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宮崎県障害者施策の新長期計画

№2

みんなが生き生きと暮らせる社会をめざして

宮崎県

第5節

雇用・就労の促進

第5節 雇用・就労の促進

1 雇用促進対策の充実

(1)雇用促進対策の充実

[現状と課題]
 障害者の就労を通した社会参加を促進し、安定した生活基盤づくりを図るため、障害者がそれぞれの適性と能力に適合した職業に就くことができるよう、従来から、各種の障害者雇用対策を推進してきたところです。
 その結果、関係者の理解も深まり、障害者自身の自立意識の高まりと相まって、障害者雇用率は年々着実に上昇しています。
 しかしながら、一方では雇用率未達成企業も多数あり、また、産業別・規模別の格差もかなり見られるため、今後も関係者の理解と協力を求めながら、これらの問題点の改善を図っていく必要があると考えられます。

表5-1 〈障害者雇用状況の推移〉

昭和63年 平成元年 平成2年 平成3年 平成4年 平成5年
企業数 367 383 383 422 463 465
雇用障害者数 934 1,036 1,086 1,202 1,377 1,463
うち身体障害者 894 974 1,010 1,103 1,254 1,286
雇用率 1.42 1.52 1.56 1.61 1.73 1.84
達成企業割合 53.7 55.9 59.3 57.6 61.8 62.8

※法定雇用率…1.6%(63人以上規模事業所)

[主要施策]

  1. 障害者雇用に関する啓発を推進します。
    • 障害者雇用促進激励大会の開催及び障害者雇用優良事業所等の表彰
    • 街頭におけるキャンペーン、キャラバン隊による啓発活動
    • 障害者雇用促進展の開催
  2. 障害者雇用対策の推進に努めます。
    • 事業主に対する身体障害者雇用率の達成指導
    • 身体障害者雇用納付金制度の周知徹底
    • 各種助成金制度(表5-2)の周知徹底
    • 第3セクター方式等による重度障害者多数雇用事業所の設置促進
  3. 障害者が可能な限り一般雇用に就くことができるよう、重度障害者や知的障害者に最大の重点を置き、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講ずることを基本に、その雇用・就業の場の確保に向けた施策を推進します。
    • 身体障害者については、職場適応訓練制度、特定求職者雇用開発助成金制度等の諸制度の活用により、雇用の拡大・促進に努めます。また、視覚障害者の職域拡大に向けた啓発を推進します。
    • 知的障害者については、障害者職業センターや養護学校等の関係機関との連携を図り、諸制度の活用により、雇用の促進に努めます。
    • 精神障害回復者等については、精神保健センター等の関係機関との連携の下、諸制度の活用により、雇用の促進に努めます。
    • コミュニケーションを図る上で困難を有する視覚障害者、聴覚障害者等について、人的援助のための助成金制度の活用を推進します。
  4. 事業主はもとより、労働組合等の関係者にも協力を得ながら、障害者の雇用促進対策に一体となって取り組みます。
  5. 難病患者等についても、職務に関係のない身体的条件を採用選考の際に求めたり、選考基準としたりすることなく、公正な採用選考基準を確立するよう事業主に対する指導を行います。また、既往症についての正しい理解が得られるように、関係する行政機関、医療機関等との連携を密にして、事業主の指導に努めます。
  6. 現に雇用されている障害者については、その雇用の実情を踏まえ、雇用の継続を図るとともに、労働条件面を含む職業生活の質の向上が図られるよう諸条件の整備に努めます。

表5-2 〈障害者雇用対策に関する各種助成金制度〉

助成金 対象となる障害者
1.障害者作業施設設置等助成金 身体障害者、知的障害者、精神障害回復者等(※公共職業安定所の紹介による者に限る。以下この表において同じ。)、重度身体障害者である短時間労働者、重度知的障害者である短時間労働者
2.重度障害者職場適応助成金 重度身体障害者、重度知的障害者、45歳以上の身体障害者、精神障害回復者等、重度身体障害者である短時間労働者、重度知的障害者である短時間労働者
3.障害者作業設備更新助成金 「1.障害者作業施設設置等助成金」の対象者と同じ
4.障害者処遇改善施設設置等助成金 「1.障害者作業施設設置等助成金」の対象者と同じ
5.障害者福祉施設設置等助成金 「1.障害者作業施設設置等助成金」の対象者と同じ
6.重度障害者特別雇用管理助成金 ・下記のイ~ハに関する多様な事項について、それぞれの事項ごとに対象となる障害者が定められている。なお、事項によっては、対象となる障害者のうち、「4級以上の内部障害者」、「てんかん性発作を伴う知的障害者」といったような障害の種類及び等級などで区分されているものもある。
  • イ.通勤対策等(住宅の新築又は賃借、通勤自動車の購入又は賃借ほか)
  • ロ.手話通訳担当者等(手話通訳者・健康管理に必要な医師の委嘱、職業コンサルタントの配置)
  • ハ.継続雇用
7.重度障害者多数雇用事業所施設配置等助成金 「1.障害者作業施設設置等助成金」の対象者と同じ
8.障害者能力開発助成金 「1.障害者作業施設設置等助成金」の対象者と同じ
9.障害者雇用支援センター助成金 支援対象障害者
10.中途障害者作業施設設置等助成金 身体障害者、重度身体障害者である短時間労働者
11.重度中途障害者職場適応助成金 重度身体障害者、45歳以上の身体障害者、重度身体障害者である短時間労働者

2 就職援護措置の充実

(1)職業相談・指導の充実及び職場適応訓練の推進

[現状と課題]
 障害の多様化・重度化に加え、障害者の高齢化も進み、障害者を取り巻く雇用環境は依然として厳しい状況にあります。
 公共職業安定所における障害者の有効求職者数等は、表5-3、表5-4に示したとおりですが、年々重度障害者の占める割合が増加する傾向にあります。

表5-3 〈障害者の求職登録等の状況〉(各年3月末、単位:人)

昭和63年 平成元年 平成2年 平成3年 平成4年 平成5年
登録者数 2,572 2,826 2,906 3,107 3,330 3,587
有効求職者数 427 461 569 450 464 509
就業中の者 1,917 2,154 2,036 2,306 2,464 2,588
保留中の者 228 211 301 351 402 490

※登録者数は第1種(身体障害者)、第2種(知的障害者等)登録の合計
※「保留中の者」とは、現在病気等の理由により紹介あっ旋の対象とならない者

表5-4 〈有効求職者の障害種別ごとの内訳〉(平成5年3月末現在)

