音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

総合福祉部会 第13回 H23.4.26 追加参考資料5

光増委員提出資料

福祉と安全・共生のまちづくり計画を復興の理念に
~被災障害者の生活と援助を確保するための施策に関する意見~

障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会
代表 山田 優

  1. 今回の震災は、地震、津波、原発、計画停電と多岐にわたる事態が同時に存在し、従来の「被災地」概念を超える範囲でそれぞれに困難な状況をかかえる障害者がいる。被災者の中には障害者のみではなく高齢者もいる。要援護者への対策はできるだけ多くの人たちに対応できるようにするため、ユニバーサルな考え方を取り入れたものとすべきである。被災者を一律的に線引きすることなく、生活の実態に合わせて自立を支援しなければならないと考える。
  2. 復旧復興予算を物だけではなく、人にも投下していただきたい。被災して多くの人たちが仕事を失っている一方、障害のある人たちは支援者を失っている。
     一般の人たちが自立した生活を取り戻す上で、避難しつつも新しい生活の糧となる仕事をより早く手に入れることが活力を生み出すことにつながる。特に、障害のある人たちへの支援をめざす者には必要な資格が取れるように就労支援したり、支援者を求める障害者や地域の事業所のニーズにこたえる窓口機能を早期に避難所や仮設住宅等に設けてほしい。
  3. 今回の震災で新たに障害を受けた人たちもいる。障害者の中には、これまでの生活では支援を必要としなかった人たちでも、震災により家族を失ったり、社会環境あるいは物的環境が変化してしまったことにより支援が必要となっている人たちもいると思われる。 これら新たに支援を必要とする状態に至っている人たちの把握を急ぐ必要があり、できるだけ早く適切な支援の手がさしのべられるようにしてほしい。
  4. 阪神大震災の時と大きく異なるのは、入所施設中心の障害者福祉から地域福祉への大きな政策転換がすすんでいる点である。障害者の災害時緊急避難先として、従来の施設等の空きを中心とした避難対策では、それまでの生活とかけ離れたものとなってしまう。
     障害者の避難については、それまでの所属や援助者とのつながり、地域とのつながり等を可能な限り生かせる形の避難方法を検討すべきである。そのためにも受け入れの場の多様性を確保する必要がある。あいている社宅、グループホーム単位で使用できる住宅、ホテル、旅館等、比較的使いやすい場を借り上げるための対策を普段から検討しておく必要がある。
  5. 避難所から、仮設住宅、復興住宅と施策をすすめる時に、一般の人たちだけではなく、障害のある人も視野に入れた福祉と安全共生のまちづくり計画を復興の理念として掲げていただきたい。
     グループホームとして使用していた建物が倒壊したり、流出しているところもある。また障害者も高齢者も安心して住める場を確保するために仮設住宅や復興住宅にも「グループホーム」という福祉居住スタイルを組み込む必要がある。その場合、障害者だけを特定の地域に集めることにならないように、様々な人たちが交わりつつ暮らしているという地域の有り様をできるだけ壊すことのないように施策をすすめていただきたい。
     また、地域の中で障害者が援助者とのつながりをできるだけ失うことがないように配慮することが重要である。訪問して支援する人たちやグループホーム・通所事業所等で支援する人たちが障害者や高齢者の日常をこれまで通り支えられるよう、バックアップをおこなうことが大変重要である。
     また、阪神大震災の折に仮設住宅や復興住宅における高齢者の孤独死が大きな社会問題となった。このような事態をできるだけ少なくするためには、仮設住宅や復興住宅の中に一定程度の距離で住民が集まって話しをしたりできる集会所を設けることが大切であると考える。
  6. 被災直後の状況からは改善されつつあるが、障害のある人たちだけでなく、援助者にとっても様々な困難が生じている。特にガソリン供給不足から、「緊急車両」の指定を受けられないと給油のため長時間並ばなければならない状態がつづいた。しかし、警察によって指定の判断が異なり、多くのグループホームは緊急車両の対象と認められなかった。一人で夜間勤務することが多い援助者が並んでガソリンを入手することは無理であり、その結果、足となる車で支援物資を受け取りに行ったり、各ホームに届けて回ることが困難を極めた。また、公共交通機関が途絶する中、援助者の勤務にも支障が出ていた。
    今後、被災時には、介護職にある者やグループホーム・通所の事業所に対しては「緊急車両」の指定をおこない、障害のある人たちへの援助に支障を来さないような対策をとるべきであると考える。
  7. グループホームの建物が倒壊したり、津波で流出してしまっことで大きな財政負担を負うことになった場合の対応策が必要であると考える。今回の震災が年度末であったことも災いして、グループホームを新築している途中で被害に遭ってしまったところが多いように思われる。この場合、建てたものの支払いと、再度、建て直さざるを得ないあるいは修理せざるをえないことによる負担が生じることとなる。グループホーム運営者が、こういった過度の負担を背負うことにならないように、これらの事態に対応する対策を検討していただきたい。