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総合福祉部会 第5回 H22.7.27 資料3

「障害者総合福祉法」(仮称)の論点に関する現在の制度の状況等について-No.1-

厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部
平成22年7月27日

【分野・項目・論点】

A-1 法の名称

 法の名称についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 現在施行されている法律の名称は障害者自立支援法

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害者自立支援法は、その目的規定にあるとおり、障害者が自立した生活を営むことができるよう支援を行うことを定める法律であることから、この法律の目的及び内容を表すためにこのような名称とされたもの。

【参考】障害者自立支援法(平成17 年法律第123 号)(抄)

(目的)

第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄不することを目的とする。

○ また、法令の題名については、「それがその法令に固有のものであることからくる呼びやすさという要請と、その題名から内容を一応推察させ、あるいは少なくとも内容を誤解させず、他との紛れも生じさせないようにしなければならないという要請」があるとされている。(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編より)

【分野・項目・論点】

A-2 誰の何のため

1)そもそも、この総合福祉法は、誰の何のためにつくるのか?

2)憲法、障害者基本法等と「総合福祉法」との関係をどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法の目的については、同法第1条において、「障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄不すること」と規定されている。
 また、他の法律との関係については、障害者自立支援法第1条において、「障害者基本法の基本理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、」この法律に基づく給付等を行うものと規定されている。

【参考】障害者自立支援法(平成17 年法律第123 号)(抄)

(目的)

第1条 この法律は、障害者基本法(昭和45年法律第84 号)の基本的理念にのっとり、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283 号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄不することを目的とする。

【分野・項目・論点】

A-3 理念規定

1)障害者権利条約の「保護の客体から権利の主体への転換」「医学モデルから社会モデルへの転換」をふまえた理念規定についてどう考えるか?

2)推進会議では「地域で生活する権利」の明記が不可欠との確認がされ、推進会議・第一次意見書では「すべての障害者が、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、その実現のための支援制度の構築を目指す」と記された。これを受けた規定をどうするか?

3)障害者の自立の概念をどう捉えるか?その際、「家族への依存」の問題をど う考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法第2条第1項第1号に、市町村の責務として、「障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、(中略)必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと」が規定されている。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害者自立支援法第1条及び第2条第1項第1号の「自立した日常生活又は社会生活」の意味については、平成17 年衆議院厚生労働委員会において、尾辻厚生労働大臣(当時)から、「障害のある方々が生活全般にわたって自己決定、自己選択をしながら暮らすこと」を意図したものであり、「日常生活と社会生活は2つあわせて生活全般を意味」すると答弁している。

○ なお、障害者自立支援法では、障害者の自立及び社会参加支援等のための施策に関する基本的理念を定める障害者基本法にのっとることを謳っており、基本的理念の定めを同法に委ねている。(障害者自立支援法には基本的理念に関する規定を置いていない。)

【分野・項目・論点】

A-4 支援(サービス)選択権を前提とした受給権

1)「地域で生活する権利」を担保していくために、サービス選択権を前提とした受給権が必要との意見があるが、これについてどう考えるか?

2)条約第19条の「特定の生活様式を義務付けられないこと」をふまえた規定を盛り込むか、盛り込むとしたらどのように盛り込むか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法第13条において、「自立支援給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない」と規定されている。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害者自立支援法第13条は、自立支援給付が、障害者及び障害児が生活する上で必要な介護等に係るサービスを利用するために支給するものであり、受給権の譲渡、担保としての提供、差し押さえがなされれば、この目的が達成されないこととなるため、これらの行為を禁止するもの。

【参考】障害者自立支援法(平成17年法律第123号)(抄)

(受給権の保護)

第13条 自立支援給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

【分野・項目・論点】

A-4 支援(サービス)選択権を前提とした受給権

3)障害者の福祉支援(サービス)提供にかかる国ならびに地方公共団体の役割をどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法においては、

  1. 市町村は障害福祉サービス、自立支援医療、補装具等に係る給付(以下「自立支援給付等」という。)の支給、地域生活支援事業、障害者等に対する相談、権利の擁護のために必要な支援、市町村障害福祉計画の策定等を行うとともに、自立支援給付等の費用の4分の1を負担すること、
  2. 都道府県は市町村に対する援助、地域生活支援事業、障害者等に対する相談、事業者の指定、都道府県障害福祉計画の策定等を行うとともに、自立支援給付等の費用の4分の1を負担すること、
  3. 国は市町村及び都道府県に対する援助、基本方針の策定等を行うとともに、自立支援給付等の費用の2分の1を負担すること等が規定されている。

【参考】障害者自立支援法(平成17 年法律第123号)(抄)

(市町村等の責務)

第2条 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲 げる責務を有する。

一 障害者が自ら選択した場所に居住し、又は障害者若しくは障害児(以下「障害者等」という。)がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該市町村の区域における障害者等の生活の実態を把握した上で、公共職業安定所その他の職業リハビリテーション(障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第2条第7号に規定する職業リハビリテーションをいう。第42条第1項において同じ。)の措置を実施する機関、教育機関その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的かつ計画的に行うこと。

