音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

総合福祉部会 第7回 H22.9.21 参考資料4

(第7回総合福祉部会)「障害者総合福祉法」(仮称)の論点についての意見

DPI日本会議事務局長 尾上浩二

(分野G 利用者負担)

<項目G-1 応益負担の問題点と現状の評価>

論点G-1-1) 「自立支援法」で導入された自立支援給付(福祉サービス、補装具)、自立支援医療の応益負担の問題点についてどう考えるか?

○結論

 応益負担を廃止し、応能負担にもどすとともに障害に応じて必要不可欠なサービス(介護、手話、文字通訳等)負担については、無料化も含めて、検討する。

○理由

 介護保険との統合を前提としたものであり、障害福祉サービスの受給を益とする間違った評価であり、条約の第28 条「適切〔十分〕な生活水準及び社会保護」に違反すると考えられるため。また、民主党の公約であり、現政権の方針でもある。

論点G-1-2) 「応益負担の廃止」方針に基づく、今年4 月からの福祉サービスと補装具の軽減措置についてどう評価するか?

○結論

 応益負担廃止に向けた大きな第一歩として評価する。ただ、さらに、障害児世帯のさらなる負担軽減や配偶者からの負担についての見直しが必要である。

○理由

 公約及び当事者の声に基づく対応であるため。

論点G-1-3) 基本合意でも「当面の重要な課題」とされている自立支援医療に関する軽減措置についてどう考えるか?

○結論

 「自立支援法」訴訟団との基本合意書でも「当面の重要な課題」とされており、早急に実施することが必要である。

○理由

 当事者の声及び現場の実情に即した重要課題として公約に掲げているため。

論点G-1-4) 「自立支援法」では福祉サービスや医療の応益負担以外に、食費や光熱水費等の実費負担が導入されたが、これについてどう考えるか?

○結論

 後述の通り、「他の者との平等」の観点から基本的には自己負担を原則とするが、十分な所得保障がなされるまで当該障害者の所得状況に応じて配慮する必要がある。また、同様に「他の者との平等」から考えると、費用負担の対象範囲はその障害者本人の生活に直接関わる部分に限定すべきであり、具体的には食費については食材費、水光熱費についてはその個人が直接消費した部分のみを対象とすべきである。

○理由

 食費や光熱水費等は、障害の有無に関わりなく負担するものであるため。なお、障害を理由として就労等についての制限や制約を受けている場合は、その負担に対して所得に応じた軽減措置を講ずるとともに、将来的には、所得保障と併せて、こうした負担については、検討することが必要である。

<項目G-2 負担の範囲>

論点G-2-1) 「応益負担廃止」後の負担のあり方として、サービス・支援に関する負担と食費等の実費負担について、それぞれどう考えるか?

○結論

 上記のとおり、障害に基づき必要不可欠なサービスで、障害の無い人々が負担の必要がないサービスについては、無料化または応能負担とすることが必要である。一方、障害に基づくことなく、だれもが負担するもの(食材費やその本人が消費した水光熱費)については、十分な所得保障(基本的な生活費、並びに障害故に必要な追加負担をカバーする水準)を前提にして、自己負担を原則とする。

○理由

 障害の無い人々との比較においての平等性を確保することを求めている条約の内容に基 づく対応であるため。

論点G-2-2) 費用負担を求める場合の仕組みとその際の負担を求める範囲(障害者本人、同居家族等)についてどう考えるか?

○結論

 原則として本人の所得に基づくこと。

○理由

 上記と同様。

<項目G-3 その他>

論点G-3-1) 「分野G 利用者負担」についてのその他の論点及び意見

○結論

 就労支援及び就労継続支援からは、応能負担的な仕組みであっても、利用者負担を廃止する。

○理由

 障害の無い人の就労支援や障害者の職業訓練では、利用者負担が無いだけでなく手当も支給されている。また、労働者からの負担徴収は、労働者の権利侵害である。また、他の労働者との比較において検証した場合には、明確に条約違反と指摘できるため。

(分野H 報酬や人材確保等)

<項目H-1 支払方式>

論点H-1-1) 「自立支援法」による報酬払い方式についてどう評価するか? 日額払い方式について、人材確保や安定したサービス提供の困難さを指摘する声がある一方、利用者の選択等の点から評価する声もある。これについてどう考えるか?

