音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

総合福祉部会 第11 回
H23.1.25 参考資料5
山本委員提出資料

08年7月28日
国連第63回総会への拷問及び他の残虐な、非人道的 な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する、 人権理事会特別報告官(Prof. Manfred Nowak)の報 告

英語全文はこちらからワードファイルをダウンロード

以下は一部3 章のみの訳しかも注は省いてあります。

拷問等禁止条約についてはこちら外務省のサイトに掲載中

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する中間報告

要約

国連総会決議62/148に従って提出する当報告書において、特別報告官は彼の権限内 にある疑問点についてのとりわけ全体的は傾向と発展において特に懸念される事柄につい て述べている。
 特別報告官は総会に対して、障害者の状況について注意を喚起しており、障害者が放置、 拘束や隔離という厳しい状態、また同様に、身体的、精神的、性的暴力に頻繁にさらされ ていることに注意を喚起する。彼は公的施設のみならず民間領域でも同様にこうした行為 が行われているにもかかわらず、こうした行為が表面化せず、また拷問及び他の残虐な、 非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰と認識されていないことに懸念を表明 する。最近発効した障害者権利条約とその選択議定書は障害者に関して反拷問という枠組 みから再点検する絶好の機会を提供している。障害者に対してふるわれている暴力と虐待 を拷問あるいは残虐な取り扱いとして再考することにより、被害者そしてその権利を擁護 するものはより強い法的保護と人権侵害への補償を獲得することができる。
 4章において、特別報告官は独居房への隔離拘禁の使用を検証している。独居拘禁は明白 に、精神的健康への否定的な影響があるものとして記録されている。そしてそれゆえ、独 居拘禁は例外的な条件においてのみあるいは犯罪調査の目的で絶対的に必要とされる場合 にのみ行われるべきであるとしている。特別報告官は報告の付属文書として、非拘禁者の 権利尊重と保護を促進する有益な手段として独居拘禁の利用と効果におけるイスタンブー ル宣言に注意を喚起している。

  中略

三章 障害者の拷問からの保護

37 その権限行使において、特別報告官は障害者に対して行われている多様な形態の暴力と虐待についての情報を得てきた。これら障害者には男性、女性、子供が含まれるが、彼らの障害ゆえにこの人たちは放置と虐待の対象とされている。

38 障害者は施設に入れられ社会から隔離されていることが多い。こうした施設には刑務所、福祉的ケアセンター、児童施設そして精神保健施設が含まれる。障害者は意思に反し あるいは自由なインフォームドコンセントもなしに、長期間自由を奪われている。これは 時には一生にわたる場合もある。これらの施設内部では、障害者は、頻繁に言語に絶する 屈辱的な処遇、放置、身体拘束と隔離拘禁といった厳しい処遇、同様に身体的、精神的、 性的暴力にさらされている。拘禁施設における合理的配慮の欠如は放置、暴力、虐待、拷 問そして残虐な処遇にさらされる危険を増加しているといえよう。

39 民間領域において、障害者はとりわけ暴力と性的虐待も含む虐待にさらされやすい弱者 である。家庭内、家族の手によってあるいは介護するもの、保健従事者、そして地域社会 の成員の手によって虐待が行われている。

40 医学実験や侵襲的で非可逆的な医療が同意なしに障害者に対して行われている(例え ば、不妊手術、中絶そして、電気ショックや抗精神病薬を含む精神を変容させる薬といっ た障害を矯正したり軽減したりすることを目的とした介入)

41 特別報告官は、多くの事例において、こうした行為が障害者に対して行われる場合に おいて、表面化しなかったり、あるいは正当化されたりしており、拷問及び他の残虐な、 非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰と認識されていないことに懸念を表明 する。最近発効した障害者権利条約とその選択議定書は障害者に関連する事柄について拷 問禁止の枠組みから検証する絶好の機会を提供している。

A 拷問から被害者を保護する法的な枠組み

42 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は罰禁止条約、および、 国連自由権規約7 条、子供の権利条約37 条、において拷問の絶対的禁止が含まれており、 障害者権利条約においても拷問の禁止が15 条において再確認されている。障害者権利条約 15 条によれば、障害者は拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若し くは刑罰を受けない権利を有しており、特に科学的医学的実験を受けない権利を有してい る。15 条第2項において締約国は、他のものと平等に拷問や虐待から障害者を保護するた めに、効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる義務がある

