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総合福祉部会 第7回 H22.9.21 資料2

「障害者総合福祉法」(仮称)の論点に関する現在の制度の状況等について-No.3-

厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部
平成22年9月21日

【分野・項目・論点】

G-1 応益負担の問題点と現状の評価

1)「自立支援法」で導入された自立支援給付(福祉サービス、補装具)、自立支援医療の応益負担の問題についてどう考えるか?

2)「応益負担の廃止」方針に基づく、今年4月からの福祉サービスと補装具の軽減措置についてどう評価するか?

【現在の制度の状況】

(福祉サービスに係る利用者負担について)

○ 障害者自立支援法においては、サービスの利用に応じ最大でも1割の負担としつつ、低所得者等に配慮した、所得に応じたきめ細やかな負担軽減措置を行っているところである。

【参考】制度創設時の負担軽減措置

  1. 原則1割負担に対する負担上限月額の設定(所得が低いほど、低い上限額を設定)。
  2. 施設入所者(20歳以上)、グループホーム等の利用者については、利用者個々人の収入に応じた個別減免を実施。
  3. 利用者負担を支払うことにより、生活保護受給者となる場合には、生活保護に該当しなくなるまで、自己負担額を引き下げ。
  4. 同じ世帯に他にも障害福祉サービスを受けている者がいる場合や、障害福祉サービス利用者が介護保険のサービスを併せて受けている場合、各サービスの負担の合算額が、基準額を超えないように自己負担額を軽減(基準額を超えた部分につき高額障害福祉サービス費を給付)。
    なお、食費・光熱水費等の実費負担の軽減を図るため、補足給付等を実施している(詳細は、G―1-4)に記載)。

○ 負担上限月額については、平成19 年4月の特別対策及び平成20年7月の緊急措置において段階的に引き下げるとともに、平成21年7月に資産要件を撤廃するなど、利用者負担の軽減を図ってきたところである。

○ また、新たな制度ができるまでの間、平成22年4月から、低所得(市町村民税非課税)の障害者等につき、福祉サービスに係る利用者負担を無料としている。 (平成22年度所要額:102億円)

【参考1】負担上限月額の引き下げについて

居宅・通所サービス

  制度創設時
(平成18年4月~)
特別対策
(平成19年4月~)
緊急措置
(平成20年7月~)
新たな制度が
できるまでの間
(平成22年4月~)
一般 37,200円 37,200円 37,200円 37,200円
(所得割16万円未満)
☆9,300円
(所得割16万円未満)
☆9,300円(注)
(所得割16万円未満)
9,300円(注)
低所得2 24,600円 ☆6,150円
(通所は3,750円)
☆3,000円
(通所は1,500円)
0円
低所得1 15,000円 ☆3,000円 ☆1,500円 0円
生活保護 0円 0円 0円 0円

☆ 資産要件あり(所有する現金及び預貯金等が1,000万円(単身の場合は500万円)以下等)→ 平成21年7月以降、資産要件は撤廃

注 障害児の場合、所得割28 万円未満の一般世帯の負担上限月額は、4,600円

入所サービス(障害者(20歳以上)の場合)、グループホーム等利用者

  制度創設時
(平成18年4月~)
特別対策
(平成19年4月~)
緊急措置
(平成20年7月~)
新たな制度が
できるまでの間
(平成22年4月~)
一般 37,200円 37,200円 37,200円 37,200円
低所得2 0円~24,600円
☆個別減免
0円~24,600円
☆個別減免
0円~24,600円
☆個別減免
0円
低所得1 0円~15,000円
☆個別減免
0円~15,000円
☆個別減免
0円~15,000円
☆個別減免
0円
生活保護 0円 0円 0円 0円

☆ 個別減免の適用に当たっては、資産要件あり(入所者本人の所有する現金及び預貯金等が500万円(制度創設時は350 万円)以下等)→平成21年7月以降、資産要件は撤廃

入所サービス(障害者(20歳未満)・障害児)

  制度創設時
(平成18年4月~)
特別対策
(平成19年4月~)
緊急措置
(平成20年7月~)
新たな制度が
できるまでの間
(平成22年4月~)
一般 37,200円 37,200円 37,200円 37,200円
(所得割16万円未満)
☆18,600円
(所得割28万円未満)
☆9,300円(注)
(所得割28万円未満)
9,300円
低所得2 24,600円 ☆12,300 円 ☆6,000円 0円
低所得1 15,000円 ☆7,500円 ☆3,500円 0円
生活保護 0円 0円 0円 0円

☆ 資産要件あり(所有する現金及び預貯金等が1,000 万円(単身の場合は500 万円)以下等)→平成21年7月以降、資産要件は撤廃

※ 一般:市町村民税課税世帯
低所得2:市町村民税非課税世帯(低所得1を除く。)
低所得1:市町村民税非課税世帯であって、障害者本人(障害児の場合は、その保護者)の年収が80万円以下
生活保護:生活保護世帯

【参考2】利用者負担率の推移

4.28%(H19.11)→2.86%(H20.7)→1.94%(H21.7)→0.37%(H22.4)

※1 利用者負担率は、介護給付費等の支給額に対する利用者負担額の割合。

※2 利用者負担については、平成20 年7月から利用者負担の更なる軽減及び世帯の範囲の見直しを行い、平成21 年7月から資産要件を撤廃し、平成22年4月から低所得者(市町村民税非課税)の利用者負担を無料としている。

【参考3】障害者自立支援法の施行前後における利用者の負担等に係る実態調査結果

  • 厚生労働省において、平成21年11月に障害者自立支援法施行前後におけるサービスの利用者の実負担額(サービス利用に係る一部負担額と食費・光熱水費にかかる負担額を合算したもの)等を調査。
  • 調査結果の主なポイントは以下のとおり。
    1. 平成18年3月と比べて、平成21年7月において、87.2%の者が実負担額が増加。(これらの者に係る平均増加額8,518円)
    2. 特に、低所得者について、93.6%の者の実負担額が増加。(これらの者に係る平均増加額8,452円)
  • この調査結果を受けて、平成22 年4月から、低所得(市町村民税非課税)の障害者等につき、福祉サービス及び補装具の利用者負担を無料としている。

(補装具に係る利用者負担について)

○ 補装具についても、補装具の購入又は修理に応じ最大でも1割の負担としつつ、低所得者等に配慮した、所得に応じた負担軽減措置を行っているところである。

【参考】制度創設時の負担軽減措置

  1. 原則1割負担に対する負担上限月額の設定(所得が低いほど、低い上限額を設定)。
  2. 利用者負担を支払うことにより、生活保護受給者となる場合には、生活保護に該当しなくなるまで、自己負担額を引き下げ。

○ 負担上限月額については、新たな制度ができるまでの間、平成22年4月から、低所得(市町村民税非課税)の障害者等につき、補装具に係る利用者負担を無料としている(平成22年度所要額:5億円)。

○ なお、世帯員のうちいずれかの者が市町村民税所得割額46 万円(注)以上の世帯については、補装具費の支給対象外としている。

注 障害者1人を含む3人世帯の年収に換算すると約1,200万円(平成15 年度国民生活基礎調査における上位所得10%に相当)

【参考】負担上限月額の引き下げについて

  制度創設時
(平成18年4月~)
新たな制度が
できるまでの間
(平成22年4月~)
一般 37,200円 37,200円
低所得2 24,600円 0円
低所得1 15,000円 0円
生活保護 0円 0円