二 障害者等の福祉に関し、必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行い、並びにこれらに付随する業務を行うこと。

三 意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう必要な便宜を供不すること、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のために関係機関と連絡調整を行うことその他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと。

2 都道府県は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。

一 市町村が行う自立支援給付及び地域生活支援事業が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行うこと。

二 市町村と連携を図りつつ、必要な自立支援医療費の支給及び地域生活支援事業を総合的に行うこと。

三 障害者等に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。

四 市町村と協力して障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うとともに、市町村が行う障害者等の権利の擁護のために必要な援助が適正かつ円滑に行われるよう、市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行うこと。

3 国は、市町村及び都道府県が行う自立支援給付、地域生活支援事業その他この法律に基づく業務が適正かつ円滑に行われるよう、市町村及び都道府県に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければならない。

【分野・項目・論点】

A-5 法の守備範囲

1)「総合福祉法」の守備範囲をどう考えるか?福祉サービス以外の、医療、労働分野、コミュニケーション、また、障害児、高齢者の分野との機能分担や(制度の谷間を生まない)連携について推進会議の方向性に沿った形でどう進めていくか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法は、障害者に対する障害福祉サービス、自立支援医療、補装具等に係る給付や地域生活支援事業等を規定している。

○ 医療については、健康保険法等に基づく医療保険制度のほかに、障害者(児)の心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療について、障害者自立支援法に基づき給付を行い(自立支援医療)、障害者の医療に係る自己負担の軽減を図っている。

○ 労働・雇用については、障害者の雇用の促進等に関する法律等に基づき行われており、障害者自立支援法には直接には規定されていない。

○ 障害児の福祉に係る支援については、児童福祉の一部として、原則として児童福祉法に規定されている。(相談、保育、障害児施設等)
 ただし、障害者と共通の支援については、障害者自立支援法に規定されている。(居宅介護、行動援護、児童デイサービス、短期入所、重度障害者等包括支援)

○ 高齢の要介護状態等の者に対する介護サービスに係る給付については、介護保険法に規定されており、同法の規定による介護サービスに係る給付等を受けることができるときは、障害者自立支援法による同種の給付については、介護保険法による給付が行われる限度において行われない。介護保険法に相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるものを利用する場合や市町村が適当と認める支給量が介護保険法に基づくサービスのみでは確保できない場合等については、障害者自立支援法に基づく給付が行われる。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 平成20年7月にまとめられた「障害児支援の見直し検討会」報告では、「障害児についてなるべく一般施策との連携により対応していくという考え方からは、各施設や事業の根拠を「児童福祉法」に位置付けることを基本とすべきと考えられる」とされている。

【分野・項目・論点】

A-5 法の守備範囲

2)身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、児童福祉法、その他の既存の法律のあり方、並びに総合福祉法との関係についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法は、障害種別に関わりない共通の給付等に関する事項につい て規定する法律である。

【参考1】障害者自立支援法に規定する主な事項

  • 障害福祉サービス、自立支援医療、補装具等に係る給付及び手続き
  • 都道府県及び市町村が実施する地域生活支援事業
  • 事業及び施設に係る指定のための基準等
  • 都道府県及び市町村の障害福祉計画の策定

○ 身体障害者福祉法は、身体障害者の定義や入所施設への措置等を、知的障害者福祉法は、入所施設への措置等を定める法律であり、障害者自立支援法の給付の対象となっていない福祉の措置等について定めるものである。

【参考2】身体障害者福祉法に規定する主な事項

  • 身体障害者の定義、身体障害者手帳の交付される範囲及び手続き
  • 身体障害者更生相談所の設置等
  • 障害福祉サービスや障害者支援施設等への入所等の措置
  • 盲導犬の貸不、社会参加の促進等
  • 身体障害者社会参加支援施設の基準等

【参考3】知的障害者福祉法に規定する主な事項

  • 知的障害者更生相談所の設置等
  • 障害福祉サービスや障害者支援施設等への入所等の措置

○ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律は、精神障害者の定義や精神障害者の社会参加等を定めるものであり、障害者自立支援法の給付の対象となっていない支援を定めるほか、措置入院等の医療について定める法律である。

【参考4】精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する主な事項

  • 精神障害者の定義
  • 精神保健福祉センターの設置等
  • 地方精神保健福祉審議会及び精神医療審査会の設置等
  • 精神保健指定医の指定等
  • 任意入院、措置入院及び医療保護入院
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付される範囲及び手続き

○ 児童福祉法は、障害児も含めた児童の定義、児童福祉の実施機関、障害児に対する給付、入所施設等への措置等を定める法律であり、障害児を含めた児童に対する福祉等を定めるものである。

【参考5】児童福祉法に規定する主な事項

  • 児童の定義
  • 児童福祉審議会の設置等
  • 児童相談所の設置等
  • 保育士の資格等
  • 助産施設、母子生活支援施設及び保育所への入所等
  • 障害児のサービスに係る給付及び手続き
  • 要保護児童の保護措置等
  • 都道府県及び特定市町村の保育計画の策定

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 平成20年7月にまとめられた「障害児支援の見直し検討会」報告では、「障害児についてなるべく一般施策との連携により対応していくという考え方からは、各施設や事業の根拠を「児童福祉法」に位置付けることを基本とすべきと考えられる」とされている。

【分野・項目・論点】

B-1 法の対象規定

1)推進会議では、障害の定義について、「社会モデルに立った、制度の谷間を生まない定義とする」ことが確認されている。これをふまえた、「総合福祉法」における障害の定義や支援の対象者に関する規定をどう考えるか?