43 障害者権利条約16 条は障害者に対しての暴力、虐待搾取を禁じており、また17 条は すべての障害者に対して、身体的精神的インテグリティ(不可侵性完全性)が尊重される 権利を認めている。

44 特別報告官は障害者に関しては、障害者権利条約は更に権威あるガイドを提供するこ とにより、拷問および虐待の禁止についてのほかの人権条約を補強していることを明記す る。たとえば、条約3 条は障害者の個人としての自律の尊重の原則そして自らの選択の自 由を宣言している。さらに12 条はあらゆる生活領域、例えばどこにすむか決めること医療 を受けるか否かを決めることなどが含まれるが、において法的能力を享受する平等な権利 を認めている。さらに付け加えて、25 条においては障害者の医療は自由なインフォームド コンセントを基盤としなければならないとしている。したがってかつての拘束力のない基 準、例えば国連原則として知られている、1991 年の精神疾患者の保護および精神保健ケア の改善に関する原則(決議46/119)について、特別報告官は非自発的治療と非自発的拘禁 を受け入れることは障害者権利条約の条項に違反と明記する。

B 障害者に対して、適用する拷問と虐待からの保護の枠組み

45 国際法において、とりわけ拷問禁止条約の下では国家は拷問を犯罪行為とする義務が ある。すなわち加害者を起訴し、犯罪の重大さに応じた適切な刑罰を科し、そして被害者 に賠償提供する義務がある。障害者に振るわれている暴力と虐待を拷問及び他の残虐な、 非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰として認識し位置づけなおすことによ り、被害者およびその権利擁護者は人権侵害に対するより強い法的保護と補償や回復を獲 得しうる。

1 拷問の定義の要素

46 拷問と虐待からの保護に関する障害者権利条約15 条の適用については拷問禁止条約の 1 条に含まれる拷問の定義によって説明することができる。障害者に対する行為あるいは障 害者を尊重しないという怠慢が拷問となるには、拷問禁止条約の拷問の定義の4 つの要素 すなわち、激しい痛みや苦痛、意図、目的そして国家の関与、が存在することが必要であ る。この定義を満たさない行為であっても、拷問禁止条約16 条のもとで、残虐な、非人道 的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰となることもある

47 その本質上、苦痛や痛みの度合いの評価に当たっては、そのケースについてのすべての 条件が検討されることが求められる。その条件には障害の存在そのものと同様に、被害者 の処遇や拘禁条件の結果、損傷が生じあるいは悪化したかについても注目する必要がある。 医学的治療として完璧に正当化されうるものであろうと、医療は重大な痛みや苦痛をもた らし、侵襲的で非可逆的な本質があるがゆえに、治療的目的に欠けるときあるいは障害を 矯正するまたは軽減する目的を持つときで、当事者の自由なインフォームドコンセントな しに強制され行われるならば、拷問そして虐待を構成することとなろう。

48 拷問禁止条約における拷問の定義は、いかなるものであろうと差別を根拠とした身体 的精神的苦痛をもたらす行為を明白に禁止している。障害者の場合、特別報告官は障害者 権利条約第2 条が障害を根拠とした差別について以下述べていることを想起する。「障害に 基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的 その他のいかなる分野においても、他の者との平等を基礎として すべての人権及び基本的 自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するもの をいう。障害に基づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を 含む。」

49 さらに拷問禁止条約の第1 条の意図という要件は障害に基づいて差別されてきた人に ついては有効に適用されうる。このことはとりわけ、障害者に対する医療の文脈において、 重大な侵害と差別が障害者に対して、保健専門職の一部においては「よき意図」というご まかしにおいてなされうるということについては重要な関連がある。単なる過失や怠慢は1 条の求める要件である意図にかける、しかし、重大な痛みや苦痛をもたらすものであるな ら、そうした過失や怠慢も虐待を構成しうる。

50 拷問すなわち、個人のインテグリティ(不可侵性統一性)と尊厳へのもっとも重大な 人権侵害は、他の者による全的な支配の下に被害者が置かれるが故の、無力さを前提とし ている。障害者がそうした状況におかれることはよくあることだ。例えば、監獄あるいは 他の場で自由を奪われているときあるいは介助者や法的後見人の支配下におかれていると き。一定の状況下では個人の特定の障害が、その個人を依存的な状況下に置くことがあり がちで、そしてそうした個人は容易に虐待の対象となりがちである。しかし「無力さ」は しばしば個人の外側にある環境がもたらすものである。意思決定の行使そして法的能力を 差別的な法律や運用によって奪われ他の人にその権限を与えられるというときに「無力さ」 が生じるのだ

2 誰に責任があるか?

