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総合福祉部会 第13回 H23.4.26 参考資料4

野原委員提出資料

2011年2月22日

障がい者制度改革推進会議
議長 小川 榮一 殿
総合福祉部会
部会長 佐藤 久夫 殿
全日本国立医療労働組合
委員長 岸田 重信

重症心身障害・筋ジストロフィー・神経難病に関する要請書

 貴職におかれましては、障害者施策の抜本的な改革にむけて日々ご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
 国立病院は、障害者自立支援法の対象となっている重症心身障害病床約7,500床(国全体の4割)、筋ジストロフィ―病床約2,000床(国全体の9割)を有しています。
 制度改革の議論の中では、「脱施設化」が一つの焦点となり、施設の解体論まで出されていますが、病院・施設が在宅・地域生活支援の役割を果たすとともに、施設か在宅かの二者択一ではなく、その時々の状況にあわせて、必要な支援を選択できる体制が必要と考えます。
 重症心身障害や筋ジストロフィー・神経難病の患者さんは、全面的な介助が必要で、自らの意思表示が困難であることも多く、超重症児や人工呼吸器装着者など、濃厚な医療的ケアを必要とする患者さんも増加しています。新法の制定にむけて、医療と福祉の両方の拡充が必要です。
 しかし、日本の医師・看護師の配置は、諸外国に比べても非常に少ないにもかかわらず、公務員人件費削減や独立行政法人改革の中で、国立病院に対しても、人件費の一律削減やさらなる経営「合理化」が押し付けられています。夜間は数十人の患者さんをわずか2名で看護にあたる病棟が多く残され、病棟の大規模化(60床化)による効率追求など、障害者制度改革のめざす方向とは逆行する事態となっています。
 また、介護職員に、医療行為を行わせる方向で検討が進んでいますが、医療機関において安易に医療行為の規制緩和を行うことは、患者さんの生命にもかかわる問題です。加えて、介護職員は、将来展望のもてない低賃金となっており、人材確保のためにも、処遇改善が求められています。
 医療を必要とする重い障害のある児者が、安心して必要な医療・福祉サービスを受けられるよう、人員体制を中心に、次の事項を要請します。なお、参考資料として、重症心身障害、筋ジストロフィー・神経難病病棟に関する実態調査結果など資料(別紙)を添付致します。