2)「自立支援法」制定時の附則で示されていた「発達障害、高次能機能障害、難病(慢性疾患)」等も含みこんだ規定をどうするか?制限列挙で加えるのか、包括的規定にするのか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法第4条第1項において、「障害者」は、

  1. 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者、
  2. 知的障害者福祉法にいう知的障害者
  3. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する精神障害者

と規定されている。(いずれも18 歳以上)、

○ また、障害者自立支援法第4条第2項において、「障害児」は、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児及び精神障害者のうち18 歳未満である者と規定しており、児童福祉法第4条第2項において、「障害児」は、

  1. 身体に障害のある児童
  2. 知的障害のある児童

と規定されている。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害者自立支援法においては、障害者等に対するサービスの提供等の支援を公平かつ安定的に行うために、給付対象が明確になるよう、身体障害者福祉法等の法律に定める者を対象として規定しているもの。

○ なお、発達障害や高次能機能障害のある者については、精神障害者の概念に含まれている。また、平成16 年に発達障害者支援法が成立し、発達障害者の定義が置かれた。

○ 法律に基づく給付対象については、範囲が不明確である場合、実際の給付の場面で、対象が特定されない恐れがある等の課題がある。大きな地域格差が生じないようにするためにも何らかの基準等によりその範囲が明確であることが必要である。

【参考1】障害者自立支援法(平成17 年法律第123 号)(抄)

(定義)

第4条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する精神障害者(知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち18歳以上である者をいう。

2 この法律において「障害児」とは、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児 及び精神障害者のうち18 歳未満である者をいう。

3・4 (略)

【参考2】身体障害者福祉法(昭和24 年法律第283 号)(抄)

(身体障害者)

第4条 この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

【参考3】精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)(抄)

(定義)

第5条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

【参考4】児童福祉法(昭和22年法律第164号)(抄)

第4条 この法律で、児童とは、満18 歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。

一 乳児 満1歳に満たない者

二 幼児 満1歳から、小学校就学の始期に達するまでの者

三 少年 小学校就学の始期から、満18 歳に達するまでの者

2 この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。

【参考5】発達障害者支援法(平成16 年法律第167 号)(抄)

(定義)

第2条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち18歳未満のものをいう。

3 (略)

【分野・項目・論点】

B-2 手続き規定

1)障害手帳を持たない高次能機能障害、発達障害、難病、軽度知的、難聴などを有する者を排除しない手続き規定をどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法に基づく障害福祉サービス等に係る給付を受けようとする場合には、支給申請時の確認手段として、以下の方法によることとしている。

  1. 身体障害者については、身体障害者手帳
  2. 知的障害者については、療育手帳、知的障害者更生相談所又は児童相談所の意見書
  3. 精神障害者については、精神保健福祉手帳、医師の診断書等
  4. 障害児については、身体障害者手帳、療育手帳、これらの手帳がない場合は、市町村による確認等

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 身体障害者手帳や療育手帳を持たない者等障害者であることが確認できない者が、福祉サービス等の申請をする場合に、サービスを利用できる者であることを客観的かつ公正に確認できるような仕組みとなっている必要がある。

○ なお、現在、障害者手帳が交付されている者については、障害者控除等の各種税制優遇措置や各事業者において実施されている公共交通機関の運賃割引等による支援が行われている。

【参考1】身体障害者手帳制度の概要

・身体障害者福祉法(昭和24 年法律第283 号)(抄)

(身体障害者)

第4条 この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある18 歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

別表 (第4条、第15条、第16条関係)

一 次に掲げる視覚障害で、永続するもの

1 両眼の視力(万国式試視力表によつて測つたものをいい、屈折異常がある者については、矯正視力について測つたものをいう。以下同じ。)がそれぞれ0.1以下のもの

2 一眼の視力が0.02 以下、他眼の視力が0.6 以下のもの

3 両眼の視野がそれぞれ10 度以内のもの

4 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの

二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で、永続するもの

1 両耳の聴力レベルがそれぞれ70 デシベル以上のもの

2 一耳の聴力レベルが90 デシベル以上、他耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの

3 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50 パーセント以下のもの

4 平衡機能の著しい障害

三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害

1 音声機能、言語機能又はそしやく機能の喪失

2 音声機能、言語機能又はそしやく機能の著しい障害で、永続するもの

四 次に掲げる肢体不自由

1 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの

2 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの

3 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの

4 両下肢のすべての指を欠くもの

5 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの

6 1から5までに掲げるもののほか、その程度が1から5までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害