51 政府の関与という要件に関して、特別報告官は、拷問の禁止は公務員に限ることなく、 厳密な意味で法的な権限を持った機関のようなものに限らず、民間病院、あるいは他の施 設や拘禁施設で働く場合も含めて、医師や保健従事者、ソーシャルワーカーにも適用され ることもあると明記する。拷問禁止条約委員会の一般見解のNo.2(2008)で強調 されているのは、あらゆる種類の施設で拷問の禁止がなされなければならないということ であり、締約国は国家機関によらないあるいは民間機関における拷問の禁止については徹 底して予防し、調査し、起訴処罰すべきであるとしている。

3 何に責任があるのか?

(a)貧しい拘禁条件

52 数え切れないほどくりかえし、拷問禁止条約委員会は精神保健施設や障害者用の家の 貧しい生活条件について、拷問等禁止条約16 条の下の虐待という視点から、懸念を表明し てきた。施設の貧しい条件は、適切な食事、水、医療的ケア、衣服を拘禁下ある人に提供 すべき義務を国家が果たしていない結果である場合が多い。そしてこうした貧しい条件は 拷問と虐待を構成しうるのだ。

53 国家は障害者に対して直接的間接的な差別がなされないよう、拘禁下の処遇あるいは 環境条件を整えることを確保するさらなる義務がある。もしこうした差別的処遇が痛みや 苦痛をもたらすのであれば、それは拷問あるいは他の虐待を構成しうる。ハミルトン対ジ ャマイカのケースにおいて、人権委員会は、申立人の障害を考慮し、適切な配慮をして、 独房に拘禁し、彼の汚水バケツを取り上げることを認めたことが、国連自由権規約の7 条 と10 条に違反するか否かを審査した。委員会は両足の麻痺した申立人は、条約10 条の第1 項に違反して、人道的にかつ人間としての固有の尊厳への尊重を持って処遇されていない と判断した。プライス対英国の場合、ヨーロッパ人権裁判所は、身体障害のある女性の拘 禁条件について、利用不可能のトイレとベッドも含め、ヨーロッパ人権条約3 条の品位を 傷つける処遇となるとした。

54 特別報告官は障害者権利条約14 条第2 項は以下の締約国の義務を定めていると明記す る。それは自由を奪われた人は合理的配慮を提供される権利があるということを確保する という義務である。このことは手続きにおいてまた、拘禁施設、これらはケアのための施 設や病院も含むが、において障害者が他のものと同じ権利と自由を享受することを確保す るために、その調整が過大な負担をもたらさない限り、適切な調整を行う義務があるとい うことだ。障害者に対する合理的配慮の否定や欠如は虐待や拷問とみなされるほどの拘禁 や生活条件を生み出しうる。

(b)身体拘束と隔離の使用

55 施設の貧しい条件はしばしば身体拘束と隔離という厳しい形態を伴っている。障害のあ る子供たちや成人は長期にわたりベッドや、檻あるいはいすに縛られたりすることがある。 鎖や手錠をはめられることもある。"檻"や"檻つきのベッド"に拘禁されることもある。また 大量の薬を与えられることも化学的身体拘束といえよう。"長期にわたる身体拘束は筋肉の 萎縮、生命にかかわる変形、そして内蔵の損傷を生み出しうるということ"、そして精神的 な損傷を悪化させることを明記しておくことは重要である。特別報告官は拷問や虐待を構 成しうる長期にわたる身体拘束について、治療的正当化はありえないと明記する。