○結論

 両立(人材確保等と利用者の選択等)を図るための見直しを実施する。ホームヘルプやガイドヘルプ等のパーソナルな支援、生活介護等の日中活動に関わる支援、GH・CH等の居住に関わる支援、相談やエンパワメントに関わる支援と、それぞれの果たしている役割と機能をふまえて、「地域生活の権利」の実現につながる見直しが必要である。

○理由

 利用者の選択肢の拡大や必要なサービスを確保するためには、介護労働者の人材の確保や安定した労働環境を整備することが求められるため。その際、「地域生活の権利」の実現につながる仕組みとすることが必要であるから。

<項目H-2 人材確保・育成>

論点H-2-1) 人材確保の困難が指摘されている。また、事務量の増大等を指摘する声がある。人材不足の解消及び事務の簡素化のために、サービス体系及び資格要件をシンプルにすることは有効か?また、有効である場合、どのように整理するべきか?

○結論

 有効である。また、整理に際しては、障害者の生活実態に応じたサービス体系に整理する。また、支援計画を廃止しサービス管理者等の資格要件を緩和する。

○理由

 現行の事務は、障害者の生活実態に基づかないサービスの体系に合わせていることが事務を煩雑にしている。また、支援計画は、障害者本位の理念に逆行しているものである。そして、サービス管理者等の資格要件は、サービス基盤整備に大きな支障をもたらしている。

論点H-2-2) 支援職員や相談支援者の迅速かつ有効な人材確保・育成の課題は何か?

○結論

 報酬及び労働環境の整備・改善が必要である。とりわけ、人材難が明らかになっている重度訪問介護等の障害者の地域生活を支援する人材確保策、並びに今後の制度の中では障害者のエンパワメント支援の充実が必要と考えられ、相談支援に関わる職員の人件費、並びにピアカウンセラー・ピアサポーターの配置等について、緊急雇用対策の枠組み等を活用した施策が、当面必要である。
 さらに、相談支援事業等、障害者の地域生活に関わる基盤的施策は、個別給付的な発想 ではなく、独立した地域の社会資源として整備・維持・運営される必要があり、2003 年の一般財源化される前の仕組みにいったん戻すべきである。

○理由

 上記が理由で人材確保や定着が困難となっていることが明確であるため。

論点H-2-3) 障害福祉サービスの質・量を適切な水準に保つには、支援職員の賃金その他の労働条件が他の分野と比べて遜色のない水準に保たれる必要があるが、そのために障害者総合福祉法で規定できる事項、その他の法制度で規定すべき事項があるかどうか?

○結論

 労働法規との整合性等の検討が必要であるが、基本的にはある。

○理由

 介護労働者は、労働者としての身分保障以外に、障害者が必要とする福祉サービスを提供し、その質にも大きく関係する側面もあることから、その待遇、職務及び職責等に関する規定を設けることが必要と思われる。

<項目H-3 その他>

論点H-3-1) 「分野H 報酬や人材確保等」についてのその他の論点及び意見

○結論

 必要とする職務(サービス)を提供できるための環境整備が必要である。

○理由

 医療的ケアや外出支援にあたってのスキルや提供体制の確保及びセーフティーネットを確保しなければ、障害者が必要とするサービスの安定的な確保が困難であるため。

(分野I その他)

<項目I-1 介護保険との問題>

論点I-1-1) 国と「自立支援法」訴訟団との「基本合意文書」の中では「新たな福祉制度の構築に当たっては、現行の介護保険との統合は前提とせず」と記されている。この点から、検討すべき論点としてはどのようなことがあるか?

○結論

 介護保険との障害統合を前提とした障害程度区分の認定を軸にした支給決定、介護給付とそれ以外としたサービス体系、応益負担等々、すべてを根本から見直す。

○理由

 障害者のニードや現状に即していないため

論点I-1-2) 現行「自立支援法」第7 条では「介護保険優先」の原則がうたわれている。介護保険対象となった際に、「自立支援法」のサービスが利用できなくなったり、サービスの量・種類が削られたりする事例が生じている。こうした事態を避けるためには、どのような制度とすることが必要と考えるか?