(自立支援医療に係る利用者負担について)

自立支援医療に係る利用者負担については、G-1-3)に記載。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害者自立支援法における利用者負担は、

  • 今後とも必要なサービス量の充実が必要とされる中、国・都道府県・市町村とともに利用者本人も一定の負担を行うことで、障害者制度の安定的な運営のために皆で支え合う
  • 日単位で複数のサービスを選択して利用できる仕組みとなった中、サービスの利用量に関わらない定額の負担を求めるものではなく、利用者負担の公平性の観点から、サービスの利用量等に応じたものとすることが適当である
  • 利用者が事業者に利用に応じてサービスに係る費用を支払うことにより、利用者の意見が事業者のサービスの向上に活かされやすくなる
  • 所得に応じた軽減措置を講じることにより、実質的に応能負担の要素も取り入れることができる。

という考え方の下、導入されたものである。

○ 障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書(平成22年1月7日)において、

  • 国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる

とされている。

○ また、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)において、

  • 応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法(平成17年法律第123号)を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)の制定に向け、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成24年常会への法案提出、25年8月までの施行を目指す

とされている。

【分野・項目・論点】

G-1 応益負担の問題点と現状の評価

3)基本合意でも「当面の重要な課題」とされている自立支援医療に関する軽減措置についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法に基づく自立支援医療には、更生医療、育成医療、精神通院医療の3種類あり、いずれも、障害者(児)が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な心身の障害を除去・軽減するための医療費について、医療費の自己負担額を軽減する制度であり、その自己負担は、次のとおり。

  1. 医療保険の自己負担(一般の方:3割)を1割の定率負担に軽減。
  2. 定率負担が過大なものとならないよう、所得に応じて1月当たりの負担限度額を設定。
  3. 医療費が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない者(※)、育成医療の中間所得層については、更に軽減措置を実施。

(※)対象者の範囲については以下のとおり。

  • ○ 疾病、症状等から対象となる者
    • [更生・育成]
       腎臓機能・小腸機能・免疫機能・心臓機能障害(心臓移植後の抗免疫療法に限る)・肝臓の機能障害(肝臓移植後の抗免疫療法に限る)の者
    • [精神通院]
      1. 統合失調症、躁うつ病・うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害(依存症等)の者
      2. 精神医療に一定以上の経験を有する医師が判断した者
  • ○ 疾病等に関わらず、高額な費用負担が継続することから対象となる者
    • [更生・育成・精神通院]
      医療保険の多数該当の者(※)
      ※ 同一世帯で1年間に高額療養費の支給回数が4回以上になる場合に、自己負担限度額の軽減を受ける者

【参考1】自立支援医療の概要

<医療の内容>

更生医療:身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できるものに対して提供される、更生のために必要な医療。

育成医療:児童福祉法第4条第2項に規定する障害児(障害に係る医療を行わないときは将来障害を残すと認められる疾患がある児童を含む。)で、その障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な医療。

精神通院医療:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む。)を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある者に対し、その通院医療に係る自立支援医療費の支給を行うもの。

<実施主体>

更生医療:市町村

育成医療:都道府県、指定都市、中核市

精神通院医療:都道府県、指定都市

<財源構成>

更生医療:国1/2、都道府県1/4、市町村1/4

育成医療:国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/2

精神通院医療:国1/2、都道府県・指定都市1/2

※ 公的医療保険を優先適用し、その後、公費負担する割合。

【参考2】自立支援医療の利用者負担の区分(世帯単位)

更生医療・精神通院医療 育成医療 重度かつ継続
対象外:一定所得以上
医療保険の高額医療費の額
一定所得以上
20,000円
中間所得
医療保険の高額療養費の額
※精神通院のほとんどは重度かつ継続
中間所得2
10,000円
中間所得2
10,000円
中間所得1
5,000円
中間所得1
5,000円
低所得2
5,000円
低所得2
5,000円
低所得2
5,000円
低所得1
2,500円
低所得1
2,500円
低所得1
2,500円
生活保護
0円
生活保護
0円
生活保護
0円

利用者負担の区分(世帯単位)

  1. 一定所得以上 市町村民税課税・所得割23万5千円以上
  2. 中間所得 市町村民税課税・所得割23万5千円未満
  3. 中間所得2 市町村民税課税・所得割3万3千円以上23 万5千円未満
  4. 中間所得1 市町村民税課税・所得割3万3千円未満
  5. 低所得2 市町村民税非課税(6を除く)
  6. 低所得1 市町村民税非課税(利用者本人の年収が80万円以下)
  7. 生活保護 生活保護世帯

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 自立支援医療における利用者負担は、

  • 国・地方自治体とともに利用者本人もー定の負担を行うことで自立支援医療制度や、さらには医療制度全体の安定的な運営のために皆で支え合う
  • 障害者自立支援法制定以前においては、同じ障害者であるにも関わらず、更生医療、育成医療、精神通院医療という制度の違いにより負担軽減の仕組みが異なっており、負担の仕組みの統一が必要であった
  • 所得に応じた軽減措置、費用が高額な治療を長期間にわたり継続しなければならない者の軽減措置を講じることにより、医療費負担が家計に不える影響に配慮する

という考え方の下、導入されたものである。

※ 障害者に対する医療については、障害者自立支援法施行前については、更生医療及び育成医療は応能負担となっており、精神通院医療は一律5%を負担する仕組みとなっていた。

○ 利用者負担に関する障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書及び「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」の関係部分は、G-1―1)・2)参照。

○また、基本合意文書においては、

  • なお、自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題とする

とされている。

【分野・項目・論点】

G-1 応益負担の問題点と現状の評価

4)「自立支援法」では福祉サービスや医療の応益負担以外に、食費や光熱水費等の実費負担が導入されたが、これについてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 食費・光熱水費等の実費については、全額自己負担を原則としつつ、低所得者に係る負担を軽減する観点から、以下の負担軽減措置を行っている。

  1. 20歳以上の施設入所者については、サービスの利用者負担と食費等の実費負担を負担しても、手許に少なくとも毎月2.5万円が残るように公費を給付【補足給付】。
  2. 20歳未満の施設入所者については、子育て支援の観点から、障害児支援に係る負担が、地域で子どもを養育する費用(※)と同程度の負担となるよう、保護者の収入に応じて、食費等の実費負担額を軽減【補足給付】。
    ※ 低所得者及び市町村民税所得割28万円未満の者 5万円
    市町村民税所得割28万円以上の者 7.9万円
  3. 通所サービスを利用する低所得者については、食費の額を食材料費相当額(日額230 円(標準的な額))のみに減額【食事提供体制加算】。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 支援費制度においては、施設利用者に係る食費や光熱水費は給付費の対象としていたが、これらの経費については、どこで暮らしていても必ずかかる性質のものであることを踏まえ、施設を利用する者と利用しない者の費用負担の均衡を図る観点から、障害者自立支援法においては、各種負担軽減措置を行いつつ、利用者の実費負担としたところである。

【分野・項目・論点】

G-2 負担の範囲

1)「応益負担廃止」後の負担のあり方として、サービス・支援に関する負担と食費等の実費負担について、それぞれどう考えるか?