五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの

【参考2】療育手帳制度の概要

・療育手帳制度について(昭和48 年9 月27 日厚生省発児第156 号厚生事務次官通知)(抄)

第2 交付対象者

 手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者に対して交付する。

・療育手帳制度の実施について(昭和48 年9 月27 日児発第725 号厚生省児童家庭局長通知)(抄)

第3 障害の程度の判定

1 障害の程度は、次の基準により重度とその他に区分するものとし、療育手帳の障害の程度の記載欄には、重度の場合は「A」と、その他の場合は「B」と表示するものとする。

【参考3】精神保健福祉手帳制度の概要

・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25 年法律第123 号)(抄)

(精神障害者保健福祉手帳)

第45条 精神障害者(知的障害者を除く。以下この章及び次章において同じ。)は、厚生労働省令で定める書類を添えて、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地)の都道府県知事に精神障害者保健福祉手帳の交付を申請することができる。

2 都道府県知事は、前項の申請に基づいて審査し、申請者が政令で定める精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければならない。

3~6 (略)

・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和25 年政令第155 号)(抄)

第6条 法第45条第2項に規定する政令で定める精神障害の状態は、第3項に規定する障害等級に該当する程度のものとする。

2 精神障害者保健福祉手帳には、次項に規定する障害等級を記載するものとする。

3 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから1級、2級及び3級とし、各級の障害の状態は、それぞれ次の表の下欄に定めるとおりとする。

障害等級 精神の障害の状態
1級 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

【分野・項目・論点】

C-1 自己決定支援・相談支援

1)「必要な支援を受けながら、自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加・参画する」(意見書)を実現していくためには、どういう支援が必要か?また「セルフマネジメント」「支援を得ながらの自己決定」についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

(市町村の相談支援事業について)

○ 市町村は、次のとおり、一般財源(交付税)により一般的な相談支援を行うとともに、地域生活支援事業費補助金(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)により相談支援事業の機能強化を図っている。

※ 一般的な相談支援(一般財源)

  1. 福祉サービスの利用援助(情報提供、相談等)
  2. 社会資源を活用するための支援(各種支援施策に関する助言・指導等)
  3. 社会生活力を高めるための支援
  4. ピアカウンセリング
  5. 権利擁護のために必要な援助
  6. 専門機関の紹介 等

※ 機能強化(補助金)

  1. 市町村相談支援機能強化事業・・・・専門職員の配置
  2. 住宅入居等支援事業(居住サポート事業)・・入居支援、24時間支援等
  3. 成年後見制度利用支援事業・・・・・成年後見制度の申立に要する経費、後見人等の報酬の助成

(都道府県の相談支援事業について)

○ 都道府県は、一般財源(交付税)、地域生活支援事業費補助金により以下の事業を実施している。

  1. 専門性の高い相談支援
    • 発達障害者支援センター運営事業(補助金)
    • 障害児等療育支援事業(一般財源)
  2. 広域的な支援
    • 都道府県相談支援体制整備事業(補助金)
       地域のネットワーク構築に向けた指導、調整等を行うアドバイザーを配置
  3. 相談支援従事者の育成
    • 相談支援従事者研修事業(補助金)

(サービス利用計画について)

○ 市町村は、障害のある方の意向等を勘案して支給決定を行うこととしている

(障害者自立支援法第22 条第1項)。

 また、指定相談支援事業者が、支給決定を受けた障害のある方のうち厚生労働省令で定める以下の者について、その意向等を勘案してサービス利用計画を作成することができることとしている(同法第32条第1項)。

  1. 障害者支援施設からの退所等に伴い、集中的に支援を行う必要がある者
  2. 単身世帯の者等自ら障害福祉サービス事業者との調整を行うことが困難な者
  3. 重度障害者

※ サービス利用計画

・障害者自立支援法では、支給決定を受けた障害者(児)であって一定の要件を満たす者に対し、「サービス利用計画作成費」を支給し、指定相談支援事業者がサービス利用計画を作成するとともに、当該計画に基づくサービスの提供が確保されるよう事業者との連絡調整を行う等の支援を行うこととしている。

<サービス利用計画の内容>

  • 障害者の生活に対する意向・ニーズ
  • 総合的な援助の方針
  • 生活全般の解決すべき課題
  • 提供される障害福祉サービスの種類、内容、量、日時、利用料、これを担当する者
  • 障害福祉サービスを提供する上での留意事項

※ 指定相談支援事業者

  • 指定相談支援事業者は、都道府県知事の指定を受けて、サービス利用計画の作成、事業者との連絡調整等の支援を行うこととしている。
  • また、市町村は、相談支援事業の実施を指定相談支援事業者に委託可能としている。
  • 指定相談支援事業者には、相談支援専門員(一定の実務経験を有する者であって、かつ、国が定める研修を修了した者)の配置が必要

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(自己決定支援等について)

○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、地域における相談支援体制の充実強化を図ることや、ケアマネジメントのあり方として、サービス利用計画の作成について、支給決定後ではなく支給決定前に作成することとし、対象者を原則としてサービスを利用するすべての障害者に拡大するべきであるとされている。また、自己決定支援やセルフマネジメントなどの視点が必要であるとされている。

【分野・項目・論点】

C-1 自己決定支援・相談支援

2)障害者ケアマネジメントで重要性が指摘されてきたエンパワメント支援についてどう考えるか?また、エンパワメント支援の機能を強化するためにはどういった方策が必要と考えるか?