○結論

 第7条をなくし、本人の希望によりサービスの選択権を保障する。また、法律改正までの間も、日々、困難を強いられている障害当事者の状況から、選択性を確保する運用をお声なえるよう政省令・通知等を改定する。また、現在、介護保険の対象となった者については「自立支援法」の国庫負担金が大幅に減らされる仕組みとなっており、自治体現場では「介護保険優先」を強制する仕組みの背景になっているので、あらためるべきである。さらに、障害者サービスのみを引き続き使う場合には、国庫負担金を維持するだけでなく、介護保険から障害者福祉予算への組み入れができるようにすべきである。

○理由

 条約及び現行の障害者施策の理念基づく

<項目I-2 現行の特別対策等>

論点I-2-1) 臨時特例交付金による特別対策事業についての評価はどうか?また、この中で、「特別対策」から正規の制度に組み入れる必要があるものはあるか?

○結論

 継続的な支援に関わるものについては、特別対策ではなく障害福祉サービスの制度自体に組み込むことが必要である。
 具体的には、送迎加算など、本来の支援から不可欠なものについては、報酬の基本に組み入れ、安定的なものとする。また、重度訪問介護等の長時間介護支援への自治体の財政支援策については、より強化し、恒久的な財源調整の仕組みとする。

○理由

 特別対策は、この間の制度の現状が実態に即していない問題があることから、その改善のために実施された。したがって、一時的、臨時的な対応ではなく、制度の根本的な見直しで実施することが必要であるため。

論点I-2-2) また、特例交付金の延長は必要か?

○結論

 報酬等への反映に至る経過措置としては、必要である。また、都道府県単位での基金は、市町村間の財源調整や、障害保健福祉圏域単位での地域資源整備などの観点から恒久的なものとすべきである。

○理由

 正式に改訂するまでの現状対策としての方策が、他にないと思われるため。また、今後の重度障害者も含めた施設・病院からの地域自立生活移行を考えた時に、市町村間の財源調整や圏域単位での地域資源整備が不可欠と考えかられるから。

論点I-2-3) 新体系への移行の期間(2012 年3 月)をどう考えるか?

○結論

 入所施設に限って、2012 年3 月までに「日中と夜間の分離」は進める。一方、授産施設等の就労支援や日中活動系については、今後の見直しで大きく変わる可能性があるので、移行期間については延長すべきである。

○理由

 「特定の生活様式を義務づけない」という点からも、まずは、24 時間一体となった生活は早急に改められるべきであり、入所施設については速やかな新体系移行が必要があると考えられるから。
 一方、あらたな法制が検討されている中で、就労、日中活動に関係した支援は見直しが進むと考えられ、障害者の生活に直接影響するもの以外は、可能な限り実施を凍結することが妥当であると思われるため。

<項目I-3 現行の特別対策等>

論点I-3-1) この法による支援のための所要額について後年度負担も含め、推計する必要があるのではないか?

○結論

 必要である。

○理由

 当面の必要な経過措置及び今後の見直しの検討資料とするため。

論点I-3-2) この財源を安定的に確保するための方策と目途をどのようにたてていくべき か??

○結論

 制度改革推進会議として検討し、推進本部に提言書を提出する。特に、障害者の地域生活資源整備という点から、時限的な立法、少なくとも計画で、財源の確保と基盤整備が進む仕組みを設けるべきである。

○理由

 財源確保にともなう対応は、制度改革推進会議の意見に基づいて内閣及び国会が責任を持つべきだから。また、推進会議の第一次意見書では、「障害者の地域生活の権利の保障とインクルーシブ社会の構築」が掲げられており、その点からすると、圧倒的に障害者関係の予算と地域生活資源が不足しており、その計画的な整備が不可欠だから。

論点I-3-3) この法の実施に関するモニタリング機関の必要性をどう見るか?

○結論

 独立機関として設置する。

○理由

 国際条約の規定に基づくことが必要であるため。

論点I-3-4) 相談、「選択と決定」(支給決定)、支援の利用、利用者負担等、この法に関わる全般的な不服審査・苦情解決・権利擁護機関の必要性をどう見るか?

○結論

 必要である。

○理由

 障害者の声を受け止め、その問題を改善するための仕組みは、必要であり、条約も求めているため。

論点I-3-5) 「分野I その他」についてのその他の論点及び意見

○結論

 利用者本位の利用しやすい制度とし、当事者のエンパワメント支援を拡充する。また、制度間の谷間を埋める。

○理由

 「保護の客体から権利の主体」という転換、「支援を得ながらの自立」の実現のためには、自己決定のプロセスへの支援、エンパワメント支援が不可欠だから。また、制度の谷間をなくした障害者が必要とするシームレスな支援を確保するためには、制度ではなく利用者主体の制度設計とすることが必要であるため。(事例 就労と障害者支援策や就学と障害児支援策等)