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総合福祉部会 第11 回
H23.1.25 参考資料2
野原委員提出資料

第11 回総合福祉部会への意見書

提出委員 野原正平

1.難病対策要綱の継承とそれを担ってきた専門家の参画

 最終意見作成までの過程で、「難病対策要綱」を開拓・推進・支えてきた専門家・当事者の新法制定・実施過程への参画について、私は一貫して主張してきました。
第10 回部会でも他の委員から「いままで関ってきた医師などを抜きに、このまま進 んで良いのか」という趣旨の発言がありました。
難病についていうと「難病対策要綱」を推進してきた専門家(難病対策委員会関係・ 難病の横断的研究班)の医師・看護師他)、行政(保健行政・就労支援関係)は、難病 支援に関り専門的な知的財産を蓄積しています。新法の中に、この継承するとともに 是非、こういう人たちからの意見・見解を公的に聴取する機会をもつようにしてもら いたい。これができない場合は、新法の中に、「難病と福祉に関する審議会」(仮称) を設置して下さい。

2.健康権の明記・貫徹

 日本では、憲法で保障されている健康権(25 条:「健康で文化的な最低限の生活の保障」)が謳われていながら、社会保障・障害者・福祉法制のなかに「明確に位置づけられてこなかった」などがあり、近年「健康障害者」(内部障害者)に年金など若干の福祉的施策が実施されてきているが、現実の制度は複雑で極めて不徹底である。
健康権は、権利条約25 条で明記され、障害者基本法の第2 次意見書でも初めて明記 されたが、これを単なる「理念」に留めない具体的な施策に貫くことの保証を「総合 福祉法」(仮称)でどうするか…作業部会の現段階の議論では見えていない。
この点での十分な留意と、それを明記・貫徹する努力を今後の各作業部会の議論に 期したい。

3.「制度の谷間」対応には特別対応を

 上記の事情から、難病・内部障害者への福祉施策が体系的でなくバラバラな事態が ある。この問題は、現在の福祉制度を考える場合、そういう歴史的経過から、異常な 「制度の谷間」ができたと見ることができる。医療関連分野以外にも「谷間」はかな り存在する。
「医療と福祉」、「障害と難病」の制度の谷間の調査とそれに基づく打開施策を…特 別な課題として位置づけることが必要に思う。「谷間」の多くは、この領域に存在する と思われる(…が、実際のデータは乏しい)。従来の障害にある「谷間」に十分対応す ることが必要である。

以上


障がい者制度改革推進会議
委員の皆さま
総合福祉部会部会長
委員の皆さま

一般社団法人 全国心臓病の子どもを守る会
会 長 斉 藤 幸 枝
〒170-0013 東京都豊島区東池袋2-7-3 柄澤ビル7F
電話.03-5958-8070 FAX.03-5958-0508

 心臓病の子どもは100 人に1 人の割合で生まれてきます。しかしその多くは医療技術の発展により、成人し、健常者同様、社会人として生きて行くことができます。
しかし、一部の心臓病児は、多くの障害を抱え、家庭で、学校で、職場で頑張っており ます。心臓病児者は一見健常者の様に見えますので、外目にはわかりにくく、障害者であることが理解されにくいため、時として障害者施策からも抜け落ちてしまうことがあります。
そのような心臓病児者の状況をご理解いただき、内部障害者としての位置づけを明確にし、社会の一員として暮らしていける施策の検討を切に要望いたします。

♡1 小さな時は医療的ケアと育児支援が必要です。
お乳を飲まない、飲んでもすぐに吐いてしまう。母親は子どものそばを離れることができません。風邪を引きやすく、感染症に弱いので、外遊びが苦手です。
多くの自治体では子どもの医療費が無料になりましたが、複雑心奇形など手術できる医 療機関が限られている心臓病児は東京からも大阪、岡山、福岡に行くことは珍しくなく、多額の費用と家族への負担がのしかかっています。

♡2 学齢期は心臓病を理解した教育と学校の設備改善が必要です。
心臓病児は階段が特に苦手です。また、気温の変化にも敏感で、特に暑さは辛く、ぐっ たりしてしまいます。エレベーターと空調設備が欲しいのです。
また、心臓病児だからと、主治医の許可があるにもかかわらず、プールはダメ、体育も 見学といった一律対応ではなくその子にあった教育が望まれます。