障害種別合計 身体障害者 知的障害者等
小計 視覚 聴覚言語 上肢 下肢 体幹 脳病変 内部
509 432人 32 69 117 128 25 6 55 77
100% 7.4 16.0 27.1 29.6 5.8 1.4 12.7
うち重度障害者
185 158人 16 42 28 30 9 3 30 27

 障害者の雇用の場を確保するためには、障害者の職業的自立意識と事業主等の理解・協力が不可欠であり、関係者が一体となって、障害者の雇用対策に取り組むことが必要です。
 そのためには、法定雇用率の達成に向けて、各種助成金の活用や積極的な好事例の周知等により、事業主の取り組みを促進するとともに、職業相談・指導体制の充実、職場適応訓練等の職業リハビリテーションの推進を図って、障害の種類及び程度に応じた適正な雇用管理を促進し、雇用機会の確保と拡大に努める必要があると考えられます。

[主要施策]

  1. 職業相談、職業紹介、職場定着指導の推進
    • 身体的又は精神的な障害により、就職が困難であり、また、就職機会の少ない障害者について、一般求職者よりさらに手厚い求職受理を行い、これを基に入念な職業指導、職業紹介、就職後の指導を推進します。
    • 職業指導については、障害の種類及び程度に応じて、その能力に適合する職業に就き、それを継続していけるよう、障害者職業センターや障害者雇用促進協会等の関係機関との連携を図りながら、適性検査の実施、雇用情報の提供等を行い、職業相談、職業紹介、就職後の職場定着指導を推進します。
    • 職業紹介については、医療機関等との連携を図りながら、障害者の身体的能力等に適合する職務に就けるよう、必要な情報把握、求人事業主指導、求人開拓を推進します。
  2. 職場適応訓練の実施
    • 直ちに常用就職することは困難であるが、一定期間、事業所において作業環境に適応することを容易にさせ、あるいは、就職に必要な知識及び技能を習得させるための訓練を行えば、常用就職が可能であると判断される障害者については、職場適応訓練制度を効果的に活用し、常用就職の促進に努めます。
  3. 「ふれあい合同就職選考会」の実施
    • 就職を希望しながら未就職の状況にある障害者も多数いることから、就職を希望する障害者、行政機関、企業が一同に会し、就職機会の増大を図る合同就職選考会の実施に努めます。
  4. 職業生活における自立を図るため、継続的な支援を必要とする障害者に対して、障害の種類及び程度に応じ、障害者職業センター等との連携を密にして、職業準備訓練など、必要な職業リハビリテーションを推進します。
  5. 医療リハビリテーション機関等との適切な連携を図りながら、職業リハビリテーションの充実と障害者を取り巻く職業生活環境の充実・強化に努めます。

3 職業能力開発の促進

(1)職業能力開発施設への障害者の受け入れ等

[現状と課題]
 障害者が職業的に自立し、安定した生活を営んでいくためには、雇用の促進と地位の向上を図るとともに、職業能力開発を促進することが必要です。
 公共職業能力開発施設では、障害者を障害の程度や能力に応じて受け入れており、障害者が職業上必要な知識や技能を習得するための訓練を行っています。
 また、県では、身体障害者技能競技大会への積極的な参加を奨励し、併せて、身体障害者の技能向上並びに社会の理解と認識の高揚を図っています。

[主要施策]

  1. 障害の程度も能力に応じて、可能な限り、障害者の県立高等技術専門校又は雇用促進事業団立職業能力開発促進センターへの入校を促進します。
  2. 重度障害者は、障害者等職業訓練受講支度金交付制度の周知と活用を図りながら、重度障害者を対象とした障害者職業能力開発校への入校を促進します。
  3. 身体障害者技能競技大会への参加奨励について、関係機関等との連携・協力体制の強化に努めるとともに、積極的な広報活動を推進して、県民の理解と幅広い参加者の確保を図ります。

4 福祉的就労の充実

(1)福祉的就労の場の整備拡大と支援強化

[現状と課題]
 現在、一般企業での就労が困難な障害者の働く場を確保するとともに、就労による自立を支援するため、授産施設の整備、職親への委託、小規模作業所に対する支援や作業を取り入れたデイサービス事業等を実施しているところです。
 今後、障害の重度・重複化が進む中で、障害者の様々なニーズに応えていくよう、多様な施設、授産科目の整備を進め、障害者の福祉的就労の場の選択肢が広がっていくよう努めていかなければなりません。
 特に、在宅の障害者のためには、在宅福祉サービスとともに通所型の授産施設や地域に密着した小規模作業所の整備を図っていくことが必要であり、作業能力はあるが、一般企業に雇用されることが困難な重度の障害者のための福祉工場の設置も課題となっています。また、そうしたものとともに、就労を支える基盤となる福祉ホーム等の整備も併せて行わなければなりません。
 また、障害者が意欲を持って働き、授産施設や小規模作業所が安定的に運営していくためには、製品等の販売、業務の受注なども課題となります。
 障害者の自立を促進し、福祉的就労の場の運営の安定を図っていくためには、行政機関、授産施設、小規模作業所等の連携体制の整備が必要と思われます。
 さらに、自営による就労で自立を目指す障害者にも十分配慮しながら、それぞれの障害者の個別の状況に応じて、就労の形態や具体的な支援方法を検討していく必要があります。

[主要施策]

  1. 授産施設等における事業をより効果的なものとするため、社会のニーズと障害者のニーズの双方を十分に踏まえ、授産科目の整備充実、通所型授産施設や在宅デイサービス事業等の整備、小規模作業所の支援、職親制度の活用を行っていきます。
    また、就労による自立に必要な生活の場となるグループホームや福祉ホームの整備にも努めます。
  2. 福祉的就労に従事する障害者の就労意欲を促進し、安定的な運営を確保していくとともに、地域社会との連携を深めるため、福祉的就労による製品の販売、業務確保を支援する体制の整備に努めます。
  3. 障害者の福祉的就労に関するニーズに的確に対応し、福祉的就労の場の安定的運営と障害者の自立に向けた支援の強化をより一層推進していくため、行政機関、授産施設、小規模作業所等の連携体制の充実を図っていきます。
  4. ホット21ふくしプランの「働く障害者のまちづくり事業」を進め、移転を予定している身体障害者更生相談所の敷地を活用して、身体障害者が働く場を確保するための福祉工場等の整備に取り組むとともに、そこで働く障害者のための住居としての福祉ホームの整備、さらには、スポーツ活動等の促進や自立生活に向けた相談・援助の支援体制を検討し、施設を取り巻く地域全体の中で地域住民とも交流しながら、障害者が生きがいを持って生活していく環境を整備していきます。