2)費用負担を求める場合の仕組みとその際の負担を求める範囲(障害者本人、同居家族等)についてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

1)については、G1-1)~4)に記載

2)について

(費用負担を求める場合の仕組みについて)

○ 障害者自立支援法においては、支給決定を受けた障害者又は障害児の保護者が、事業所に利用者負担を支払う仕組みとなっている。

(負担を求める範囲について)

○ 福祉サービスや補装具に係る利用者負担については、所得に応じた負担上限月額を設定し、その額を超える利用者負担は発生しない仕組みとなっている。
 その所得を判断する際の世帯の範囲は、以下のとおりとなっている。

【所得を判断する際の世帯の範囲】

  • 障害者(施設に入所する20 歳未満の障害者を除く。)
    → (平成20年6月まで)障害者本人の属する住民基本台帳上の世帯
    (平成20年7月から)障害者本人とその配偶者
  • 障害児及び施設に入所する20 歳未満の障害者
    → 保護者の属する住民基本台帳上の世帯

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(負担を求める範囲について)

○ 障害者自立支援法施行当初においては、負担上限月額を算定する際の所得の範囲を「(住民基本台帳上の)世帯」を単位としていた。

○ これは、他の社会保障制度においても採用されている考えであり、

  • 経済的な面において世帯の構成員が互いに支え合うという生活実態があること
  • 税制度や医療保険制度において控除や被扶養者扱いによる優遇を受けていること

等から、負担の公平性の観点において適当であると考えられたためであった。

○ その後、障害者本人の所得が低くても父母等の所得が高い場合には、負担上限月額は高い区分になるが、父母等からの自立に対する障害者の意向が強いことを考慮し、平成20年7月から、障害者につき、福祉サービスや補装具に係る負担上限月額を算定する際の世帯の範囲を見直し、障害者本人とその配偶者のみの所得で判断することとした。
 配偶者については、民法上、扶助義務が課せられていること(民法第752条)などを考慮して、負担上限月額を算定する際の世帯の対象としているものである。

【分野・項目・論点】

H-1 支払方式

1)「自立支援法」による報酬払い方式についてどう評価するか?日額払い方式について、人材確保や安定したサービス提供の困難さを指摘する声がある一方、利用者の選択等の点から評価する声もある。これについてどう考えるか?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援法では、事業者に対する報酬については、入所の場合も通所の場合も、利用者の希望に応じてサービスを日ごとに選択して利用する仕組みとなったことを踏まえ、1日当たりの単価を利用日数に応じて支払う仕組み「日払い方式」としている。

○ 報酬の日払い方式は、利用者のサービス利用の組み合せが可能となる他、サービス利用のない日は、利用者負担を行う必要がないという利用者のメリットがある。また、報酬が支払われない為、公費負担の適正化が図られる反面、事業者にとっては、利用者の欠席が増えると経営が不安定になるデメリットがある。

【参考】報酬の支払い方(「月払い方式」と「日払い方式」)についてのメリットとデメリット

  月払い方式 日払い方式
利用者 メリット   利用者の選択により
複数のサービスを組合せることが可能
デメリット 原則として、月に数日の利用でも
1か月分の利用者負担を行うこととなる
 
事業者 メリット サービス提供の有無にかかわらず、
1か月分の収入が入るため経営が安定する
 
デメリット   利用者の欠席が増えると
経営が不安定になる
公費負担 メリット   事業者の利用者増に向けた
サービスの質の向上などの努力を促す
デメリット 実際のサービス利用がない日に、
公費負担及び利用者負担により
事業者に対する報酬を支払うこととなる
(公費負担及び利用者負担の増大)
※平成22年4月から、
低所得(市町村民税非課税)の
障害者等の利用者負担を無料とした
 

○ 報酬の「日払い方式」の導入に伴い、事業者の経営基盤の安定を図るため、以下の措置を講じてきたところである。

  1. 「日払い方式」導入に際しての報酬単価の設定に当たり、利用率を加味して一定の欠員等にも配慮した。
    • 新体系入所施設の利用率 96%
    • 新体系通所サービスの利用率 91%(障害者自立支援法施行時は利用率を95%で設定していたが、平成20年の緊急措置の際に改定した。)
  2. 平成18年度から、障害者自立支援対策臨時特例交付金(基金事業)において従前(障害者自立支援法施行前)の報酬の9割に相当する水準額との差額を助成している。
  3. 事業者の安定的な経営が図られるよう、定員を超えて利用者を受け入れられるようにしている。
    • 通所サービス
      1日当たり定員の150%まで
      過去3か月平均で定員の125%まで
    • 居住サービス
      1日当たり定員の110%まで
      過去3か月平均で定員の105%まで
  4. 利用者が急病等により利用を中止した場合、利用者が入院・外泊した場合又は利用者が長期間入院・帰省した場合において、事業者が連絡調整や相談援助を行ったときに、報酬を加算することとしている。

【参考】加算ができる主な場合

  • 欠席時対応加算(対象:新体系及び旧体系の通所サービス)
    利用者が急病等により利用を中止した際に、連絡調整や相談援助を行った場合に加算を行う。
  • 長期入院等支援加算(対象:施設入所支援・旧体系入所施設)
    利用者が長期間にわたり入院・外泊した際、入院にあっては原則として週1回以上、病院又は診療所を訪問し、利用者の相談支援等、日常生活上の支援を行い、入院以外の外泊にあっては家族等との連絡調整や交通手段の確保等を行った場合に加算を行う。
  • 長期入院時支援特別加算(対象:グループホーム・ケアホーム・宿泊型自立訓練)
    家族等から入院に係る支援を受けることが困難な利用者が、長期間にわたり入院した際、原則として週1 回以上、病院又は診療所を訪問し、利用者の相談支援等、日常生活上の支援を行い、退院後の円滑な生活移行が可能となるよう、病院との連絡調整を行った場合に加算を行う。
  • 帰宅時支援加算(対象:グループホーム・ケアホーム・宿泊型自立訓練)
    事業所が利用者の帰省に伴う家族等との連絡調整や交通手段の確保等の支援を行った場合に加算を行う。
  • 長期帰宅時支援加算(対象:グループホーム・ケアホーム・宿泊型自立訓練)
    事業所が利用者の長期間の帰省に伴う家族等との連絡調整や交通手段の確保等の支援を行った場合に加算を行う。

○ 平成21 年4月の報酬改定においては、事業者の経営基盤の安定を図るため、各障害福祉サービス事業所等の収支状況などを調査した「障害福祉サービス等経営実態調査」の結果を踏まえて、全体でプラス5.1%の報酬改定を行ったところである。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、

  • 障害者自立支援法では、利用者がサービスを選択し、多様なサービスを組み合わせて利用することができるよう、「日払い方式」や、「日中と夜間」に分けたサービス体系としている。
  • これについて、事業者の安定的な経営の観点から、「月払い」に戻すべき、あるいは一部を月払いにすべきとの意見がある。
    1. 日払いの場合、利用者の欠席が多い場合に、事業の安定的な運営が難しくなる。
    2. 利用者が欠席しているときにも、利用者の状況の確認等の業務を行っている場合がある。
    3. 日払い方式になって報酬の請求事務が煩雑になっている。
  • 他方、利用者のサービス選択等の観点から、「日払い」「昼夜分離」を維持すべきとの意見がある。
    1. 利用者の個別のニーズに応じた、サービスの選択が可能。
    2. 公費を使うからには、納税者が納得できるような仕組みが必要。
    3. 利用者本位の視点から日払い方式が望ましいが、小規模な事業所などへの配慮や、夜間支援の評価を含め、単価設定などで何らかの配慮が必要。
  • 「月払い」に戻した場合、利用者が月に数日しか利用しないときや、利用者が複数の日中活動サービスを利用したときに、それぞれの事業所の1か月分の費用を支払うこととなるが、給付費や利用者の負担の増大を避ける方法が難しいという課題がある。

とされている。

【分野・項目・論点】

H-2 人材確保・育成

1)人材確保の困難が指摘されている。また、事務量の増大等を指摘する声がある。人材不足の解消及び事務の簡素化のために、サービス体系及び資格要件をシンプルにすることは有効か?また、有効である場合、どのように整理するべきか?