【現在の制度の状況】

(相談支援従事者に対する研修について)

○ 相談支援を実施するに当たっては、障害のある方自らの力で自立した生活を送っていけるよう障害者自身の力を引き出していくエンパワメントの視点が重要であるとされている。

※ 障害者ケアガイドライン(平成14 年3月31 日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部)(抜粋)

「障害者ケアマネジメントは、利用者が自己の課題を解決するにあたり、自分が主体者であることを自覚し、自分自身に自信がもてるように、利用者の力を高めていくエンパワメントの視点で支援していくことが必要である。」

○ 国と都道府県において、エンパワメントの視点を踏まえ、相談支援従事者の養成のための研修を実施している。

※ 「相談支援従事者研修事業の実施について」(平成18 年4月21 日付け障発第0421001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)の別添の「相談支援従事者研修事業実施要綱」の別表1「相談支援従事者初任者研修標準カリキュラム」における「相談支援における権利侵害と権利擁護(1.5時間)」の内容
 「具体的なケアマネジメント事例を通して当事者のエンパワメント、アドボカシー等について理解する。その上で、成年後見制度等の関連制度の重要性についても理解する。」

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(ケアマネジメントに当たっての視点等)

○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告において は、

  1. ケアマネジメントの充実に当たっては、障害者自らの力で自立した生活を送っていけるよう障害者自身の力を引き出していく(エンパワメント)という視点が必要である
  2. 相談支援従事者研修を更に充実させるなどにより、計画的に人材を養成していくことが必要である

とされている。

【分野・項目・論点】

C-1 自己決定支援・相談支援

3)ピアカウンセリング、ピアサポートの意義と役割、普及する上での課題についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

(ピアカウンセリング、ピアサポートの現状について)

○ 障害のある方やその家族の方々が互いに相談支援を行うピアカウンセリングやピアサポートは、市町村が相談支援の一つとして実施している。

※ ピアカウンセリングの実施市町村数(平成21年4月現在)

707市町村/1,798市町村(39%)

  • 身体:561市町村/707市町村(79%)
  • 知的:342市町村/707市町村(48%)
  • 精神:565市町村/707市町村(80%)

※ 身体障害者相談員、知的障害者相談員の配置状況(平成21年4月現在)

  • 身体障害者相談員:9,562人
  • 知的障害者相談員:4,107人

(基本的な考え方としては、身体障害者相談員は身体障害を有する方、知的障害者相談員は知的障害を有する方の保護者がなることとしている。)

○ 厚生労働省としては、基金事業における「ピアサポートセンター等設置推進事業」において、ピアサポート等の事業を実施するピアサポートセンターを設置する場合に必要なパソコンなどの設備整備や、実際にピアサポートを行う障害者や家族に対する研修に係る費用に対する財政支援を行っている。

※ 補助単価 1か所あたり1年間で1,900 千円以内

※ 補助割合 定額(10/10)

 さらに、平成22 年度予算においては、精神障害者の地域生活への移行を促進するため、「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」の新たなメニューの一つとして、ピアサポーターが入院患者を訪問し、退院に向けて外出等に同行して退院準備などを支援する活動を補助の対象とした。

※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業費補助金の予算額
 平成22年度 16.7億円

※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業の事業内容
 福祉・医療等の関係者による地域移行・地域定着推進協議会の設置、地域移行推進員の配置、地域体制整備コーディネーターの配置、ピアサポーターによる同行支援(新規)など

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(ピアカウンセリング、ピアサポートについて)

○ 平成20 年12 月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告において は、ピアカウンセリング、ピアサポートについて、

  1. 障害者や家族が有している様々な経験・体験や情報を活かし、障害者同士や 家族同士によるピアサポート、身体障害者相談員・知的障害者相談員による相 談援助を活用するなどにより、厚みのある相談支援を実施していくべきである
  2. 障害者の地域生活の支援については、障害者同士によるピアサポートも大切であり、都道府県や市町村において、その自主的な活動を支援することを促進していくべきである

とされている。

【分野・項目・論点】

C-1 自己決定支援・相談支援

4)施設・病院からの地域移行や、地域生活支援の充実を進めていく上で、相談支援の役割と機能として求められるものにはどのようなことがあるか?その点から、現状の位置づけや体制にはどのような課題があると考えるか?