第6節

まちづくりの推進

第6節 まちづくりの推進

1 住みよいまちづくりの推進

(1)まちづくりに関する連携の強化

[現状と課題]
 障害者の自立と社会参加を進める上で、建築物、道路、交通などの生活環境の障壁をなくしていくことは基礎的な課題であり、今後、改善を図っていくことが求められています。
 そうした生活環境が改善されなければ、就労が困難であったり、在宅福祉サービスが充実しても家の外に出られなかったりして、生活の質は十分確保されませんが、このようなまちづくりは、道路部門だけで取り組むものでも、建築部門だけで取り組むものでもなく、地域の実態を把握し、総合的な視点で取り組むことが求められています。
 また、行政だけの取り組みで足りるものでもなく、利用者の多い施設など、民間事業者も社会連帯の意識に基づき、一体となって取り組むことが求められています。
 さらに、現実的には、障害者への対応、点字ブロック上の自転車等の放置の防止など、県民自身の取り組むべき点もあり、そうした点を考えると、ハード面の整備だけでなく、ソフト面の整備も問題となります。
 身体障害児・者アンケートの調査結果を見ても、外出するときに困ることとして、道路の段差や駅の階段が多い(249人)、車などに危険を感じる(162人)、利用する建物の設備が不備(134人)といった回答が出ています。

表6-1 〈外出するときに困ること〉(身体障害児・者アンケート調査結果より)

外出するときに困ること 解答者数(人) 構成比(%)
道路の段差や駅の階段が多い 249 32.9
利用する建物の設備が不備 134 17.7
車などに危険を感じる 162 21.4
経費がかかる 100 13.2
人と話すことが困難 98 13.0
その他 288 38.1

※「特になし」と回答されたものを除く。複数回答のため、%の合計は100を越える

 これまで、県においては、「ふくしのまちづくりハンドブック」を作成したり、各庁舎の段差の解消、障害者用トイレの設置、障害者専用駐車場の確保、道路の段差の解消、障害者に配慮した信号機の設置等を進めてきています。
 今後は、これらの取り組みをより一層推進して、まちづくりのエリアを障害者の日常生活に関係する場のみに限らず、散策や憩いの場、あるいは交流の場となる河川区域や公園など、周辺の生活環境にまで拡大していくことも必要と思われます。
 いくつかの自治体においては、住みよいまちづくりを進めるため、条例や要綱などの整備を進めてきたところもあり、国においても、平成6年に「高齢者・障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」を制定するなど、種々の取り組みが行われています。
 障害者に住みよいまちづくりは、高齢者や乳幼児にもやさしいまちづくりに通じていくものであり、21世紀の高齢社会に向けて着実に努力していかなければならないことです。
 それを進めるためには、地域の実態をよく把握し、県の関係部局、市町村、国の連携を深めるとともに、民間事業者、県民と一体となって、ハード・ソフトの両面にわたる多くの施策を目標に向けて進めていくことが求められています。

[主要施策]

  1. 民間意識を把握するためのアンケート調査を実施します。
  2. 障害者を含め、みんなにやさしいまちづくりを進めていくため、幅広い関係者の参加を求めて懇談会を設置し、まちづくりの方向性をまとめるとともに、その指導・支援体制について、ハード・ソフトの両面から、県民意識を踏まえながら総合的に検討していきます。
  3. 特定地域におけるまちづくりの重点的整備を行います。
  4. 住みよいまちづくりのエリアを拡大し、散策や憩いの場となる河川や海辺についても障害者等の親しみやすいものとするため、堤防護岸の緩傾斜化、堤防坂路のスロープ化等の取り組みを進めます。
  5. 県庁内の関係各部の連携を強化します。
  6. 住みよいまちづくりに関する個別施策を着実に進めます。
    • 道路の段差等を解消し、人にやさしい道づくりを進めます。
    • 公共建築物について、着実に改善を進めるとともに、利用者の多い民間施設についても働きかけを行っていきます。
    • 移動に関する物理的障壁をなくしていきます。
    • 情報面に関する障壁をなくしていきます。
    • 地域安全活動を普及し、事故・災害時における援助の充実を図ります。
    • 地域住民のやさしい心づくりを図ります。

2 障害者向け住宅の整備

(1)障害者に配慮した公営住宅の整備

[現状と課題]
 高齢者や障害者が安全で使いやすい住宅に住めるようにするため、公営住宅においては、平成3年度から住棟出入口のスロープ化、階段の手すりの設置等を行うとともに、全住戸について、床の段差の解消、浴室の手すりの設置を行っています。
 さらに、市町村が障害者向けの公営住宅を建設する場合、県は、建設費の一部を助成しており、平成6年度までの補助実績は、6市に対して133戸となっています。

表6-2 〈障害者向け公営住宅の県費補助実績戸数〉

- 昭和52~58 59 60 61 62 63
宮崎市 42 4 4 4 4 4 - 2 8 12 6 4 94
都城市 - - - - 3 1 2 2 1 - - 1 10
延岡市 - - - 2 1 2 2 1 2 2 2 2 16
日南市 5 - - - - - - - - - - - 5
日向市 - - - - 1 1 - - - 2 1 1 6
串間市 - - - - - - - 2 - - - - 2
47 4 4 6 9 8 4 7 11 16 9 8 133

※平成6年度分は見込み

 また、公営住宅の入居者選考に際しては、一定の戸数を福祉目的の住宅として取り扱い、障害者等が優先的に入居できるよう配慮しています。
 今後とも、このような障害者等の利用に配慮した公営住宅の整備を、市町村とも連携しながら進めていく必要があります。

[主要施策]

  1. 公営住宅の整備を、スロープ及び手すりの設置、床の段差の解消など、高齢者や障害者の利用を考慮した仕様により推進します。
  2. 障害者向け公営住宅を建設する市町村に対して、県単独の助成を行います。
  3. 障害者等が優先的に入居できるように配慮した公営住宅の入居者選考を行います。

(2)障害者向け住宅の整備推進及び相談体制の充実

[現状と課題]
 障害者や要援護高齢者が住み慣れた地域や家庭の中で自立した生活を送るためには、段差の解消や手すりの設置等に配慮した住居の確保が必要ですが、一般的な住宅においては、障害者や要援護高齢者が在宅生活を維持するのに、必ずしも十分な状況にあるとは言えません。
 障害を持つ要援護高齢者向けの住宅改造等に関する相談については、在宅介護支援センターや高齢者総合相談センターで各種の相談に応じています。
 また、住宅を障害者向けに改造する際の費用については、一部の市町において、経費に対する一部助成や低利の融資が行われています。
 障害者向け住宅の整備は、障害者自身の居宅における利便性の向上を図ることはもとより、介助に当たる家族等の負担の軽減を図る上でも大きな意味を持つことから、今後、相談体制の充実をはじめとする整備推進策の積極的な展開が必要です。