56 治療的理由からは正当化できず、処罰の一形態であるにもかかわらず、施設において 障害者は管理の一形態としてあるいは医療的治療としてしばしば隔離され独房に拘禁され る。2003 年12 月米州人権委員会はパラグアイの国営神経精神病院に拘禁されている460 人を保護するために予防的対策を承認した。この460 人の中には独房に裸で非衛生的な条 件で4 年間以上も独居拘禁されていた二人の十代の少年も含まれていた。Victor Rosario Congo 対エクアドルの場合、米州人権条約委員会は社会復帰センターにおいて精神障害の あるCongo 氏が独房に拘禁されていることは米州人権条約第5 条2 項に定められた非人道 的で品位を傷つける処遇を構成すると認めた。特別報告官は人に対する長期の独居拘禁と 隔離は拷問あるいは虐待を構成する場合があることを明記する。

(c)医療の領域

57 医療の領域において、障害者はしばしば重大な虐待と身体的精神的インテグリティの 権利の侵害を体験している。とりわけ実験においてあるいは特定の損傷の矯正あるいは軽 減を目指した治療において。

(ⅰ)医学的科学的実験

58 障害者権利条約15 条の下では、薬物の治験含め障害者に対する医学的科学的実験は当 事者の自由な同意のあるときのみ、そして実験の本質が拷問または残虐で非人道的品位を 傷つける処遇とみなされえないときにのみ許される。

(ⅱ)医療的介入

59 ロボトミーと精神外科手術の実施は実例として役立ちうる。侵襲的で非可逆的な治療 であればあるほど、自由なインフォームドコンセントを根拠としてのみ保健専門職が治療 を障害者に提供することを確保するより強い義務が国家にはある。子供の場合にはもしそ うした介入が治療的目的にのみ行われるのであれば、保健専門職がそうした介入が子供の 最善の利益において、そして両親の自由なインフォームドコンセントに基づき行われるこ とを国家は確保しなければならない。(しかしながら両親の同意は治療が子供の最善の利益 に基づかない場合は無視されなければならない)。さもなければこうした治療は拷問あるいは残虐で、非人道的もしくは品位を傷つける処遇となりうると特別報告官は明記する。

a 妊娠中絶と不妊手術

60 無数の障害のある成人と子供が政策の結果としてまたそうした目的を持って制定され た法律によって強制的に不妊手術を行われてきた。障害者とりわけ女性と少女が施設の中 と外とを問わず、自由なインフォームドコンセントなしに中絶や不妊手術を強制され続け ている。この行為の関しては報告されている。特別報告官は障害者権利条約23 条C項の下 で「障害者(障害のある子どもを含む。)が他の者との平等を基礎として生殖能力を保持す る」ことを確保し、また自由と責任をもって、子供の数と出産の期間を決める権利を確保 することが締約国の義務であることを明記する。

b 電気痙攣療法

61 囚人に対する電気ショックの使用は拷問および虐待を構成すると認められてきた。発作 を引き起こす電気ショックあるいは電気痙攣療法の使用は精神あるいは知的障害をもつ人 への治療法として、1930 年代にはじまった。ヨーロッパ拷問禁止委員会は非修正電気痙攣 療法(例えば麻酔、筋弛緩剤あるいは酸素補給なしのもの)が精神保健施設において障害 の治療のために人に行われていることさらには処罰の形態としてさえ行われていることを 報告している。特別報告官は、非修正電気痙攣療法は、重大な痛みや苦痛そしてしばしば 重大な医療的結果例えば骨折、じん帯の損傷や脊髄損傷、また認知障害や記憶喪失の可能 性などをもたらすことがあることを明記する。非修正電気痙攣療法は医療行為として許容 されることはできず、また拷問あるいは虐待を構成しうる。修正電気ショックの形態であ れ、当事者の自由なインフォームドコンセントにもとづいてのみ行われることはきわめて 重要である。この自由なインフォームドコンセントには、副作用や心臓への影響や混乱、 記憶喪失さらには死亡といったリスクの説明を受けること含まれる。

c 強制的精神医学的介入

62 拷問や虐待の手段としての政治的弾圧を目的とした、例えばテロリズムとの戦いとい う文脈での精神医学の使用、より少ないとはいえ、個人の性的指向を弾圧し、支配し変更 しようとする試みを目的として行われる治療については詳しく報告されてきた。しかし、 特別報告官は精神医学の乱用と障害者への強制、主として精神的知的障害をもつ人への強 制についてより重大な注意を喚起する。

