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総合福祉部会 第12回 H23.2.15 資料3

相談支援・支給決定作業チーム報告

Ⅰ.はじめに

 作業チーム検討範囲

 当作業チームでは、第一期の検討範囲として、自己決定支援・相談支援(論点C-1)について、現状の問題点や課題を明らかにし、新法においてのあるべき姿について検討を行った。現在の障害者の相談支援事業については、おもな問題点としては、

  1. 地域支援事業に位置付けられていること等により、市町村による格差が大きいこと【市町村格差】
  2. 相談支援事業についての十分な理解が定着していないために、問い合わせや情報提供といった「一般相談」をイメージした体制整備にとどまり、具体的な生活を支援するための踏み込んだ訪問相談や同行支援、継続的な支援を行うのが難しい状況にあること【相談支援体制の不備】
  3. 各相談事業の守備範囲により、対象や制度に合わせて対応せざるをえず、限定的な支援となってしまうか、または他の相談機関に「たらいまわし」になりがちであること【限定的な支援】
  4. 手帳を所持していない谷間の障害に十分に対応できていないこと【谷間の障害への未対応】
  5. 横断的な課題をもった複雑なニーズをもつ人の相談支援に十分にこたえきれないこと【横断的な対応の不備】
  6. 難病(難治性慢性疾患)、高次脳障害、発達障害など、障害特性に応じた専門的な相談支援が必要な場合に、身近な地域での相談支援が整備されていないこと【障害特性に応じた専門相談体制の不備】
  7. 前記4~6を支えるための他職種・機関の連携・調整の制度的な保障がないこと【他職種・機関との連携調整体制の不備】
  8. これらの相談支援体制にかかわる専門職を含めた人材が大幅に不足していること【人材の不足】

などがあげられた。

また現在の支給決定と相談支援の関係においては、

  1. 本人の希望やニーズを聴ききとり、必要な支援についての計画を立案する以前に支給決定がおこなわれているため、ほとんど計画策定のための相談支援に至らない。
  2. 障害程度区分により国庫負担基準が定められているため、市町村によっては、これが上限設定となってしまい、ニーズがあっても支給に反映されない場合がある。

などがあげられた。

 今回の報告では、これらの現状の課題をふまえて、地域で暮らすために、障害のある本人のセルフマネジメント、また支援付き自己決定を支える相談支援の在り方について、その役割と機能、および相談支援体制について示した。
 さらに、「協議・調整による選択と決定のプロセス」(C-3-1)についても、合わせて検討した。なお、第一期の検討にあたっては、以下の点に留意した。

  1. 目的の順守 本人の思いに添う支援体制づくり
  2. 目標 目的に添って機能しやすい支援体制づくり
    当事者参画によるシンプルでわかりやすい仕組み

Ⅱ.結論

新たな相談支援の在り方について

相談支援のあり方の抜本的な見直し(質と量)、エンワパワメント支援、ピアカウンセリング、ピアサポートの充実についての検討結果は以下のとおり。

論点表(C-1-1)、C-1-2)、C-1-3)、C-1-4)

1.「自己決定支援」及び「相談支援」の目的と内容

○ 障害の特性や状態によって、コミュニケーションや自己表現の在り方は異なることはいうまでもないが、相談支援は、「障害のある人が地域で暮らし、社会参加していくための自己決定や選択を、その人の立場にたって支援する」ことが目的である。

○ さらに、障害のある当事者、家族自身が支援を通じてエンパワメントされていくことも、相談支援の重要な目的として位置づける。

○ 相談支援の対象は、福祉制度を利用する際の相談のみでなく、障害、疾病などの理由があって生活のしづらさ、困難を抱えている人びとに、福祉・医療サービス利用の如何に関わらず幅広く対応する。

○ 当事者の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネートを行う。

○ 障害のある人のニーズを明確にするとともに、その個別のニーズから、新たな地域での支援体制を築くための地域への働きかけも同時に行う。⇒ 障害のある個人に対する働きかけと、地域への働きかけを行う。(自立支援協議会との連携の在り方を明確にする。)

2.相談支援の機能と体制について(図1参照)

