障害者に関する新北海道行動計画
人にやさしい社会をめざして
◆人にやさしい社会をめざして◆
北海道
項目 | 内容 |
---|---|
立案時期 | 平成5年2月 |
計画期間 | 平成5年度~平成14年度(10年間) |
「完全参加と平等」をテーマにした昭和56年(1981年)の国際障害者年を契機に、障害をもつ人ももたない人も地域でともに暮らすというノーマライゼーションの考え方が、広く社会に浸透してきました。北海道でも、昭和57年に「障害者に関する北海道行動計画」を策定し、こうした考え方を、道民一人ひとりに理解していただくための啓発活動や、障害をもつ方が地域で自立して生活できるよう様々な条件整備を進めるなど、総合的な障害者対策に努めてきたところです。
しかし、ノーマライゼーションの理念を、私たち一人ひとりの生活の場で具体的に実現していくためには、制度の充実、街や建物の改善、さらには人々の心の在り方など、まだまだ乗り越えなければならない壁が残されています。また、こうした施策の充実にあたっては、関係する機関や施設、職員の皆さんの密接な連携が欠かせません。必要なときに必要なサービスが提供されるような仕組みを社会全体に作っていくことが大切です。
そのため、道では、障害者のライフサイクルの各段階において必要なサービスが、福祉、保健・医療、教育、労働など関係する分野の密接な連携のもとに総合的に提供される「総合リハビリテーションシステム」を構築していくこととしています。この「障害者に関する新北海道行動計画」は、これまでの行動計画の理念を受け継ぎ、全道の各地域で「総合リハビリテーションシステム」を具体的に推進していくための計画として策定したものです。
この計画の策定にあたって、ご提言いただいた北海道地方心身障害者対策協議会をはじめ関係団体の皆さんや、様々なご意見を計画に反映するための世論調査などにご協力いただいた方々に、心からお礼を申し上げます。私たちの目標は、障害をもつ人ともたない人、お年寄りと若者など、それぞれに異なる生活を営む人たちがお互いを思いやり、ともに支え合う社会を実現することです。こうした「人にやさしい社会」を築いていくため、道民の皆さんのご理解とご協力をいただきながら、この計画を力強く推進してまいりたいと考えています。
皆さんの一層のご支援をお願いいたします。
平成5年2月
北海道知事 横路孝弘
◆目次◆
- 北海道の障害者
- 「障害者に関する新北海道行動計画」(案)についての意見
【北海道地方心身障害者対策協議会】 - 総合リハビリテーションシステム推進会議設置要綱
- 北海道地方心身障害者対策協議会条例
第I部
計画の性格
1 計画策定の趣旨
北海道では、「完全参加と平等」をテーマとした昭和56(1981)年の「国際障害者年」を契機に、障害者施策の総合的推進を図るため、「障害者に関する北海道行動計画」 (以下「前行動計画」という。)を策定した。
前行動計画は、ノーマライゼーションの理念に立脚し、障害者が健常者と同じように社会の一員として生活を営むことができるような社会づくりを目標に、昭和57(1982)年度から平成3(1991)年度までの10年間にわたる障害者対策の基本的な方向と主要な施策を示すものとして、昭和57(1982)年1月に策定したものである。
この10年間の実績については、平成4(1992)年3月に「『障害者に関する北海道行動計画』実績報告書(10年間の実績と課題)」としてまとめたところであるが、この10年間、目的の達成のために施策の総合的な推進を図ってきたところであり、多くの分野において障害者対策の前進があった。
しかしながら、今日、障害者の地域での自立した生活を実現するための一層の取組みが求められており、施策や関係する人々、制度や資源などを結び付けた総合的なサービスの提供など、今後の課題も多い。
また、この間の高齢化の進行、地方における人口の減少等の社会経済情勢の変化、福祉関係8法改正等の国の動き、さらに家庭機能の低下や障害者の自立意識の高まりなど、障害者を取り巻く状況やニーズの変化等、今後の障害者対策を推進する上で踏まえるべき新たな状況も生まれてきている。
このようなことから、前行動計画を引き継ぐ「障害者に関する新北海道行動計画」 (以下「新行動計画」という。)を策定することとした。
2 計画の位置づけ
新行動計画は、昭和63(1988)年に策定された「北海道新社会福祉長期計画」を基礎とし、さらに21世紀へ向けての長期的展望のもとに、北海道においてあるべき今後の総合的な障害者対策の方向と主要施策を示そうとするものである。
また、新行動計画は、国に対してはこの計画を推進するために必要な財政措置や制度の改善などの要望となるものであり、市町村、関係機関・団体、企業及び道民などに対しては、この計画に沿った取組みが行われるよう期待するものである。
3 計画の期間
新行動計画は、平成5(1993)年度から平成14(2002)年度までの10年間を計画期間とする。
第II部
計画の基本的な考え方
1 障害者対策の基本的目標
ノーマライゼーションの実現
前行動計画における「障害者を社会から締め出すことなく、健常者と同等にその基本的権利が保障され、障害者と健常者が共に生活できる社会こそ正常な社会である」というノーマライゼーションの考え方は、新行動計画に引き継がれるべき基本的な目標である。
ノーマライゼーションの考え方における基本的権利とは、何人も侵すことのできない、国民一人ひとりに保障された自由と平等を柱とする権利である。
自由とは、自らの生き方や生活を、自らの意志で選択、決定し、実現できるということであり、平等とは、人間はいかなる属性をもっていても、他から差別されないということである。
障害者にとっても当然これまで保障されていたはずであったこの基本的人権が、今日改めて、本当に障害者に保障されているのかという重い問いかけがなされている。
障害があってもなくても、老いも若きも、誰もが一人の人間としての尊厳の下に、自らの生き方や生活を自分で選択し、決定し、実現できることを、権利として保障していくことが求められている。
このことを障害者の側から見ると、生活の質が確保された「あたりまえの生活」の実現ということである。
障害者と健常者が共に生活できる社会について、「平成3年度道政に関する世論調査」の結果を見ると、「障害をもつ人もできる限り地域で、障害をもたない人と一緒に生活していくべきである」という考え方を、82.5%の道民が支持しており、ノーマライゼーションの理念は、道民の間に着実に浸透してきているものと考えられるが、実生活面では、この理念が根づいているとは言い切れない場面が見受けられることも事実である。
障害者が地域で生活できる条件の整備は、この間着実に進められてきてはいるが、これらは、母子保健法、児童福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、精神保健法、障害者の雇用の促進等に関する法律、さらに老人福祉法、老人保健法などの各法に基づき実施されている。
また、障害者に対するサービス提供の機関も多岐にわたっているところから、事業が連携・関連を保ち、障害者の人生を一貫して、かつ、必要なときに利用しやすい形で福祉、保健・医療等のサービスの提供が行われているとは必ずしもいいがたく、このことが障害者の地域での生活を妨げる一因となっている。
さらに、公共的施設などの福祉環境や公共交通機関の整備等は遅れており、誰もが生活できる地域づくりのために整備すべき条件は多い。
このように、障害者が生活を営む上で地域には多くの壁が横たわっている。 今、私たちが、障害者対策の基本的目標としているノーマライゼーションの考え方は、社会のあり方についての観念的な理念としてではなく、これらの地域社会にある壁をひとつひとつ克服し、誰もが「あたりまえの生活」を実現するために実践すべき目標として、私たちの前にある。そして、この目標は、高齢化社会の中で目標とすべきものと同一である。
今日、「豊かさの実感できる社会」が強調され、このような社会を実現するために様々な施策の展開が見られる。
真に豊かな社会とは、最低限、このような「あたりまえの生活」が誰にも保障される社会であり、障害者対策はその入り口において取り組まれるべきであると考える。
2 障害者対策の基本的考え方
総合リハビリテーションシステムの構築
障害者の自立のためには、障害者自身が社会を構成する一員として権利と義務を有するという自覚の下に、自立意識の向上を図り、その持てる能力を最大限に発揮して社会へ積極的に参加していくよう努力することが重要であるとともに、障害者が地域において自立した生活ができるよう、障害者の一生を通じて必要なサービスが総合的に提供されるような仕組みを整備していくことが不可欠である。