【現在の制度の状況】

(サービス利用計画作成費について)

○ 支給決定を受けた者のうち以下の対象者について、指定相談支援事業者が障害のある方の意向等を勘案してサービス利用計画を作成した場合には、サービス利用計画作成費を支給することとしている。

  1. 障害者支援施設からの退所等に伴い、集中的に支援を行う必要がある者
  2. 単身世帯の者等自ら障害福祉サービス事業者との調整を行うことが困難な者
  3. 重度障害者

※ サービス利用計画作成費利用者数/障害福祉サービス実利用者数

0.3万人/53.9万人(0.56%)(平成22 年3月国保連データ)

(居住サポート事業について)

○ 障害のある方の地域における自立した生活のための支援については、市町村が地域の実情に応じて柔軟に事業を実施できる地域生活支援事業の一つとして、「居住サポート事業」において、

  1. 入居支援(物件あっせん依頼、入居手続き支援)
  2. 24時間支援(緊急時等の対応)

等に対する補助を行っている。

※ 居住サポート事業の実施市町村数(平成21 年4月現在)

221市町村/1,798 市町村(12%)

(精神障害のある方に対する地域移行・地域定着支援策について)

○ 精神障害のある方の地域における自立した生活のための支援については、「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」において、

  1. 精神障害者に対する退院・退所に向けた相談支援や福祉サービスの体験利用等への同行支援を行う地域移行推進員の配置
  2. 地域生活に必要な支援体制の整備に係る総合調整や、地域移行推進員への助言・指導を行う地域体制整備コーディネーターの配置に対する補助を行っている。

※ 精神障害者地域移行・地域定着支援事業の実施都道府県数(平成21 年6月現在)

47都道府県/47 都道府県(100%)

 また、平成22 年度の診療報酬改定において「精神科地域移行実施加算」の評価の倍増や、精神病棟入院基本料について入院早期の医療に係る評価をより重視し、精神科病院における地域移行の取組の充実を図っている。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(地域生活支援、地域移行について)

○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、相談支援の充実について、

  1. サービス利用計画作成について、支給決定後ではなく支給決定前に作成することとし、対象者を原則としてサービスを利用するすべての障害者に拡大するべきである
  2. 退院・退所後の生活を見据えた地域生活の準備等のための外出の支援や、24時間の相談支援等について自立支援給付の対象とすることを検討すべきである
  3. 相談支援従事者研修を更に充実させるなどにより、計画的に人材を養成していくことが必要である
  4. 相談支援事業をはじめとする地域の障害福祉に関するシステムづくりに関し、中核的な役割を果たす協議の場である自立支援協議会について、設置の促進や運営の活性化を図るため、法律上の位置づけを明確にすべきであるとされている。

【分野・項目・論点】

C-2 障害程度区分の機能と問題点

1)現行「自立支援法」の支給決定についてどう評価し、どういう問題点があると考えるか?また、その中で「障害程度区分」の果たした機能と、その問題点についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援制度前の支援費制度の下では、サービスの必要度を測る「ものさし」がなかったために、地域によって、個々人によってサービスの内容・量に格差があったものと考えられた。

○ そこで、このようなサービス利用者間の公平化や市町村間のバラツキの是正を図るため、障害者自立支援法の下では、まず一次判定で、106の調査項目をもとにコンピューター判定を行い、次に二次判定で、コンピュータ判定だけでは適切な評価が困難な障害特性について、医師意見書や特記事項等をもとに市町村の審査会において総合的に判定する仕組みである「障害程度区分」を導入した。

○ 障害程度区分は、心身の状況に応じたサービスの必要性に関する客観的尺度として、支給決定において市町村が勘案することで利用者間・市町村間の公平性を保つ機能を果たすものである。

○ 一方で、認定に当たって、知的障害や精神障害については、一次判定で低く判定される傾向があり、これまで、障害程度区分を適切に判定してもらうため、各自治体に対し二次判定事例を提供するなどの取組を行ってきたところである。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害程度区分は、個々のサービスの支給決定に用いるほか、

  1. 入所サービス等の対象者の範囲
  2. 区分に応じた報酬単価の設定
  3. 市町村に対する国庫負担基準

に用いられており、利用者間・市町村間の公平性や給付費財源の公平な配分等に 寄不している。

○ 仮に障害程度区分を廃止した場合にあっては、障害程度区分が現在果たしている利用者間・市町村間の公平性や給付費財源の公平な配分といった機能について、どのような形で担保していくのか、検討が必要。

【分野・項目・論点】

C-2 障害程度区分の機能と問題点

2)「障害程度区分」と連動している支援の必要度及び報酬と国庫負担基準についてどう考えるか?特に、今後の地域移行の展開を考えた際に、24時間の地域でのサポート体制(後述)が必要となるが、そのための財源調整の仕組みをどう考えるか?