(1)多層的相談支援体制の整備充実と各相談機関の役割と機能

○ 地域相談支援センター、総合相談支援センター、広域専門相談支援センターの配置を基本とし、多層的な相談支援体制を整備する。

○ 地域相談支援センター、総合相談支援センター(総称して、以下相談支援事業所とする)は、障害当事者の側に立って支援することから、給付の決定を行う市町村行政やサービス提供を行う事業所からの独立性が担保される必要がある。そのため、都道府県・政令市が指定することを基本とし、地域の実情に合わせて障害保健福祉圏域単位や市町村域の単位で障害当事者や障害福祉関係者、行政関係者が参画する運営委員会の設置などを通じて、必ず運営のチェックが実施されることを担保する。財源は出来高払いではなく、人件費相当の義務的経費による。( 相談支援の事務所等の確保・整備にかかる費用も含む)

○ 相談支援事業所は、市町村ないしは広域連合、及び都道府県・政令市の自立支援協議会の運営( 事務局)の任を行政とともに担い、相談支援から見えてきた新たなニーズに対応する地域資源開発を行う。(これについては、地域資源整備チームにおける検討内容との調整が必要)

○ 相談支援事業所間の連携を目的とした、対応困難事例を含めた情報交換や相談が可能となる仕組みを構築する。

(2)地域相談支援センターの規模と役割

○ 地域相談支援センターは、もっとも住民の生活に身近な圏域(人口3~5万人に1ヶ所を基準とする)を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事業を委託して設置する。(都道府県指定、国庫補助事業とすることについては、第二期で継続検討とする)

○ 本人に寄り添った相談支援(アウトリーチを含む)、継続的な相談支援を行う。具体的には、下記のような人への対応を想定する。

  1. 支援を受ければ、ある程度希望の実現やニーズの解決が想定できる人
  2. 生活の質の維持や社会参加に継続してサービスを利用する必要があり、また希望の表明や制度手続き、サービス調整などに一貫した支援を希望する人
  3. 社会資源の活用をしておらず、生活が困難な状態にあり社会参加が果たせていない人(手帳をもたない人も含む)
  4. 部分的にサービス等を利用しているものの、生活の立て直しを必要としている人
  5. 既存のサービス等では解決困難な生活課題を抱えている人
  6. 家族等の身近な関係のなかで問題を主体的に相談できる人がおらず、踏み込んだ支援を必要としている人(虐待を含む)
  7. その他、相談支援を希望する人

○ 地域相談支援センターのみの支援では困難な場合は、総合相談センターおよび広域専門相談機関に協力や助言、直接の対応を要請する。具体的には上記のうち、3、4、5、6を想定する。

○ 一定の研修を受講した相談支援専門員(仮称)3名以上を配置する。(相談支援専門員の条件、研修等の在り方については第二期で検討する)

○ 所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に本人中心支援計画・サービス利用計画を策定できる。

(3)総合相談支援センターの規模と役割

○ 総合相談支援センターは、15万~30万人の圏域を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事業を委託して設置する。(都道府県指定、国庫補助事業とすることについては第二期で継続検討とする)

○ 一般相談のなかで、特に複雑な相談事例について対応する。具体的には地域相談支援センターからの要請に応じて3、4、5、6の対応にあたる他、長期に入院・入所をしている人の地域生活への移行の相談、刑務所等から出所してくる人の相談等に対応する。

○ 地域相談支援センターへの巡回を含めた相談支援専門員のスーパービジョン、および人材育成(研修)を行う。

○ 一定の研修を受講した相談支援専門員5 名以上を配置する。

○ 所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に本人中心支援計画・サービス利用計画を策定できる。

(4)広域専門相談支援センターの規模と役割

○ 広域専門相談支援センターは、都道府県を単位として設置された、障害特性に応じた専門相談を担う。具体的には、身体・知的障害者総合相談センター、精神保健福祉センター、発達障害者支援センター、視覚障害者支援センター、聴覚障害者支援センター、難病相談支援センター、地域定着支援センターなどを含む。