♡3 成人後は遠隔期の医療的ケア、生活していける社会的サポートが必要です。
医療面では、成人先天性の心臓病の外来のある病院は全国でもまだ少なく、多くは小児 科や大人の循環器内科を受診しているのが現状です。対応で来る医療機関とスタッフの養成が急務です。また、心臓病者の妊娠・出産についての相談や対応のできる医療機関が少なく、一般の産婦人科では多くの場合、断られてしまいます。
心臓病者、特に成人先天性心疾患患者は健常者にくらべ、体調の変化が大きいため、一 般就労は厳しい状況です。先天性心疾患患者に合った職業訓練の開発や内部障害者雇用の拡大、事業者への理解の促進が必要です。
親が生活の面倒を見ている心臓病者は、親がいなくなったらと、不安です。


障害者制度改革にあたっての私たちの願い

1.心臓病児者の医療の充実について

 少子化が進む中、未来ある子どもに対する支援策の充実、特に医療の面では地域格差の是正・緩和が急務となっています。心疾患児及び成人先天性心疾患患者の医療やQOLが向上されることを望みます。

(1)心臓病の外科的治療に対しては、身体障害者手帳の有無にかかわらず、応能負担を原則とした公費助成を行うなど、現行の自立支援医療について、利用者本位の制度となるよう再構築してください。

(2)医療費の助成内容を充実するとともに、助成制度では地域格差が生じていることから、これを是正し、どこに住んでいても同様の負担で安心した医療が受けられるようにしてください。とりわけ、少子化対策とともに乳幼児や子どもの医療費助成と重度障害者への医療費助成制度については、国の制度による無料化をぜひ実現させてください。

(3)高度、先進的な手術や治療を受けるために、居住地を離れて入院せざるを得ない子どもに対する交通費や家族が一時的に滞在するための滞在費用などの軽減のため、公費支援制度を作ってください。

(4)心臓移植に関する全ての費用(臓器の搬送等を含む)について、健康保険及び公費負担の対象としてください。

2.小児慢性特定疾患治療研究事業について

小児慢性特定疾患治療研究事業の改善とともに、20歳以後(キャリーオーバー)の患者への医療費助成のための支援策の制度化を望みます。

(1)慢性心疾患に係る認定基準(基準告示)を改善し、将来的に手術を含めた治療の可能性がある「経過観察」についても制度の対象であることを明確に反映してください。

(2)小児慢性特定疾患治療研究事業と特定疾患治療研究事業の整合性を確保するととも に、両制度の法制化を図るなど、財政的な安定、そして地域格差のない患者の立場に 立った制度にしてください。

3.福祉

心臓病児者の障害は、手術をして改善されても、生涯にわたって医療を必要とする人は 多く、その障害は外見からはわかりにくいのが実情です。心臓病児者の障害を正しく理解 し、心臓病児者の自立のために支援策の検討をすすめ、QOLの向上につながる適切な施 策を拡充してください。その具体策として、次のことを要望します。

(1)障害者が地域で自立して生活していくために必要な助成制度を作ってください。

(2)現在の日常生活用具給付については、障害者自立支援法、介護保険法、児童福祉法 に基づくもののほか、「難病患者等居宅生活支援事業」や「小児慢性特定疾患児日常生 活用具給付事業」によるものが並存しており、これらの制度については、給付対象と なる用具の種目がそれぞれ異なるほか、適用の優先順位もあり、大変分かり難く、使 い難い状況があるため、利用者の視点に立ち、制度の統合や改善、適切な周知などを進めてください。

4.教育

(1)内部障害も特別支援教育の対象となることを周知してください。

(2)障害に応じて必要な教育を受けられるようにするため、通常学級、特別支援学級、 特別支援学校など、希望する学校または学級を選択できるようにしてください。

(3)入院や自宅療養などにより登校が困難な場合に学習の空白が生じないよう、学籍の 移動をせずに受けられる訪問学級や院内学級などの教育の場を保障してください。

(4)エレベーター・スロープ・冷暖房の設置・洋式トイレの設置など多様な障害に対応 できるよう学校施設のバリアフリー化をすすめて下さい。

(5)支援員や補助教員の配置など必要な人的配置が行われるように制度を改善してくだ さい。

(6)移動支援を通学にも使用できるようにして下さい。

5.仕事

(1)身体障害者手帳所持の有無に関わらず、難病、慢性疾患患者も含めた障害者が、安 心して働き続けられるための制度を作ってください。

(2)障害の特性や実情に応じた就労形態も可能とする柔軟な制度を作ってください。

以上