63 施設内そして地域での強制医療も同様であるが、精神医療、抗精神病薬と精神を変容 させる薬も含む投薬が精神障害者の自由なインフォードコンセントなしにあるいは意思に 反して強制的にあるいは処罰の一形態として行われることがある。拘禁施設と精神保健施 設における薬の投与、それは抗精神病薬も含まれえるが、この抗精神病薬はふるえをも らしたり、無気力な状態にさせたり、知性を曇らせたりするものであり、こうした薬の投 与は拷問の一形態として認識されてきた。Viana Acosta 対ウルグアイのケースでは、人権 委員会は、申立人の処遇、治療は非人道的処遇を構成すると結論を出した。この治療処遇 には、精神医学的実験、彼の意思に反したトランキライザーの強制的注射などがふくまれ ていた。特別報告官は精神状態の治療のための、強制的そして同意のない、精神科の薬の 投与とりわけ抗精神病薬の投与は詳細に検証される必要があることを明記する。個別のケ ースの情況、与えられる苦痛そして個人の健康への効果、これらの検証しだいでは、拷問 あるいは虐待の一形態となることもありうる。

d 非自発的精神保健施設への収容

64 多くの国家が、法的根拠のあるなしにかかわらず、精神障害者を自由なインフォーム ドコンセントなしに施設収容することを許容している。その根拠は精神障害の診断の存在 と共に追加の基準が使われることがよくある、それは例えば「自らあるいは他者に対する 危険性」あるいは「治療の必要性」というものである。特別報告官は障害者権利条約の14 条が法によらない恣意的な自由の剥奪の禁止と障害の存在が自由の剥奪の正当化とされて はならないとしていることを想起する。

65 特定の事例においては恣意的あるいは法によらない障害の存在を根拠とした自由の剥 奪はまた個人へ重大な痛みや苦痛をもたらす場合もあり、したがって拷問禁止条約の対象 となる。自由剥奪による苦痛の影響を検証するには、施設収容の期間、また拘禁や処遇条 件が考慮されなければならない。

(d)性的暴力も含む障害者に対する暴力

66 施設内において、他の患者や被収容者また同様に施設職員によって障害者は暴力にさ らされることがある。Ximenes Lopes 対ブラジルのケースでは米州人権裁判所は、精神科 病院へ収容された患者に対する暴力という文脈において、被害者に行われた日常的な殴打 や身体拘束そして貧しい拘禁条件,(たとえば貧しい保健ケア、低い衛生状態や不足がちな 食事)は、米州人権条約5 条の1 項と2 項の下での拷問と虐待の禁止と身体的精神的イン テグリティの権利の侵害であるとした。

67 もし、病院、ケア施設あるいは同様の施設において働く公務員も含む、公務員によっ て、あるいは公務員の示唆にまたは同意あるいは黙認の下で行われたのであれば、拘禁下 での強姦は拷問を構成することを特別報告官は繰り返し発言する。

68 民間領域において、家族の手によってまた障害者の介護者によっての双方によって、 障害者は男女にかかわらずほぼ3 倍も身体的性的虐待と強姦の被害者となっている。女性 や少女はジェンダーと障害の二重の差別の結果として、親しいパートナーによる暴力も含 め高い比率の暴力を経験している。Z対英国とA対英国のケースにおいてヨーロッパ人権 裁判所は個人とりわけ子供と他の弱者を虐待から保護する政策を採る義務が締約国にある ことを認めた。同様に当局は虐待を防止する合理的な段階を取るための知識を持つあるい は持つべき義務を認めた。

69 障害者権利条約16 条が宣言しているように、締約国は家庭の内外、そしてジェンダー にもとづくものも含み、あらゆる形態の暴力、虐待および搾取から障害者を保護しそれら を予防するため、またこれらの責任について調査し訴追するすべての適切な政策をとる義 務がある。特別報告官は、締約国の障害者への暴力に関する黙認は多くの形態がありうる ことを明記する。それは、法的能力を奪う法律という差別的な法の枠組みや運用あるいは これらの暴力が刑罰を逃れるという結果をもたらす障害者に対する司法への平等なアクセ ス保障の失敗もふくまれる。

C 結論と勧告

70 特別報告官は障害者権利条約の発効にあたって以下を歓迎する。障害者権利条約は拷 問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰の絶対的な禁止を 再確認していることそして、障害者の基本的な権利と自由へ解釈についての権威あるガイ ドを示していること。障害者に対して行われた侮辱、放置、暴力そして虐待の一連の報告 に対して、これらの行為がどう認識されるか、例えば拷問や虐待と認識されることそして、 国際的拷問禁止の枠組みが活用されることは、法的保護と補償への道を切り開くであろう。