○ 障害種別、特性に応じた専門的な総合相談を実施する。

○ 地域相談支援センター及び総合相談支援センター等への専門的助言や専門的人材の養成支援を行う。

○ 本人中心支援計画・サービス利用計画策定にあたっての助言を行う。

(5) 地域におけるエンパワメント支援(C-1-2)について

○ 身近な地域での相談支援体制( 市町村、広域圏、人口5万~30万人)に最低1ケ所以上、障害のある当事者等によるピアサポート体制(エンパワメント支援事業)を位置づける。

○ エンパワメント支援事業は、障害のある人たちのグループ活動、交流の場の提供(たまり場機能)、障害当事者による自立生活プログラム(ILP)、自立生活体験室、ピアカウンセリングなどを提供することで、地域の障害者のエンパワメントを促進することを目的とする。

○ エンパワメント支援事業を実施できるのは、当事者やその家族が過半数を占める協議体によって運営される団体とする。

○ エンパワメント支援事業は、地域相談支援センターに併設することができる。

3.相談支援に基づく本人中心支援計画、サービス利用計画の策定について(図2参照)

○ 本人中心支援計画(本人のニーズに基づく総合的な生活プラン)、サービス利用計画(法が求めるサービス利用計画)を定義する。

○ 本人中心支援計画とは、本人の希望に基づいて、相談支援事業所(地域相談支援センター、総合相談支援センター)の相談支援専門員が本人とともに立案する生活設計の総合的なプランとする。本人の希望を聴き取り、その実現にむけた本人のニーズとその支援のあり方(インフォーマルな支援も含めたもの)の総合的な計画策定となる。)本人中心支援計画立案の対象となるのは、セルフマネジメントが難しい支援付きの自己決定が必要な人で、相談支援専門員は本人に寄り添い、本人の思いや希望を明確化していく。

○ サービス利用計画とは、法律による福祉サービス等を利用するにあたって、市町村に提出する計画。本人のニーズに基づいて、福祉サービス等の利用希望を明らかにする計画となる。(本人自身による策定、または相談専門支援事業所が、本人とともに策定することができる。)

○ サービス利用計画の提出は、法律によるサービスを利用申 請する際に必須とする。

4.支給決定の仕組みについて(図3参照)

C-3-1 協議・調整による支給決定プロセス
第一期は、その概要について示すこととし、より詳しいシステム(特にガイドラインの在り方など)などは、第一期のサービス体系の提案などをもとに、第二期でより具体的に検討をすることとした。

○ 支給決定の仕組みについては以下のとおりとする。

  1. 支給決定にあたっては、本人(または相談支援機関)と行政の協議調整を前提とする。実施主体である市町村が支給決定についての決定権(責任)をもつ。
  2. 本人、または本人と相談支援事業所が、本人のニーズをもとに「サービス利用計画」を策定し市町村に申請する。
  3. 市町村は、まずガイドラインに基づいてアセスメントを行う。
  4. ガイドラインは、市町村がサービス利用計画の内容に基づいて支給決定をするためのアセスメントの「水準・モデル」であって、基準や上限を示すものではない。ガイドラインは、全国レベルの方向性をふまえて、市町村で策定する。(ガイドラインの指針などのより詳細な内容等は、第二期でさらに検討する)
  5. 個別のニーズに応じて、本人、本人及び相談支援専門員と市町村間で「協議・調整」を行い、市町村が支給決定をする。協議調整は、「障害のない人の地域生活の水準」及び、「支援事例」に基づいて検討する。
  6. 支給決定内容に関して、ガイドライン及びこれまでの「支援事例」等では判断が困難な事例に関して、市町村は「合議機関」にその意見を求めることができる。(合議機関の詳細については第二期で検討する。)
  7. 支給決定内容に対して、本人は「市町村ごとに設置された不服申し立て機関」に申し立てをすることができる。(不服申し立て機関の詳細は第二期でさらに検討)
  8. サービス実施後モニタリングを行い、支援困難事例などについて、相談支援専門員は自立支援協議会に報告する。
  9. 個別のサービス実施状況のモニタリング結果を受けて、自立支援協議会において、ガイドラインの見直し、社会資源開発などについて検討する。