【現在の制度の状況】

(介護の必要度)

○ 介護を提供する障害福祉サービスについては、サービスを利用するに当たり、 その内容に応じて、障害程度区分が一定以上であることを要件としている。

※ 障害程度区分が一定以上であることを要件としているサービスの例

重度訪問介護:障害程度区分4以上
療養介護:障害程度区分5以上 等

(報酬)

○ 障害者等が障害福祉サービスを利用したときに、市町村は、介護給付費又は訓練等給付費(報酬)を事業者に支払うこと(法定代理受領)となっており、このうち介護給付費に係るサービスについては、介護の必要度等を考慮し、障害程度区分に応じ職員の配置基準を定め、基本報酬等を設定している。

※ 「生活介護」における直接処遇職員(看護職員、理学療法士又は作業療法士、生活支援員)の配置基準

  • 平均障害程度区分が4未満:利用者を6で除した数以上
  • 平均障害程度区分が4以上5未満:利用者を5で除した数以上
  • 平均障害程度区分が5以上:利用者を3で除した数以上

※「生活介護」(定員41人以上60人以下の場合)における基本報酬(日額)

区分2以下 区分3 区分4 区分5 区分6
494単位 538単位 604単位 854単位 1,138単位

(国庫負担基準)

○ 障害福祉は地方自治体の自治事務であり、国庫負担基準は、居宅介護等の訪問系サービスにおいて、障害福祉に係る国と地方自治体の間の一定の役割分担を前提に、限りある国費を公平に配分するため、市町村に対する国庫の精算基準として設定されているものであり、サービスの種類ごとに障害程度区分別に定められている。また、障害程度区分が高いほど国庫負担基準が高く設定されている。
 この国庫負担基準については、平成21年4月の報酬改定に合わせ、訪問系サービス全体の1 人当たりの負担水準を月額9万5千円から10万5千円に大幅に引き上げた。(+10.5%)
 その中でも、重度訪問介護の国庫負担基準については、20%近い引き上げを行ったところであり、とりわけ、障害が最も重い障害程度区分6の国庫負担基準については30%を超える引上げを行った。
 国庫負担基準の水準については、全国の9割程度の市町村において支給実績をカバーできるよう設定していることから、多くの市町村においては支給実績が国庫負担基準を下回っている。

区分1 区分2 区分3 区分4 区分5 区分6
2,370単位 3,050単位 4,500単位 8,440単位 13,500単位 19,450単位

(市町村に対する財政支援の仕組み)

○ 長時間の介護を必要とする方を多く抱えるなど、国庫負担基準を超過してサービスの支給を行っている市町村の財政負担を軽減するため、

  • 地域生活支援事業における「重度障害者に係る市町村特別支援事業」
  • 障害者自立支援対策臨時特例交付金を活用した「重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業」

による財政支援を行っている。

※「重度障害者に係る市町村特別支援事業」

対象自治体:訪問系サービスの利用者に占める重度訪問介護対象者が10%を超え、かつ訪問系サービスの支給額が国庫負担基準額を超過している市町村

内容:以下の1.に2.を乗じた金額の一定割合を助成する。

  1. 該当する市町村の重度訪問介護の利用者数から、訪問系サービス全体の利用者数に全 国の重度訪問介護対象者の割合(10%程度)を乗じて得た額を控除した数
  2. 重度訪問介護の障害程度区分4,5,6の国庫負担基準額の差の平均程度(約8.5万円)

※「重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業」

対象自治体:市町村(指定都市及び中核市除く)

内容:以下の金額の範囲内で都道府県知事が必要と認める額を助成する。

  • 「人口10万人未満の市町村」:国庫負担基準超過額
  • 「人口10万人以上30万人未満の市」:「国庫負担基準額に100%を乗じた額」と「国庫負担基準超過額」のいずれか低い方の額
  • 「人口30万人以上の市」:「国庫負担基準に50%を乗じた額」と「国庫負担基準超過額」のいずれか低い方の額

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(介護の必要度)

○ 施設入所支援や生活介護など介護の必要度の高い者に対して特別な支援を行う障害福祉サービスについては、財源に制約がある中で、そのようなサービスを必要とする方に的確かつ公平に提供される必要があることから、その利用に当たり、障害程度区分が一定以上であることを要件としている。
 また、このことにより、安易な施設入所を防いでいるという面もある。
 したがって、仮に障害程度区分を廃止した場合にあっては、こうした機能をどのような形で担保するのか、検討が必要である。

(報酬)

○ より手厚い支援を必要とする者に対する適切な支援を確保するためには、利用者の障害の状況等に応じて、サービス提供体制を手厚くする必要があることから、障害程度区分に応じ職員の配置基準を定め、基本報酬等を設定している。
 したがって、仮に障害程度区分を廃止した場合にあっては、こうした利用者の状況等に応じた支援体制をどのような形で担保するのか、検討が必要である。

(国庫負担基準等)

○ 現行の国庫負担基準は、訪問系サービスについて、国の費用負担を義務化することで財源の裏付けを強化する一方で、障害福祉に係る国と地方自治体の間の一定の役割分担を前提に、限りある国費を公平に配分するため、市町村に対する精算基準として定めているものであり、介護の必要度が高い者が多い市町村にはその人数に応じて国庫負担を行える仕組みとなっている。
 したがって、仮に障害程度区分を廃止した場合にあっては、国の厳しい財政事情を考慮し、国費を公平に配分する機能をどのような形で担保するのか、検討が必要である。

【分野・項目・論点】

C-3 「選択と決定」(支給決定)プロセスとツール

1)第3回推進会議では、障害程度区分の廃止とそれに代わる協議・調整による支給決定プロセスのための体制構築についての議論がなされた。これらの点についてどう考えるか?