2)支援職員や相談支援者の迅速かつ有効な人材確保・育成の課題は何か?

3)障害福祉サービスの質・量を適切な水準に保つには、支援職員の賃金その他の労働条件が他の分野と比べて遜色のない水準に保たれる必要があるが、そのために障害者総合福祉法で規定できる事項、その他の法制度で規定すべき事項があるかどうか?

【現在の制度の状況】

(サービス体系)

○ 障害者自立支援に基づくサービス体系については、障害者等の状態やニーズに応じた適切な支援を行うため、従来の施設体系を、障害種別にかかわらない共通の「事業」の単位に見直し、全体のサービス体系を、介護給付、訓練等給付及び地域生活支援事業の3つに再編した。
 また、事業の再編に当たっては、特に「地域生活支援」、「就労支援」といった新たな課題に対応する事業を制度化するとともに、入所施設や病院で24時間暮らす従来のサービス提供の在り方を見直し、「日中活動の場」と「生活の場」を区分する「昼夜分離」を行うことにより、障害者等が地域社会で生活できるような基盤整備の推進を図った。

※ 現行のサービス体系

ア 訪問系サービス

  • 介護給付:居宅介護、重度訪問介護、行動援護

イ 日中活動系サービス(日中活動の場)

  • 介護給付:療養介護(医療型)、生活介護(福祉型)
  • 訓練等給付:自立訓練(機能・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援
  • 地域生活支援事業:地域活動支援センター

ウ 居住系サービス(生活の場)

  • 介護給付:共同生活介護、施設入所支援
  • 訓練等給付:共同生活援助
  • 地域生活支援事業:福祉ホーム

(資格が求められる職種)

○ 障害者自立支援法に基づくサービス体系における以下の職種につき一定の資格を求めている。

  1. 管理者
    管理者は、障害福祉サービス事業所等の従業者及び業務の管理等を一元的に行うとともに、当該従業者に人員、設備及び運営に関する基準を遵守させるため必要な指揮命令を行う。
  2. サービス管理責任者(居宅介護・重度訪問介護・行動援護・短期入所・重度障害者等包括支援以外のサービス)
    サービス管理責任者は、利用者の心身の状況等を把握し、個別支援計画を作成して、利用者に対し、必要な支援を行うとともに、他の従業者に対する技術指導及び助言を行う。
  3. サービス提供責任者(居宅介護・重度訪問介護・行動援護・重度障害者等包括支援のサービス)
    サービス提供責任者は、利用者の心身の状況等を把握し、居宅介護計画等を作成して、利用者に対し、必要な支援を行うとともに、利用の申込みに係る調整や従業者に対する技術指導等のサービスの内容の管理等を行う。
  4. 相談支援専門員(相談支援)
    相談支援専門員は、利用者に係るアセスメントの実施、サービス利用計画の作成、サービス担当者会議の開催、サービス利用計画の実施状況の把握などを行う。

(資格要件)

○ 障害福祉サービスの従業者については、特段要件の定めはないが、管理者やサービス管理責任者などの職種については、他の職員に対する指導的な役割が期待されていることから、一定の要件を定めている。

1. 管理者の要件

 社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者若しくは社会福祉事業に2年以上従事した者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならないとされている。(訪問系サービス・児童デイサービス・短期入所・グループホーム・ケアホーム以外の場合)

※ 療養介護の場合は医師でなければならないとされている。

※ 就労継続支援A型・B型の場合は企業の経営経験者も認めている。

【参考】社会福祉法(昭和26年法律第45号)

(資格等)

第19条 社会福祉主事は、都道府県知事又は市町村長の補助機関である職員とし、年齢20年以上の者であって、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり、かつ、次の各号のいずれかに該当するもののうちから任用しなければならない。

一 学校教育法(昭和22 年法律第26 号)に基づく大学、旧大学令(大正7年勅令第388号)に基づく大学、旧高等学校令(大正7年勅令第389 号)に基づく高等学校又は旧専門学校令(明治36 年勅令第61 号)に基づく専門学校において、厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者

二 厚生労働大臣の指定する養成機関又は講習会の課程を修了した者

三 社会福祉士

四 厚生労働大臣の指定する社会福祉事業従事者試験に合格した者

五 前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者として厚生労働省令で定めるもの

2 (略)

2. サービス管理責任者の要件(居宅介護・重度訪問介護・行動援護・短期入所・重度障害者等包括支援以外のサービス)

 障害者の保健、医療、福祉、就労、教育分野における一定の実務経験を満たすことと、一定の研修を修了することを求めている。

ア 実務経験

相談支援の業務に従事した期間 通算して5年以上
直接支援の業務に従事した期間 通算して10年以上
社会福祉主事任用資格者等が、
直接支援の業務に従事した期間
通算して5年以上
医師、看護師、介護福祉士等の
国家資格等による業務に5年以上従事している者が、
相談支援の業務及び直接支援の業務に従事した期間
通算して3年以上

イ 研修の修了

  • 相談支援従事者初任者研修(講義)(11.5時間)
  • サービス管理責任者研修(講義及び演習)(19時間)

3. サービス提供責任者の要件(居宅介護・重度訪問介護・行動援護・重度障害者等包括支援のサービス)

 次のいずれかに該当する常勤の従業者であって専ら居宅介護等の職務に従事する者から選任することとしている。

ア 介護福祉士

イ 介護職員基礎研修を修了した者

ウ 居宅介護従業者養成研修の1級課程を修了した者

エ 居宅介護従業者養成研修の2級課程を修了し、3年以上介護等の職務に従事した者

オ 行動援護従業者養成研修の過程を修了した者(行動援護に限る。)

※ 重度訪問介護については、当該従業者を確保できないなど、特にやむを得ない事情があると認められる場合には、重度訪問介護従業者のうち相当の知識と経験を有する者から選任する。

※ 行動援護については、上記に加えて知的障害者、知的障害児又は精神障害者の福祉に関する5年以上の実務経験が必要(平成24年3月31日までの間に限り、行動援護従業者養成研修の過程を修了した者にあっては、3年以上の実務経験で可能)。

4.相談支援専門員の要件

ア 実務経験

相談支援の業務に従事した期間 通算して5年以上
直接支援の業務に従事した期間 通算して10年以上
社会福祉主事任用資格者等が、
介護等の業務に従事した期間
通算して5年以上
医師、看護師、介護福祉士等の
国家資格等による業務に5年以上従事している者が、
相談支援の業務及び介護等の業務に従事した期間
通算して3年以上

※ 障害者自立支援法施行以前に相談支援事業に従事していた者にあっては、実務経験は「相談支援の業務に従事した期間」は通算して3年以上で可。

イ 研修の修了

  • <初年度>相談支援従事者初任者研修(講義及び演習)(31.5 時間)
  • <5年ごと>相談支援従事者現任研修(講義及び演習)(18 時間)

