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総合福祉部会 第5回 H22.7.27 参考資料3

北浦委員提出資料

総合福祉部会(第1回)での意見についての追加報告について

平成22年7月12日

障がい者制度改革推進会議
総合福祉部会部会長 佐藤 久夫 様

総合福祉部会委員 北浦 雅子

総合福祉部会(第1回)での意見についての追加報告について

 総合福祉部会の運営につきましては、大変なご苦労を賜っておりますことに深く感謝申し上げます。
 さて、去る3月30 日の障がい者制度改革推進会議の検討において、重症心身障害児施設は人権侵害、地域移行、施設解体という意見が出されたことに、親の人たちが大きな衝撃を受けました。
 今後の検討結果の方向によっては、施設入所の人たちの生きる権利が認められなくなることを危惧するとともに、重症心身障害施策の先行きに大きな不安を感じて、共通の危機感を持つ者たちが相集い、重症心身障害児施設の必要性を認めていただくために、施設が持つ役割と機能について関係の皆様にご理解を深める必要を通感し、障がい者制度改革推進本部長及び推進会議議長宛に問題の本質を訴える署名活動をはじめました。
 その状況については、4月27 日の第1回総合福祉部会で北浦委員が多くの方々から署名が届いていると申し上げ、5月14 日に3万7 千筆を障がい者制度改革推進会議担当室長東俊裕様にお届けしました。その後も署名者が相次ぎ、去る7月2日(前回の追加として)に8万4 千筆、計12 万筆の署名簿をお届けしたところです。
 つきましては、当総合福祉部会委員の皆様におかれても、この現状にご理解を賜りますよう心からお願い申し上げます。
 なお、親の人たちが、切実に思い、その心情を届ける署名活動の要望事項、内容は、次の通りです。

要望事項

  1. 重症心身障害児施設は、施設入所者のいのちと人権を守るとともに、在宅の重症心身障害児者の地域社会での生活を支えるため、短期入所、通園事業、療育・相談機能を有しており、必要不可欠です。
  2. 在宅の重症心身障害児者が、地域社会での生活を維持するためには、現行の医療・福祉・教育施策を更に拡充することを望みます。

要望書(別紙)

平成22年7月2日

内閣府障がい者制度改革推進本部 本部長 菅 直人 様

障がい者制度改革推進会議 議長 小川 榮一 様

全国重症心身障害児(者)を守る会 会長 北浦 雅子

要望書

重症心身障害児施設は、いのちを守り、人権を守るもの

(私たちの運動は、いのちを守り、人権を守ることから始まった)

 私たちの会は、昭和39 年6 月に発足し、児童福祉法からはずれ、「世の中の役に立たず、社会復帰もできない子にお金をかける必要があるのか」との声も聞かれる世相の中で「たとえどんなに重い障害があろうとも、いのちをもち、生きているのです。それなりに生き、育ち、伸びるこの子らを生かしてください」と訴え重症心身障害児者(以下「重症児者」という)への理解を深める運動を始め今日に至っています。
 当時、重い障害児とその家庭は、社会からの差別にさらされ、障害児医療が皆無の状態のなかにあって、周囲の無理解や、経済的な困窮などが重なって耐え切れなくなった家庭での母子心中、家庭崩壊などの頻発は、社会問題となっていました。
 そうした中で、自らの主張を訴えられない子ども達に代わって、やむにやまれぬ思いで親達が立ち上がり連携して、重症心身障害児者のいのちを守り、人権を認めて欲しいと訴え、最も弱い人たちが生きられる平和な社会の実現を願って運動を展開してきました。
 現在は、医療、福祉、教育が三位一体となって療育が行われ、重症児者のもっている可能性を伸ばし、人の愛を感じると笑顔でこたえています。
 重症児者の笑顔は、人に感動を与える不思議な力をもっています。

○ 運動の原点は、重症児者のいのちが守られること

 私たちは、重症児者のいのちが守られることが第一と考えています。いのちがあって、その上で人権を守らなければならないと思います。
 私たちは、重症児者のいのちが守られるようにするために、先ず施設対策の推進を願い、併せて在宅対策の充実を訴えてまいりました。
 親は、いつ、いかなる時にも、障害のあるわが子を慈しみ、将来を案じています。子のいのちを守るために、心ならずも身を切られる思いで預けているのです。また、その親の中には、高齢化し、自分の身でさえ十分に処理できない者が多くなっています。今、重症心身障害児施設の入所は人権侵害といわれ、地域に移行するとしたら、いかなる問題が起こるのか想像しただけで、親は呆然とし、困惑してしまいます。
 それは、地域にこの子らが生きる社会資源がないからです。

○ 施設入所は、いのちと人権を守るためのもの

 重症心身障害児施設は、医療施設であるとともに、福祉施設であり、医療施設としての医療職と、発達や生活を支援する福祉職の職員が配置されています。ここでは、医療で生命、健康が守られ、機能訓練等の発達支援が行われるとともに、福祉で日常生活が確保され、医療に裏づけられた生活を豊かにするプログラムがあり、散歩、外出、遠足などの他、家庭生活と同様に季節の行事が行われるなど、施設での生活が豊かに展開されています。当然のことですが学齢期には学校教育が行われています。
 重症児者のいのちを守る運動は、重症心身障害児施設という医療と福祉(生活支援)を兼ね備えた施設療育として世界に例を見ない優れた文化を生み出しました。
 重症心身障害児施設の存在は、入所の重症児者にとって、支える医療として、いのちを守り、生きがいを与えてくれています。また在宅の重症児者には、その機能を活用して、短期入所、医療入院、外来診療や通園・通所や相談支援を実施することによって、専門性を持つ地域生活支援を提供しています。しかし、在宅支援の制度は、いまだに基盤が脆弱で、重症児者が地域で生活するには、いまなお不十分な現状にあります。
 どんなに障害が重くても、障害児者が地域で生活できることが自然の姿であることはいうまでもないことですが、それを可能とするためには、いつでもどこでも、それを支援できる社会資源、サービス基盤が整備されていなければなりません。
 医療を必要とする重症児者にとっては、その時々の状態、必要性に応じて、施設利用であったり、地域生活であったりすることが、その人生を全うする上で、極めて重要な選択でありますが、ライフステージを通じての重症児者の総合的支援施策の基盤が整備確立していない現状にあっては、施設入所をもって人権侵害ということで片付けられない複雑なものがあります。
 以上のことを踏まえ、施策基盤の総合的な確立を強く要望いたします。
 施設入所は、重症児者とその親にとって、いのちを支えるものであることを、ご理解賜りますようお願い申し上げます。