[主要施策]

  1. 身体障害者更生相談所や高齢者総合相談センター、在宅介護支援センターにおいて、住宅相談業務の積極的な展開を図るとともに、リフォームヘルパー制度の活用を促進します。
  2. 現在、一部の市町で実施されている障害者向け住宅の改造費用に対する一部助成を全県的に展開するため、新たな補助制度の創設等に向けた取り組みを進めます。
  3. 高齢者や障害者等向けの住宅に関する県民への情報提供に努めます。

3 道路及び交通安全対策の推進

(1)安全で快適な道路の整備

[現状と課題]
 近年、道路の機能重視に加えて、親しみとうるおいのある道路環境、人や自然にやさしい安全性を重視した道路整備への要求が高まっており、道路及び安全施設の整備に関する障害者への配慮も一層強く求められています。
 現在の歩道は、旧規格の幅員1.5m~2.5mのものが多い上、その中に植栽がなされているなど、実質的な幅員がさらに狭くなっているものもあるため、今後の歩道の整備に当たっては、車いす利用者等の障害者の移動にも十分配慮した広幅員のものとしていくことが必要です。
 このため、道路の新設や拡幅など、その整備に当たっては、車いす利用者等の障害者が安全かつ自由に行動できるよう、幅員が広く、段差のない、滑らかなスロープを持った安全・快適な歩道の建設を進めています。
 また、既設の歩道の段差解消や電柱などの支障物の移設、舗装路面の補修、点字ブロックの敷設については、「第5次交通安全施設等整備五箇年計画」に基づき、各種交通安全施設の整備を進めているほか、県単独事業の「21世紀に向けた人にやさしい道づくり事業」により、平成8年度までに9,247か所の支障箇所の解消を目指して整備を進めています。

表6-3 〈「21世紀に向けた人にやさしい道づくり事業」による整備状況〉

- 段差解消 点字ブロック 路面補修 側溝整備 その他 合計
整備目標箇所 4,459 3,765 293 314 416 9,247
整備完了箇所 4,385 3,719 97 82 373 8,656

※整備完了箇所は平成6年度までに整備を完了した箇所数

 このほか、電線・電柱による都市災害の防止や、路面の支障物となっている電柱をなくすことを目的とした、電線類地中化事業に対する取り組みも進めています。
 道路の整備については、今後とも、高齢化の進展や障害者のニーズにも適切に対応しながら、すべての人にやさしい道づくりをより一層積極的に推進していく必要があると思われます。

[主要施策]

  1. 車いす利用者等の障害者の移動に関する安全性と利便性を確保し、社会参加の促進を図るため、道路の新設や拡幅等の整備に当たっては、歩道を車いすが容易にすれ違える余裕を持った広い幅員のものとし、段差のない、滑らかなスロープを持ったものとするなど、安全で快適な歩道の整備を推進します。
  2. 既設の歩道の段差解消や舗装路面の補修、点字ブロックの敷設についても、支障箇所の解消を目指して「21世紀に向けた人にやさしい道づくり事業」による整備を引き続き実施します。
  3. 歩道上の代表的な支障物である電柱を除去し、歩道を障害者にやさしい、安全で快適なものとするため、電線類の地中化を積極的に推進します。また、路肩の側溝についても整備の促進を図ります。

(2)障害者等を対象とした交通安全対策の推進及び交通安全施設の整備

[現状と課題]
 近年における交通事故の状況は、運転免許保有者及び自動車の増加により、ますます厳しいものとなっています。
 身体障害児・者アンケート調査でも、外出するときに困ることとして、「車などに危険を感じる」と答えた人が21.4%ありました。
 このため、障害者や幼児・高齢者等に対する交通安全教育や障害者等を守る交通安全教育の普及がより強く求められています。
 障害者や幼児・高齢者等に配慮した、事故のない安全で快適な交通社会を実現するためには、障害者等に危険や迷惑を感じさせない「思いやり交通」を原点とした交通安全思想の浸透を図るとともに、県民全体の交通マナーを向上させることが必要と思われます。
 障害者等に対する交通安全対策を推進していく上では、さらに多くの課題がありますが、その中でも、交通の集中する交差点における安全の確保は特に重要です。
 このため、本県では、県下176か所(平成6年3月末現在)の交差点において、メロディや擬音によって信号の「青」の時間を知らせる「視覚障害者用付加装置」の整備を行っています。
 また、歩行の困難な障害者や高齢者等がゆとりを持って交差点を渡れるように、携帯用のペンダント型発信機のボタンを押すと、歩行者用信号が「青」に変わるとともに、「青」の時間が5秒から10秒間長くなる「弱者感応信号機」も県下4か所(平成6年3月末現在)の交差点において整備しています。
 「視覚障害者用付加装置」と「弱者感応信号機」は、いずれも「第5次交通安全施設等整備事業五箇年計画」に基づいて整備しているものですが、今後も引き続き計画的な整備を推進していく必要があります。
 なお、「弱者感応信号機」の利用に必要な発信機は有料であり、所有者が少ないことから、今後、関係団体等にも発信機の普及促進を働きかけていく必要があるものと思われます。

[主要施策]

  1. あらゆる機会をとらえた交通安全教育の徹底により、障害者や幼児・高齢者等に対する交通安全知識の普及を促進するとともに、道路利用者に対して、障害者等に配慮した交通安全意識の高揚を図ります。
  2. 関係機関や関係団体、特に、自動車学校と連携し、実践・参加型の交通安全教育を推進します。
  3. 「視覚障害者用付加装置」等の設置場所についての意見を関係行政機関や盲人福祉協会等から幅広く聴取し、それを踏まえた上で、利用度の高い交差点から整備していきます。
  4. 「弱者感応信号機」の整備と、利用に必要な発信機の普及促進に取り組みます。

4 誰もが利用できる建築物の整備

(1)誰もが利用できる建築物の整備

[現状と課題]
 障害者の社会参加を進める上で、不特定多数の者に利用される建築物については、障害者がごく普通の市民として利用できるようにしていくことが必要です。
 このため、昭和63年には、多くの人が利用する施設を障害者が安心して快適に利用できるものとするため、その整備に当たっての指針となる「ふくしのまちづくりハンドブック」を作成したところです。また、平成6年には、障害者用トイレやエレベーター、障害者専用駐車場の有無などの情報を載せた「福祉ガイドブック宮崎 ふれあい再発見!!」を作成しています。
 こうした全般的な取り組みを進めるとともに、目に見える形で具体的に建物の整備を進めていくことが大切です。
 県有の公共施設については、県立芸術劇場、県立図書館、都城保健所など、建物の建て替えを中心とした整備の際に、障害者対策に配慮しているところですが、建設年次が古いものも多く、必ずしも十分とは言えない状況にあります。
 例えば、本庁舎及び各総合庁舎の整備状況は下記の表6-4のとおりであり、このうち、本庁舎の南別館については十分な配慮がなされていますが、まだスロープ等が設置されていないものもあります。