(その他一定の資格を有する者の配置を要するサービス)

○ 利用者に対して日常生活上の健康管理等の専門性を有する支援が必要なサービスについては、一定の資格を有する者を配置することとしている。

ア 療養介護:医師、看護師

イ 生活介護:医師、看護職員(保健師又は看護師若しくは准看護師)及び理学療法士又は作業療法士

ウ 自立訓練(機能訓練):理学療法士又は作業療法士

○ 訪問系サービスの従業者については、単独でサービスを提供することから、一定の研修修了者等であることを要件としている。

  • 居宅介護等の従業者(ホームヘルパー)の要件

ア 介護福祉士

イ 居宅介護従業者養成研修の課程を修了した者
(研修時間:3級課程 50時間、2級課程 130時間、1級課程 230時間)

ウ 重度訪問介護従業者養成研修の課程を修了した者(重度訪問介護に限る。)
(研修時間:基礎研修 10時間、追加研修 10時間)

エ 行動援護従業者養成研修の課程を修了した者(行動援護に限る。)
(研修時間:20時間)

※ 障害者自立支援法施行以前にホームヘルパーとして従事していた者も従事可能。

(人材不足の解消及び事務の簡素化)

○ 平成21年4月の報酬改定において「良質な人材の確保」を基本的な視点の一つとして、プラス5.1%の改定を行うとともに、直接処遇職員(生活支援員等)として常勤で配置されている従業者のうち、介護福祉士等の専門職を手厚く配置した事業所に報酬を上乗せする「福祉専門職員配置等加算」や「特定事業所加算」を創設したところである。

※ 福祉専門職員配置等加算(対象:日中活動系サービス・グループホーム・ケアホーム)

良質な人材の確保とサービスの質の向上を図る観点から、条件に応じて加算
(条件1の場合10単位/日、条件2の場合6単位/日)。

  • 条件1 常勤の生活支援員のうち、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の資格保有者が25%以上雇用されていること。
  • 条件2 生活支援員のうち、常勤職員が75%以上又は勤続3年以上の常勤職員が30%以上であること。

※ 特定事業所加算(対象:居宅介護・重度訪問介護・行動援護)
良質な人材の確保とサービスの質の向上を図る観点から、条件に応じて加算
(条件1~条件3の全てに適合する場合は所定単位数の20%を加算。条件1及び条件2に適合する場合又は条件1及び条件3に適合する場合は10%を加算。)

  • 条件1 サービス提供体制の整備(研修の計画的実施、情報の的確な伝達等)
  • 条件2 良質な人材の確保(介護福祉士の割合が30%以上等)
  • 条件3 重度障害者への対応(区分5以上の利用者が30%以上)

○ また、同年10 月から、障害者自立支援対策臨時特例交付金(基金事業)において、介護等職員一人当たり平均月額1.5 万円の賃金引き上げに相当する金額を事業者に助成する「福祉・介護人材の処遇改善事業」を実施している。

※ 福祉・介護人材の処遇改善事業の申請率

(H21.10.30 現在) (H22.3.31 現在)
約60% 約70%

【参考】介護職員処遇改善交付金の申請率(介護保険制度)

(H21.10.30 現在) (H22.3.31 現在)
約72% 約82%

※ 平成20年及び平成21年ともに在籍していたホームヘルパー、生活支援員、保育士等の職員の平成21年の平均給与額(月額)は、前年同月(9月)に比べ、以下のとおり、上昇している。

    (平成20年9月) (平成21年9月)
常勤職員 約7,200円 298,484円 305,660円
非常勤職員 約2,500円 117,501円 119,962円

○ そもそも基本報酬において事務職員の配置費用を含めた単価を設定しているが、これに加えて、平成21 年度から、基金事業において、「事務処理安定化支援事業」として、福祉サービス事業者が事務職員を配置した場合の助成を行うとともに、入所施設におけるサービス提供の記録について、サービス提供の都度記録する必要があったところを、一定期間まとめて記録をしてもよいこととする等、事務の簡素化を実施している。

※ 事務処理安定化支援事業について

ア 補助単価(利用者1人当たり)

  • 定員60人以下の場合 20,000円
  • 定員61人以上80人以下の場合 15,000円
  • 定員81人以上の場合 10,000円

イ 補助割合

  • 障害者施設:国1/2、都道府県1/4、支給決定市町村1/4
  • 障害児施設:国1/2、都道府県(指定都市、児童相談所設置市)1/2

ウ 実施期間

  • 平成21年度から23年度をとおして1事業所につき1回の補助

(研修・人材育成)

○ 障害福祉サービス事業所等は、人員、設備及び運営に関する基準に基づき、従業者の資質向上を図るため、研修機関が実施する研修や当該事業所等内の研修への参加の機会を計画的に確保することとしている。

○ 福祉・介護人材の処遇改善事業において、平成22年10月から、福祉・介護職員の能力、資格、経験等に応じた処遇を行うことを定めるキャリアパスの要件や、平成21年4月の報酬改定を踏まえた処遇改善に関する定量的要件を加えることとしている。

※ 要件を満たしていない申請事業所については、助成額を減算することとしている。

【参考1】キャリアパス要件(1.又は2.のいずれか)

  1. 福祉・介護職員の職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件を定めていること、または職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系(一時的等の臨時的なものを除く。)について定めていること。
  2. 福祉・介護職員の職務内容等を踏まえ、職員と意見を交換しながら、資質向上のための目標及びその具体的な取組を定めていること。

【参考2】定量的要件

  • 事業所のすべての福祉・介護職員に対して、平成21 年4月の報酬改定を踏まえて実施した処遇改善(職員に対する研修、休暇制度等の改善等)の内容及び要した費用を一つ以上明示するとともに、周知していること。

○ また、平成21年10月策定の緊急雇用対策において、緊急雇用創出事業臨時特例交付金により、求職者が、養成機関での受講時間も含めて給不を得て働きながら介護資格を取得する「介護雇用プログラム」を実施している。

【参考】介護雇用プログラム

① プログラムの内容

  • 地方公共団体から委託を受けた介護事業者等が、1年以内(介護福祉士を目指す場合は1回更新可で、最長2年)の雇用契約で採用する。
  • その間、プログラム利用者は養成機関に通って、ホームヘルパーや介護福祉士の資格を取得することを可能とする(ホームヘルパー2級の場合130時間の講義、介護福祉士の場合2年間1800時間の講義を受講)。
  • 講座受講のない日時は、事業所で働くこととする。
  • 資格取得後も、雇用契約終了まで事業所で働くこととする。

② 補助の内容

 求職者が、養成機関での受講時間も含めて給不を得て働きながら介護資格を取得するプログラムの実施に対し助成している。

※ 都道府県に設置した重点分野雇用創造事業(1,500 億円)として地域人材育成事業(750億円)の基金(平成23年度末まで)を活用し、各地方公共団体で事業計画を策定し、事業を実施。

※ 地域人材育成事業のうち介護雇用プログラムの実施等に充てるため、同事業の基礎部分(375億円)として、有効求職者数に応じて一定額を交付する。

Ⅰグループ: 一律15億円 (雇用数600人相当/1県あたり)
Ⅱグループ: 一律10億円 (同 400人相当/1県あたり)
Ⅲグループ: 一律 5億円 (同 200人相当/1県あたり)
合計: 375億円 1.5万人