71 特別報告官はとりわけ2 条の非差別条項に注目した上で、障害者権利条約の批准と、 完全履行を各国政府に呼びかける。

72 条約締約国は条約が公刊され広められ、そして市民にあまねく啓発啓蒙がなされ関連 するさまざま専門職グループ(例えば、裁判官、弁護士、法執行公務員、公務員、地方自 治体公務員、施設職員そして保健専門職など)すべてに広く訓練されることを確保しなけ ればならない。公務員と民間機関の職員は同様に障害者を拷問と虐待から保護しそれらを 防止する役割を持つ。

73 条約を守るために締約国は、障害者に法的能力があることを認める法律を制定しなけ ればならない。また必要であるならば、説明を受けた上で決定するために必要な支援を提 供することを確保しなければならない。

74 締約国は、「自由なインフォームドコンセント」が何を意味するかについての明白であいまいでないガイドラインを条約の求める基準で公布しなければならない。また使いやすくアクセスしやすい不服申し立ての手続きも作らなければならない。

75 独立した人権監視機関(例えば国内人権機関、拷問禁止機構、市民団体など)は障害 者が住んでいる施設、例えば監獄、福祉ケア施設、児童養護施設そして精神保健施設など を定期的に監視しなければならない。

76 特別報告官は関連する国連および地域の人権機構に対して、個人の不服申し立ても含 み、拘禁施設の監視を行うさいに、障害者権利条約に含まれる新たな基準に完全に配慮し た上で、これらの監視調査に新たな基準を統合することを呼びかける。

後略


A/HRC/10/48
26 January 2009
Original: ENGLISH
HUMAN RIGHTS COUNCIL
Tenth session Agenda item 2

ANNUAL REPORT OF THE UNITED NATIONS HIGH COMMISSIONER FOR
HUMAN RIGHTS AND REPORTS OF THE OFFICE OF THE HIGH
COMMISSIONER AND THE SECRETARY-GENERAL
Thematic Study by the Office of the United Nations High Commissioner for Human
Rights on enhancing awareness and understanding of the Convention on the Rights of Persons with Disabilities* **

09年1月に国連高等弁務官事務所によって人権委員会に報告された上記文書
一部抄訳(訳 山本眞理)
全文英文は以下に掲載
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/10session/A.HRC.10.48.pdf

5 人としての自由と安全の権利

48 障害者の自由と安全への権利の促進と保護という文脈では特に挑戦されるべきは、当 事者の自由なインフォームドコンセントなしでの保健ケアさらにとりわけ施設収容に関す る法律と運用である。これらはしばしば非自発的あるいは強制的収容と呼ばれる。障害者 権利条約の発効に先立っては、国際人権法の下で、精神障害の存在は自由剥奪と拘禁に法 的根拠を与えていた。いかなる障害の存在、精神的あるいは知的障害の存在も含め、障害 の存在を基礎とした自由の剥奪を差別として禁止することにより、障害者権利条約は根源 的に上記のアプローチから離れている。この自由剥奪の禁止は条約14条の第1項のb) 「障害の存在によっていかなる場合も自由剥奪を正当化されてはならない」おいて明白に 宣言されている。条約作成過程において拘禁禁止の制限をするために、「障害のみを」とい う場合に限るという意見があったが、それは拒否された。その結果、精神あるいは知的障 害とほかの要素たとえば危険性あるいはケアや治療という要素とが複合された上で、根拠 とされる自由の剥奪という状況についても拘禁の違法性に含まれることとなった。なぜな らこうした方法は人の障害により一部正当化されているからで、こうした方法は差別とみ なされるべきであり、障害を基礎とした自由剥奪禁止違反と14条による他のものと平等 な自由への権利侵害とみなされるべきである