表6-4 〈本庁舎9棟及び総合庁舎10棟の整備状況〉

- 本庁舎 総合庁舎
出入口 スロープ 本館、新館、南別館、第2東別館、西別館、第3南別館(6) 宮崎、日南、串間、都城、小林、西都、高錆、日向、延岡、支庁(全)
自動ドア 東別館、南別館、第3東別館(3) 宮崎、日南、都城、小林、西都、高鍋、日向、延岡、支庁(9)
インターホン 本館、東別館、南別館(3) 宮崎、日南、串間、都城、小林、西都、高鍋、日向、延岡、支庁(全)
点字ブロック 南別館(1) -
手すり 本館、南別館(2) -
エレベー夕ー 新館、東別館、南別館、第2東別館、西別館(5) -
障害者用トイレ 新館、南別館、西別館(3) 日南、串間、都城、西都、高鍋、日向、延岡、支庁(8)
車いす用電話 本館、新館、東別館、南別館(4) 都城、西都、高鍋、延岡(4)
障害者用駐車場 新館、南別館、西別館(3) 宮崎、日南、串間、都城、小林、延岡、支庁(7)
車いす 本館、東別館、南別館(3) 宮崎、都城、高鍋、延岡、支庁(5)

※スロープには玄関の段差が無いこと、インターホンにはベル及びチャイム、車いす用電話には配慮された設置のものを含む。

 県有の公共施設については、今後もいろいろな整備が進められることになりますが、既存の施設についても、障害者が利用しやすい施設となるよう十分配慮しながら、改善を図っていくことが必要です。
 また、国においては「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」が平成6年に制定され、法律の対象となる百貨店、病院等の特定建築物については行政指導ができることとなったので、今後、この法律に基づく指導・助言を行うとともに、建築物の所有者等に対する普及・啓発を行っていく必要があります。

[主要施策]

  1. 県有の公共施設については、新規建設予定の施設はもとより、既存の施設についても、障害者が利用しやすいものとするため、次の事項に配慮した施設の整備を進めます。
    • 出入口には、スロープや自動ドア、インターホンを設置する。
    • 通路及び階段には、点字ブロックや手すりを設置する。
    • トイレについては、車いすでも利用できるよう整備する。
    • 公衆電話については、車いす利用者にも利用しやすいよう、設置する高さや場所に配慮する。
    • 障害者専用駐車場を設置し、建物の玄関までの段差の解消に配慮する。
    • 地階を含め、階数が2階以上の建物については、障害者の利用に配慮したエレベーターを設置する。
    • 各県有施設内に車いすを配置する。
  2. 「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」に基づいて、指導・助言及び普及・啓発を行います。

6-1 [「高齢者・身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」の概念図]

建築主の責務
病院や百貨店等の特定建築物を高齢者や身体障害者等が利用しやすくする責務

  • 次の基準に合うことが求められている
    • 基礎的基準
    • 誘導的基準
      • 計画の認識
        知事から認定を受けると次のメリット
        • 国等からの支援措置
          • 補助制度の活用
          • 低利融資の活用
          • 税制上の特例措置

5 移動・交通対策の推進

(1)障害者に配慮した公共交通機関の設備・サービス等の充実

[現状と課題]
 航空機、カーフェリー、鉄道及びバスなど、各種の公共交通機関は、障害者や高齢者等にとって重要な移動手段となっており、その設備やサービス等の充実は、障害者等の自立や社会参加の促進を図る上で不可欠のものと言えます。
 本県では、近年、利用者の多い空港、カーフェリーターミナル、鉄道の拠点駅の新設・大改修に際して、エレベーター、エスカレーター、スロープ、障害者用トイレなどが整備されつつあり、また、運行されている鉄道車両や新型のカーフェリーにも障害者用トイレ、自動ドア、手すり等が設置されているほか、リフト付きの福祉タクシーも運行されています。
 また、既設の施設・設備についても、鉄道駅における視覚障害者用の誘導・警告ブロックや点字表示券売機の設置等が年々充実してきていますが、これらは利用者の多い拠点駅等にとどまっており、バスのターミナルや停留所についても同様の状況となっています。
 障害者や高齢者等が、鉄道駅舎などをはじめとする陸・海・空の各公共交通ターミナルや鉄道車両、バス、旅客船、航空機等を利用する際の利便性の向上を図るためには、その移動ニーズに適切に対応した統一性のある施設・設備の整備を促進し、安全かつ身体的・精神的負担の少ないモビリティ(移動性、機動性)を確保する必要があります。
 さらに、施設・設備の整備やサービスの提供に当たっては、個々の障害の種類や程度によって異なる障害者等の多様なニーズを十分把握し、それらを踏まえたきめ細かな配慮にも努めていく必要があります。

[主要施策]

  1. 国において示されている下記の指針等に沿った公共交通機関の施設・設備等の整備を各公共交通機関の事業者に対して働きかけます。
    • 公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン(平成6年3月作成)
    • 心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン(平成2年3月作成)
    • 鉄道駅におけるエレベーターの整備指針(平成5年度策定)
    • 鉄道駅におけるエスカレーターの整備指針(平成5年度改訂)
      また、現在建設中の宮崎空港連絡鉄道の空港駅についても、車いす対応のエスカレーターやエレベーター等を設置して、障害者等の利便性の向上を支援します。
  2. 障害者や高齢者等の多様なニーズに対応し、障害者等が各公共交通ターミナルや公共交通機関を利用する際の身体的・精神的負担の軽減を図るため、各公共交通機関の事業者に対して、次の事項を中心とした働きかけを行います。
    • 障害者や高齢者等に配慮したきめ細かなサービスの向上
    • 障害者や高齢者等が利用しやすい公共交通機関のハード・ソフト両面のあり方についての検討
    • 関係団体や民間ボランティア等との連携の強化・促進
    • 関係団体等との連携を図った事業者研修の実施