  1. 現在入院されている患者さん・ご家族の意向を尊重し、療養を保障するとともに、退院後も必要に応じて適時入院できる制度として下さい。
  2. 政府方針で実施されている人件費の一律削減及び運営費交付金の一律削減の対象から、国立病院を除外し、重症心身障害、筋ジストロフィー・神経難病病棟の充実を図るとともに、短期入所や通園事業の体制を強化して下さい。
     また、重症心身障害や神経難病など政策医療を支える一般医療の診療体制の強化と病院の安定した運営を図って下さい。
  3. 障害や疾病にみあった人員配置基準と報酬体系を整備し、人員体制の拡充を図ってください。
     重症心身障害や筋ジストロフィー・神経難病の患者さんは、全面的な介助が必要で、自らの意思表示が困難であることも多く、身体の拘縮や変形、骨密度の低下もみられます。職員には、専門的な知識・技術と経験が求められ、重症心身障害の特性を十分理解した上で発達支援を行う職員配置も必要です。さらに、超重症児や人工呼吸器装着者の増加など、医療の必要性も高まっており、看護師による夜勤体制の強化が喫緊の課題です。
     また、現在は、障害者自立支援法・療養介護事業への移行の経過措置期間中であり、移行にむけて生活支援員などの増員が進められてきましたが、同法の廃止後の体制が不明であることから、不安が広がっています。人材確保・育成には一定の期間を要することはいうまでもありません。支援法の廃止、新法制定にあたって、現行法制より人員体制を後退させないことを明確にし、人材確保・育成、事業の円滑な運営を図ることが必要です。
    1. 自立支援法の廃止、新法制定にあたって、現行の人員体制の維持・改善を図ることを明確にし、現場を混乱させることなく、人材の確保・育成、事業の円滑な継続が行われるようにして下さい。
    2. 生活支援や療育を担う職員として、指導員、保育士、介護職員など常勤・有資格者の配置を位置づけて下さい。
    3. 看護師の夜勤体制は、準夜・深夜とも最低でも3人以上とし、人工呼吸器の使用台数に対して看護師配置基準を定めるなど、改善を図ってください。
    4. 重症心身障害や神経難病の医療を担う医師を育成・確保して下さい。
    5. 人工呼吸器の安全管理対策を抜本的に強化し、臨床工学技士の複数配置を行なって下さい。
    6. リハビリを充実するために、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理療法士の配置を位置づけ、増員を図ってください。
    7. 介護労働者の教育・研修体制を充実するとともに、処遇の改善を図って下さい。
  4. 医療機関において、医療職以外の介護職員等に痰の吸引や経管栄養などの医療行為を行わせる規制緩和を行わないでください。
     医療機関に入院されている重度障害の患者さんは、状態も不安定であり、医療的ケアは、専門教育を受けた有資格の医療職が行うべきです。看護師不足などを口実にした、医療行為の規制緩和は、患者さんのいのちを脅かすことになります。安易な業務委譲ではなく、看護師の増員を図って下さい。
  5. 病棟建替えにあたっては、患者・家族・職員の意見を尊重し、経営効率を優先した病棟の大規模化をやめ、病棟構造にみあった人員配置として下さい。
    1. 国立病院における老朽病棟の新築・改築にあたっては、事前に、患者・家族・職員に対して、説明・懇談の場を設け、意見・要望を尊重して下さい。
       また、患者・家族のニーズと地域の実情を踏まえた必要病床数を確保して下さい。
    2. 経営効率を優先した病棟の大規模化をやめ、病棟構造にみあった人員配置として下さい。
       自らの意思表示が困難で、発作もあり、呼吸器を使用している患者が多い中で、十分な人員を確保しないまま、ドアと壁で閉鎖される病室構造で大規模化(60床化)することは、安全上も重大な問題があります。ゆきとどいた医療・看護を行うため、病床数の規制を設けて下さい。また、日中活動の充実のため、十分な広さのデイルームなどを設けて下さい。

以上

【資料1】

重症心身障害・筋ジストロフィー・神経難病病棟実態調査果(概要)

全日本国立医療労働組合(2010年12月)

はじめに

 国立病院は、重症心身障害病床約7,500床(国全体の4割)、筋ジストロフィ―病床約2,000床(国全体の9割)を有しています。重症心身障害や筋ジストロフィー・神経難病の患者さんは、全面的な介助が必要で、自らの意思表示が困難であることも多く、濃厚な医療的ケアを必要とする患者さんも増加しています。
 しかし、ギリギリの人員体制のなかで、患者さんに我慢を強いている状況があり、夜間は数十人の患者さんをわずか2名で看護にあたる病棟も多く残されています。
 こうした実態にもかかわらず、公務員削減や独立行政法人見直しの中で、病院に対してもさらなる人件費削減や効率化が求められており、障害者制度改革の方向とも逆行する事態となっています。
 現場の実情をご理解いただき、障害者自立支援法の廃止と新法の制定にむけて、重症心身障害、筋ジストロフィー、神経難病など、日常的に医療が必要な障害者施策の充実が図られるよう要望するものです。

【調査日】2010年10~11月

【集約数】
 43病院・124病棟
 (国立病院機構における重症心身障害病床、筋ジストロフィー病床の約4割に該当)

【呼吸器の使用状況など】
 人工呼吸器を使用している患者さんの割合は、筋ジス病棟では7割を超え、20台以上の病棟が20病棟(87%)もある。経管栄養は、全体で3割強だが、神経難病では約7割に及ぶ。

経管栄養呼吸器

  患者数 呼吸器 経管栄養
重症心身 2,775 191 7% 763 27%
筋ジス 890 629 71% 332 37%
神経難病 532 214 40% 361 68%
混合 447 128 29% 225 50%
合計 4,644 1,162 25% 1,681 36%