このため、このようなサービス提供の仕組みについて、北海道地方心身障害者対策協議会において検討をいただき、平成3(1991)年3月13日に、「北海道における総合リハビリテーションシステムのあり方について」の報告を受けたところである。
この報告では、自立について「日常生活に他人の手を借りようとも、自らの判断と決定により主体的に行動し、その行動に責任を負うことができるならばそこには自立がある」との考え方に立っている。
また、リハビリテーションの対象である「障害」は、非固定的かつ重層的にとらえるのが一般的であり、障害の一次レベルとしての「機能・形態的障害」、二次的レベルとしての「能力障害」、三次的レベルとしての「社会的不利」のいずれかを、またはいくつかを併せもった状態として理解され、今日、この二次的レベルの障害を軽減するための援助の必要性とともに、三次的レベルとしての社会的不利が、障害者の自立した生活の実現を図る上で大きな問題であるとの認識が強くなってきている。
自立や障害についてのこのような理解は、リハビリテーションが、従来医学的な分野での機能回復訓練と考えられていたものから、医学のみならず、教育、職業、福祉、社会環境等を含んだ、全人間的復権を目指す技術的、社会的、及び政策的対応の総合的体系との考え方で整理されるに至っている。
このような考え方を背景に構想されている総合リハビリテーションシステムとは、「障害のある人が、地域の中で自立した生活を送ることができるよう、福祉、保健・医療、教育、労働などの関連する分野が密接な連携を保ちながら、障害者のライフサイクルの各段階(乳幼児期、学齢期、青・壮年期、高齢期)において、また、各段階を通じて、必要なサービスが有機的、体系的に提供されるような仕組み」のことであり、現在のサービス提供体制に障害者を適合させるのではなく、一人ひとりの障害者の状況、ニーズに合わせて柔軟に、かつ機動的に対応できるサービス提供体制を築こうとするものである。
先の報告では、システムの基本理念として次の12を挙げている。
- 分野を越えた業際的な援助体制
- 障害の各段階に用意される援助体制
- 障害の各段階を通じた援助体制
- 障害の特性に着目した援助体制
- 地域に根ざした援助体制
- 専門家、関係機関、制度の連携・調整
- ニーズの把握と適切なサービスの提供
- 心理的、物理的、距離的バリア(障壁)からの解放
- 障害者の自立意識の向上
- 既存事業、社会資源の有効活用
- 事業の優先順位
- マンパワーの養成と適切な配置
さらに、報告では、このシステムの推進方策として、
- 生涯の各段階(乳幼児期、学齢期、青・壮年期、高齢期)における個別システム事業の 実施、充実
- 地域及び全道域における推進体制の整備
などを提言している。
北海道としては、今後の障害者対策の基本的なあり方を示す総合リハビリテーションシステムの考え方を広く普及し、このシステムの整備を推進していくこととしており、新行動計画は、総合リハビリテーションシステムを構築するための計画として策定するものである。
3 計画における4つの目標
ノーマライゼーションの実現を目指し、総合リハビリテーションシステムを構築するための計画の主要な目標は次の4つである。
- 障害者対策の総合的推進体制の整備
- ライフサイクルを通じた援助体制の整備
- ライフサイクルにおける個別システムの確立
- 地域生活の基盤整備
1 障害者対策の総合的推進体制の整備
総合リハビリテーションシステムは、福祉、保健・医療、教育、労働など関連分野の密接な連携の下に、障害者のライフサイクルを通じて分野を越えた業際的な援助体制を整備するものであることから、全道域の推進体制を充実する。
また、福祉関係8法改正の趣旨などをも踏まえ、地域に根ざした援助体制として整備される必要があることから、市町村における推進体制を整備する必要がある。
さらに、障害者本人及び当事者団体の意見の尊重や主体的な参加を進めていくことは重要である。
2 ライフサイクルを通じた援助体制の整備
障害者に対するサービスは、関係法に基づく専門の機関や施設等の連携を十分に図り、障害の特性や援助を必要とする時期などに応じて、きめ細かく提供される必要がある。 このようなことから、障害者の個々のニーズや障害特性に対応したサービスが提供されるよう、サービス内容や相談活動等について、広域的な調整・連携体制や専門的な支援体制を整備するとともに、身近な市町村において障害者の立場に立った援助体制を整備することが重要である。
3 ライフサイクルにおける個別システムの確立
人生において、固有の課題を有する乳幼児期、学齢期、青・壮年期、高齢期の各段階ごとに、それぞれの課題に対応した個別システムの構築を図る。 また、障害の種類、程度によっても必要とされるサービスが異なることから、可能な限り、障害特性に応じた個別システムの確立を図る必要がある。
4 地域生活の基盤整備
地域において自立した生活を可能とするためには、推進体制や援助体制の整備に加えて、ライフサイクルに共通したハード、ソフト両面での基盤整備が必要である。
このため、道民への普及啓発、地域福祉活動など広く住民の参加による施策の推進、福祉環境、移動・交通手段、福祉機器、住宅などの整備推進、マンパワーの養成などについて取り組む必要がある。
【総合リハビリテーションシステムの構築と4つの目標】
- 障害者対策の基本的目標
-
- 障害者対策の基本的考え方
-
- 計画における4つの目標
- ノーマライゼーションの実現
-
- 総合リハビリテーションシステムの構築
-
- 障害者対策の総合的推進体制の整備
- ライフサイクルを通じた援助体制の整備
- ライフサイクルにおける個別システムの確立
- 地域生活の基盤整備
(※表による展開)
- | [体制整備] | - | [個別施策] |
[基本的な課題] |
1 推進体制の整備
障害者対策の総合的推進体制の整備 |
←連携→ |
4 地域の条件整備
地域生活の基盤整備 |
- |
↑
連携 ↓ |
- |
↑
連携 ↓ |
[具体的な課題] |
2 援助体制の整備
ライフサイクルを通じた援助体制の整備 |
←連携→ |
3 地域における生活の実現
ライフサイクルにおける個別システムの確立 |
第III部
施策の方向と主要施策
施策の方向と主要施策は4つの目標ごとに立てられ、その体系は次のとおりである。
- 目標
-
- 施策の方向
-
- 主要施策
- 障害者対策の総合的推進体制の整備
- 北海道の推進体制
-
- 全道的な推進
- 道庁内の総合的な推進体制
- 障害者の意見の反映
- 障害者関係団体の活動の促進
- 障害者の主体的活動の促進
- 市町村の推進体制
- 全道域での援助体制
- 相談機関等の充実、広域的な調整
- 道立施設等の専門的機能の活用
- 障害者の参加の拡大
- ライフサイクルを通じた援助体制の整備
- 相談窓口の一元化
- 地域におけるケースマネージメント
- 圏域区分に配慮した施設・マンパワー等の配置
- 社会福祉施設の整備
- 保健・医療機関の整備
- 複合的拠点の整備
- 地域における援助体制
- 早期発見の充実
- 早期療育の充実
- 家族への支援
- サービス提供施設等の整備・充実
- 乳幼児期のシステム「早期発見・早期療育システム」
- 障害に配慮した教育の充実
- 交流教育等の推進
- 就学・地域生活の支援
- 学齢期のシステム「社会自立を目指す教育を中心としたシステム」
- 自立した生活への支援
- 就労の促進
- 社会参加の機会拡大
- 青・壮年期のシステム「地域就労・社会参加支援システム」
- 地域での生活の支援
- 保健・医療と福祉の包括的援助体制の整備
- 家族への支援
- 高齢期のシステム「地域における総合的ケアシステム」
- 中途障害者へのリハビリテーションサービス
- 障害特性に配慮した体系的なサービス提供
- 障害特性に配慮したシステム
- 道民に対する普及啓発
- 福祉教育の推進
- 不適当用語の是正
- 障害者との交流機会の拡大
- サービス提供機関等の連携
- 理解と交流の拡大
- ボランティア活動の促進
- 社会福祉協議会等の充実
- 民生委員児童委員・各種相談員活動の充実
- 地域福祉活動の促進
- 公営住宅等の整備
- ケア付住宅等の整備
- 高齢者・障害者向住宅等の整備促進
- 住宅等の整備
- 福祉環境整備要綱等の普及
- 福祉環境整備の促進
- 配慮の行き届いた整備の促進
- 道立施設の整備
- 福祉環境の整備
- 公共交通機関の整備促進
- 道路付帯施設等の整備促進
- 特別な移送手段の確保
- 観光へのアクセス
- 移動・交通手段の確保
- 情報システムの整備
- 多様な情報の提供
- 障害特性に配慮した情報サービスの充実
- 情報・通信の確保
- 情報提供・相談活動の充実
- 給付・貸与制度の整備