(2)移動支援策等の充実

[現状と課題]
 障害者の自立と社会参加の促進を図るためには、移動・交通面における支援体制の充実により、障害者の行動範囲の拡大や就労の機会の増大等を図ることが必要です。
 障害者の移動手段の確保と支援の推進については、公共交通機関における運賃の割引をはじめとした各種の優遇措置が実施されているところですが、一方で、身近で利便性の高い自家用車の利用に対する障害者のニーズも強いものがあります。
 このようなニーズに対応するとともに、障害者の自立と社会参加を促進するため、本県では、身体障害者の自動車運転免許取得に対する助成を昭和48年度から、また、障害の状況に応じた自動車の改造に対する助成を昭和52年度からそれぞれ実施しており、障害者の経済的負担の軽減と自動車の利用促進を図っています。
 また、身体障害者の使用する自家用車には、一定の基準に基づいた駐車禁止除外の指定を行っており、障害者を輸送する車両についても、社会生活上特に必要と認められる場合には、通行禁止除外の指定を行っています。
 さらに、障害者が自家用車を利用して有料道路を通行する場合の通行料金に対する割引や、障害者の外出を容易にするガイドヘルパーの派遣を行っているほか、民間タクシー会社によるリフト付き福祉タクシーの運行なども行われています。
 今後、これら各種の移動に関する支援策等をさらに推進し、障害者の自立と社会参加をより一層促進するためには、対象者に対する制度の十分な周知を図るとともに、制度の適正な実施に努めていく必要があります。

[主要施策]

  1. 鉄道・バス・フェリー・航空機等の公共交通機関の運賃割引制度や有料道路の通行料金割引制度について、制度の内容及び手続き方法の周知を図るとともに、積極的な利用促進の呼びかけに努めます。
  2. 身体障害者の自動車運転免許の取得及び身体障害者用自動車の改造に対する助成並びに自動車税の減免の実施により、今後とも移動手段の確保と経済的負担の軽減を図ります。また、助成対象者や関係機関等に対して、制度の内容及び手続き方法の周知を図るとともに、制度の適正かつより効果的な実施に努めます。
  3. 身体障害者の使用する自家用車に対する駐車禁止除外指定及び障害者を輸送する車両に対する通行禁止除外指定を実施します。
  4. 障害者が外出する際の利便を図り、社会参加を容易にするため、外出時における移動の介護等を専門に行うガイドヘルパーの派遣制度の充実や、そのネットワーク化を図ります。

6 情報提供等の充実

(1)点字図書、字幕入りビデオ等の情報提供サービスの充実

[現状と課題]
 情報化社会の今日にあっては、情報量が増大するとともに、個々の情報の重要性もますます高まる傾向にありますが、視覚障害者や聴覚障害者には、情報の面で大きな制約があります。
 こうした障害者の自立と社会参加を促進するためには、より豊富な情報を、迅速かつ的確に提供する体制づくりが必要です。
 視覚障害者に情報を提供する施設としては、県内に3か所の点字図書館があり、点字図書や声の図書の貸出しを行っているほか、点字翻訳ネットワーク・システム「てんやく広場」を実施して、パソコン通信を活用した点字の最新情報の提供を行っています。しかし、視覚障害者用の点字図書や声の図書は、発行部数が少なく、必ずしも十分な量の情報が提供されているとは言えないため、今後、より多くの点訳奉仕員や朗読奉仕員を養成し、提供する情報の拡充を図っていく必要があります。
 聴覚障害者については、現在、宮崎県聴覚障害者協会に委託して、字幕入りビデオの貸出しを行っており、遠隔地に住む聴覚障害者には郵送による貸出しにも応じています。また、聴覚障害者の情報の受け入れを容易にし、円滑なコミュニケーションを支援するため、手話通訳士や手話奉仕員、要約筆記奉仕員の養成を行っていますが、医療機関や公共機関における対応も課題となってきているほか、今後、社会の情報化もさらに進むものと予想されるため、これらの奉仕員等の確保など、施策をより一層推進する必要があると思われます。なお、市町村レベルでは、独自に手話通訳者の設置に取り組む自治体もあります。
 このほか、盲婦人家庭生活訓練、盲青年等社会生活教室、ろうあ者日曜教室等を通じて、日常生活に関する様々な情報も提供しています。
 さらに、県の施策や話題を紹介する広報紙や県政テレビ番組についても、視覚障害者のための「広報みやざき」の点字広報及び録音テープによる「声の広報」の配布、聴覚障害者のための県政テレビ番組への手話通訳の取り入れを行い、情報提供の充実を図っています。
 なお、平成7年度には、全国で2番目の規模の視聴覚障害者情報提供施設が開所する予定であり、点字図書、声の図書、字幕入りビデオの製作・貸出しを行うほか、視・聴覚障害者の相談やボランティアの研修等も行うこととしています。

[主要施策]

  1. 点訳奉仕員、朗読奉仕員の養成を推進し、点字図書及び声の図書の情報量の増大を図ります。
  2. 手話通訳士の養成、手話奉仕員の養成・派遣及び要約筆記奉仕員の養成を推進し、聴覚障害者の情報の受け入れや円滑なコミュニケーションの支援を図ります。
  3. 視覚障害者に対する情報提供については、平成7年春にオープンする視聴覚障害者情報提供施設において、次の事項を中心に、情報提供の質的・量的な充実を図ります。
    • 文書を自動的に点字に変換し、印字・音声化することのできる点字パソコンの導入
    • 点字図書の管理を行うためのパソコンシステムの導入
    • 弱視者用の拡大読書器等の設置
    • 点字図書や声の図書の蔵書量の増大

    また、音声誘導装置の設置や点字ブロックの敷設等により、施設を視覚障害者の利用しやすいものとします。
  4. 聴覚障害者に対する情報提供については、平成7年春にオープンする視聴覚障害者情報提供施設において、次の事項を中心に、情報提供の質的・量的な充実を図ります。
    • 字幕入り自主制作ビデオを制作するための映像関係機器等の導入
    • 補聴器での音声の聞き取りを補助する磁気誘導ループの設置
    • 貸出しを行う字幕入りビデオカセットの整備
  5. 視覚障害者や聴覚障害者に対する各種の研修、教室、講習会を開催する中で、きめ細かな情報の提供に努めます。
  6. 県の持つ広報媒体については、視覚障害者のための点字広報及び録音テープによる「声の広報」の作成・配布、聴覚障害者のための県政テレビ番組への手話通訳の取り入れを行い、県の施策や話題に関する情報提供の充実を図ります。また、一般の放送番組についても、字幕入り放送や手話通訳の取り入れ等に関する協力が得られるよう、放送事業者等に対する働きかけに努めます。
  7. 障害者の情報面における障壁を除去するため、電話を利用できない情報障害者に対する通信リレーサービスなど、各種の情報伝達に関する調査・研究を行います。
    また、緊急時における福祉事務所のファックスの利用についても検討します。