Ⅲ.第二期作業チームでの検討事項

第1期の相談支援体制を踏まえて、協議調整による支給決定システムの明確化を行う

○ 論点は
C-2-1 現行の支給決定・障害程度区分の評価
C-2-2 国庫負担基準の評価
C-3-2 支給決定にあたっての必要なツール
C-3-3 自治体担当者のソーシャルワーク機能
C-3-4 不服審査やアドボカシーの仕組み

○ そこで以下の事項について、第二期で検討する。

(1)現在の障害程度区分や支給決定についての評価と問題点の検討
(2)支給決定にあたって必要なツール(ガイドライン・支援の必要度や支給決定のためのアセスメントなど)のあり方と策定の指針について
(3)支給決定に際しての「合議機関」の設置や役割についての検討
(4)不服審査やアドボカシーの仕組み
(5)相談支援専門員( 仮称)の役割や位置づけおよび研修体制(当事者相談員も含む)の在り方
(6)障害者自立支援法改正法(つなぎ法)」における相談支援の関する、基幹相談支援センター等の施行規則や運用基準等が、今後の新法の方向性と矛盾することがないよう、「つなぎ法」の施行規則や運用基準等を精査するとともに、その整合性について検討する。

尚、(2)(3)については、委員から、ニーズアセスメント 調査の実施や支給決定モニタリング委員会の設置という具体 的な提案が出ていることから、この提案についても検討をし っかりと行う。

他の作業チームへの申し送り・調整事項

○ 法の範囲にある障害を有するか否かの判断については、法の範囲チームの「B-2 手続き規定」の結果による。

○ 相談支援機関から、地域に対する働きかけを担保する仕組み(自立支援協議会の役割と相談支援機関との関係性について)を設定する

○ 児童分野、就労分野の相談支援体制(現行の就業・生活支援センター等のあり方の再検討を含む) との関係についての調整が必要

○ 長時間介護の財源調達は、地域生活資源整備チームで検討する(C-2-2)

付記(本報告に対する部会委員からの主な意見は以下のとおり)

○ 障害者をすべて悩める人と捉えることを前提とする重層の相談支援体制については疑問がある。これに財源を投入することが国民的な理解を得られるとも思われない。

○ 「重層的」の実践内容が見えない。精神障害の人など自ら窓口に行きづらい人に対して、身近なところで適切に相談に応じられる体制について更に検討してほしい。

○ 相談支援事業所を人口比で設置すると、アウトリーチを考慮しても、過疎地では利用が難しい。面積も考慮した配置が必要ではないか。また他の自治体の相談支援事業所も利用可能とすべきである。

○ 支給決定と相談支援を同じチームで議論することについて、そもそも違和感がある。支給決定のための支援と相談支援、特に権利擁護( アドボケーター) としての役割は分けて整理するべきである。またこの権利擁護組織については、障害者運営による団体が適切と考える。

○ 支給決定前に支援計画をつくるというのは協議・調整モデルではない。協議調整の場で支援計画を策定すべきである。

○ 協議・調整におけるガイドラインを作成するのであれば、本人中心とエンパワメントを徹底した内容とするべきである。

○ 平成2 4 年度実施予定の「児童発達支援センター」の役割も含めて、障害児やその家族の成長や不安に対する相談支援体制についても言及すべきである。

○ 相談支援事業所に対して人件費を保障するのは、委託になるので反対である。後発の組織が自由に参入できるように、指定制度として出来高払い制度(単価を上げ、交通費等の実費払いとする)とすべき。

○ 人工呼吸器利用者、24時間介護利用者、ALS患者、重度脊髄損傷者等の特に高度な専門的ノウハウを要する場合など、都道府県単位の相談支援体制では対応が難しい際には、全国レベルの広域センターが対応できるようにすべき。その際本人中心支援計画、サービス利用計画の策定も可能とすべきである。

○ 支給決定内容に対しての不服申し立て機関については、市町村のみでなく、都道府県レベルでも必置とすべき。また障害者基本法に基づく都道府県障害者政策委員会が、市町村のガイドラインについてモニター機能を担うこと。