- 研究・開発への支援
- 民間サービスの育成・振興
- 福祉機器の普及、研究・開発
- 年金・各種手当制度等の充実
- 各種給付等事業の充実
- 所得保障、経済的支援
- 福祉マンパワーの確保・養成
- 医療従事者の確保・養成
- 市町村の専門職員の確保・養成
- 職員の待遇改善
- マンパワーの確保・養成
- ライフサイクルにおける個別システムの確立
- 地域生活の基盤整備
1 障害者対策の総合的推進体制の整備
1 北海道の推進体制
現状と課題
道内においてノーマライゼーションの定着はいまだ十分とはいえず、また、障害者対策 の推進にあたっては、関係分野間の連携がますます重要になってきていることから、今後は道民の広範な参加を得るよう務めるとともに、福祉、保健・医療、教育、労働など関係分野の連携により、総合的な障害者対策を推進していくことが求められる。
主要施策
(1) 全道的な推進
障害者が社会の一員として地域で自立した生活のできる「人にやさしい北海道」を築くため、行政、関係機関・団体、企業、道民など広く関係者の参加を得て、全道的な推進に努めるとともに、各種の普及・啓発、広報活動などを通じ、広範な道民の参加により総合リハビリテーションシステムの構築を図る。
(2) 道庁内の総合的な推進体制
道庁内の関係部・課が協調して総合的な障害者対策を推進するため、連携・推進組織である「総合リハビリテーションシステム推進会議」(会長 北海道知事、平成4(1992)年1月28日設置)において、総合リハビリテーションシステムの推進に係る共通認識の醸成や関係部局間の調整に努めるとともに、同幹事会、同専門部会における連絡・協議を密接にして、有機的な連携の下で各種施策の企画調整を行うなど、事業の効果的な推進が図られる適切な執行体制の充実に努める。
また、市町村におけるシステムの構築を支援し、広域的な調整を図るため、支庁に関係行政機関の職員からなるリハビリテーションシステム推進会議を設置する。
2 市町村の推進体制
現状と課題
市町村段階での障害者対策の推進については、地域における行政、関係機関・団体等の連携などが十分に図られていないことから、行政や民間の関係者などから成る推進体制を整備し、障害者が必要とするサービスの内容や提供のあり方等について緊密な連絡協議を行うことが求められる。
主要施策
障害者の生活の場である地域において総合リハビリテーションシステムを構築するためには、地域における障害者の状況やニーズ等に的確に対応するとともに、地域にある資源を有効に活用するなど、地域特性に応じたシステムとして整備していく必要がある。
このため、市町村段階において、関係分野間の密接な連携の下に、施策等の検討、提言や総合的なサービス提供の調整を行うリハビリテーションシステム推進会議を設置するなど、地域における推進体制の整備を進める。
この推進体制においては、地域療育推進協議会や高齢者サービス調整チームなどの効果的な運営を図る。
3 障害者の参加の拡大
現状と課題
障害者の社会参加のための当事者活動や条件整備を促進する必要があることから、障害者自身の自立意識の向上や社会活動への積極的な参加を期待するとともに、障害者及び障害者団体の意見の反映や多様な参加の機会の拡大に努め、障害者の主体的な活動を促進していく必要がある。
主要施策
(1) 障害者の意見の反映
障害者自身の意見やニーズを踏まえながら障害者対策を推進するため、障害者の意向の把握に努めるとともに、障害者の各種会議等への参加を拡大する。
さらに、施策の企画・実施にあたっては、障害者自身が意見を述べる機会を確保するとともに、その意見の尊重に努める。
(2) 障害者関係団体の活動の促進
障害者対策は、障害者関係団体の積極的な活動により推進されていくことが重要であり、魅力ある組織づくりや独創的な取組み等への支援を通じて、障害者関係団体の組織の強化と活動の促進を図るとともに、団体の協調・共同した取君みについて奨励する。
(3) 障害者の主体的活動の促進
障害者自身の自立や社会参加への意欲を高めるため、個人やグループなどによる自主的な活動を支援するとともに、見聞を広めるための各種研修事業や交流事業に対して援助し、障害者の主体的活動の促進を図る。
2 ライフサイクルを通じた援助体制の整備
1 全道域での援助体制
現状と課題
地域において福祉、保健・医療などの専門的機能を確保するために、施設サービスや高度な医療サービスなどは広域的な見地から提供する必要があることから、相談機関等の充実や連携による広域的な調整とともに、道立施設等による専門的な支援が必要である。
主要施策
(1) 相談機関等の充実、広域的な調整
専門的な相談に対応する児童相談所、心身障害者総合相談所、保健所、精神保健センター、公共職業安定所等の機能の充実に努めるとともに、全道的な見地から適切な処遇や進路指導等のあり方について、関係機関との連絡や協議を行う機能を心身障害総合相談所に整備し、地域における相談・指導活動を支援する。
また、自己の意志表示能力が十分ではない障害者に対する相談活動を行うとともに、その権利の擁護に努める必要がある。
(2) 道立施設等の専門的機能の活用
地域で提供される福祉、保健・医療のサービス内容を充実するため、先駆的役割を担う道立社会福祉施設や地域の中心医療機関としての地方センター病院や地域センター病院の有する専門的な機能の広域的な活用を図り、地域におけるリハビリテーションシステムの整備を進める。
また、道立社会福祉施設においては、専門的研修や情報提供などその機能を活用した地域への支援の充実に努める。
2 地域における援助体制
現状と課題
障害者のための相談の窓口が分野毎に分かれているため、障害者に対するきめ細かなサービスの提供体制が確立されていないことから、障害者のニーズに沿って適切なサービスが提供されるよう、分野毎に分かれている相談窓口の一元化や地域におけるケースマネージメント機能(個々の障害者へのサービスの調整)の充実が求められる。
主要施策
(1) 相談窓口の一元化
各分野にわたって寄せられる障害者からの相談に総合的に対応し、必要に応じて専門機関を紹介したり関係機関間の調整を行うことなどにより、障害者の持つ問題の解決を図るため、市町村に、コーディネート機能を持った一元的な総合相談窓口の設置を促進する。
(2) 地域におけるケースマネージメント
ライフサイクルのそれぞれの段階において、またライフサイクルを通じて障害者のニーズや障害特性、地域の資源などに応じて、きめ細かい相談・指導等が必要なことから、市町村における総合相談窓口と密接な関係を保ちながら、障害者個々に提供されるべき具体的なサービスについて調整するケースマネージメント機能の整備を進める。
【総合リハビリテーションシステムの推進体制・援助体制(概念図)】
(※表による展開)
- | 全道域 | - | 市町村 |
推進体制 | (道庁における推進体制) 総合リハビリテーション システム推進会議-----専門部会 (支庁の推進体制) リハビリテーション システム推進会議 |
→支援→ | (市町村における推進体制) リハビリテーション システム推進会議 | | | |
---|---|---|---|
援助体制 | (道立施設等による地域支援体制) 相談機関等の全道的連絡・協議 道立施設等による専門的な支援 |
→支援→ | | | 総合的な相談機能 |
3 サービス提供施設等の整備・充実
現状と課題
障害者の地域における生活を支える施設、機関、関係職員などについては、その機能に応じて均衡ある整備や配置が求められているところから、圏域区分に配慮した社会福祉施設、保健・医療機関等の整備やマンパワーの配置とともに、地域において、多面的機能を有する複合的拠点の整備等が必要である。
主要施策
(1) 圏域区分に配慮した施設・マンパワー等の配置
障害者の地域における生活を支え、サービスを提供する各種施設・機関等が、果たすべき機能や需要などに応じて適切に配置されるよう、市町村圏域、複数市町村圏域、あるいは全道圏域など圏域区分に配慮して、必要な施設、機関、機能等の整備を図る。
また、専門的なサービス提供に従事するマンパワーについては、市町村圏域、複数市町村圏域、全道圏域などそれぞれの圏域における必要性に配慮して、配置を促進する。
(2) 社会福祉施設の整備
障害者が地域において自立した生活を送るためには、一定期間入所して訓練などを行う施設や通所により利用する施設、さらには在宅サービスを提供する施設など、多様な施設が求められることから、道内における均衡ある配置に考慮しつつ整備を促進するとともに、障害者の多様なニーズに対応するため、施設の専門的機能の充実を図るほか、施設機能の地域開放を進め、障害者の地域生活を支援する。