2)「障害程度区分」廃止後の支給決定の仕組みを考える際に、支給決定に当たって必要なツールとしてどのようなものが考えられるか?(ガイドライン、本人中心計画等)

【現在の制度の状況】

(現行制度の支給決定プロセスの仕組み)

○ 市町村は、障害のある方のサービスの利用に関する意向等を勘案して支給決定を行うこととなっている(障害者自立支援法第22条第1項)。

(現行制度における支給決定の公平性・適正性の確保方策)

○ 「介護給付費等の支給決定について」(平成19年3月23日付け障発0323002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)において、市町村は、支給決定を公平かつ適正に行うため、あらかじめ支給の要否や支給量の決定に関する支給決定基準を定め、これに基づき支給決定を行うことが適当であるとしている。(支給決定基準による公平性の確保)

(現行制度における支給決定の透明性の確保方策)

○ 個々のケースによっては、支給決定基準を超えた長時間の支給量の支給決定(いわゆる「非定型」の支給決定)を行う必要がある場合が想定され、この「非定型」の支給決定を行うに当たっては、同通知において支給決定案について第三者委員会(市町村審査会)の意見を聴いた上で個別に適切な支給量を定めることとしている。(第三者委員会のチェックによる公平性の確保)

※ なお、国庫負担基準については、個々の利用者に対する支給量の上限ではないことから、市町村における支給決定に当たっては、利用者一人一人の実情を踏まえて適切な支給量が設定されるよう、国として重ねて周知を図っている。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(支給決定プロセスを検討するに当たって確保されるべき点)

○ 制度に係る費用を負担する国民(納税者)の理解を得るためにも実際に制度を利用する者の間における公平性と、支給決定プロセスの透明性が確保されていることが重要であり、支給決定のプロセスを検討するに当たっては、このような公平性・透明性をどのような形で担保するのか、検討が必要である。

○ 支給決定プロセスの検討に際しては、地方公共団体における障害行政の実情を踏まえて検討される必要がある。(全国の市町村において円滑に運用できることが必要である。)

【分野・項目・論点】

C-3 「選択と決定」(支給決定)プロセスとツール

3)支給決定に当たって自治体担当者のソーシャルワーク機能をどう強化するか?

【現在の制度の状況】

(自治体担当職員の配置の状況について)

○ 障害福祉行政の担当者の配置については、自治体行政における人事管理(採用・育成・配置)に関わる問題であり、

  • 自治体において福祉の専門家を置くかどうか必要性の認識、
  • 実際にどの程度知識・経験のある職員を確保し配置することができるかという実情、
  • 職員の育成等の視点からの職員異動の考え方(通常、3~4年程度で異動が行われる。)、
  • 自治体の抱える行政課題や財政状況等を踏まえた計画的な採用の状況

などによって、自治体ごとに大きく異なっているのが実情である。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(自治体担当者のソーシャルワーク機能の強化について)

○ 地域主権を進めていく中で、自治体担当職員の配置の状況に留意しつつ、支給決定に当たってソーシャルワークがより適切に行われるようにするための方策について、幅広い観点から検討していく必要がある。

【分野・項目・論点】

C-3 「選択と決定」(支給決定)プロセスとツール

4)推進会議でも、不服審査機関の重要性が指摘されているが、どのような不服審査やアドボカシーの仕組みが必要と考えられるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法においては、障害者及び障害児の保護者は、市町村の介護給付費等に係る処分に不服がある場合は、都道府県に対し、その処分の適否について、審査の請求を行うことができることとされており、支給決定を行った市町村長ではなく、都道府県知事に適否の判断を求めることを可能としている。

○ また、この審査に当たって、公正かつ中立な判断をするため、都道府県知事は学識経験者からなる障害者介護給付費等不服審査会を設置することができることとしている。

【参考】障害者自立支援法(平成17 年法律第123 号)(抄)

第7章 審査請求

(審査請求)

第97条 市町村の介護給付費等に係る処分に不服がある障害者又は障害児の保護者は、都道府県知事に対して審査請求をすることができる。

2 前項の審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。

(不服審査会)

第98条 都道府県知事は、条例で定めるところにより、前条第1項の審査請求の事件を取り扱わせるため、障害者介護給付費等不服審査会(以下「不服審査会」という。)を置くことができる。

2 不服審査会の委員の定数は、政令で定める基準に従い、条例で定める員数とする。

3 委員は、人格が高潔であって、介護給付費等に関する処分の審理に関し公正かつ中立な判断をすることができ、かつ、障害者等の保健又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。