームとの連携を深めるため,必要に応じて専門家チームの会議に参加することも考えられます。

(2)研修等

地域の巡回相談員間の情報交換の場や研修の機会を設けることにより,巡回相談員の資質の向上を図ります。巡回相談員,専門家チームの構成員が中心となって,実際に児童生徒の支援にかかわる関係者が定期的な事例研究会を開催していきます。

図 巡回相談員と専門家チームとの連携

巡回相談員と専門家チームとの連携を表す図

図の説明