また、入所施設については、入所者の自立への支援を促進するとともに、できる限りプライバシーや個人の意思等が尊重され、「あたりまえ」に近い生活が確保されるよう処遇の向上を図るほか、重度、重複、高齢等の障害者に対する指導・訓練・介護の充実に努める。
さらに、道立施設については、全道的、あるいは広域的な見地から、高度で専門的な機能を有するものとして設置されていることから、地域への支援機能を充実し、必要な整備を進める。
(3) 保健・医療機関の整備
ライフサイクルを通じて保健・医療が身近に確保されることが重要なことから、市町村の保健活動を強化するとともに、地域保健活動の拠点としての保健所が担うべき機能について、市町村との役割分担を明確にしながら、体系的な整備を進める。
また、対人保健・医療サービスについては、福祉との連携を重視しながら、機能訓練・訪問指導・訪問看護など迅速かつ効率的なサービスの提供を促進する。
さらに、第一次の保健医療圏における病院・診療所、二次の地域センター病院、三次の地方センター病院の体系的整備を引き続き進めるとともに、保健医療圏に対応したリハビリテーション医療体制の整備を進める。
(4) 複合的拠点の整備
地域における障害者の多様なニーズに応え、広範なサービス提供を行うため、市町村が施設等を整備するにあたっては、障害者や高齢者の利便性を考え、施設機能の集約化や、障害者と高齢者の相互利用を促進するなど、多面的なサービス提供を行う複合的な拠点施設として整備することが望まれる。
4 サービス提供機関等の連携
現状と課題
障害者がライフサイクルの各段階で適切なサービスを継続して受けることのできる体制整備が求められていることから、福祉、保健・医療、教育、労働などのサービス提供機関等の緊密な連携体制を整備する必要がある。
主要施策
障害者に対するサービスは、継続的、かつ一貫して提供される必要があることから、福祉事務所や社会福祉施設、学校、公共職業安定所、保健・医療機関等において、障害者の状況やニーズ等に応じた必要なサービスが提供されるよう、関係機関等の間において円滑な引継ぎなど連携体制を確立する。
また、障害者の現在の状況や医療、訓練などの推移に配慮したサービス提供が必要であることから、プライバシーの保護に配慮しつつ、関係機関等の間における情報伝達のあり方などについて検討し、可能な範囲で情報伝達を促進する。
3 ライフサイクルにおける個別システムの確立
1 乳幼児期のシステム 早期発見・早期療育のシステム
課題
乳幼児期においては、心身の発達の遅れや障害をできるだけ早期に発見しスムーズに療育につなげていく、早期発見から早期療育へのシステムの拡充とともに、障害児や家族への支援の充実が求められる。
主要施策
(1) 早期発見の充実
障害を未然に防ぐため、妊産婦や新生児・未熟児に対する相談指導を充実するとともに、発育や発達の遅れを可能な限り早期に発見するため、乳幼児健康診査の一層の充実に努めるなど、市町村や保健所における母子保健活動を推進する。
また、健康診査の結果、経過観察を必要とする児童に対する継続的な相談や訪問指導に努め、発達の遅れや障害のある児童に対しては、スムーズに療育への移行を図る。
(2) 早期療育の充実
障害児や障害児を抱える家族が、道内のどこに住んでいても、身近な地域で必要な療育や相談・指導が受けられるよう、「障害児早期療育システム」の整備促進に努める。
今後、このシステムの一層の充実を目指し、身近な療育を担う第一次療育圏、一次の療育を専門的に支援する第二次療育圏、全道域において高度で専門的な療育を担う第三次療育圏という圏域間の機能分担に基づき、それぞれの圏域における療育の充実に努めるとともに、地域の実情などにも配慮した圏域等の適切な見直しを行うなど、北海道の広域性や地域特性に応じたシステム整備を推進する。
また、障害幼児の統合保育・幼児教育などを推進するとともに、地域における児童福祉施設や療育関係機関などにおける機能分担の明確化と連携の強化に努め、児童の発達を促す多様な療育の確保と推進体制の整備を促進する。
さらに、関係機関等の連携の下に、乳幼児期から学齢期へのスムーズな移行を図る。
(3) 家族への支援
障害児に係る多様な相談・指導の充実や必要な医療の確保に努めるとともに、養育上の負担を軽減するため、在宅福祉サービスなどによる家族への支援を充実し、障害児が地域で生活できる条件を拡大する。
【概念図】早期発見・早期療育のシステム
(※表による展開)
早期発見システム | - | 早期療育システム | 児童相談所 市町村教育委員会 ----→ (スムーズな移行) |
〔学齢期〕 |
保健・医療 乳幼児健診等の母子保健活動 要観察児童への相談・指導 |
地域療育 推進協議会 児童相談所 ----→ (スムーズな 移行) |
福祉 母子通園センター整備費補助 地域療育センター整備事業 中核的施接機能強化事業 地域療育推進体制整備事業 |
||
(支える機関・施設等) 市町村保健婦 保健所 医療機関 |
←-連携-→ | (支える機関・施設) 母子通園センター 通園施設 保育所 幼稚園 ことばの教室 |
2 学齢期のシステム
社会自立を目指す教育を中心としたシステム
課題
学齢期においては、乳幼児期からのスムーズな移行とともに、障害に配慮した教育の充実や、ノーマライゼーション理念に基づく交流等教育の推進、さらに福祉、保健・医療、労働など関係分野との連携を図りながら指導・訓練の充実を図るなど、就学や地域生活への支援等が求められる。
主要施策
(1) 障害に配慮した教育の充実
障害の状態や発達段階等に応じて、その可能性を最大限に伸ばすため、幼児教育、義務教育、後期中等教育において、教育内容や指導方法の改善・充実を図るとともに、訪問教育や重複障害学級などによるきめ細かな教育の場の確保に努めるほか、児童相談所など関係機関との連携を図りながら北海道立特殊教育センターにおける研究・相談事業等を推進する。
また、障害のある生徒の後期中等教育の充実を図るため、高等養護学校の新設等を進めるとともに、学校施設や設備など教育環境の整備や教職員研修の充実を図る。
さらに、高等教育の機会を拡大するため、学校施設の障害者の利用に配慮した整備とともに、点字による受験など教育における障害特性への配慮等について改善を働きかける。
(2) 交流教育等の推進
障害児の経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てると同時に、地域の人々に正しい障害者観や思いやりのある態度等を育て、ノーマライゼーションの理念に基づく地域社会を実現するために、障害に配慮した教育を充実するとともに、障害のある児童生徒とない児童生徒との交流教育の促進などに努める。
(3) 就学・地域生活の支援
障害の状態を克服し、心身の調和がとれた発達を促進するため、社会福祉施設や保健・医療機関において、学校との連携を図りながら指導・訓練の充実や必要な医療の確保に努める。
また、養育上の負担を軽減するため、在宅福祉サービスの充実など家族への支援を強化するとともに、保護者の経済的負担を軽減するための就学奨励費の充実を図るほか、障害のある児童生徒を持つ両親等を対象に、家庭教育に関する学習機会の提供に努める。
さらに、卒業後の進路を円滑に確保するため、学校や児童相談所、心身障害者総合相談所、公共職業安定所等の連携の下に相談・指導を充実するとともに、企業等における職場実習を促進する。
【概念図】社会自立を目指す教育を中心としたシステム
(※表による展開)
就学を支えるシステム | - | 障害に配慮した教育の充実 | 心身障害者 総合相談所 公共職業安定所 ----→ (スムーズな移行) |
〔青・壮年期〕 |
福祉 保健・医療 療育訓練の充実 福祉施設、保健・医療機関等 の機能の活用 在宅福祉サービスの充実 |
市町村 児童相談所 ←-連携-→ |
教育 障害児義務教育の促進 交流教育等の推進 高等養護学校の整備促進 特殊教育センターの充実 高等教育の機会拡大 |
||
(支える機関・施設) 社会福祉施設 児童相談所 市町村 保健所 医療機関 |
←-連携-→ | (支える機関・施設) 小学校・中学校・高等学校 特殊教育諸学校 特殊教育センター 教育機関 |
3 青・壮年期のシステム
地域就労・社会参加支援システム
課題
青・壮年期においては、地域で自立した生活を営むために必要な各種サービスの提供や一般企業等への就労の促進、スポーツ・文化・レクリエーション活動など、多様な社会参加を拡大するための取組みが求められている。
主要施策
(1) 自立した生活への支援
障害者の生活上の悩みや多様なニーズなどに対応するため、福祉、保健・医療の分野における各種相談機関等の相互に連携のとれた相談活動の充実に努めるとともに、障害の種別に配慮したきめ細かな在宅福祉サービスの提供、社会福祉施設などにおける訓練等の充実や地域におけるリハビリテーション医療の充実などに努める。