49 自由なインフォームドコンセントなしの障害を基礎とした障害者の施設収容を正当 化している法律は廃止されなければならない。このことは自由なインフォームドコンセン トなしに、ケアや治療のために障害者を施設収容することを正当化する条項の廃止を含ん でいなければならない。同時にたとえば自傷他害のおそれの可能性を根拠として障害者を 予防拘禁することを正当化する条項も廃止しなければならない。こうした条項においては あらゆる場合において、ケア、治療あるいは社会の安全は、法律によって、明白なあるい は診断された精神疾患と結び付けられているからだ。これらのことは障害者がケアと治療 あるいは予防拘禁のために法的に拘禁され得ないということとは解釈されない。そうでは なくて、自由の制限の法的根拠が決定される際に障害ときりはなされなければならないこ と、そして他のすべての人と平等を基礎として障害とは切り離された中立的な根拠とされ なければならないということである。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)
専門家研修シリーズ第17 号
人権モニターのためのガイダンス
(2010 年4 月リリース)
一部抄訳(訳山本眞理)
全文の英文は以下に掲載
http://www.ohchr.org/Documents/Publications/Disabilities_training_17EN.pdf

障害者の権利条約のモニタリング(監視)
第4 部 モニタリングの実践

1法の前で平等に認められることと法的能力
一般的監視に向けた質問

障害者は自らの法的行為能力を享受しているか?

尊重されるべき義務

例 国連の人権事務所は、性暴力被害者として申し立てをした障害のある女性について裁 判所が証言の資格がないとした例を調査した。裁判所は彼女の障害ゆえに信頼できる証人 ではないと主張した。この裁判所の行為は明らかに国の尊重すべき義務違反である

*障害者が他のものとの平等を起訴として法的能力を享受することが法的に権利として認 識され保障されているか?
こうした法的保障において差別とみなされる例外規定があるか? たとえば、精神あるい はほかの種類の障害を基礎として(例としては「正常でない精神状態」の人あるいは「狂 気の人」を例外としてあげている条項)
*その障害を基礎として完全にあるいは一部の法的行為能力を障害者から奪うような法的 機構があるか? (たとえば完全なあるいは部分的後見人制度、他人を代理人として任命 し、そのものが障害者の代理人として行為するような法的仕組みがあるか?)
*障害者が他のものとの平等を基礎として法的行為として契約することを法律が認めてい るか?(たとえば、結婚、離婚、銀行口座の開設、銀行貸付や抵当あるいはほかのあらゆ る形態の財政上の貸付、クレジットカードなど、また法廷で自ら防御する権利、法的手続 きにおいて証人として参加すること、財産を持ったり相続したりすること、遺言、自らの 医療をコントロールすることなど)

保護すべき義務
*国は障害者の法的能力行使の権利行使に際して彼らの権利濫用から障害者をいかにして 保護しているか? 法的能力行使において障害者に提供される支援の乱用を防止するため に適切で効果的な安全防止策を国は持っているか?
*障害者が法的能力行使の権利が否定された場合、それをただし取り戻す手段が障害者に 保障されているか?(たとえば、サービス提供者が、その人の意思表明を無効であるとし て意思受け入れを拒んだ場合、障害者が医療を受けるあらゆる環境において家族や後見人 の同意が求められた場合)

充足されるべき義務
*国は法的能力の行使において支援を必要とするかもしれない障害者に対して、そうした 支援を障害者に提供するための、法律、法的に認知された機構も含む、政策や計画をもっ ているか?
*国は法的行為能力行使と法的手続きへの直接参加のために求められる支援を障害者に提 供しているか? これらの支援には手話の利用あるいは点字またはわかりやすい言葉を使 ったファシリテーションを通したものも含まれる。そうではなくて障害者は法的後見人を 通してのみ法的手続きや権利行使を認められているか否か?

5 人としての自由と安全への権利

一般的監視に向けた質問
障害者が、障害を基礎としてその自由を剥奪されているか?

尊重されるべき義務
*障害者は他のものとの平等を基礎として自由と安全の権利を有しているか?
*障害を持っていることを理由に、障害のみを理由にだけではなくほかの因子も加えられ ているかも含め、自由剥奪(刑務所、精神保健施設あるいは他の施設)を法律が認めてい るか?

保護されるべき義務
*国は第三者たとえば家族が障害を基礎として障害者の施設収容をすることを禁じている か?
*国は障害を基礎として自由を剥奪された障害者に対して救済を行っているか?

充足されるべき義務
*国は合法的に自由を剥奪された障害者(たとえば刑事手続きの結果として)に対して合 理的配慮を提供しているか?