呼吸器台数別の病棟数

  4以下 5~9 10~19 20~29 30以上
重症心身 55 18 1 0 0 74
筋ジス 0 1 2 10 10 23
神経難病 4 4 6 1 2 17
混合 2 2 4 2 0 10
合計 61 25 13 13 12 124

【看護師の夜勤体制など】

  2:2 2:3
3:2
3:3 4:3
4:4
二交替 無回答他
2 3    
重症心身 35 19 6 0 10 1 3 74
筋ジス 0 4 15 2 0 2   23
神経難病 4 3 6 2 0 1 1 17
混合 1 1 6 1 1     10
合計 40 27 33 5 11 4 4 124
32% 22% 27% 4% 9% 3% 3%  

※20床の神経難病病棟で、看護師1+介助職1の夜勤有り。

2:2 2:3
3:2
3:3 4:3
4:4
二交替
2 3
2 2 3 5   1 13

※表中2:2は、準夜(夕方から24時頃まで)2人、深夜(24時ころから朝まで)2人。他も同様。

 患者さんの重症化が進み、全面的な介助が必要で、呼吸器の使用も非常に多いにもかかわらず、看護師の夜勤体制は、いまだに2人夜勤が多く、準夜・深夜とも3人以上は、約3割に過ぎない。60床病棟でさえ、重症心身障害病棟では2人夜勤となっている病棟がある。

【食事介助】

 人員不足から、時間に追われ、1人で複数の患者さんの食事介助を行う場合もあり、一人ひとりにあわせてもっとゆっくり介助できるようにしたいという声が非常多い。

【入浴介助】

 入浴介助についても、呼吸器を装着している患者さんも多く、安全にゆとりをもって行うために、人員不足や設備の改善を訴える意見が多くあった。

食事介助・入浴介助で改善したい点(自由記載抜粋)

  • 患者さん1人1人のペースにあわせて楽しいと感じられるように行いたいが、スタッフの人数が少なく現実にはできていない。
  • ベッドサイドでの介助ではなく、プレイルームにて食事できるようにやっていきたい。毎回の車椅子移動が人員不足のためにできていない状態。
  • 時間に追われての食事、入浴であるため、危険。ゆっくり援助できるように改善を。
  • 昼食は車椅子上で食べるが、夕食時は全員ベッドの上である。摂食の観点とQOLの観点から車椅子移乗が必要。
  • もっとゆっくり時間をかけて行いたい。スタッフが足りないため、食事は1人が2~3人の患者を担当。
  • 呼吸器を使用している患者さんが多いが、看護師が不足している。
  • 人数が少ない土日は食事訓練ができない。
  • 3時間で52名を行っているが、ほとんどの人が全介助で、時間に追われ、いつ事故がおきるかもしれないと不安でいっぱい。呼吸器をつけながらの入浴には人員が足りない。
  • 入浴介助を、安全にゆとりをもって行うために、設備と介助者の充実が必要。
  • 浴槽には3人介助で入れるが、抱き上げが大変。機械浴で全員が入れるように設備の充実を。
  • 入浴介助は、週2回だが増やしたい。
  • 現状では、入浴時のプライバシーがとりにくい。

【排泄介助】

 排泄介助についても、患者さんを待たせずに、必要な都度、対応できるように改善したいという声が多くあった。

排泄介助の問題点(自由記載抜粋)

  • 人手が足りず、患者さんに待ってもらうこともあり、転倒のリスクになっている。
  • 人員不足のため、尿意のある患者さんでも夜間は、おむつに頼らざるを得ない状況もある。
  • 深夜帯でのおむつ交換は4時30分からはじめて朝食の7時10分に間に合わせるのがやっと。
  • 患者さんの状況に応じた構造のトイレが必要。