また、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイの在宅三施策などの充実とともに、地域福祉の拠点としての社会福祉施設の機能のオープン化やケアに配慮された住宅、共同住宅(グループホーム、共同住居)、地域援助センター、職場適応奉仕員などの設置により地域生活を支援する。
さらに、補装具・日常生活用具など福祉機器の給付、ガイドヘルパーや盲導犬、手話通訳者、各種奉仕員など、障害者の自立を支える各種サービスの充実を図り、地域で生活できる条件を拡大する。
(2) 就労の促進
社会福祉施設、職業能力開発施設等における指導・訓練の充実や、精神薄弱者能力開発センター、視覚障害者のための理療研修センターの設置を促進するとともに、公共職業安定所において、障害者職業センターなどの関係機関との連携の下にきめ細かな職業相談・指導に努めるほか、新たな職域の開発や求職情報の提供、雇用率達成指導、雇用助成措置等の充実などにより、一般企業等への就労の促進を図る。
事業主や従業員の障害者に対する理解の促進や職場環境の整備、労働条件の充実などにより、職場への定着を図るほか、就労が困難になった障害者に対しては、再訓練・教育の実施や必要な福祉サービスを提供する。
また、一般企業等への就労が困難な障害者の就労の場を確保するため、福祉工場、授産施設の分場の整備や地域共同作業所の設置、さらに、授産施設における相互利用の促進を図るなど、福祉的就労の場の拡充により、可能な限り就労を進める。
さらに、開業資金等の貸付など事業経営に対して支援するとともに、親の会や乗親会等の活動を促進するほか、各種資格制度等における障害者への制限を除去するなど、地域における就労による自立を図る。
(3) 社会参加の機会拡大
障害者の日常生活における生活の質を高めるため、スポーツ教室の開催やスポーツ大会への参加の促進など、障害者スポーツの普及に努めるとともに、点字図書、字幕ビデオ等の充実、障害者を対象とした美術展の開催など文化芸術に接する機会の拡大や、勤労青少年学級の開催など文化活動等の充実を図る。
図書館、美術館等の文化施設やスポーツ・レクリエーション施設などの障害者等の利用に配慮した整備を促進するとともに、障害に応じたコミュニケーション手段の確保に努めるなど、社会参加を容易にする条件の整備を図る。
【概念図】地域就労・社会参加支援システム (※表による展開)
自立生活支援システム | - | 就労の促進 | 高齢サービス 調整チーム ----→ (スムーズな移行) |
〔高齢期〕 |
保健・医療 福祉 施設福祉サービスの充実 リハビリテーション医療の充実 在宅三施策の充実 地域援助センターの拡充 ケア付住宅・グループホーム等の 拡充 スポーツ・レクリエーション・ 文化活動の機会拡大 |
市町村 総合相談所 職業安定所 ←-連携-→ |
労働 福祉 職業訓練・指導等の充実 雇用助成措置等の充実 福祉工場の整備促進 福祉的就労の拡充 (授産施設、共同作業所等) 雇用条件の充実 |
||
(支える機関・施設) 社会福祉施設 保健所 医療機関 市町村(福祉事務所) 特殊教育諸学校 |
←-連携-→ | (支える機関・施設) 公共職業安定所 職業能力開発施設等 一般企業 福祉工場 授産施設 地域共同作業所 |
4 高齢期のシステム
地域における総合的ケアシステム
課題
高齢期においては、加齢により身体等の機能が低下しても、住み慣れた地域において可能な限り生活を継続し、生涯を全うできるよう、保健・医療・福祉の各サービスが必要に応じて提供され、しかも在宅サービスと施設サービスが連動して提供される地域におけるケア体制の整備が求められている。
主要施策
(1) 地域での生活の支援
ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイの在宅三施策の充実や「高齢者地域ケア推進特別対策事業」の全道展開などにより、高齢者が住みなれた地域で生活できる条件を整備するとともに、施設の有する介護、看護等の専門的機能の活用を図る。
特に、これらの在宅福祉サービスについては、高齢者と障害者に対し一体的に提供できるよう、提供体制の一元化を図る。
また、高齢者などが住み慣れた地域で、可能な限り安心して自立した生活が続けられるよう、「北海道シルバーハウジング構想」の全道的な普及と実施を促進する。
さらに、在宅生活が困難になった場合の特別養護老人ホーム等の利用、施設から在宅への移行など、必要なサービスが利用者や家族のニーズと状況に応じて、円滑に提供される体制の整備を図る。
(2) 保健・医療と福祉の包括的援的体制の整備
各分野におけるサービスの充実を図るほか、保健医療サービス(機能訓練・訪問指導・訪問看護等)と福祉サービス(ホームヘルプサービス等)の相互に連携のとれた一体的な提供体制とともに、適切な処遇を確保するため、病院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター等の施設間の緊密な連携を深め、治療から訓練への移行など施設間の移動や在宅生活への支援、情報交換等が円滑に行える体制の整備を図る。
このため、「北海道在宅医療ケア事業団(仮称)」を設立し、訪問看護ステーションの整備などを促進するとともに、保健医療関係者と福祉関係者から構成される「市町村高齢者サービス調整チーム」の機能を充実するほか、道レベルの「高齢者サービス総合調整推進会議」や保健所レベルの「保健所保健福祉サービス調整推進会議」による市町村に対する支援を充実する。
(3) 家族への支援
寝たきり老人、痴呆性老人等の介護を行う家族の負担軽減のため、在宅福祉サービスの充実とともに、介護・福祉機器の普及や研究開発への支援、住宅改造への援助の充実を図り、生活環境の整備を促進する。
【概念図】地域における総合的ケアシステム (※表による展開)
地域生活支援システム | - | 保健・医療と福祉の包括町援助体制 |
福祉 在宅三施策の充実 高齢者地域ケア推進特別対策事業 老人福祉施設の活用 家族への支援 |
高齢者 サービス調整チーム 保健所 ←-連携-→ |
保健・医療 保健・医療サービスと福祉サービスの 一体的な提供 病院・老健施設・福祉施設の連携 機能訓練・訪問指導・ 訪問看護の充実 |
(支える機関・施設) 市町村 老人福祉施設 在宅介護支援センター 高齢者生活福祉センター等 |
←-連携-→ | (支える機関・施設等) 市町村保健婦 保健所 医療機関 老人保健施設 訪問看護ステーション |
5 障害特性に配慮したシステム
課題
障害の特性などによっては特に配慮されたサービスが必要とされることから、中途の視覚・聴覚障害者等に対して適切なリハビリテーションサービスを確保・充実するとともに、精神障害者や特定疾患患者などに対しては医療・福祉サービスの体系化に努めるなど、障害特性に配慮した個別の援助システムの整備が求められている。
主要施策
(1) 中途障害者へのリハビリテーションサービス
人生の途中で病気や事故などにより、視覚、聴覚、肢体等に障害を持つに至った中途障害者については、本人や家族にとって障害の受容が第一に必要なことから、相談・指導を充実することにより自立意欲への支援を行うとともに、歩行、日常生活動作、コミュニケーション、職業などの必要なリハビリテーションを行うことにより、社会復帰を促進する。
また、中途障害者は、医療機関における治療やリハビリテーションなどを経て地域での生活に移行することになるため、治療・訓練の段階から社会的自立のために必要な情報提供を行い、就労や地域喚活に必要なサービスにつなげていくなど、医療、福祉、労働の各分野が連携し、適切なサービスの円滑な提供に努める。
(2) 障害特性に配慮した体系的なサービス提供
障害者が必要とするサービスの内容は、障害の種類や程度などによって異なるため、相談窓口等において障害特性に応じたきめ細かな情報提供を行うとともに、障害の特性に配慮したサービスの提供に努める。
このような中で、特に精神障害者と特定疾患(難病)患者については、その障害の特性に配慮し、次のような体系的なサービス提供体制の整備を図る。
【精神障害者】
精神障害者は、医療的ケアを必要とするとともに、社会生活を送る上での援護や福祉サービスを必要とすることから、保健所や精神保健センターにおける相談・指導体制を充実するとともに、医療機関のデイ・ケア施設の整備促進等により医学的リハビリテーションの充実に努めるほか、援護寮、福祉ホーム、共同住居(グループホーム)や授産施設、地域共同作業所の整備促進など福祉的サービスの充実に努める。