7 地域安全対策の推進

(1)障害者に対する地域安全活動の普及と事故・災害時における障害者への援助

[現状と課題]
 障害者が地域の中で自立した生活を安心して送るためには、地域全体で安全で快適な生活環境づくりを進めるとともに、災害時等における支援体制を確立する必要があります。
 最近の社会環境の著しい変化は、地域社会に内在していた犯罪等の抑止機能を低下させ、犯罪は凶悪・悪質化していく傾向にあり、また、予測し得ない事故や災害も多発しています。
 このような状況を踏まえ、障害者に配慮した地域安全活動の推進をより一層効果的なものとするためには、地域住民の連帯意識とボランティア意識の高揚を図り、地域が一体となった取り組みを展開するとともに、障害者に対する犯罪や事故・災害等に関する地域安全情報の提供や適切な指導・助言を行う体制を確立する必要があります。

[主要施策]

  1. 障害者に対する犯罪や事故等の発生を防止するため、生活安全センターとしての交番等の機能を強化し、犯罪・事故防止等に関する知識の啓発や巡回訪問活動等を実施するとともに、県障害者暴力追放連絡会議等の関係機関・団体相互の情報交換に努めます。
  2. 障害者の身近な犯罪等に対する不安や日常の困りごと相談等にきめ細かに対応できるよう、手話・点字通訳ボランティアの活用や手話交番の開設を図るなど、地域のニーズに対応した各警察署及び交番等の相談窓口の充実を図ります。また、緊急手配システムやファックス110番等の通信体制の充実を図るとともに、タイムリーな地域安全情報の提供に努めます。
  3. 市町村等の関係機関・団体との連携による防災訓練等の実施を通じて、事故・災害等に対する意識の高揚を図るとともに、地震や水害等の災害時における情報の収集・伝達及び避難誘導、被災後の支援を適切に実施できる体制を確立します。

第7節

スポーツ・レクリエーション・文化

第7節 スポーツ・レクリエーション・文化

1 スポーツの振興

(1)総合運動公園等の施設の整備・改善

[現状と課題]
 障害者スポーツの振興は、障害者の健康・体力の維持増進ばかりでなく、生きがいづくりや各種の大会等を通じた参加者及び地域との交流促進など、様々な面で大きな効果をもたらし、障害者の自立意欲の助長と社会参加の促進に重要な役割を果たします。
 障害者スポーツの一層の振興を図るためには、障害者のスポーツ人口を拡大するとともに、その基盤となる安全で快適なスポーツ施設の整備・充実が必要です。
 本県の障害者スポーツの中核的施設である県総合運動公園は、毎年開催される身体障害者スポーツ大会の県大会会場にもなっており、公園内における段差の解消、点字ブロックの敷設、障害者用トイレの整備等を計画的に進めています。
 今後は、県総合運動公園や県体育館などの施設の計画的な整備・改善をさらに推進するとともに、県下全域の各スポーツ施設においても、すべての障害者が、競技参加者・観戦者のいずれの立場でも容易に利用できる施設となるよう、積極的な整備・改善を図っていく必要があると思われます。

[主要施策]

  1. 県総合運動公園や県体育館などにおける障害者に配慮した施設の整備・改善について、障害者や関係団体の意見も踏まえながら推進します。
  2. 障害者が安全で快適にスポーツを楽しめるよう、市町村等に対して、障害者に配慮した施設の整備・改善を働きかけます。

(2)スポーツ指導者等の養成

[現状と課題]
 障害者スポーツの振興・推進を図るためには、障害者スポーツに理解と情熱があり、実際に指導等の活動ができる指導者の養成が必要です。
 本県では、日本身体障害者スポーツ協会が主催する公認指導者研修会へ指導者の派遣を行っており、平成6年度末現在で25名が受講しているほか、県内の指導員を養成するため、年1回指導者研修会を実施して、現在341名の地区指導員を認定しています。
 しかし、障害者スポーツが一定の広がりを見せた現在、さらに指導者の資質の向上、地域に根ざした指導活動の充実が求められてきています。
 また、知的障害者のスポーツ指導の体制づくりが今後の課題として残されています。

[主要施策]

  1. 指導者研修会の講座内容等を充実し、障害者スポーツ指導者の養成と資質の向上を図ります。
  2. 県内の各地域の身体障害者、関係施設職員、体育指導委員等に、障害者スポーツに関する知識と指導法を習得してもらい、障害者のスポーツ指導の振興を図ります。
  3. 知的障害者のスポーツ指導の体制づくりに向けた検討を進めます。

知的障害者のスポーツ指導の体制

(3)スポーツ活動の振興

[現状と課題]
 障害者にとって、スポーツは、健康増進や機能訓練のためのみならず、自らの障害を克服して勇気と希望を持って明るくたくましく生きていく能力を育み、社会参加を促進する上でも重要な役割を果たします。
 また、スポーツを通じて地域の人々と交流することは、相互の理解を深めるばかりでなく、障害者問題に対する社会全体の理解と認識を高めることにもつながります。
 このため、県では、宮崎県身体障害者スポーツ大会の開催のほか、ふれあいと友情の体育祭(知的障害者スポーツの県大会)、宮崎県精神障害者スポーツ大会や各種スポーツ教室等の開催、保健所デイケアでのスポーツ指導、全国大会等への選手団の派遣、スポーツ指導者の養成など、障害者スポーツの振興を図るための取り組みを積極的に展開しています。
 しかし、一方で、スポーツイベント参加者の高齢化及び固定化への対応、スポーツ指導者の育成・確保、競技スポーツの振興、スポーツ施設の整備といった様々な課題も残されています。

[主要施策]

  1. 障害者スポーツの活動状況や年間計画等に関する広報を積極的に行い、障害者がスポーツに親しむ機会を増やしながら、スポーツクラブの育成やスポーツ人口の拡大を目指します。
  2. レクリエーションスポーツとともに、競技スポーツの振興を目指し、各種スポーツ教室を開催して指導の充実を図ります。

2 レクリエーションの普及・推進

(1)レクリエーションの普及・推進に向けた指導者の養成、活動の支援等

[現状と課題]
 レクリエーション活動は、障害者にとって、心身のリフレッシュ及び鍛練、機能回復に効果があるばかりでなく、遊びの輪の中で人と人とが人間性の深いレベルで交流することにより、生きがいの高揚や仲間づくりにつながるなど、社会参加の大切な機会にもなっています。
 このような、障害者のレクリエーション活動が持つ多彩で重要な意義を踏まえ、県では、在宅の障害者が自然の中で交流を深める療育キャンプや知的障害者レクリエーション教室等の事業を実施しています。
 今後、障害者のレクリエーション活動の一層の普及・推進を図っていくためには、地域の中で障害者が日常的にレクリエーション活動に親しめる条件整備を目指して、障害の実態に即したレクリエーションプログラムの調査・研究や指導者の育成等を進めていく必要があります。