※ 当該基金事業の要件として、事業費に占める人件費割合は1/2以上とする。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(研修・人材育成)

○ 平成20年12月に取りまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、

  • 労働環境の整備の推進や、キャリアパスに対応した研修体系等キャリアアップの仕組みの構築、福祉・介護サービスの周知・理解、潜在的有資格者等の参入の促進、多様な人材の参入・参画の促進等のための取組を進めていくべきである
  • キャリアと能力に見合う給不体系、適切な給不水準を確保するために、適切な報酬を設定すべきであるとされている。

○ 福祉・介護職員の処遇改善について、長妻厚生労働大臣は、平成22年3月19日の参議院厚生労働委員会委嘱審査において、「4万円の賃金の引上げの実現に取り組んでいきたい」との答弁を行っている。

【分野・項目・論点】

I-1 介護保険との問題

1)国と「自立支援法」訴訟団との「基本合意文書」の中では「新たな福祉制度 の構築に当たっては、現行の介護保険との統合は前提とせず」と明記されてい る。この点から、検討すべき論点としてはどのようなことがあるか?

2)現行「自立支援法」第7条では「介護保険優先」の原則がうたわれている。 介護保険対象となった際に、「自立支援法」のサービスが利用できなくなった り、サービスの量・種類が削られたりする事例が生じている。こうした事態を 避けるためには、どのような制度とすることが必要と考えるか?

【現在の制度の状況】

(障害者自立支援法第7条の規定)

○ 障害者自立支援法第7条は、障害者自立支援法のサービス(自立支援給付)と介護保険等他の法令に基づく給付との調整に係る規定である。

【参考】障害者自立支援法(平成17年法律第123号)(抄)

(他の法令による給付との調整)

第7条 自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法の規定による介護給付、健康保険法の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。

(自立支援給付と介護保険制度との適用関係)

○ 介護給付費等と介護保険制度との適用関係については、

  • サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合には、基本的には、この介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けることとなる。
  • ただし、サービス内容や機能から、介護保険サービスに相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるもの(行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)を利用する場合や、市町村が適当と認める支給量が介護保険サービスのみによって確保することができないと認められる場合等については、介護給付費等を支給することができる。
  • このように、障害者の心身の状況等により、個別にさまざまなケースが考えられることから、一律に介護保険サービスを優先するのではなく、個別に判断することとしている。

 また、平成22年2月4日付けの事務連絡において、市町村に対して、以下のとおり技術的助言を行っている。

  • 障害者の中には、ALS(筋委縮性側索硬化症)や全身性障害などで介護保険制度が想定する加齢に伴う障害を超える重度の障害をお持ちの方々もいらっしゃいますので、このような方々が十分なサービスを受けられるよう、利用される方々の意向を丁寧にお伺いするなど個々の実態を十分に把握した上で、「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(平成19 年3月28 日障企発第0328002号・障障発第0328002号)を踏まえて、介護保険法によるサービスの支給量・内容では十分なサービスが受けられない場合には、障害者自立支援法においてその支給量・内容に上乗せしてサービスを受けられるようにするなど、適切な運用をお願いいたします。

○ 補装具費と介護保険制度との適用関係については、

  • 介護保険で貸不される福祉用具としては、補装具と同様の品目(車いす、歩行器、歩行補助つえ)が含まれているところであり、これらの品目は介護保険法に規定する保険給付(既製品の貸不)を優先して受けることとなる。
  • ただし、介護保険で貸不されない福祉用具(義肢、装具、補聴器等)を必要とする場合や、介護保険で貸不される福祉用具であっても、医師や身体障害者更生相談所等により障害者の身体状況に個別に対応することが必要と判断される場合(オーダーメイドの車いすが必要な場合等)は、補装具費を支給することができる。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害者についても、他の国民と同様、40歳以上になれば介護保険料を支払っていただくとともに、サービスの利用に当たっては、現在の社会保障制度の原則である保険優先の考えのもと、まずは介護保険制度に基づく介護保険サービスを利用することとなっている。

○ ただし、介護保険制度にないサービスを利用する場合など、介護保険制度では十分なサービスを受けられない場合には、障害者自立支援法に基づく給付を受けられるようになっているところである。

○ 「障害者総合福祉法」(仮称)に基づく給付と介護保険制度との関係については、介護保険制度における負担と給付の考え方や、障害者とそれ以外の者との公平性、給付に係る財源のあり方などにかかわるため、介護保険制度のあり方も含めた総合的な検討が必要である。

○ また、平成20年12月にまとめられた社会保障審議会障害者部会の報告においては、介護保険制度との関係について、

  • 介護保険の被保険者・受給者の範囲の見直しについては国民的な合意形成が必要である。障害者施策として必要な対策については、この議論にかかわらず、進めていくべきである

とされている。

○ 障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書(平成22年1月7日)において、

  • 国(厚生労働省)は、「障がい者制度改革推進本部」の下に設置された「障がい者制度改革推進会議」や「部会」における新たな福祉制度の構築に当たっては、現行の介護保険制度との統合を前提とはせず、上記に示した本訴訟における原告らから指摘された障害者自立支援法の問題点を踏まえ、次の事項について、障害者の生活実態やニーズなどに十分配慮した上で、権利条約の批准に向けた障害者の権利に関する議論や、「障害者自立支援法の施行前後における利用者の負担等に係る実態調査結果について」(平成21年11月26日公表)の結果も考慮し、しっかり検討を行い、対応していく

とされている。

【分野・項目・論点】

I-2 現行の特別対策等

1)臨時特例交付金による特別対策事業についての評価はどうか?また、この中で、「特別対策」から正規の制度に組み入れる必要があるものはあるか?

2)また、特例交付金の延長は必要か?

【現在の制度の状況】

○ 障害者自立支援対策臨時特例交付金による基金事業は、障害者自立支援法の円滑な実施を図るため、新体系への円滑な移行を促進すること等を目的として、平成18年度補正予算により各都道府県に創設したところ。

【補正予算額960億円】

  • 事業運営の安定化(9割保障)
  • 送迎サービス費用の助成
  • 新体系サービスで必要となる改修・増築等の費用の助成

○ 平成20 年度補正予算においては、事業所支援及び新法移行支援等の観点から、基金の延長及び積増しの措置を講じたところ。

【補正予算額650億円】

  • 基金の延長(平成23年度まで延長)及び積増し
  • 事業の拡大

○ 平成21年度補正予算においては、更なる基金の積増しを行い、福祉・介護人材の処遇改善等を図り、障害者の自立支援を推進することとしたところ。

【補正予算額1,425億円】

  • 福祉・介護人材の処遇改善
  • 基盤整備の拡充(大規模生産設備等)
  • 新体系移行時の従前額保障

〔事業例〕

事業者に対する運営の安定化等を図る措置

■事業運営安定化事業(新体系移行後の事業運営の安定化)

■通所サービス等利用促進事業(送迎サービス費用の助成)等

新法への移行等のための円滑な実施を図る措置

■小規模作業所緊急支援事業(直ちに移行できない作業所への財政支援(年間110万円))

■障害者自立支援基盤整備事業(新体系サービスで必要となる改修・増築等の費用の助成)

■障害者地域移行体制強化事業

  • 障害者地域移行促進強化事業(地域生活への移行に関し指導的役割を担う人材養成や地域住民への説明会等を実施)
  • グループホーム・ケアホームへの移行促進事業(グループホーム等の借り上げに係る敷金・礼金に対する助成)
  • 精神障害者等の家族に対する支援事業(精神障害者等の当事者の家族の交流活動等への助成) 等

■一般就労移行等促進事業

  • 職場実習・職場見学促進事業(就労移行支援事業者等から職場実習を受け入れる企業について、受入のための設備更新等を助成)
  • 就労支援ネットワーク強化・充実事業(地域で就労支援ネットワークを構築するためのホームページ開設や研修会開催等に助成) 等

福祉・介護人材の処遇改善を図る措置

■福祉・介護人材の処遇改善事業(職員1人あたり月額1.5万円の賃金引上げに相当する額を処遇改善に取り組む事業者に助成)

○ 各都道府県においては、造成された基金を活用して、平成23年度末まで基金事業を実施することが可能となっている。

【分野・項目・論点】

I-2 現行の特別対策等

3)新体系への移行の期間(2012年3月)をどう考えるか?