また、社会復帰・社会参加を推進するため、地域の保健所、病院、社会復帰施設、公共職業安定所、市町村及び関係団体などのネットワーク化とともに、保健所のコーディネート機能や精神保健センターの総合技術センターとしての機能の充実を図る。
さらに、他の障害分野における福祉活動との積極的な交流・連携に努め、道民の精神障害者に対する正しい理解の促進を図るとともに、民間社会福祉活動の充実や市町村における取組みを奨励、助長する。
【特定疾患(難病)患者】
特定疾患(難病)は、原因が不明、治療方法が未確立で後遺症を残す場合が多く、また患者の日常生活においても、経済的、精神的に困難を抱える場合が多い。
このため、疾病の原因、治療方法の調査研究、専門医療機関の充実とともに、医療費の公費負担による治療研究の対象疾患の拡大や関係団体への支援の充実の努める。
また、専門医療機関は都市部に集中するなど整備状況に地域的偏在がみられることから、高度・専門医療機関を担う地方センター病院の整備を図るなど、地域における医療体制の整備充実に努めるとともに、専門医による訪問検診、保健婦による訪問指導・相談の充実など在宅患者対策を進める。
さらに、その身体状況等を勘案し、必要に応じた福祉サービスの提供に努めるとともに、他の障害分野における福祉活動との積極的な交流・連携に努め、道民の難病患者に対する正しい理解を促進する。
4 地域生活の基盤整備
1 理解と交流の拡大
現状と課題
地域住民の障害者に対する理解や実際の生活場面でのノーマラゼーションの定着はいまだ十分ではないことから、障害者に関する理解と認識を深めるために、ノーマライゼーションや総合リハビリテーションシステムの考え方について普及啓発を図るとともに、地域住民と障害者との日常的な交流機会の拡大に努め、具体的な生活場面において理解を深めることが極めて重要である。
主要施策
(1) 道民に対する普及啓発
障害者を取り巻く状況や障害者対策の基本的な考え方等について広く道民に普及啓発するため、啓発誌を発行・配布するとともに、広報誌、テレビ、ラジオ、新聞などマスメディアの活用による広報活動を進めるほか、「ノーマライゼーション研究センター」を中心とした調査研究活動等の充実に努める。
さらに、障害者が地域で生活するための多様な条件の整備について、桶係業界・団体や企業などへの普及・啓発を充実する。
(2) 福祉教育の推進
障害者について理解と認識を深めるため、生涯学習の様々な機会をとらえて、障害児をもつ親、関係者、一般道民に対する学習の拡大に努めるとともに、各種教材の充実を図る。
また、福祉教育は、できるだけ早期に、かつ障害児(者)との実際の交流経験を通じて行われる必要があることから、保育や学校教育の場における交流機会の拡大などに努めるとともに、「福祉読本」の活用を促進する。
(3) 不適当用語の是正
障害者への偏見を助長する差別的な言葉や不適切な表現については、使用されないよう啓発、指導に努める。
また、現在使用されている「精神薄弱」の用語については、適切な表現に改めるよう県討を進める。
(4) 障害者との交流機会の拡大
障害者に対する正しい理解を進めるため、「障害者に日」などの各種行事を通じた交流や地域において特色ある多様な交流機会の拡大を図るとともに、国際交流の促進に努める。 また、交流事業の実施にあたっては、障害者の地域社会への広範な参加という考え方に立ち、障害者のために特別に企画された取組み等への参のみならず、広く住民を対象としたイベントや一般的な取組み等へ障害者が日常的に参加できる条件の整備に努める。
2 地域福祉活動の促進
現状と課題
地域住民の広範な参加による地域に根づいた福祉活動の振興が求められていることから、ボランティア活動の促進や地域福祉の推進組織としての社会福祉協議会の組織強化とその活動の活性化を図り、地域が一体となった福祉活動を促進する必要がある。
主要施策
(1) ボランティア活動の促進
労働時間の短縮、余暇時間の拡大の中で、住民のボランティア活動の振興を図るため、ボランティアの発掘、育成や地域リーダーの養成に努めるとともに、関係団体の連絡調整やボランティア活動に関する広報、情報の収集・提供を促進するほか、「ボランティア基金」の造成などを進め、ボランティア活動の積極的な促進を図る。
(2) 社会福祉協議会等の充実
地域における福祉活動の中心である社会福祉協議会の組織強化とその活動の活性化を図り、関係機関・施設・葵体・企業等のネットワークの形成に努めるとともに、社会福祉事業の総合的な企画や実施、各種福祉情報の収集・提供や福祉関係職員等への研修、さらに在宅福祉を推進するため各種サービスの提供などを充実する。
また、民間の社会福祉活動を支える共同募金活動を促進する。
(3) 民生委員児童委員、各種相談員活動の充実
地域における身近な相談者としての民生委員児童委員や身体障害者相談員、精神薄弱者相談員など各種相談員の活動のあり方は地域福祉を推進する上で大切であることから、障害者の立場に立った助言や援助などの役割を担うことができるよう、各種研修会を充実するとともに、関係機関・団体との連携により適切な活動の促進を図る。
3 住宅等の整備
現状と課題
障害者が地域において自立した生活を営む基盤である住宅の確保は重要であることから、障害者の生活に配慮した住宅の整備や住宅に付随した介助等のケア体制の整備が求められる。
主要施策
(1) 公営住宅等の整備
住宅に困窮している低額所得の心身障害者世帯に対し良質の住居を低廉な家賃で賃貸するため、心身障害者の生活に配慮した心身障害者世帯向け公営住宅や身体障害者向け雇用促進住宅の需要を把握し、立地上の利便性や地域住民との交流に配慮しながら整備促進する。
また、「北海道シルバーハウジング構想」に基づく高命者向け公営住宅の整備に努める。
(2) ケア付住宅等の整備
重度身体障害者ケア付住宅、共同住宅(グループホーケ・共同住居)、福祉ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)、高齢者生活福祉センター等の整備を促進し、障害者や高齢者が日常生活を営む上で必要とする援助に配慮された住宅等の整備を促進する。
(3) 高齢者・障害者向住宅等の整備促進
「高齢化対応番宅設計指針」の普及、住宅改造等についての相談体制の整備、住宅整備資金貸付事業等の充実などにより、障害者・高齢者が安全で快適に居住できる住宅の普及を図るとともに、福祉機器の効果的な活用をも図りながら住宅の改造などを促進する。
4 福祉環境の整備
現状と課題
障害者が地域で生活するためには、地域の公共的施設や道路などの環境整備が不可欠であるが、現状では十分な状況とはなっていないことから、さらに福祉環境の整備について普及啓発を強めるとともに、整備を促進するための効果的な取組みが緊要となっている。
主要施策
(1) 福祉環境整備要綱等の普及
障害者や高齢者など誰もが利用しやすい公共的施設や公園、道路などの整備を進めるため、「北海道福祉環境整備要綱」について、設置者、建築技術者などへの広報活動や普及啓発、研修等に努める。
また、積雪寒冷な北海道の風土に対する配慮など、より適切な整備を進めるため、「北海道福祉環境整備要綱」の見直しを行うとともに、適切な整備例などを盛り込んだマニュアルを普及する。
(2) 福祉環境整備の促進
福祉環境の整備を促進するため、「北海道建築基準法施行条例」の改正を目指すとともに、さらに、実効ある福祉のまちづくりを進めるための方策について検討する。
(3) 配慮の行き届いた整備の促進
公共的施設や道路、公園等について、車椅子使用の障害者、聴覚障害者、視覚障害者など、障害の種類や特性に対する配慮が行き届いた、より適切な整備を進めるため、「福祉環境アドバイザー」の活用を促進するとともに、整備にあたっては障害者など利用者の意見が反映されるよう設置者等へ要請する。
(4) 道立施設の整備
道の設置する建築物については、「北海道福祉環境整備要綱」等を踏まえ、施設の性格・規模等に応じて整備すべき内容などについて検討し、障害者等に配慮した改善、整備に積極的に努め、福祉環境の整備を推進する。
5 移動・交通手段の確保
現状と課題
障害者や高齢者の利用に配慮した公共交通機関等の整備は遅れており、今後は住宅や公共的施設の整備のみならず、住宅と施設などをつなぐ移動・交通手段の整備が重要な課題となっている。
主要施策
(1) 公共交通機関の整備促進
駅舎等建築物については、「北海道福所環境整備要綱」に沿った整備が行われるよう設置者に協力を求めるとともに、鉄道・バスなどにおける改造車両や適切な案内表示等の導入を促進し、公共交通機関の整備の充実を図る。
(2) 道路付帯施設等の整備促進
歩道の段差切下げや誘導ブロックの敷設、音響式信号機の整備を進めるとともに、歩道除排雪の充実に努める。
また、視覚障害者や車椅子使用の障害者などの移動の妨げとなる放置自転車などについて、住民に対する啓発と指導に努める。