【増員が必要な職種】

 患者の重症化への対応、夜勤体制の強化(3人以上)など、増員が必要な職種として看護師をあげている病棟が多かった。看護師については、ギリギリの人員でバーンアウト寸前の現状を訴える記入が多くあった。
 看護師に次いで介助職の増員要求が多く、現在の介助職の配置では、周辺業務で手一杯であり、看護師を減らさずに、ケアの充実、日中活動支援のために介助職の増員を求める意見が多かった。
 また、看護助手の不在(政府の方針で、技能職である看護助手の常勤採用ができない)により、看護師が助手業務を行っている病棟もあり、看護助手の増員要求も多い。
 この他、発達支援や機能維持のため、保育士やリハビリ職種の増員を求める意見、呼吸器の管理のため臨床工学技士の増員をもとめる意見があった。

【在宅支援】

 短期入所用のベッドを確保しているのは、約半数であったが、専用のベッドを確保していない場合でも、空があれば、短期入所の受入を行っているところが多く、中には、患者の移動でベッドを確保しているケースもあった。
 重症心身障害の通園は、国立病院機構のデータでは、A型4病院(南岡山・鳥取・香川小児・福岡)、B型24病院の合計28病院(全体の4割弱)である。このほかの在宅支援では、発達外来・相談、訪問診療・看護、呼吸器の講習などを行っている。
 国立病院での在宅支援は、体制確保も含めて、今後の課題である。

【建替え整備】

 病棟の建替え(予定含む)にあたっては、ほぼ全ての病院で病床規模の拡大が行われている。また、重症心身障害、筋ジス、神経難病、内科の混合化や重症心身障害病棟や筋ジストロフィー病棟をなくし、混合病棟としている病院もある。

大規模化など建替えの問題点

  • 大規模化で、動線が長くナースコールが聞こえにくい。呼吸器のアラームが聞こえにくい。夜間、痙攣発作があっても発見しにくい。
  • 看護ステーションからかなり遠い部屋がある。
  • 小児病棟を混合化(小児・内科・神経内科・障害者)、1階と2階の60床化しており、風呂も一箇所しかなく、エレベータで浴室に行っている。
  • 60床のため、入浴は1日がかりとなる。
  • 筋ジストロフィーとALS等神経難病の混合病棟となるが、それに見合ったマンパワーが必要。

【自由意見(抜粋)】

  • 日々ルーチンの最低限の業務をこなすのが精一杯で、受け持ちの患者さんとじっくりかかわる時間をもちにくい。
  • とにかくマンパワーが必要。ゆとりをもって患者さんとかかわりたい。
  • 患者さんも我慢している。いいたくとも言えない現状がある。
  • 重症心身障害病棟の専門医が不足しており、短期入所も呼吸器装着者など濃厚な医療を必要としている児者を受け入れることができない。在宅支援の充実を図る視点からも専門医が必要である。
  • 看護師や介助職の不足により入浴日は他の病棟から助勤してもらう日が多い。若い看護師が退職していく傾向があり、欠員状態が続いている。医師・看護師不足が様々な問題の要因となっている。
  • 朝の排泄介助が10時頃までかかり、昼の経管栄養の準備に40分くらいかかり、午前中に患者さんのバイタルすらとれないことがある。
  • 時間内に終わらせるのがやっとで、ゆとりがない。職員の増員が必要。
  • 人員不足で、患者を離床させる回数も減っている。腰痛の職員が多くリフトの使用が望まれる。
  • 重症化や呼吸器台数が増加し、看護師の増員が必要。
  • 環境が許せば、在宅でも可能な患者さんはいるが、両親も高齢化しており、家族の負担も大きい。環境が整わないまま、病院から追い出されるようなことがあってはならない。

以上

【資料2】

国立病院機構に対する運営費交付金

 国立病院機構に対する運営費交付金は、もともと、過去債務(国期間分の退職給付等)に関するものが大半で診療事業にかかわる交付金はごくわずかでしたが、2011年度予算では、災害医療を除いて、結核や小児救急、周産期医療、精神科救急、医師確保など、民間施設にある補助を含めて全て削減されています。

  04年度 05年度 06年度 07年度 08年度 09年度 10年度 11年度
交付金 52,075 51,353 50,609 49,848 47,854 45,972 43,682 36,202
内診療事業 4,059 4,296 3,161 4,624 6,973 7,524 4,898 223