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論点G、H、Iへの構成員のおもな意見

分野G 利用者負担

 自立支援法の利用者負担制度については、「利用抑制となった」、「障害は自己責任とするもの」、「十分な所得保障なしに実施」、「障害が重いほど大きな負担」、「介護保険への統合のため」などいろいろな問題点の指摘があり、改めるべきとされた。
 4月からの低所得者の無料化は評価する意見が多かった。同時に、「中間所得層」の負担が重い、障害者では配偶者、障害児では家族全体の収入で負担上限が決められているので家族の負担が重い、などの指摘も。
 自立支援医療についても福祉サービスや補装具と同様に低所得者無料にすべきとの意見が多かった。なお、一般医療機関での乳幼児の医療費は近年ではほぼ無料になってきているのに、医療型障害児施設の障害児施設医療費は応益負担で、この逆転現象を解消すべきとの意見や、自治体の重度心身障害者医療費助成制度との統合・再構築をとの意見、慢性患者は保険外負担費用・専門医療機関への交通費・家族滞在費など多額の負担でありせめて保険適用分の負担はなくしてほしいとの意見もあった。また定率負担を原則とする医療制度の下では、現状の自己負担はやむをえないとの意見もあった。
 今後の利用者負担のあり方についても多様な意見が出された。
 障害は自己責任ではなく社会全体で支えるべきで、支援(サービス)負担はゼロにすべきという意見が多かった。一方、原則ゼロにし過渡的な措置で応能負担に、ゼロを求めると所得保障の改善が望めなくなる、人権上重要な支援はゼロ、その他は応能負担とする、などの意見も見られた。
 いわゆる「実費負担」については、所得保障を前提に実費は自己負担にとの意見が多かった。その場合、食費は食材料費のみ自己負担にし、調理等人件費は障害で調理できないために必要なので徴収すべきでないとの意見が多く見られた。この食材料費自己負担も(所得保障の現状の下では)応能制とすべき、生活保護水準以下の収入の場合は自己負担させるべきではない、入院中の自立支援医療の食費は医療の一環であり自己負担させるべきではない、との意見も出された。
 また通所の交通費補助の支給を、GH,CHには補足給付がないのは不公平、「実費」という用語・概念は疑問だ、などの意見もあった。
 支援(サービス)と「実費」の利用者負担のどちらについても、応能負担とする場合の負担者の範囲については、「障害者」の場合には本人のみとする意見が多く、配偶者を含めてもよいとの意見も見られた。「障害児」の場合には本人のみとする意見と保護者を含める意見とに分かれていた。本人のみとする場合、税制上の扶養控除との整合性の議論も必要との指摘もあった。
 応能負担の場合の負担能力の基準を、本人の所得が平均賃金の10倍以上とすべきとの提案も見られた。
 そのほか、自立支援医療と福祉サービス・地域生活支援事業等を合算すべき、加算と利用者負担の連動は早急な見直しが必要( 就労移行支援体制加算といった前年度の支援内容に基づく加算を現利用者が負担する矛盾や、食費の軽減措置としての食事提供体制加算に利用者負担が生じる矛盾を解消すべき)、応益負担のために利用をやめた人に、低所得1,2は無料となったことなどを知らせて再利用を働きかけるべき、就労の支援は利用者負担は撤廃すべき、などの意見が出された。

分野H 報酬や人材確保等

<H-1 支払方式>

 日額払い方式と月額払い方式を指示する委員数はほぼ同じであった。
 日額払い方式がよいとする理由は利用者のサービスの選択を保証するとされる。日額払いが利用しやすいように、相談事業で促進すべきとの意見もあった。「出来高払い」ではなく「予定的な」日額払いで施設へ費用給付すべきとの意見もあった。なお、日額払いの場合、良質な人材の確保、経営の安定化等の課題については、報酬単価の改善等により解消すべきとされる。
 一方月額払いを支持する委員はその理由として、障害が安定しない精神障害者等がサービスを利用できない、事業者が安定した運営ができない、日額払いは職員の日雇化につながる、総合的な支援を保障するため、CH・GHの利用にあたって複数を選択することはない、などであった。なお、複数のサービスを利用することがある場合には按分方式を取ればよいとされた。
 以上の合計の人数に近い数の委員が両方の組み合わせを提案している。具体的には、人件費を含む事務費は月額払いで事業費は日額払いとすべき、概ね毎日を利用する予定の場合は月額払いとし、複数サービスを利用する場合や、概ね毎日の利用を予定していない場合は日額制とすることを基本とした、(本人との契約による)選択制とするべき、などであった。