[主要施策]

  1. 障害児・者を対象とした交流キャンプ、レクリエーション教室などについて、障害を持つ・持たないにかかわらず、誰でも参加できる機会の拡充を図り、レクリエーション活動を積極的に支援します。
  2. 障害の実態に即したレクリエーションプログラムの調査・研究や熟練した指導者の育成・確保に努めます。
  3. 障害者の利用に配慮したレクリエーション施設の整備について検討を進めます。

3 文化活動の促進

(1)文化活動の支援及び振興

[現状と課題]
 障害者の社会参加活動は、美術や音楽をはじめとする様々な文化活動にも広がっています。
 障害者の文化活動への取り組みは、障害者の持つ大きな可能性を引き出し、それをさらに伸ばすばかりでなく、日々の生活をより充実したものとする上でも重要な役割を果たします。
 一方で、障害者の文化活動を支援し、その振興を図ることは、障害者の社会参加や地域の障害者に対する理解をより一層促進することにもつながります。
 このような障害者の文化活動を、今後、さらに活性化させ、意義深いものとするためには、文化活動に関する啓発広報の推進と情報提供の充実を図り、より多くの障害者に多様な文化活動に参加する機会を提供する体制づくりが必要です。
 また、文化的行事の主催者や文化施設の管理者等に対しては、障害者の文化活動に関して、行事の運営面や施設の設備面からの支援について協力を依頼し、文化活動への取り組みや参加を積極的に推進するための基盤づくりを図る必要があります。
 さらに、障害者の文化活動に関連する行事の開催やその支援を行い、障害者だけでなく、障害を持たない一般の地域住民にも広く参加を呼びかけて、交流の促進を図りながら、障害者の文化活動の振興と、その充実・向上に向けた取り組みを推進する必要があると思われます。

[主要施策]

  1. 点字広報をはじめとする障害者に配慮した広報媒体の拡充等を図り、障害者に対する多様な文化活動についての情報提供を、より適切で充実したものにします。
  2. 障害者の文化的行事への参加を促進するため、県立美術館や県立芸術劇場をはじめとする文化施設について、障害者が容易に利用できるものとするための整備を図ります。また、障害者の円滑な参加が進むよう、きめ細かな配慮に努めます。
  3. “ふれあいフェスティバル”の開催を通じて、演劇やコンサート、絵画・彫刻・写真等の展示など、障害者の文化活動の成果を発表する場の充実を図るとともに、障害者が文化的行事を開催する際の会場提供等の支援を行います。
  4. 障害者の多様な文化・芸術活動を支援し、育成を図るための検討を進めます。

障害者等の現状編

【宮崎県の障害者の現状】

1 身体障害者の状況

(1)身体障害者手帳の交付状況(障害別) (平成6.3.31現在)

障害の種別 交付者数 構成比
視覚障害 6,107人 12.9%
聴覚・平衡機能障害 5,186人 10.9%
音声・言語・そしゃく機能障害 866人 1.8%
肢体不自由 27,892人 58.7%
内部障害 7,468人 15.7%
内部障害の内訳 心臓 (3,737人) (7.9%)
呼吸器 (1,066人) (2.2%)
じん臓 (1,817人) (3.8%)
直腸・ぼうこう (835人) (1.8%)
小腸 (13人) (0.0%)
合計 47,519人 100.0%

(2)身体障害者手帳の障害等級別交付内訳 (平成6.3.31現在)

1級 2級 3級 4級 5級 6級 合計
11,133 9,760 7,939 8,503 5,450 4,734 47,519人

(3)身体障害者手帳の身体障害児・者別交付内訳 (平成6.3.31現在)

区分 18歳未満 18歳以上 合計
視覚障害 69 6,038 6,107
聴覚平衡機能障害 152 5,034 5,186
音声・言語・そしゃく機能障害 17 849 866
肢体不自由 672 27,220 27,892
内部障害 169 7,299 7,468
合計 1,079人 46,440人 47,519人

(4)身体障害者手帳の交付状況の推移 (各年度末現在)

年度 平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度
対象者数 42,241人 43,560人 45,027人 46,594人 47,519人

2 知的障害者の状況

(1)療育手帳の交付状況(程度別)(平成6.3.31現在)

知的障害の程度 交付者数 構成比
軽・中度 3,013人 51.8%
重度 2,800人 48.2%
合計 5,813人 100.0%

(2)療育手帳の知的障害児・者別交付内訳 (平成6.3.31現在)

区分 軽・中度 重度 合計
18歳未満 576人 564人 1,140人
18歳以上 2,437人 2,236人 4,673人
合計 3,013人 2,800人 5,813人

(3)療育手帳の交付状況の推移 (各年度末現在)

年度 平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度
交付者数 5,087人 5,252人 5,444人 5,601人 5,813人

3 精神障害者の状況

(1)精神障害者数

 本県には、入院患者が約6,000人、通院医療費公費負担患者が約3,700人いるが、その他在宅の精神障害者を考慮すると、約10,000人の精神障害者がいるものと推計される。(※知的障害者を除く)

(2)入院者の概要 (各年6月30日現在)

区分 平成3年度 平成4年度 平成5年度
措置入院者数
(宮崎県知事の命令による者)
181人 138人 94人
医療保護入院者数
(保護義務者の同意による者)
2,652人 2,401人 2,224人
任意入院者
(本人の同意による者)
2,808人 3,172人 3,399人
合計 5,641人 5,711人 5,717人
その他の入院患者 301人 236人 231人

(3)医療機関の概要 (平成4年6月末現在)

区分 全国 宮崎県
病院数 1,663 26
病床数 361,830 6,332
人口万対病床数 29.2 54.3
病床利用率 95.8 94.0
人口万対在院患者数 28.0 51.0

【各種施設の現状】

■身体障害者・児施設

身体障害者・児施設マップ

■知的障害者・児及び障害者・児施設

知的障害者・児及び障害者・児施設マップ


主題:
宮崎県障害者施策の新長期計画 73頁~118頁
―みんなが生き生きと暮らせる社会をめざして―

発行者:
宮崎県

発行年月:
1995年02月

文献に関する問い合わせ先:
宮崎県庁
〒880-8501 宮崎市橘通東2丁目10番1号
電話:0985-24-1111