【現在の制度の状況】

(新体系サービスの理念)

○ 新体系サービスは、以下の考え方により、旧来のサービスを利用者本位のサービス体系へ再編したものである。

① 3障害一元化

 身体、知的、精神障害者たてわりのサービス(精神障害者は支援費制度の対象外)ではなく、3障害の制度格差を解消し、障害の種別を問わず利用可能とした。また、重複障害者なども総合的かつ効率的なサービスを受けられることとした。

② 昼夜分離

 24時間同一施設での生活から、日中活動と居住に係るサービスの分離により、複数のサービスと組み合わせることを可能とすることで、「障害者の選択に基づく多様なライフスタイル」の実現を目指している。

③ 地域移行

 施設中心の処遇により、障害者が地域で自立するためのサービスが不十分であったことから、地域生活支援や就労支援といった地域で生活していくために必要なサービスを創設した。

④ サービス名称

 「更生」、「授産」などの国民にわかりにくいサービス名称から、「介護」、「訓練」、「就労支援」といった国民にわかりやすいサービス名称に変更した。

○ なお、新体系サービスに移行する以前からその施設に入所している方については、新体系サービス移行後においても引き続き入所を可能としており、新体系への移行により、利用者が施設から出て行かなければならないということはない。

(経過措置期間)

○ 障害者自立支援法の附則において、旧体系サービス事業所がなお従前のとおり運営ができる期間を「平成24年3月31日までの日で政令で定める日」の前日までと規定されており、それまでに新体系サービスに移行する必要がある。

(新体系サービスへの移行状況)

○ 新体系サービスへの移行率は平成22年4月1日現在で54.2%であり、前回調査(平成21年10月1日現在)からプラス8.8ポイント上昇しており、新体系移行は着実に進展している。

【参考】障害種別の移行率

  (H21.10.1 現在) (H22.4.1 現在)
身体障害者更生援護施設 50.6% 61.0%(+10.4%)
知的障害者援護施設 42.6% 51.1%(+8.5%)
精神障害者社会復帰施設 50.9% 58.5%(+7.6%)
(全体) 45.4% 54.2%(+ 8.8%)

○ 未だ新体系に移行していない旧体系事業所(2,262か所)のうち、約74%に当たる1,663事業所が、すでに具体的な移行時期を決めている(平成22年4月アンケート調査結果)。

(新体系サービスへの移行支援策)

○ 平成21 年4月の報酬改定において、新体系サービスにつき、手厚いサービスを提供した際などに、きめ細かな加算を設ける等、報酬の充実を図ることにより、新体系サービスへの移行の支援を行っている。また、障害者自立支援対策臨時特例交付金(基金事業)により、新体系への円滑な移行の促進を図ることを目的として助成を行っている。

① 報酬

  • 重度障害者支援加算(Ⅰ)(対象:短期入所・施設入所支援)
     医師意見書により特別な医療が必要であるとされる者が利用者の数の合計数の100分の20以上であって、重度障害者に対する手厚い支援体制がとられている場合に加算を行う。
     また、区分6に該当し、かつ、気管切開を伴う人工呼吸器による呼吸管理が必要な者又は重症心身障害者が2人以上利用している場合、さらに加算を行う。
  • 重度障害者支援加算(Ⅱ)(対象:短期入所・施設入所支援)
     重度障害者に対する手厚い支援体制のもと、行動障害の軽減を目的として、各種の支援・訓練を行った場合に加算を行う。
     さらに、重度の行動障害を有する者が、入所の初期段階において、環境の変化等に適応するため特に手厚い支援を要することから加算を行う。
  • 重度者支援体制加算(対象:就労継続支援)  前年度における障害基礎年金1級を受給する利用者の数が、当該年度における指定就労継続支援A型及びB 型事業所の利用者の数の100分の50以上である場合に加算を行う。
  • 医療連携体制加算(対象:児童デイサービス・短期入所・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援・グループホーム・ケアホーム)
     医療機関等との連携により、看護職員を障害福祉サービス事業所に訪問させ、当該看護職員が利用者に対して看護を行った場合に加算を行う。
  • 土日等日中支援加算(対象:施設入所支援)
     土曜日、日曜日等であって、日中活動サービスに係るサービス費が算定されない日において、又は、利用者が現に入所している指定障害者支援施設等において実施されている日中活動サービス以外の日中活動サービスを利用している場合において、心身の状況等により当該日中活動サービスが利用できない日において、昼間の時間帯における介護、介助及び見守り等の支援を行った場合に加算を行う。
  • 手厚い就労支援体制(職員配置)を基本報酬により評価(対象:就労継続支援)
     当該指定就労継続支援事業所ごとに置くべき職業指導員及び生活支援員の総数が、常勤換算方法で、前年度の利用者の数の平均値を7.5で除して得た数以上である場合に基本報酬を高く設定する。

② 収入の従前額保障

 基金事業による「移行時運営安定化事業」及び「事業運営安定化事業」において、新体系に移行した後、想定より利用者数が確保できなかったこと等により、収入が減少した場合に、移行前の報酬水準との差額の助成を行っている。
 ※ 平成21 年度補正予算において、基金を355 億円積増し(なお、その中に基盤整備分を含む。)。

③ その他

  • 障害者自立支援基盤整備事業
     基金事業による「障害者自立支援基盤整備事業」において、新体系サービスで必要となる改修・増築工事費や生産設備費等の助成を行っている。
     ※ 助成額:2,000万円以内(1施設当たり)
  • 新事業移行促進事業
    基金事業による「新事業移行促進事業」において、新体系サービスへの移行に伴うコストの増加等を踏まえて、移行した月に限り、利用者数に応じた額の助成を行っている。
     ※ 新事業移行促進事業の補助単価(施設入所支援の場合) 利用者1人当たり5,700円

(新体系サービス事業所の経営状況について)

○ 旧体系サービス事業所と比べ新体系サービス事業所の方が、収支差率(事業支出に対する報酬等事業収入と事業支出の差額の割合)の高い位置に分布している(平成20年経営実態調査)。

【参考】収支差率の分布割合

収支差率 0% +20% +40% +60%
新体系 33.0% 13.1% 3.1% 1.0%
旧体系 51.3% 10.4% 1.2% 0.3%

○ 従前額保障が適用される新体系サービス事業所の割合は、平成21年4月の報酬改定後に減少しており、報酬改定により経営状況が改善されていることが伺える。

【参考】従前額保障の対象となる新体系サービス事業所の割合

(平成21年3月) (平成21年4月)
9.1% 4.6%(△4.5%)

