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教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)

専門家チーム用

1.専門家チームの目的と役割

(1)目的

専門家チームは,学校からの申し出に応じてLD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断と対象となる児童生徒への望ましい教育的対応について専門的な意見の提示や助言を行うことを目的として教育委員会に設置されるものです。LD,ADHD,高機能自閉症ではないと判断された場合,あるいは他の障害を併せ有するような場合にも,どのような障害あるいは困難さを有する児童生徒であるかを示し,望ましい教育的対応について専門的な意見を述べることが期待されています。

(2)役割

専門家チームの役割としては,次のようなことが求められます。

  • LD,ADHD,高機能自閉症か否かの判断
  • 児童生徒への望ましい教育的対応についての専門的意見の提示
  • 学校の支援体制についての指導・助言
  • 保護者,本人への説明
  • 校内研修への支援 等

学校に対して適切な支援を行うためには,校内の窓口となるコーディネーター等との連携を深めるとともに,巡回相談員と有機的・効果的に連携協力していくことが大切です。

(3)構成員と規模

専門家チームは,教育委員会や特殊教育センター等における専門家による相談機関と位置付けられます。

構成員

チームは,教育委員会の職員,特殊学級や通級指導教室の担当教員,通常の学級の担当教員,盲・聾・養護学校の教員,心理学の専門家,医師等での構成が考えられます。さらに,福祉関係者,保健関係者,対象となる児童生徒が在籍する学校の特別支援教育コーディネーター,保護者等が必要に応じて参加できるシステムにしておくことにより,的確で具体的な対応の内容・方法を示すことができると考えられます。対象となる児童生徒の状態や学校のニーズに応じて会議を随時開催できるようなチームを構成するためには,構成員の数が多くなりすぎないように考慮することも大切です。

各地域におけるLD,ADHD,高機能自閉症について専門的知識を有する者については,「特別支援教育ネットワーク推進委員会」を構成する関係団体に問い合わせてみることができます(p13,14参照)。

チームの規模

地域規模や資源,対象児童生徒,緊急性に応じて柔軟に考えていくことが大切です。都道府県に一つだけ設置されている場合は,学校と専門家チームの情報交換が時機を逃すことなく行うことが難しくなることが多いようです。的確な判断と学校や地域の実態に応じた教育的対応の内容を示すためには,対象の児童生徒が在籍する学校での行動観察や保護者との面談が必要となる場合もあります。学校や保護者のニーズに応えることができるようにするためには,教育事務所単位や市区町村単位等でチームを構成することが考えられます。会議開催のための日程調整,必要な情報の収集,メンバーの意見の集約等,実務的な作業も多々ありますので,機動力のあるチームを構成することによって,専門家チームの機能が発揮されるようにすることが大切です。

2.LD,ADHD,高機能自閉症の判断

(1)判断の手順の概略

通常の学級には様々な困難を示す児童生徒が在籍しています。その状態がわかりにくいために適切に対応されないまま学校生活を送り,いわゆる二次的な障害を示すようになっている児童生徒もいます。多様な困難さに加え,家庭での対応が十分になされていない,あるいは不適切であるために問題が増幅されることもあります。

以上のような現状を踏まえ,次のような観点から判断を行います。

知的能力の評価
個別式知能検査の結果から知的能力の評価を行います。
認知能力のアンバランス
知能検査だけではなく,他の心理検査も必要に応じて実施し,対象となる児童生徒の認知能力の特徴を把握します。
教科の学習に関する基礎的能力の評価
校内委員会から提出された資料,学力検査等の結果から,学習の到達度やつまずきの特徴を把握します。
心理面・行動面の評価
校内委員会から提出された資料,巡回相談員や専門家チームの構成員が行った行動観察の資料等から心理・行動面の特徴を把握します。
医学的な評価
対象となる児童生徒に医学的な評価が実施されていることが望ましいので,必要に応じて判断の後に保護者への助言として,医療機関の受診を勧めます。特に,ADHD,高機能自閉症の可能性がある場合は,必要に応じて医療機関への受診を勧めていくことが大切です。 以上のような観点から収集した情報に基づき,資料に掲載した判断基準に従って専門家チームとしての判断を行います。

(2)配慮事項

一度LD等の判断が行われた後(判断されなかった場合も含めて)も,定期的な見直しを行うことができる体制を作っておくことが必要です。これまで判断が行われた事例の中にも,障害の状態が変化していく場合があること,年齢段階によって必要とされる支援の内容が変化していくことが予測されることから,判断と助言の内容を見直していくことができるような体制にしておくことが望まれます。

また,判断と助言に基づいた教育的支援が,学校でどのように実施されているのか,どのように効果をあげているかなどを追跡評価していくことも専門家チームの役割です。

3.判断と助言のまとめ方

(1)専門家チームの意見の内容

専門家チームは,対象となる児童生徒の状態について判断の結果を示しますが,併せて,判断の根拠についても報告することが重要です。また,児童生徒の特性とその特性の生かし方,支援の方法や配慮事項についても伝えることが大切です。

(2)学校への助言

支援の方法については,学校において,教科の学習や学校生活の中に具体的に位置付けられる内容でなくてはなりません。各教科の授業場面や係活動,休み時間などの学校生活の中で,担任が中心となって実行できる対応について,できるだけ具体的に示すことが大切です。専門的意見をまとめた報告書の作成例については,資料6(P105~108)を参照してください。

口頭での説明が必要な場合もありますが,この場合,巡回相談員が専門家チームの構成員であれば,巡回相談員が判断結果と助言の内容を説明することが望ましいといえます。

必要に応じて,学級経営,指導形態,指導方法など可能な校内支援体制への工夫についても助言します。
これらの助言を行う際は,学校で作成されていく個別の指導計画へとつながるような内容であることが大切です。

(3)巡回相談員への助言

専門家チームによる専門的意見等を巡回相談員に伝え,巡回相談員が各学校を支援する際に役立てることが大切です。

(4)保護者への助言

児童生徒の特性の説明だけではなく,家庭で実行できるような配慮事項を具体的に伝えます。保護者が児童生徒の状態を理解し,家庭の中でできる配慮を意欲的に取り組むことができるよう助言します。ADHD等の判断がなされた場合は,必要に応じて専門医がいる医療機関を紹介し,受診するように勧めていきます。