2011年2月28日
聴覚障害者の権利保障を実現する障害者基本法改正を求める
「障害者基本法の改正について(案)」についての統一要求書
聴覚障害者制度改革推進中央本部
本部長 石野 富志三郎
私たちは、聴覚障害当事者3団体と支援者3団体により結成され、障がい者制度改革推進会議における障害者に係わる制度の抜本的な見直しにおいて、すべての聴覚障害者、盲ろう者に、情報アクセス・コミュニケーションの権利を保障する法制度の実現を求め、署名運動と「We Love コミュニケーション」パンフレットの普及に取り組んでいます。
日本における聴覚障害者、盲ろう者の状況は、障害の程度や種類を問わず、社会参加や日常生活の場面における情報アクセスとコミュニケーションの保障、その他の必要な支援が極めて不十分です。このため、社会参加や日常生活の充実が困難になっている状況にあります。
基本的人権として憲法にある「教育を受ける権利」「勤労の権利」「裁判を受ける権利」を保障する公的な情報・コミュニケーション保障と支援制度が存在しません。全ての国民に平等に提供されるべき医療・介護・行政においても情報・コミュニケーション保障制度がありません。また、聴覚障害者・盲ろう者の多くは、基本的な社会インフラである電話、放送、インターネットの利用ができません。日常の生活では、地域住民同士の豊かなコミュニケーションを保障する仕組みがありません。
このような状況を踏まえ、私たち聴覚障害者制度改革推進中央本部は、障がい者制度改革推進会議の論議とその結果としての制度改革に期待し、同会議における聴覚障害者の委員の活動を支援し積極的な意見提起に取り組んできました。
同会議は、2010年12月に障害者基本法の抜本的改正のための「障害者制度改革推進のための第二次意見」を取りまとめ、これを受けて策定される同法の改正案の内容に私たちは強く期待していました。
しかし、2011年2月14日に内閣府が障がい者制度改革推進会議に提出した「障害者基本法の改正について(案)」(以下「改正案」)は、障害者権利条約、及び第一次意見書、第二次意見書の内容を反映したものにはなっていませんでした。
このような事態を受け、私たち聴覚障害者制度改革推進中央本部は、下記について要求します。
記
1 障害者の権利保障を明記すること
「改正案」は、障害者の権利保障ではなく国及び地方公共団体の努力義務を定めているに過ぎない。これでは基本的人権の保障・障害のない国民と同様の情報獲得が不十分という聴覚障害者の現状を変えることは困難である。
障害者基本法の改正は、障害者が福祉施策の客体ではなく、権利の主体であること、かつ社会モデルの視点を明確にし、障害の種類と程度を問わず障害者の権利を保障するための施策を実施する規定とすること。
2 合理的配慮の欠如が差別であることを明記すること
「1」と同様に、「改正案」は、障害者の権利保障ではなく努力義務を定めているに過ぎない。また定義が抽象的である。聴覚障害者、盲ろう者の社会参加に必要な仕組み(例:手話通訳者や要約筆記者の配置、対象者に合わせたコミュニケーション手段の提供)が強制力のある権利として保障されないのであれば、聴覚障害者、盲ろう者の社会参加に結びつくことは困難である。
障害者権利条約の規定に基づいて、差別の定義及び合理的配慮の定義を行い、合理的配慮を行わないことが差別であることを明記すること。
3 情報アクセス・コミュニケーション保障を明記すること
障害者基本法の改正案には障害者の情報アクセスや、言語、コミュニケーション保障の記載がまったくない。これでは聴覚障害者をはじめとする情報アクセスやコミュニケーションに困難がある障害者の社会参加の実現には結びつかない。
第二次意見書にまとめられた「手話等の非音声言語が言語であることを確認し、障害者が、必要な言語を使用し、必要なコミュニケーション手段を利用するという障害者権利条約における『表現及び意思の自由についての権利』を有することを確認すること」を反映する規定とすること。なお、改正案にある「可能な限り」という文言は、「障害のない人と同等に」と言う文言に変えること。
以上、聴覚障害者制度改革推進中央本部は、聴覚障害者、盲ろう者の社会参加の保障が権利として保障される公的制度の実現を目指す立場から、障害者基本法の改正にあたっては、障がい者制度改革推進会議の意見を踏まえ、障がい者制度改革推進本部設置の趣旨に沿った内容となることを強く求めます。
以上
構成団体 財団法人全日本ろうあ連盟
社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
社会福祉法人全国盲ろう者協会
一般社団法人全国手話通訳問題研究会
一般社団法人日本手話通訳士協会
特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会