「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見(概要) 部会三役作成
障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備をはじめとする制度の集中的な改革
「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」
(平成22年6月閣議決定)
「障害を理由とする差別を禁止するとともに、差別による人権被害を受けた場合の救済等を目的とした法制度の在り方について」検討
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差別禁止部会における検討
平成22年11月~平成24年9月
H22.11~ 障がい者制度改革推進会議、H24.7~ 障害者政策委員会の下に設置
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法制の制定について部会の意見
平成24年9月14日
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政府において法案を作成、平成25年常会への提出を目指す
法律の必要性
- 差別に当たると思われる事案が多数存在するが、既存の法律では解決が十分ではない
- 一方で障害への理解不足に起因する場合も、多くの国民は「差別はよくない」と意識
何が差別に当たるのか「物差し」を明らかにし社会のルールとして共有すること
簡易迅速な紛争解決の仕組み等の法的な保護の仕組みを用意すること
第1部 総則
「理念」として重要な視点
- 「完全参加と平等」→差別の早急な解消
- 「共生社会」の実現→相手方を一方的に非難に制裁する趣旨ではない
- 「多様性」や「差異」の尊重→社会全体に活力をもたらすものである
目的規定に明記すべき視点
①行為規範(人々の判断基準)の提示
②差別からの法的保護
③国等の責務を明らかにすること
④共生社会の実現
国等の責務
- 差別の防止に向けた調査や啓発
- ガイドラインの作成
- 解決の仕組みの円滑な運用
- 関係機関の連携確保
- 関係機関の職員等に対する研修や人材育成など
(特に留意すべき領域:障害女性、ハラスメント、欠格事由)
「障害に基づく差別」とは何か
1.「障害」とは
障害基本法と同様、機能障害(インペアメント)を中心に据えることが妥当
2.「障害に基づく差別」とは
「不均等待遇」及び「合理的配慮の不提供」をいう
①不均等待遇
障害又は障害に関連する事由を理由とする区別、排除又は制限その他の異なる取扱い
ただし、当該取扱いが客観的に見て、正当な目的の下に行われたものであり、かつ、その目的に照らして当該取扱いがやむを得ないといえる場合は例外となる
②合理的配慮の不提供
障害者の求めに応じて、障害者が障害のない者と同様に人権を行使し、又は機会や待遇を教授するために必要かつ適切な現状の変更や調整を行うことを合理的配慮といい、これを行わないことは、差別となる。
ただし、相手方にとって「過度な負担」が生じる場合は例外となる
→ 経済的・財政的なコストの面では、相手方の性格、業務の内容、業務の公共性、不特定性、事業規模、その規模から見た負担の割合、技術的困難の度合い等を考慮
→ 業務遂行に及ぼす影響の面では、合理的配慮の提供により、業務遂行に著しい支障が生じるのか、提供される機会やサービス等の本質が損なわれるかどうかを考慮
第2部 各則(特に重要と思われる10分野)
各分野で、法の対象とする範囲(どのような場面での差別を対象とするか、誰を対象とするか)、「障害に基づく差別の具体的な内容などについて、考え方を整理。
【参考】各分野の事例
公共的施設・交通機関 段差のため利用できない、宿泊や乗り物の利用を断られる
情報・コミュニケーション 災害時緊急情報などが障害者に配慮しない形で提供される
商品・役務・不動産 「親を連れて来い」など言われ、日用品を売ってくれない
医療 十分な説明がないまま、治療をさせられる
教育 地域の学校へ行けない、授業・行事に参加させて貰えない
雇用 障害を理由として退職を強要される
国家資格等 点字受験などが用意されていない
家族形成 母子保健サービスなど障害のある親には利用が困難
政治参加(選挙等) 選挙に関する情報提供について十分な配慮を受けられない
司法手続 取り調べに当たって障害特性が配慮されていない
第3部 紛争の解決
求められる機能
①相談及び調整
自主的な解決が望めない場合に、まずは相談を受けて、理解のある人材が仲に入り、納得を得ながら、関係を調整すること
②調停、斡旋、仲裁、裁定
専門的な知識、素養、経験を有する専門家を含む中立・公平な機関による調停、斡旋等により、解決を図ること
簡易迅速な紛争解決の仕組みと司法判断
①相談及び調整を担える市町村単位の身近な相談機関
②調停等を担える都道府県単位の中立・公平な機関と中央に置かれる期間
③最終的には、裁判所による司法判断