さらに、高速道路のパーキングエリアや一般道路沿いの駐車帯、観光地などにおいて、株椅子使用の障害者などが利用できるトイレなどの整備を促進する。
(3) 特別な移送手段の確保
現状では障害者が公共交通機関を利用する上で制約が多いことから、福祉タクシー、福祉バス、ハンディキャブなどの特別な移送手段が必要なため、車両購入や交通費の助成に努める。
また、社会喚活を営む上で乗用車が重要な移動手段となっている障害者に対して、自動車改造や自動車運転免許の取得などの助成に努める。
(4) 観光へのアクセス
障害者や高齢者が気軽に旅行などを楽しむことができるよう、観光施設の「北海道福祉環境整備要綱」に沿った整備を促進するとともに、リフト付き観光バスなどの導入を事業者に要請するほか、障害者の利用に配慮された施設など観光情報の提供に努める。
6 情報・通信の確保
現状と課題
広域な北海道においては、地域によって障害者が設する情報に格差があることから、道内のどこに住んでいても均質で一定程度のサービスが提供されるよう、情報提供体制の整備などが必要である。
主要施策
(1) 情報システムの整備
福祉、保健・医療に関する制度、在宅福祉や施設福祉サービスのメニュー、専門機関、福祉機器などについての情報を市町村の相談窓口、関係機関・団体などに提供する「医療福祉INS」等の整備により、情報提供のネットワークを形成する。
また、コンピューターを利用した情報収集、伝達、提供のシステムについては、情報の種類や利用目的・形態等に応じて、プライバシーの保護に留意しながら、その導入を促進する。
さらに、ひとり暮らしの障害者や高齢者等に、急病や事故などの突発的な事態が発生した場合に対応できる緊急通報システムの整備を促進する。
(2) 多様な情報の提供
障害者などへの身近な情報提供の手段として、各種サービスメニューを紹介する「福祉ガイド」や車椅子使用者用トイレ等の設置に関する「福祉マップ」、さらに福祉機器の品目や制度などについての「福祉機器ガイドブック」など、多様な情報提供に努める。
(3) 障害特性に配慮した情報サービスの充実
点字広報や声の広報、点字出版物やテープ、字幕や手話入り放送、さらにひらがなや絵記号等によるわかりやすい表記など、障害特性に配慮した情報提供に努める。
また、公共的施設における電光表示や音声放送の適切な実施、車椅子使用者用の公衆電話、ファックスの設置などを促進する。
7 福祉機器の普及、研究・開発
現状と課題
福祉機器は障害者や高齢者の自立を助け、介助者の負担軽減のために重要であるが、十分な活用が図られておらず、今後、利用者の状態やニーズに合った機器を容易に利用できる体制の整備が求められる。
主要施策
(1) 情報提供・相談体制の充実
福祉機器は機能的な損傷を補う義肢装具、移動やコミュニケーションなどを助ける自立のための機器、介助のための機器等、広範な分野において多種多様なものがあり、かつ、補装具、日常生活用具、自助具等の制度が複雑となっているため、品目や適用制度等について適切な情報提供と相談に応ずる体制を整備する。
また、機器展示の充実や在宅介護支援センターなどの有効な活用を図るとともに、関係職員への研修に努める。
(2) 給付・貸与制度の整備
補装具、日常生活用具等の給付・貸与については、市町村において、地域の障害者や高齢者のユーズに合わせ主体的に取り組まれる必要があることから、制度間の調整を図るとともに、市町村や取扱業者との連携を図りながら、給付・貸与制度の充実を図る。
(3) 研究・開発への支援
積雪寒冷地に適合する車椅子等の開発や障害の状態にあわせた機器の改良など、福祉機器の研究開発を促進するとともに、障害者や高齢者など利用者の福祉機器に対するニーズの把握や研究開発情報の収集・提供を行う。
(4) 民間サービスの育成・振興
福祉機器の普及・研究開発は民間活動に負うところが大きいので、良質な福祉機器サービスの提供を図るため、官民の役割分担を明確にした上で、福祉機器メーカー、補装具業者など民間事業者の健全な育成に努める。
8 所得保障、経済的支援
現状と課題
障害者の就労機会が制約されている中、障害者に対する所得保障や経済的支援は、障害者の地域での自立した生活を可能とする上で、最も基本的な条件である。
主要施策
(1) 年金・各種手当制度等の充実
障害者が地域において自立した生活を送ることができるよう、国民年金などの各種年金制度や特別障害者手当等の各種手当制度、さらに税制上の優遇措置等の充実を図る。
(2) 各種給付等事業の充実
障害者の生活の安定を図るため、育成医療、更生医療、重度心身障害者医療等の医療給付事業など、障害を事由とする各種給付事業の充実に努める。
9 マンパワーの確保・養成
現状と課題
出生率の低下や高齢化の進行の中で、福祉や保健・医療等に従事するマンパワーが不足していることから、マンパワーの量的な確保と質的な養成を計画的に進めていく必要がある。
主要施策
(1) 福祉マンパワーの確保・養成
高齢化の進行の中で障害者や高齢者の福祉を支えるためには、社会福祉士、介護福祉士、ホームヘルパーなど様々な職種の多くの職員が必要となることから、福祉人材センターの活用や就学資金の貸付など養成機関等を通じた人材の確保に努めるとともに、福祉関係職員に対する計画的、体系的な研修などを通じて職員の資質の向上を図る。
(2) 医療従事者の確保・養成
医師、保健婦、看護婦、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)など医療に従事する広範な専門職員を確保するため、養成機関の充実や潜在している人材の有効活用に努めるとともに、福祉と連携した質の高い保健・医療を担う人材を養成するため、研修機会の拡大等による専門技術の向上や福祉知識の習得などの支援に努める。
(3) 市町村の専門職員の確保・養成
障害者にとって必要なサービスが身近に提供されるよう、市町村において専門職員の採用を促進するとともに、コーディネートやケースマネージメントが可能な職員の養成を促進する。
(4) 職員の待遇改善
生産年齢世代の減少の中で、福祉や保健・医療の職場に、資質の高い職員を確保するとともに定着を図るため、労働条件や給与等の待遇改善に努める。
第IV部
計画の推進
1 計画策定の趣旨
- この計画は、行政はもとより、住民、関係団体・施設、企業などが一体となって推進する。
- この計画の推進にあたっては、障害者の実態やニーズ、関係団体等の意向などの的確な把握に努めるとともに、社会経済情勢や緊急度等を勘案しながら、段階的、かつ積極的に施策の展開を図る。
- この計画は、平成5(1993)年度から10年間にわたる長期的な計画であり、計画期間における社会経済情勢の変化や障害者を取り巻く状況の変化などに柔軟に対応していく必要があることから、「総合リハビリテーションシステム推進会議」(平成4(1992)年1月28日設置)においてフォローアップするなど、計画の実効ある推進に努める。
◆資料◆
北海道の障害者
年度\区分 | 身体障害児・者 | 精神薄弱児・者 | 寝たきり老人・ 痴呆性老人等 |
精神障害者 | 特定疾患患者 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
昭和 57年度 |
139,625 | 17,000 | 21,140 | 73,000 | 6,574 | 257,339 |
平成 4年度 |
212,829 | 24,900 | 33,923 | 73,000 | 39,489 | 384,141 |
* 札幌市を含む。また、各区分には入院、入所者を含み、各区分間の重複がある。
* 身体障害児・者は、昭和57年3月31日及び平成4年3月31日現在の身体障害者手帳交付台帳による。
* 精神薄弱児・者は、「精神薄弱者実態調査」(昭和46年、厚生省実施)及び「精神薄弱児(者)福祉対策基礎調査」(平成4年、厚生省実施)の結果に基づく推計による。
* 寝たきり老人、痴呆性老人は、昭和57年10月1日及び平成4年10月1日現在の特別養護老人ホーム人所者数4,743人及び13,950人に各年同日現在の在宅の寝たきり老人数6,932人及び5,650人(市町村報告による。民生部老人福祉課、生活福祉部社会老人課調べ)と昭和60年に高齢者問題研究協会が実施した「高齢者の生活と健康に関する実態調査」(二次調査)の結果による痴呆性老人の出現率に、在宅の者の率を乗じた推計値9,465人及び14,323人を加えた数値である。
[S57.10.1 65歳以上人口 483,861人 × 痴呆性老人出現率 3.39% × 在宅率 57.7% = 9,464.46人 ■ 9,465人]