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

【参考】新体系移行に関する国会答弁(抜粋)

○ 衆・予算委員会(平成22年2月15日(月))において、新体系移行について問われて、長妻厚生労働大臣は以下のとおり答弁をしている。

  • 「障害者の皆様方への施策というのは、かつて昔は措置ということでございまして、その後契約支援費ということになりましたけれども、ただその時代の障害者施設が細かく分かれているという、この考え方を統合しようということで3障害一元化とか、昼夜分離とか、いろんな考え方がその後生まれ、それに.々に移行しているというところで、今おっしゃられるように、まだ移行率は半分ということでございます。これについて、我々はもちろん推進をする立場でございます。」
  • 「先ほども申し上げましたように、今の点については移行を我々も後押しして進めていくということであります。そしてもう一つの議論としては、全体のですね、そういう施設の在り方、全体についても、新しい法律体系の中で、見直すべきところは見直すし、障害者の皆さんのご意見を十分に反映して、それも法案の中で位置付けられるものは位置付けていきたい、こういうことであります。」

○ 施設入所者の地域生活への移行を進めるためには、入所施設の機能が、単に入所機能だけに止まるのではなく、相談支援事業の実施、通所・訪問サービスの提供、グループホーム・ケアホームの整備、福祉人材の育成などの機能を地域に開かれた形で併せ持つことが重要な課題である。このため、新体系移行それ自体が目的なのではなく、旧体系の入所施設が新体系サービスに移行することにより、入所施設が今後地域に開かれた形で事業展開されていくことが必要である。

○ 「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)において、

  • 障害者があらゆる分野において社会から分け隔てられることなく、日常生活や社会生活を営めるよう留意しつつ、障害者が自ら選択する地域への移行支援や移行後の生活支援の充実、及び平等な社会参加を柱に据えた施策を展開する

とされている。

【分野・項目・論点】

I-3 その他

1)この法による支援のための所要額について後年度負担も含め、推計する必要があるのではないか?

2)この財源を安定的に確保するための方策と目途をどのようにたてていくべきか?

【現在の制度の状況】

(障害福祉サービス等に係る予算)

○ 障害者自立支援法に基づく障害者福祉サービス(自立支援給付費)に係る国の予算については、近年一般歳出の伸びが概ね横ばいである中で、利用者の増加とともに、着実な伸びを確保している。

【障害福祉サービス等の実利用者数の推移】

平成19年11月 平成20年5月 平成21年5月 平成22年5月
44.8万人 46.7万人 50.7万人 55.3万人

直近1年間の伸び率

※ 直近1年間の伸び率 9.1% 直近の実利用者: 55.3万人
このうち、身体障害者の伸び率 6.1% 身体障害者: 14.2万人
このうち、知的障害者の伸び率 5.8% 知的障害者: 27.7万人
このうち、精神障害者の伸び率 23.2% 精神障害者: 7.4万人
このうち、障害児の伸び率 17.0% 障害児: 6.0万人

【障害福祉サービス(自立支援給付費)の予算額の推移】

年度 19 20 21 22
億円 4,473 4,755(+6%) 5,072(+7%) 5,719(+13%)

※ 上記予算額は国が負担する予算額のみ。自立支援給付費については、原則として、国が1/2、都道府県及び市町村がそれぞれ1/4を負担している。

(自立支援医療に係る予算)

○ 障害者自立支援法に基づく自立支援医療費に係る国の予算についても、自立支援給付費等と同様に着実な伸びを確保している。

【自立支援医療費に係る予算額の推移】

年度 19 20 21 22
億円 1,313 1,414(+8%) 1,447(+2%) 1,954(+35%)

※1 上記予算額は国が負担する予算額のみ。自立支援医療費の負担割合は以下のとおりである。

  • 育成医療 国が1/2、都道府県・指定都市・中核市が1/2を負担
  • 更生医療 国が1/2、都道府県及び市町村がそれぞれ1/4を負担
  • 精神通院医療 国が1/2、都道府県・指定都市が1/2を負担

※2 平成22 年度の予算額が35%増となっている主な要因は、生活保護の医療扶助が支給されている者について、本来、障害者自立支援法に基づく自立支援医療費の支給が優先するにも関わらず、これが徹底されていないとの会計検査院の指摘を踏まえ、その適正化を行うこととし、その影響額を予算に盛り込んだため。

(地域生活支援事業に係る予算)

○ 障害者自立支援法に基づく地域生活支援事業については、国が事業に係る一定額を補助している。

【地域生活支援事業に係る予算額の推移】

年度 19 20 21 22
億円 400 400(±0%) 440(+10%) 440(±0%)

※ 上記予算額は国が補助する予算額のみ。地域生活支援事業のうち、市町村が実施する事業は、国が1/2以内、都道府県が1/4以内の補助を行っている(都道府県が実施する事業は、国が1/2以内の補助を行っている)。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

○ 障害福祉のサービスに係る給付費は、支援費制度が施行された平成15 年以降、急速に増大しており、その後も新たにサービスを利用する障害者等が見込まれていた中で、障害者自立支援法においては、必要なサービスを確保しながら、制度を安定的に運営することができるよう、訪問系も含めてサービスに関する国及び都道府県の負担を義務的なものとした。

○ このように国の費用負担を義務化することで財源の裏付けを強化する一方、障害福祉に係る国と地方自治体の間の一定の役割分担を前提に限りある国費を公平に配分するため、市町村に対する精算基準として国庫負担基準を定めている。

【分野・項目・論点】

I-3 その他

3) この法の実施に関するモニタリング機関の必要性をどう見るか?

4) 相談、「選択と決定」(支給決定)、支援の利用、利用者負担等、この法に関わる全般的な不服審査・苦情解決・権利擁護機関の必要性をどう見るか?

【現在の制度の状況】

(不服審査)

○ 障害者自立支援法においては、障害者及び障害児の保護者は、市町村の介護給付費等(※)に係る処分に不服がある場合は、都道府県知事に対し、その処分の適否について、審査の請求を行うことができることとされており、支給決定を行った市町村長ではなく、都道府県知事に適否の判断を求めることを可能としている。(障害者自立支援法第97 条)

※ 介護給付費、訓練等給付費等の支給決定に関する処分、障害程度区分に関する処分、利用者負担に係る処分が対象となる。

○ また、この審査に当たって、公正かつ中立な判断をするため、都道府県知事は学識経験者からなる障害者介護給付費等不服審査会を設置することができることとしている。(障害者自立支援法第98条)

○ なお、自立支援医療費に関する処分、補装具費に関する処分については、行政不服審査法に基づき、処分庁に対する不服申立ての対象となる。

【現在の制度の考え方・その他留意すべき事項】

(モニタリング機関)

○ 「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22 年6月29日閣議決定)において、

  • 障害者基本法(昭和45 年法律第84 号)の改正や改革の推進体制について、第一次意見に沿って、障害や差別の定義を始め、基本的施策に関する規定の見直し・追加、改革の集中期間内における改革の推進等を担う審議会組織の設置や、改革の集中期間終了後に同組織を承継し障害者権利条約の実施状況の監視等を担ういわゆるモニタリング機関の法的位置付け等も含め、必要な法整備の在り方を検討し、平成23 年常会への法案提出を目指す

とされている。