<H-2 人材確保・育成>

 事業所での事務負担の軽減を求める意見が多く出されている。そのため、加算制度を縮小し本体の報酬基準に組み込む、日払い方式をやめる、グループホームとケアホームを一本化する、などが必要だと指摘された。負担上限管理等の複雑さも事務負担を強めているという。
 一方、一定の事務量は不可避でありそれを反映した報酬単価をという意見や、事務職員の配置を必置にすべきとの意見も。
 支援職員の資格要件については、資格要件をシンプルにする必要はない、また、質の低下をもたらすので好ましくない、人材確保の困難性はつきつめれば賃金の低さにあるので、報酬単価の引き上げを図る必要がある、などの意見が出された。
 一方、資格要件よりも採用後の実践的訓練を重視するべきである、サービス管理責任者・行動援護ヘルパーの資格要件が5 年の条件は厳しいため緩和すべきとの意見も見られた。
 人材確保のためには、賃金水準を含めた労働条件の改善が必要という意見が多く、このほか、常勤換算制度の見直し、社会福祉士の活用を一層進める、産業としてのシステム整備が必要、実質的な相談支援を行っている当事者団体の当事者スタッフ等に資格を与える、「知的障害援助専門員」など障害団体の実施する人材育成制度を国が活用する、めまぐるしく制度いじりをしていては落ち着いて人材育成はできない、などの意見が出された。
 事業所内で人材育成に積極的に取り組めるような制度が望まれており、そのため複数常勤職員の配置を最低基準とする、施設におけるOJTなどの研修体制を義務化する、支援職員の経歴や資格等に対して「給与加算」する給付体系とする、などが提案された。労働条件改善のためには、社会福祉従事者の(国家公務員に準じた)給与表を作成する、定期的な経営実態調査において労働条件や職場定着の実態などを把握する、なども課題とされた。
 さらに、相談支援を担うサービス管理責任者・相談支援専門員の確保のための迅速かつ有効な手段は、市町村の委託費を義務的経費に変更すること、との意見も見られた。

分野I その他

<I-1 介護保険との問題>

 「基本合意書」にある介護保険との統合を前提としない制度のあり方の検討に当たっては、財源、理念、支援のあり方(介護か人生・生活全般の支援か)、利用者負担、障害程度区分、市町村の負担など多くの点の違いを明確にすべきとの意見がだされた。一方、介護保険も部分的に活用すべきなどの意見も見られた。
 現行の介護保険優先条項は撤廃すべきとの意見が多かった。一方で、高齢期になってからの障害者となった者等への支援を想定し、「介護保険優先の原則は維持すべき」「適用原則を別途定めるべき」との意見もあった。ただし、いずれにしても、壮年期以前からの障害者が介護保険の対象になった場合の生活・サービスが維持できるようにすべきとする点は共通していた。

<I-2 現行の特別対策等>

 特別対策で行われた各事業について、期限の定められた特別対策としてではなく正規の制度に組み入れるべき事項として、通所サービス等利用促進事業、重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業など多数のメニューがあげられていた。また、新法の施行までは延長を求める意見が多かった。
 通所・入所施設の新体系への移行期間(2012年3月)については、それまでに移行を完了すべきという意見と、すぐに総合福祉法になるのだから移行しなくもよいとの意見があり、どちらも現場の混乱を避けるための主張であった。

<I-3 予算、財源確保、その他>

 この法による支援の所要額についての推計が必要であるとされた。その額は障害のある人が他の者との平等を担保するために必要なものであり、国際水準に見合った障害者福祉予算の確保(OECD諸国内での低水準からの脱却)によって実現可能との意見が出された。また、「すぐに行うべきものと財源を確保してできるだけ早急に行うべきもの」といった時期を区切った検討も必要との意見も見られた。
 この法律のモニタリングのための機関が必要とする意見がほとんどだったが、障害者基本法のもとのモニタリング機関との役割分担の必要性も指摘された。
 不服審査、苦情解決、権利擁護機関も必要との意見が一致していたが、不服審査、苦情解決、権利擁護機関のそれぞれの位置づけ・役割を整理や、差別禁止法での同様の機関との整理が必要との指摘もあった。
 共通した意見として、これらの仕組みが行政や事業者から独立していること、障害者本人の権利擁護やエンパワメント支援を行うこと、不服審査等での実効性ある仕組みであること等が出された。
 また、「サービス」、「報酬」、「営業」、「事業者」といった用語についても、新法の中で検討・変更すべきとの意見があった。