[H4.10.1 65歳以上人口 732,253人 × 痴呆性老人出現率 3.39% × 在宅率 57.7% = 14,323.08人 ■ 14,323人]
* 精神障害者は、「精神衛生実態調査」(昭和38年、厚生省実施)結果の有病率に基づく推計による。
- 各保健所で把握している精神障害者数は、昭和56年12月31日現在、59,442人、平成3年12月31日現在66,954人であり、この数値を用いた場合の道内の障害者数は昭和57年度は243,781人、平成4年度は377,054人となる。
- なお、59,442人及び66,954人は保健所把握数であり、精神障害者総数とは異なる。
* 特定疾患患者は、昭和57年3月31日及び平成4年3月31日現在の医療受給者証交付数による
平成5年2月12日
北海道知事 横路孝弘 様
北海道地方心身障害者対策協議会
会長 河邨文一郎
「障害者に関する新北海道行動計画」(案)についての意見
当協議会は、本日、道が策定されました「障害者に関する新北海道行動計画」(案)について、審議を行ないました。
その結果、次のとおり意見を取りまとめましたので、北海道がこの意見に基づいて、本計画の実施に十分配慮され、今後さらに障害者対策の推進に努力されるよう、意見具申します。
記
- この計画(案)は、総合リハビリテーションシステムの構築を目指すとともに、各分野にわたる必要な対策を盛り込んでおり、適切なものと考える。
- この計画を広く普及され、市町村、関係団体、企業、道民等の広範な協力の下に、全道的な推進が図られるよう努められたい。
- この計画の実施に当たっては、障害者本人や関係団体等の意見の十分な反映に努められたい。
- 北海道においては、関係部局間のより密接な連携を図り、目標達成のために、積極的な推進に努められたい。
- 「アジア太平洋障害者の十年」の決議を踏まえ、北海道においても、これまでの実績等をも勘案し、これらの地域との交流・協力関係に配慮されたい。
総合リハビリテーションシステム推進会議設置要綱
(設置目的)
第1 障害のある人が、地域の中で自立した生活を送ることができるような社会づくりを目指す「総合リハビリテーションシステム」の構築のため、庁内関係部局等の共通認識の下に密接な連携を保つとともに、効果的に各種事業を推進することを目的とする。
(協議事項)
第2 推進会議は、次の各号に掲げる事項について協議する。
- 総合リハビリテーションシステム推進に係る庁内の共通認識の醸成
- 総合リハビリテーションシステム推進に係る関係部局間の調整
- 総合リハビリテーションシステム推進に係る各種事業の企画及び関係部局の実施する各種事業の効果的推進
- 総合リハビリテーションシステムに係る各種情報の交換
- その他必要な事項
(構成)
第3
- 推進会議は、知事及び知事の指名する副知事並びに別表1に掲げる委員をもって構成する。
- 推進会議の会長は知事とし、知事の指名する副知事を副会長とする。
- 会長に事故あるときは、副会長がその職務を代理する。
- 推進会議に幹事会を置き、別表2に掲げる幹事をもって構成する。
- 幹事会は、生活福祉部次長を代表幹事とし、代表幹事に事故あるときは、あらかじめ代表幹事が指名する幹事が、その職務を代理する。
(会議)
第4 推進会議は会長が、幹事会は代表幹事が招集する。
(専門部会)
第5
- 推進会議に別表3に掲げる専門部会を設け、個別の課題について協議する。
- 専門部会の構成については、別に定めるものとし、部会長は構成員の互選により選出する。
- 会長又は代表幹事が必要と認めるときには、別表3に掲げる部会以外の専門部会を設けることができる。
- 専門部会は部会長が招集する。
(関係者の出席)
第6 会長、代表幹事及び部会長は、必要があると認めるときには、別表1及び2並びに別に定める専門部会構成員以外の者の出席を求めることができる。
(庶務)
第7 推進会議の庶務は、生活福祉部障害福祉課において処理する。
(その他)
第8 この要綱に定めるもののほか、推進会議に関する事項は、会長が別に定める。
附則
この要綱は、平成4年1月28日から施行する。
附則
改正後の要綱は、平成4年6月30日から施行する。
別表 1
(委員)
総務部長
企画振興部長
生活福祉部長
保健環境部長
商工労働観光部長
土木部長
住宅都市部長
教育庁生涯学習部長
警察本部交通部長
別表 2
(幹事)
生活福祉部 次長(代表幹事)
総務部
- 総務課長
- 情報管理課長
企画振興部
- 総務課長
- 企画室参事
- 交通対策課長
- 地域調整課長
生活福祉部
- 総務課長
- 社会老人課長
- 障害福祉課長
- 児童家程課長
- 高齢化対策室参事
保健環境部
- 総務課長
- 地域医療課長
- 保健予防課長
- 成人保健課長
商工労働観光部
- 商工労働企画課長
- 職業能力開発課長
- 職業安定課長
土木部
- 総務課長
- 道路課長
- 空港港湾課長
住宅都市部
- まちづくり推進室参事
- 建築指導課長
- 住宅課長
- 工営課長
教育庁生涯学習部
- 学校管理課参事
- 学校教育課長
- 社会教育課長
警察本部交通部 交通企画課長
別表 3
(専門部会)
福祉環境部会
移動交通部会
教育福祉部会
労働福祉部会
保健・医療福祉部会
北海道地方心身障害者対策協議会条例
(趣旨)
第1条 この条例は、心身障害者対策基本法(昭和45都市法律第84号)第30条第2項の規定に基づき、北海道地方心身障害者対策協議会(以下「協議会」という。)及びその委員に関し必要な事項を定めるものとする。
(組織)
第2条 協議会は、委員20人以内で組織する。
(委員)
第3条
- 委員は、道の職員、関係行政機関の職員及び学識経験者のある者のうちから、知事が任命する。
- 学識経験のある者のうちから任命される委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
- 学識経験のある者のうちから任命される委員は、再任されることができる。
(会長)
第4条
- 協議会に会長を置く。
- 会長は、委員が互選する。
- 会長は、協議会を代表し、会務を総理する。
- 会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
(会議の招集)
第5条 協議会の会議は、会長が招集する。
(専門委員)
第6条
- 協議会に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員を置くことができる。
- 専門委員は、学識経験のある者のうちから、知事が任命する。
- 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。
(会長への委任)
第7条 この条例に定めるもののほか、協議会に関し必要な事項は、会長が協議会にはかって定める。
附則
この条例は、公布の日から施行する。
北海道地方心身障害者対策協議会委員名簿
任期:平成3年11月1日~平成5年10月31日
委員名は平成5年2月12日現在
赤坂 勝 北海道身体障害者福祉協会副会長
井馬 煌一 社会福祉法人陵雲厚生会理事
上野 博 北海道経営者協会専務理事
奥村 晶子 北海道教育大学札幌分校教授
忍 博次 北星学園大学教授
○河邨文一郎 札幌形成外科病院名誉院長
近藤 弘子 おしま学園園長
曽我 則明 有限会社曽我プリント代表取締役
中野 修 北海道医師会副会長
弘津 良光 北海道精神薄弱者育成会副会長
皆川 智子 札幌医科大学衛生短期大学部講師
谷川原治之 株式会社帝織北海道代表取締役
吉田 重子 北海道札幌盲学校教諭
小島 廸彦 北海道労働基準局長
堀越 一彦 厚生省北海道地方医務局長
中川 徳男 北海道市長会(砂川市長)
金澤 精一 北海道町村会(七飯町長)
厚谷 純吉 北海道保健環境部長
小本 毅 北海道教育庁生涯学習部長
永井 信 北海道生活福祉部長
(○印 会長)
北海道地方心身障害者対策協議会計画策定専門委員会名簿
[任期:平成4年6月26日~平成5年3月31日]
足立 心一 東日本学園大学看護福祉学部助教授
石田 徹 (株)岡田屋勤務
伊藤たてお 財団法人 北海道難病連事務局長
○井馬 煌一 社会福祉法人 陵雲厚生会理事
大内 高雄 美唄市在宅老人デイ・サービスセンター施設
近藤 弘子 おしま学園園長
相馬 千恵 北海道当別保健所保健婦係長
中川 徳男 北海道市長会(砂川市長)
福士 憲昭 北海道立太陽の園 第一青葉学園指導課長
皆川 智子 札幌医科大学衛生短期大学部講師
横山 真 北海道立高等盲学校校長
我妻 武 メビウスの会
(○印 座長)
主題:
障害者に関する新北海道行動計画
発行者:
北海道
発行年月:
平成5年2月
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